殺人犯に関する話をまとめ。<殺人犯して金儲け…を防ぐサムの息子法 売名殺人も防ぐ意図>、<サムの息子ことデビッド・バーコウィッツとは?サムの息子の意味は?>などをまとめています。
2023/05/06:
一部見直し
●殺人犯して金儲け…を防ぐサムの息子法 売名殺人も防ぐ意図
2015/6/12:酒鬼薔薇事件の手記が出版されたことで、あちこちで論争になっています。その中でサムの息子法という話が出ていました。私は聞いたことなかった「サムの息子法」。Wikipediaもあるくらい有名…と思ったんですが、日付を見ると今回話題になったため作ったものみたいですね。
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サムの息子法 - Wikipedia 最終更新 2015年6月11日 (木) 20:36
<サムの息子法(Son of Sam law)(サムのむすこほう)は、1977年にアメリカ合衆国ニューヨーク州で制定された法である。犯罪加害者が自らの犯罪物語を出版・販売して利益を得ることを防ぐ目的で制定された>
<この法は、犯罪活動の結果として直接取得した金銭を押収することを意図している。犯罪者が自らの罪を商業的に利用して得た金銭を奪うことにより、犯罪の収益性を除去するため、また、犯罪者が自分の罪の悪評を活用することができないように作られている。多くの場合、書籍出版や映画化などから得た収入は犯罪被害者への補償となる。この法が制定されたきっかけは、出版社が「サムの息子」ことデビッド・バーコウィッツに多額の契約金で手記のオファーを出したことによる。以降、数多くの改定を重ねて、ニューヨーク州は2001年に再び採択した。同様の法律は他の多数の州で制定されている[1]。犯罪被害者への補償に関する法では、連邦法にVOCAがある>
脚注1 ^
“Court Revisits 'Son of Sam' Law”. ABC News. 2015年6月11日閲覧。
●サムの息子ことデビッド・バーコウィッツとは?サムの息子の意味は?
法律制定のきっかけとなった
デビッド・バーコウィッツさんのWikipediaも見てみました。しかし、出版オファーがあったことについては触れられていませんし、「サムの息子法」の話はありません。ただ、「サムの息子」というのが、犯行声明的な手紙で使われたペンネームであることはわかりました。
<1976年から1977年にかけて、ニューヨークで若い女性やカップルら13人を44口径の拳銃やショットガンで銃撃(一人は刃物で刺)して6人を殺害し、8人に重軽傷を負わせた。被害者に性的暴行を加えておらず、金品も奪わなかったが「サムの息子(Son of Sam)」 という名でマスコミや警察に支離滅裂な内容の手紙を送りつけ、町を恐怖のどん底に突き落とした。 1977年8月10日、ニューヨーク市に隣接するヨンカーズで逮捕される。その後、殺人とともに2000件の放火を自供、その模様を詳しく記録していた。裁判では、弁護側は精神異常による無罪を主張したが、陪審は有罪を評決し、懲役365年となった(ニューヨーク州に死刑がなかったため)。現在も模範囚として服役している>
「サムの息子」というペンネーム(?)についても説明がないですが、アンクルサムを意識しているんでしょうかね。
Wikipediaでは、以下のような説明でアメリカを擬人化したもの。このため、「サムの息子」というのは、「アメリカ(人)の子供」といった意味合いで使ったのかな?と感じました。
<アンクル・サム(Uncle Sam)は、アメリカ合衆国を擬人化した架空の人物。アメリカ合衆国の象徴とされる。また、アメリカ人一般をさすこともある。United States(アメリカ合衆国)と頭文字が同じU・Sなためこう名付けられたとされる>
●サムの息子法は違憲?
このサムの息子法論争を引き起こしたのは、大原ケイさんという方です。
酒鬼薔薇事件の手記出版で注目されるアメリカの法律「サムの息子法」とは - Togetterまとめ
大原ケイ @Lingualina
NY在住のリテラリーエージェント。 アメリカの書籍出版業界の裏事情、NYのローカルネタ、露ネコ動画、全米の馬鹿ニュース、日米文化比較、ネイティブの英語、などをつぶやきます。お下劣なのはわざと。
名前は違うんですが、ツイッターじゃないところで書いている方もいます。りんがるさんという方で、さっきのツイッターの「Lingualina」と似ているので同じ方なのかな?と思いました。
実はサムの息子法は、違憲の問題がありました。
これについて、ツイッターじゃない方でも書かれています。
日本にも「サムの息子」法があれば「酒鬼薔薇聖斗」手記で儲けるなんて許されない|りんがる|note 2015/06/11 16:36
1977年に制定された最初のNY州法ではその範囲が広すぎて、表現の自由を保障した憲法修正第1条に抵触し、最高裁判所で違憲とされ、修正を求められました。その判例とは、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デニーロの主演で1990年公開の『グッドフェローズ』という映画で、ロバート・ピレッジというレポーターがマフィアの暗殺担当で既に起訴されていたヘンリー・ヒル被告に取材費を渡して書いたWiseguyという本が元になっています。本人が書いたものではないのに、それも対象になるのか、印税を渡せないのは不当だと版元のサイモン&シュスターが訴訟を起こしたケースです。
その間にもニューヨーク以外の40州あまりが同じような法律を制定しましたが、似たようなカリフォルニア州の州法も改正を求められ、現在に至ります。これらをまとめて「サムの息子」法と呼んでいます(ここ、私の認識が間違っていました、すみません)。
そして連邦政府レベルでも、1984年にVictims of Crime Act (VOCA、犯罪被害者)法が制定され、全国から本や映画の収益だけでなく、没収された保釈保障金や、差し押さえになった財産からのお金が毎年ナン億円規模で被害者救済の基金として集められ、リクエストに応じて遺族や犯罪被害者のために役立てられています。要するに、自分が犯した罪について発言したいのなら政府機関がそれを止めることはできないが、被害者からの訴えがあれば印税は差し押さえるから、カネ儲けにはならない覚悟でやってね、という風に方向転換したと言えます。出版社としては、著者の印税が取り上げられても出版社の売り上げにまでは法の手は回りませんが、それは犯罪者と被害者双方を搾取していると捉えられるため、かなりの抑止力になっています。
これを読むと結局連邦政府レベルでも同様の趣旨の法律が出ているということですね。表現の自由には反しないと理解されているのでしょう。
●アメリカじゃ『殉愛』は出版できない?
健康食品・サプリメントや疑似科学が大ッ嫌いな私は、説明の中の以下に反応しました。(関連:
やしきたかじん嫁さくら、全然『殉愛』じゃない?百田尚樹の黒歴史になるか?、
近藤誠医師、金のために「病院は金のためなら子宮を奪う」と批判か?など)
アメリカは訴訟社会なので、納豆やらバナナやら食べたら痩せるというインチキなダイエット本を出せば、それでも痩せなかった人や健康を害した人たちから訴えられますし、◯◯でガンが治るなどと書こうものなら、それで家族を失くした人たちが黙ってないし、STAP細胞や殉愛も出版社にとってリスクが高いんで手を出さないようになるわけです。
●違法行為推奨に非難
一方、
はてなブックマークで批判が集まっていたのは以下の部分。
サムの息子法がない日本の現状では、(中略)この場合に限ってはcivil disobedience(引用者注:市民的不服従。良心にもとづき従うことができないと考えた特定の法律や命令に非暴力的手段で公然と違反する行為)の一つとして誰かがこの原稿をハックして、読みたい人がアクセスできる海賊版を公開しちゃうとか、何かしらのアクションにつながるようであれば応援したいと思っています。
hobo_king 自分が不快な「表現の自由」を叩きのめすためなら海賊版を応援とか、ムカつく相手なら私刑バンザイ、違法行為もOKよって意見を堂々と口走っててドン引きです。新聞社襲うテロリストの理屈と基本が変わらん。 2015/06/11
moccos_info 海賊版奨励のくだりで説得力がゼロになる残念さ。二次創作は個人的に認めないから違法コピー自由!って自己基準の人たちと同じレベルになっちゃった 2015/06/11
m-tenshi ヘイトスピーチは許されないが海賊版は「応援したい」? わらわせるんじゃないよ、それで「犯罪被害者を守っている」つもりなのか。ただの出版社憎しのほかに何の意味があるんだ。2015/06/11
市民的不服従(Civil disobedience)の場合、厳密には違法行為で終わりではなく、逮捕までしてもらうそうです。そこらへんはテロとだいぶ違います。
そういうのを抜きにしても、違法行為OK的な思想がテロリストといっしょというのは極論です。例えば、違法動画の削除を消極的にすることで発展したニコニコ動画など、ウェブサービスでは法律違反を積極的に行っている企業の例が多く、彼らを全てテロリストと同等とみなすのは無理があるでしょう。
(ウェブサービスの場合にはテロリストや今回の件と違って法違反の理由に彼らなりの「大義」すらないんですが)
ただ、違法行為を推奨したことは確かにたいへんマズかったです。
●殺人犯して金儲けが定着した社会は望ましいものか?
この海賊版うんぬんの話はとりあえず支持できません。また、アメリカの州法や連邦法がどのように表現の自由との折り合いをつけているのかも、イマイチ理解できませんでした。もっと詳細を知りたいです。
ただ、それらを除くと、興味深い点はあります。犯罪者が犯罪をネタに稼いだ収入を被害者支援に回すことが悪いことだとはあまり思われないでしょう。
(ネットの反応は主張への評価ではなく、主張をした人への評価になって、敵か味方かみたいになりがちです。これは非常に悪い癖ですね)
殺人を犯した上に金儲けまでできるとなると、殺したもん勝ちになってしまいます。もちろん殺人の罪に関しては、現在の法律で定められた分の刑罰はきちんと果たしているわけですが、出所後に大きな収益を得ることは想定されていなかったはずです。
今回のような手記出版が今後定着していくことが望ましいとは思えません。もっと大きな議論になって良いと思います。
【本文中でリンクした投稿】
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