沖縄に関する誤解についての話。一つは沖縄経済は米軍基地に依存しているというもの。これは数字で見ることができるので、明らかに嘘だとわかります。
また、沖縄はすべての基地返還を求めるわけではないというのも書かれていました。これは基地依存の誤解とも関係していて、むしろ返還された方が経済発展に繋がる場所に基地ができているという問題があるようです。
お金がほしいわけでもないというのもあるのですが、これはちょっと特殊であり、政府の出すお金が効果的に使われていないというもの。なので、効果的に使えるお金ならほしいのでしょうが、とりあえず、この効果のなさにより、お金で脅迫する威力が弱くなっているようです。(2015/6/23)
2017/12/22追記:
沖縄は実は自由に使えるお金が多くない
沖縄県は基地依存…学校の教科書でもデマが
●沖縄県が制定している記念日「慰霊の日」とは?
2015/6/23:本当は昨日の夜投稿しておくと、日中に見れてちょうど良かったですね。6月23日は沖縄の慰霊の日でした。
慰霊の日 - Wikipedia 最終更新 2014年10月31日 (金) 03:04
慰霊の日(いれいのひ)は、沖縄県が制定している記念日で、日付は6月23日である。
概要
1945年6月23日に沖縄戦の組織的戦闘が終結したことにちなんで、琉球政府及び沖縄県が定めた記念日である。復帰前は、住民の祝祭日に関する立法(1961年立法第85号)に基づく公休日とされた。
1972年の本土復帰後は日本の法律が適用となり、慰霊の日は休日としての法的根拠を失ったが、1991年に沖縄県の自治体が休日条例で慰霊の日を休日と定めたことによって再び正式な休日となった。そのため、国の機関以外の役所・学校等は休みになる。(中略)
毎年、この日には糸満市摩文仁の平和祈念公園で沖縄全戦没者追悼式が行なわれる。
(中略)
1962年から、この日には沖縄県が主催する沖縄全戦没者慰霊祭が行なわれ、沖縄戦犠牲者の遺族やその子孫などが集まり、式典中の正午には黙祷が捧げられる。
●沖縄に関する3つの誤解
昨日書けば良かったというのは、
沖縄が求めているのはカネではない!:日経ビジネスオンライン(吉川 由紀枝 2015年6月17日)という記事について。
サブタイトルは「沖縄に関する3つの誤解」とあります。記事の元になっている小論文は、作者の吉川由紀枝さんが米戦略国際問題研究所(CSIS)という米シンクタンクに寄稿したものですから、誤解というのもアメリカ人向けです。
ただ、日本人についても同じく誤解しているところがあると思われます。実は私も誤解していたのですが、記事で挙げられていたのが以下の3つの誤解です。
(1)沖縄経済は基地に大きく依存している。
(2)沖縄は小出し作戦を用いている。普天間飛行場を返還したら、次の基地の返還を求め、最終的にはすべての基地返還を求める。
(3)沖縄はカネが欲しいだけ。
●沖縄経済は米軍基地に大きく依存しているわけではない
"沖縄県の資料によれば、県民総所得において基地経済が占める割合は2006年時点で5.4%"でした。したがって、"間違っていることが明らか"と作者は言います。
5%が一気になくなると打撃は結構でかいと思います。ただ、この場合、「大きく依存しているわけではない」ですからね。私のサイトでのタイトルは字数の関係で抜いちゃいましたが、「"大きく"依存」でしたら確かに否定できるでしょう。
ちなみにアメリカ国内では、基地を縮小したり閉鎖したりすることに反対する運動があるそうです。こちらはまさに"縮小や閉鎖は地元から大きな雇用先を奪うことを意味する"ためであり、アメリカ人にありがちな誤解なのかもしれません。
2017/12/22追記:と書いていたものの、「大きく」がつかなくても5%で依存ってのはなかったですね。訂正します。いきなり無くなると困るものですが、5%で「依存」というのは大げさすぎました。
例えば、建設関連が日本の2015年のGDPに占める割合は6.2%。これで日本が建設に依存していると説明したら詐欺でしょう。最も割合が大きい商業ですら12.8%。その他、IT関連、不動産、医療福祉、対事業所サービスなどが建設より比率が高く、建設に依存とは到底言えません。日本は一つの産業に依存していないと説明されるべきです。
なお、日本の中心のように言われている自動車が含まれるであろう輸送機械は、わずか2.2%程度でした。他の産業にも間接的に影響があるとは思われるものの、意外に大したことありません。
(
総務省|平成29年版 情報通信白書|国内総生産(GDP)より)
●沖縄はすべての基地返還を求めるわけではない
2015/6/23:「(2)沖縄は小出し作戦を用いている。普天間飛行場を返還したら、次の基地の返還を求め、最終的にはすべての基地返還を求める」も経済との繋がりがあるようです。額の多寡が書いていませんけど、むしろ米軍基地がない方が経済活性化すると見込んでいるのでしょうか?
その経済面を含めて、小出しにすべての基地返還を求めているわけではないとする3つの根拠が以下でした。
1.沖縄が求めているのは、嘉手納飛行場より南に位置する海兵隊基地の返還。経済効果が大きいため。
2.海兵隊の縮小にも、地元感情を和らげる効果がある。単純に人数が多いという事情もあるが、海兵隊は他の軍種の兵が起こすものよりずっと多いため。
3.沖縄県庁と宜野湾市が求めているのは普天間飛行場の「閉鎖」・嘉手納飛行場を抱える市・町が求めているのは「騒音削減」で異なる。嘉手納飛行場が在沖米軍の施設の中で最重要基地であることは沖縄も認識しているため、「閉鎖」は求めていない。
●沖縄にカネをちらつかせても効果がない理由
最後の「(3)沖縄はカネが欲しいだけ」について。これはネット保守が沖縄を口汚く罵るときにも使われます。
こちらの否定する理由を見ると、その投入されるカネが効果的でないというのがあるみたいですね。
沖縄北部振興事業などで多額の資金が投じられたにもかかわらず、名護市の1人当たりの所得は1997年以降、沖縄全体の平均値以下であり続けている。すなわち、多額の資金が投じられていても、その経済効果が名護市民全体に行き渡っているわけではないのだから、投票時にカネの出し手の意向を汲むインセンティブは生まれにくい。
●現在の沖縄経済は米軍基地依存度は?
さて、以上が作者の主張でしたが、確かめられるところは確かめておいた方が良いです。
確かめやすいのは「県民総所得において基地経済が占める割合は2006年時点で5.4%」ですね。論文執筆時が古い話なのか、2006年とデータが昔なのも気になります。
これについては以下のような沖縄県のサイトがありました。
(よくある質問)米軍基地と沖縄経済について/沖縄県 更新日:2015年2月5日
(問13)沖縄県の経済は米軍基地経済に大きく依存しているのではないですか。
○基地経済への依存度は、昭和47年の復帰直後の15.5%から平成23年度には4.9%と大幅に低下しています。
○米軍基地の返還が進展すれば、効果的な跡地利用による経済発展により、基地経済への依存度はさらに低下するものと考えています。
依存度の低下はゆっくりになったようですけど、現在もまだ低下中みたいです。沖縄県で他の産業が発展するにつれて、さらに低下していくことも考えられます。
沖縄県が米軍基地にかつて依存していた理由も、"米国施政権下の戦後復興や高度経済成長下における我が国の経済発展の過程から切り離されていたことなどもあり、総じて第二次産業が振るわず、基地依存の消費型経済の構造が形成され"たためと見ています。つまり、そもそも発展を妨げられたので米軍基地依存になったという主張でしょう。
なお、基地経済への依存度は、定義によって異なってくると思われます。そのため、政治的な理由で過小に見積もっている可能性はあります。ただ、その場合であっても、依存度は以前より縮小しているという点は変わらないでしょう。
また、先程も登場したように、むしろ米軍基地があるせいで経済活性化を妨げられている、返還してもらえばかえって経済発展するという主張も書かれていますね。
3つの誤解に関する反論は、沖縄県の公式見解とも近そうです。
(作者の吉川 由紀枝さんは2012年-2014年は沖縄県知事公室地域安全政策課にて主任研究員でした。論文が書かれた時期が不明でしたが、当時書かれたのであれば公式見解といっしょでも不思議ないです)
●沖縄は実は自由に使えるお金が多くない
2017/12/22追記:この投稿の後、
沖縄振興予算は多いのか? むしろ沖縄県が貰うお金は少なすぎかもというのも書いています。これは先の「投入されるカネが効果的でない」とも関係していて、政府が出しているお金は政府が使いたいところに使われているだけで、自由に使えるお金は沖縄の場合特に多くないんだそうです。これは数字で出ているのでごまかしようがありません。
また、
百田尚樹の捏造・デマ 普天間基地は田んぼ・米軍基地軍用地料の金額というのも投稿しています。こちらの場合も、もしかしたら経済効果とも関連するかもしれません。街の中心部をどかんと米軍に占領されたことが、昔の地図を見るとわかります。
なお、百田尚樹さんでは、
百田尚樹氏が平成天皇を連呼して無知を晒す 普通は今上天皇や天皇陛下などで不敬という批判もという話も最近書きました。知識人気取ってますけど、実際には無知な人なんです。
●沖縄県は基地依存…学校の教科書でもデマが
一方、今日追記したのは、この投稿のメインである基地依存の誤解について。2016年3月に公表された帝国書院の高校用教科書では、「県内の経済が基地に依存している度合いはきわめて高い」という記述があったそうな。教科書作っている人もかなり適当なんですね。
前述の通り、これはデマ。3月18日に県が公表した県民経済計算によると、基地関連収入の割合は2013年度現在5・1%。1957年に51・5%といった時期があり、これですと確かに依存と言えましたが、大昔の話です。
検定結果公表後、事実に反するとの批判を受けて帝国書院は「基地に依存している度合いはきわめて高い」という記述を削除し、「県民総所得に占めるこれらの収入の割合は約5%である」と追記する訂正を申請し、文科省は4月11日付で申請を承認されたそうです。教科書がデマ振りまいちゃいけませんね。
(
<沖縄基地の虚実10>県民総所得の5% 基地収入にまだ誤解 - 琉球新報 2016年5月22日 20:02より)
【本文中でリンクした投稿】
■
沖縄振興予算は多いのか? むしろ沖縄県が貰うお金は少なすぎかも ■
百田尚樹の捏造・デマ 普天間基地は田んぼ・米軍基地軍用地料の金額 ■
百田尚樹氏が平成天皇を連呼して無知を晒す 普通は今上天皇や天皇陛下などで不敬という批判も【関連投稿】
■
アメリカ軍兵士の性犯罪、在日米軍だけ甘い処分 不起訴の確率高い ■
沖縄経済特区は日本で唯一法人課税所得35%控除 なぜ知られていない? ■
日米地位協定の問題点 米兵の凶悪犯罪の5割・強姦の8割が不逮捕 ■
マイナンバーの問題点・弱点 マイナンバーでわかるお金と把握できないお金 ■
植民地が少ない国ほど経済的に成功?ドイツと日本の繁栄の理由 ■
政治・政策・政党・政治家についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|