現代の憤死の用例と意味 ネットスラング・自殺・過労死・病死など

　辞書に載っていないものを含めた「憤死」の用例についての投稿。2010/11/11に書いた「現代の憤死」に、2011/7/3に書いた「ネットスラングとしての「憤死」　～ネトウヨ大憤死の巻など～」を加えています。


●最近の「憤死」は「自殺」や「過労死」の場合にも使われる

　何度も書いていてまたかよと思われるかもしれませんが、憤死とは～本当に憤死なんてするの？～でコメントをいただきましたので、「憤死」の話です。

　そのコメントの件を書く前に、まず憤死は自殺も含む？での結果のおさらいです。

　ここでは、おそらく本来は「憤死」に「自殺」は含んでいなかったものの、今現在そう言った用法が増えつつあるのではないかと推測しました。

　また、この「(特に抗議を込めた)自殺」の他、「過労死」も「憤死」と表現されている例がありました。

　それから、最初に書いた憤死とは～本当に憤死なんてするの？～では、心臓病患者において怒りが死につながる可能性があるという研究を紹介しました。


●広がる「憤死」の用例

　以上を踏まえた上で、やっとコメントの件ですが、コメントくださった方は憤死って今もありますか？ | OKWaveを紹介してくださいました。

　実は私も以前読んだことあったのですが、ここにその他の憤死と見られるケースがありましたので、拾っておきます。

　まず、質問者のところ。

歴史には「憤死」と言う言葉が頻繁に出てきます。

http://oshiete1.goo.ne.jp/qa1735841.html
上記はボニファティウス８世についてですが
日本では奈良時代に早良親王が憤死したということになっています。

上記によれば
憤死とは「憤慨のあまり死ぬこと」とあり
脳溢血・心筋梗塞などがあげられています。

　心筋梗塞は心臓病(心疾患)の一種ですが、脳溢血(脳出血)という病名は今まで出していませんでした。

　あと、憤死とは違うのですが、最初の回答から一部を転載。

ゴルフ場では良く起っているようです。カップに入った時が多いようで、感激のあまりに血管がプッツンしちゃうとか・・・。

　この方は突然死＝憤死とされているようですが、感激して死ぬんですから「憤死」とはちょっと言えないと思います。ただ、高齢者が多いと書いてあったとはいえ、人間ってちょっとしたことで死んでしまうんだなと驚きます。

　本題に戻って、憤死の用例探し。二つめの回答は、四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件　Wikipediaを「典型的な憤死じゃないかなあ」としています。

　この事件は、子ども連れの若い女性に泥棒扱いされた無実の68歳の男性が、店員や買い物客ら3人に取り押さえられた後に死亡したという痛ましい事件だそうです。これは何か女性の方が怪しく、ATMコーナーから3～4m離れた店内から、何度かATMの方をうかがっており、突然、男性の肩にぶつかっていき、体を触る様な仕草をしたかと思うと男性の胸ぐらをつかみ、もみ合いとなり、「泥棒」と叫んだようです。

　また、この男性の死因ですが、逮捕・制圧の際の精神的・肉体的苦痛によるストレスと考えられ、「高度のストレスによる高血圧性心不全と不整脈」と発表されたみたいです。「憤死」の話に戻すと、この心不全も心臓病(心疾患)の一種で、やはりこれを「憤死」とみなしている人がいるようです。

　三つめの回答は、一つが憤死は自殺も含む？で書いたものと同じ記事で、「自殺」と「過労死」です。

　もう一つが、中国で「心臓発作」で亡くなった方の遺族が、「人を罵り殺した」として罵った相手に賠償を求めたのが認められたというニュースです。これは記事でもはっきり「憤死」と書いています。(罵られ怒りのあまり憤死、罵倒した者に賠償命令―北京市裁判所　2008年09月04日　Record Chinaより)


●イノシシが電車にはねられて死んでも「憤死」

　ついでなので他の「憤死」が用いられた記事を探すと、またしてもRecord Chinaが出てきました。これは卓球中国元代表の陳佑銘（チェン・ヨウミン）さんが、香港を旅行中に悪質ガイドと言い争いになり、怒りのあまり心臓発作を起こして死亡したという事件だそうです。(低価格ツアーのからくりとは？！悪質ガイドに元卓球名選手が激怒し憤死―香港　2010年06月03日より)

　あとは、哀れ“イノシシ捕物劇”　特急にはねられ憤死　産経新聞　2009/12/15というものも見つけたんですけど、これはなぜ憤死なのかよくわからず。

　事件は、和歌山市で男女３人がイノシシに襲われ重軽傷を負った騒ぎで、イノシシが市内の川に出没し、和歌山北署員らが“捕物劇”を繰り広げた末、和歌山市粟の南海本線の踏切で特急電車にはねられ死んだというものです。

　すったもんだあった末、死んだということで、「憤死」としているんでしょうか？電車に轢かれたのが死因ですし、そもそもイノシシなのですが…。

　ああ、というか、今見ると、これ産経新聞だったのか。産経新聞記者のレベルの問題かもしれません。


●現代の憤死の用例まとめ

　とりあえず、イノシシの件を除いてまとめると、憤死の死亡原因として考えられるのは、

(1)　心臓病(心疾患)。
(2)　脳溢血(脳出血)。
(3)　(比喩的に)自殺。特に抗議を込めたもの。
(4)　(比喩的に)過労死。

　となります。

　憤死ですから当たり前なのですが、とっても悲惨な死に方ばかりです。あまり人を怒らせないように、そして、怒らないように暮らしていきたいものですね。


●既に定着、ネットスラングとしての「憤死」

　この後は、"ネットスラングとしての「憤死」　～ネトウヨ大憤死の巻など～"から。ネットスラングというのも、立派な現代の憤死の用例です。

　この使用法は現代の憤死で、比喩的に自殺、過労死を言うとしたものと同じく、比喩です。

　ただ、自殺、過労死は実際に死に至っているのに対し、今回の使い方は死んですらいません。

　また、この用法はネットスラングと言って良いのではないかと思われ、多くが2chでの使用です。そして、単に「憤死」と検索しても、出てくるのはこの用法が多いので、既にかなり一般的なものだと思われます。

　一般的だと言えそうなのは、通信用語の基礎知識に既に載っていることからも言えます。

ネットスラングでは、実際には死亡はしていないが憤慨している人を罵るために使われている。

朝鮮人憤死
ブサヨ憤死

●バカにしたいときに使われる傾向

　上記にあるように「罵るため」というのは、この使用法では非常に重要な要素です。

　「さぞかし悔しいだろう、ざまあ見ろ」といった感じですし、個人的には「発狂」で言い換えても意味が通じそうな気がしますので、イメージできない方はそういったことも考えてみてください。(もちろん、発狂だとしても本当に発狂するわけではありません)

　では、実際の使用例を見てみましょう。

3DS試遊台はルイージが一番人気でマリオ憤死ｗｗｗ

　「Nintendo E3 Media Presentation」の終了後、試遊できた「Mario Kart」、「STAR FOX64 3D」、「SUPER MARIO」、「Luigi's Mansion 2」、「The Legend of Zelda: Ocarina of Time 3D」の5本のうち、最後まで人だかりが途絶えなかったのは、「Luigi's Mansion 2」だったというニュースに関するスレッドのタイトル。

3DS試遊台はルイージが一番人気でマリオ憤死ｗｗｗ　2ちゃんねるより

　次のものでは、「アニヲタざまぁｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ 」などとも書かれており、両者とも嘲笑した感じがあります。

【アニヲタ憤死】ν速にアニメスレ立てるとプロバ解約されるぞー

　アニメスレを立てたことにより、スレッド乱立による2ちゃんねるに対する迷惑行為とみなされ、IP通信網契約回線の全てを「利用停止」にするという警告が来たので、もうスレッドは立てられないと主張したスレッドのタイトル。


【アニヲタ憤死】ν速にアニメスレ立てるとプロバ解約されるぞー【※これはアニメスレじゃありません】より

●最も有名な例の一つ「ネトウヨ大憤死の巻」

　それから、通信用語の基礎知識の例にあった「ブサヨ憤死」と対立する語じゃないかと思われる、「ネトウヨ憤死」の方が検索ではメジャーなようです。

　当時のグーグルでの「憤死に関連する検索キーワード」はもっぱらこれで、「ネトウヨ大憤死の巻」「ネット右翼 憤死」「ネトウヨ大憤死」「ネトウヨ憤死」とたくさん関連する候補が出てきます。

　これも軽く紹介することにしますが、私も読んだことのあるはてな匿名ダイヤリーでした。

　これは確かにその人のやったことは間違ってるのですが、基本的に「嘲笑」であり、その人のやったことも含めて気分は良くないものですから、リンク先を読むのはあんまりおすすめしません。

ネトウヨ大憤死の巻

　2009年の衆議院選挙の民主党圧勝、自民党大敗でキレて、自民党に入れなかった家族に暴力・暴言をふるった人などの書き込みについての話。

はてな匿名ダイヤリーより

●憤死は最近の用語だと勘違いしている人も…

　ネットスラングについては以上ですが、「憤死」が近現代特有のストレスによる副産物であるととらえて、最近の言葉だと勘違いされている方も今回見つけました。

　この方は用法自体は古典的なもので理解していたようですが、前半で書いたような自殺、過労死の用法が広まれば、余計そういった誤解はさらに増えるかもしれません。


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