トヨタ広報担当の麻薬事件の話を少しまとめました。
トヨタ広報担当が麻薬で逮捕、最悪の宣伝に 偽装してオキシコドン輸入か? 2015/6/19
トヨタ役員オキシコドン事件の男性ではなく女性だからこその問題 2015/6/28
●麻薬はおもちゃのネックレスなどの紙箱の底にあり、偽装の疑い
2015/6/19:
トヨタ初の女性役員ジュリー・ハンプ、麻薬で逮捕 オキシコドンとは何?の時点では、悪気なかった可能性も書いておきましたが、報道内容見るとかなり厳しそうですね。
トヨタ自動車のジュリー・ハンプ常務役員は「麻薬を輸入したとは思っていません」と述べ、相変わらず容疑を否認しています。ただ、普通の薬として堂々と送ってきたわけではないようです。
ネックレスに偽装? 麻薬密輸容疑のトヨタ女性役員:朝日新聞デジタル 2015年6月19日11時37分
組織犯罪対策5課によると、ハンプ容疑者が住む東京・六本木のホテル宛てに送られた紙箱の小包(縦7センチ、横10センチ、高さ5センチ)は「ネックレス」と輸入申告していた。中には小箱に入ったおもちゃのペンダントと、ポリ袋に入ったおもちゃのネックレス、それに紙袋が入っていた。麻薬オキシコドンを含む錠剤57錠のうち39錠は、それらの下に敷き詰められた状態だった。他にペンダントの小箱に13錠、紙袋に5錠入っていて、いずれも小包を開けても見えない状態だった。
●ジュリー・ハンプ常務役員は健康で、薬必要ない
トヨタ初の女性役員ジュリー・ハンプ、麻薬で逮捕 オキシコドンとは何?でも書いたように、"オキシコドンは鎮痛作用があり、がん患者の痛みを抑えるためなどに使われ"ており、確かに薬です。
しかし、"警視庁は、ハンプ容疑者がオキシコドンの服用が必要な健康状態ではなかったとみている"ようです。

●トヨタの広報担当役員が麻薬密輸で逮捕、最悪の宣伝に
皮肉なのは、ハンプさんはよりによってトヨタの広報担当者、しかも、広報部門のトップだったということです。たとえ後に無実は判明したとしても、トヨタのイメージを悪くしたことは間違いありません。有罪となった場合は、なおさらですね。最悪の宣伝になりました。
また、広報としては逮捕前日に「本格デビュー」したばかりということで、今のところほとんど麻薬の件しか宣伝していない状態です。役員として唯一の大仕事が麻薬密輸による逮捕となるかもしれません。
トヨタ初女性役員のハンプ広報担当が麻薬密輸で逮捕 - 社会 : 日刊スポーツ 2015年6月19日9時11分
ハンプ容疑者はトヨタ米国法人の副社長から4月1日付でトヨタ初の女性役員に登用されたばかり。担当する広報部門は企業の「顔」だけに、トヨタ社内には衝撃が走った。逮捕前日の17日には愛知県豊田市の本社で、初の外国人副社長となったディディエ・ルロワ氏の記者会見に出席し、広報担当役員として「本格デビュー」していた。
◆ジュリー・ハンプ(JULIE HAMP)1959年10月3日、米ニューヨーク州生まれ。ミシガン州のフェリス・ステート大学卒業。米ゼネラル・モーターズ(GM)や米飲料大手ペプシコを経て、2012年にトヨタの米国法人に入社。現地法人で副社長を務め、今年4月1日付で日本のトヨタでは初の女性役員に就任。新設の「チーフコミュニケーションオフィサー」として、広報部門を担当。家族は夫と娘2人。
●脇が甘かったトヨタ
非常に皮肉なことになっていますので、"トヨタ初の女性役員麻薬密輸で逮捕、「真のグローバル」一夜で落城か"と題していた記事もあります。
【新聞ウォッチ】トヨタ初の女性役員麻薬密輸で逮捕、「真のグローバル」一夜で落城か | レスポンス 2015年06月19日(金) 09時45分《福田俊之》
第一報のニュースが流れたのは昨日の夕刻だが、16日の株主総会では新役員体制がスタート。副社長に昇格したフランス人のディディェ・ルロワ氏とともに、初の女性外国人役員として「真のグローバル企業をめざす」(ルロワ副社長)トヨタの“目玉人事”でもあった。
翌17日には、ルロワ副社長のメディアとのデビュー懇談会に同席し、冒頭で副社長を紹介するスピーチをするなど、本格的な広報活動を開始したばかりだった。(中略)
ハンプさんは逮捕後も「麻薬を輸入したとは思っていません」と容疑を否認しているそうだが、日本には「郷に入っては郷に従え」とのことわざもある。理由はともあれ本人もトヨタも「脇が甘かった」ことは否定できない。真のグローバル企業への道のりがさらに遠のく恐れもある。
ハンプ常務と立ち話もしたという記事の作者は、"ハンプさんとのオフィシャルな懇談会を来週にも予定しているが、まさか“獄中”での懇談とはいかないだろう"とも書いていました。まあ、予定を変更するしかないでしょうね。
トヨタの広報戦略の方もガタガタに崩れてしまって、こちらも大きな軌道修正が必要そうです。
●麻薬逮捕の役員、女性ではなく男性だったから違ったかも…の意味
2015/6/28;「トヨタ役員逮捕事件 男性だったら違っていたか?」というタイトルの記事を見て、どういう意味だろう?と悩みました。「男性ではなく女性だったから叩かれた」という意味、「女性ではなく男性だから叩かれた」という意味、どちらであってもしっくり来ません。
気になって読んでみると、以下のような内容でした。
トヨタ役員逮捕事件 男性だったら違っていたか?:日経ビジネスオンライン 鶴野 充茂 2015年6月26日
トヨタ初の女性役員が麻薬密輸容疑で逮捕された事件。経営者や広報の責任者などに考えを聞いていると、「トヨタの対応は、女性でなければ違っていたのではないか」という声が少なからず聞こえてきます。
(中略)さまざまな経営者や広報担当役員/部長/課長およびその経験者から、繰り返し似た声を聞きました。
「あれは女性だから(対応が)難しいですよね」
「男性だったら、対応は違ったんじゃないですかね」
(中略)ハンプ氏の場合、女性であるがゆえに象徴的な目玉人事になっている。それゆえに一企業の役員個人の問題以上の注目を集めてしまった。デビュー直後で失敗したとも判断しにくいし、そう見られたくもない。だから、難しいですね、という考え方のようです。
「女性だからこそ叩かれた」というよりは「女性だからこそ注目された」というもの。また、女性活躍のスローガンの元に、苦労して適材を見つけて抜擢しただけに、その抜擢人事を失敗だと見られたくないといった意味もあるみたいですね。
ただ、トヨタの場合は豊田章男社長の独裁化への懸念が一部で出ていました。私は今回の問題は事前に検知が難しかったと思いますし、ジュリー・ハンプ常務役員の過去の実績も抜擢するに十分だったと思うのですが、きちんと検討されずに登用された可能性もあると思います。
●ジュリー・ハンプ常務役員は完全にアウト
ところで、作者の鶴野充茂さんは今回の件で、トヨタのジュリー・ハンプ常務役員はアウトだと言っていました。
このことについて「アウトかどうかはあなたが決めることじゃない。司法の決めることだ」と言っている人がいましたけど、もちろん法的なアウト・セーフを鶴野さんは言っているのではありません。会社役員、それも広報トップとしての考え方から見てアウトだという意味です。
また、そのアウトの理由も納得できるものです。本文ではあっさりとした書き方でしたが、わかりやすくするために分解して一つ一つ見て行きましょう。
●オキシコドンはアメリカで全く問題ない薬だったか?
「オキシコドンはアメリカで全く問題のない薬だったか?」という問への答えは、「No」です。
オキシコドンはヘロインに近いアヘン系の麻薬 アメリカでは違法に売られて問題にで書いたように、社会的な問題になっていました。
●オキシコドンはアメリカだと自由に手に入れられる一般的な薬だったか?
「オキシコドンはアメリカだと自由に手に入れられる一般的な薬だったか?」、これも「No」です。
同じく
オキシコドンはヘロインに近いアヘン系の麻薬 アメリカでは違法に売られて問題にでやっているように、自由に手に入れられる薬ではありません。医師に処方してもらう必要があります。
医師が必要と判断しないのに手に入れようと思えば、オキシコドンが本当に必要な他人に代わりに入手してもらうか、まるっきり違法なルートから手に入れる必要があります。
もうこの時点で、アメリカで問題ある方法で薬を入手していることがわかり、倫理的にアウトになっています。
●日本は麻薬に対して寛容な国か?
上記のようにアメリカで問題視されていた薬であっても、国によっては全然問題ない、気にしないという可能性もあります。広報担当の役員として極めて軽率なことには変わりないものの、そうであれば「まさか咎められようとは!」となることも考えれます。
しかし、皆さんご存知の通り、「日本は麻薬に対して寛容な国か?」への答えは全力で「No」です。
オキシコドン輸入のトヨタ役員「ルールを守ったら楽しいこと逃す」でアメリカメディアが書いていたように、むしろ日本は麻薬に厳しい国として知られています。
このことをジュリー・ハンプ常務役員が知らなかったとすれば、勉強不足ですし、日本への関心も薄かったのかなとも思います。役員としての意識も、外国へ赴任する意識としても低い感じです。ここだけ見ていると、全く役員としての素質がないように見えてしまいます。
●ジュリー・ハンプ常務役員は役員としての能力に欠ける
以上のように、アメリカですら問題視されて自由に入手できない薬が、ドラッグに厳しい日本において全く問題視されずに持ち込むことがきできると考えていたというのは、極めて不自然なことです。
よっぽど能力が足りない人なのか、問題視されることをわかっていてこっそり輸入しようとしたのか、どちらかなのだろうなと思います。前者だった場合、役員としての資質がないことは明らかですけど、後者としても完全にダメです。特に会社のイメージに関わる広報担当の役員に遵法精神がないってのは終わっています。
●広報としては最悪な人選
なお、元記事ではこういう書き方でした。
私は、違法性とは別の観点で、グローバル企業の広報トップとしては、法を犯す意図がなかったとしても、ハンプ氏はアウトだという考えを持ちそれを書きました。
広報という仕事の性質上、リーガルリスク(引用者注:法的リスク、法律絡みのリスク)や必要な手続きに意識が及ばないことは考えられず、しかも、トヨタの社長が「当事者意識が強い」と評する優秀な人物であることを考えると、米国でさえ中毒が社会問題化されているという薬物の扱いについて、手続きが必要だと知らなかったと考える方が無理があります。
手続きが面倒だったとするなら、コンプライアンス面でアウト。密輸の意図有りでも、中毒でも、もちろんアウトです。
従って、法を犯す意識が仮になかったと言えたとしても、リスク意識の欠如という観点から、いずれにしても、グローバル企業の広報責任者としては完全にアウトだということです。
うーん、こうやって一つ一つ見ていくと、やっぱりトヨタの資質の見極め方にも疑問が残ってしまうかもしれません。
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