2020/01/20:
●嘘だったマリー・アントワネットの「パンがなければ…」
●元ネタはなんと哲学者ジャン・ジャック・ルソーの書籍
●お菓子やケーキというのも実はちょっと違う、実際には…
●マリー・アントワネットはむしろ貧民を心配していた!?
●嘘だったマリー・アントワネットの「パンがなければ…」
2020/01/20:結構有名で今さらかなと思いつつ、マリー・アントワネットの有名な言葉「パンがなければお菓子(ケーキ)を食べればいいじゃない」の話。後述するように他にも間違いがあるのですけど、それを指摘したコメントでもそもそもマリー・アントワネットは言っていないという話は載っていませんでした。意外に知られていないのかもしれません。
まず、
Wikipediaでは、マリー・アントワネットは、フランス革命前に民衆が貧困と食料難に陥った際、「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」と発言したと紹介されることがあると書いています。
これは、夫であるフランス国王ルイ16世の叔母であるヴィクトワール王女の発言とされることもあり、この説であってもマリー・アントワネットの発言というのは嘘になります。ただし、ヴィクトワール王女の発言というのも怪しいみたいですね。とりあえず、マリー・アントワネット自身の言葉ではないことはすでに判明済みです。
●元ネタはなんと哲学者ジャン・ジャック・ルソーの書籍
なぜかと言うと、マリー・アントワネットが言ったと言われ始めるはるか前から、すでに同様の言葉を別の人が言っていたとされているため。最も古い記述で、元ネタとして最有力なのは、1755年生まれのマリー・アントワネットがまだ子供だった当時の1766年ごろ執筆された、あのジャン・ジャック・ルソーの『告白』の第6巻だそうです。
ワインを飲むためにパンを探したが見つけられないルソーが、家臣からの「農民にはパンがありません」との発言に対して「それならブリオッシュを食べればよい」とさる大公夫人が答えたことを思い出したとあるのです。
それから100年近く経ち、アルフォンス・カーが『悪女たち』を1843年に出版したころにはもうこの発言はすでにマリー・アントワネットのものとして流布していました。ただ、ここでは、100年ほど前の1760年出版のある本に「トスカーナ大公国の公爵夫人」のものとして紹介されている、とも書かれています。
ただし、この公爵夫人説もまた嘘。実際はこれは彼女を妬んだほかの貴族たちの作り話で、彼女自身は飢饉の際に子供の宮廷費を削って寄付したり、ほかの貴族達から寄付金を集めたりするなど、国民を大事に思うとても心優しい人物であったとされています。
トスカーナは1760年当時、マリー・アントワネットの父である神聖ローマ皇帝フランツ1世が所有しており、その後もハプスブルク家に受け継がれていました。ここらへんの人は皆恨まれていたようですね。
●お菓子やケーキというのも実はちょっと違う、実際には…
前述の通り、あるところでは、そもそもマリー・アントワネットの発言ではないことをすっ飛ばして、別のところにだけツッコんでいました。すでに元ネタでは「それならブリオッシュを食べればよい」と言ったと書かれているんですけど、マリー・アントワネットの発言とされた言葉も本来はこれ。お菓子やケーキじゃないんですね。
原文を直訳すると「彼らはブリオッシュを食べるように」というもの。このブリオッシュは現代ではパンの一種の扱いであり、お菓子やケーキではありません。ただし、かつては原料は小麦粉・塩・水・イーストだけのフランスパンでなく、バターと卵を使うことからお菓子の一種の扱いをされていたことから変化していった模様です。お菓子ではなくケーキまたはクロワッサンと言ったという変形もあるんだとのこと。
Wikipediaには、
ケーキを食べればいいじゃない - Wikipediaという項目もあります。こちらでは、ブリオッシュは一般的なパンと異なり、バターと卵を使ったぜいたくな食べ物であり、身分の高い女性が庶民の暮らしに疎いことを示す台詞との説明がありました。
なお、ブリオッシュの単価が安い事から代用パンとして表現したと言う解釈もあるとのこと。ただ、これは質の悪く安い小麦を、混ぜ物で食べられるようにすればということで、「貧乏人は麦を食え」の意でやはり悪い解釈。なおかつ、安物というよりむしろ副材料の割合が非常に多い高級な嗜好品と考えた方が妥当だといいます。
●マリー・アントワネットはむしろ貧民を心配していた!?
あと、こちらでは、最初にそれを王妃のものだとしたのは前述のアルフォンス・カールであり、1843年3月の雑誌『雀蜂』に記載されたものだとしていました。
ただ、マリー・アントワネット自身は、寛大な慈善家であり、耳に届く貧しい人々の惨状には心を痛めていたとのこと。先程の「トスカーナ大公国の公爵夫人」の<彼女自身は飢饉の際に子供の宮廷費を削って寄付したり、ほかの貴族達から寄付金を集めたりするなど、国民を大事に思うとても心優しい人物であった>という記述と重なる話です。
あと、大元のネタであるルソーの話すらも実話ではないのではないか、とされていました。ルソーの『告白』というのは、非常に不正確な自伝なんだそうです。書籍の至るところでルソーは「事実」を包み隠すことなく認めるのですが、現代の研究者が検証した限りでは、誤っていたり歪められていたり、そもそも存在しなかったりするとされるとのこと。したがって、これはルソーの考えたアネクドート、つまり、創作小話だと考えられているようです。
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