沖縄振興予算と言ってしまうと、沖縄県だけ特別にたくさんお金をもらっているように思えてくるのですが、中身を見ると、実は他の都道府県でもらっているのと同じもの。呼び名と予算決定のスケジュールなどが違うだけといった感じでした。国から貰うお金より国にあげるお金が多かった時期もあったみたいです。
また、このお金の中身についても、沖縄県は県の方で自由に使えるお金というのがあまり多くないという不利な点があります。多いのは、国がやりたいことに使われるお金の方なのです。
「むしろ沖縄県が貰うお金は少なすぎかも」というのはこの観点の他、本土復帰するまで支援を受けられなかったという事情についての言及がありました。(2015/6/28)
2017/12/22追記:沖縄に関するデマ訂正の教科書、振興予算に関してはまだ問題あり
●沖縄県は実は意外にお金をもらっていない?
2015/6/28:
沖縄経済は米軍基地に依存していないし、お金がほしいわけでもないという沖縄県のお金関係の話をやりました。すると、そのすぐ後に百田尚樹さんによる自民党勉強会での沖縄はカネもらいすぎ!という批判がありました。
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百田尚樹の捏造・デマ 普天間基地は田んぼ・米軍基地軍用地料の金額 ■
百田尚樹が自民党勉強会で「沖縄の新聞つぶせ」 安倍首相も擁護できず この関係でもう少し書くことに。まず、「お金がほしいわけでもない」の方でも確認のために使った沖縄県のQ&Aページから。
(よくある質問)沖縄振興予算について/沖縄県 更新日:2015年4月30日
(問8)沖縄に対しては、国庫支出金や地方交付税により他都道府県と比較して過度に大きな支援がなされているのではないですか。
○国からの財政移転(国庫支出金+地方交付税交付金)は、全国17位となっています。
○人口一人当たりの国からの財政移転(国庫支出金+地方交付税交付金)は全国6位となっています。
(答)
平成24年度普通会計決算ベースで見てみると、沖縄県の国庫支出金は全国11位、地方交付税交付金も含めた国からの財政移転では全国17位となっています。
また、人口一人当たりで比較すると、国庫支出金と地方交付税の合計額は全国6位で全国15位まではほぼ同規模になっており、復帰後一度も、全国一位にはなっていません。
●沖縄振興予算は国庫支出金なの?地方交付税なの?
上記の国庫支出金と地方交付税交付金ですが、簡単に言うと、国庫支出金は国から使い道を指定されたお金、地方交付税交付金は自由に使えるお金といった感じです。
国庫支出金とは - 時事用語 Weblio辞書
時事用語のABC時事用語のABC
国庫支出金(こくこししゅつきん)(national treasury disbursement)
国庫支出金は、国の委託業務に対し、地方に配分される補助金だ。
たとえば、義務教育などの仕事を地方にしてもらうかわり、国がその費用の半分を負担する。「本来、義務教育は国の仕事なので、その費用を地方に支払う」という意味がある。
国庫支出金の用途は、国から厳しく制限される。たとえば学校用であれば、地方はこまかく申請をして学校用の補助金をもらう。そして、地方は学校以外のことにその資金を使うことはできない。ほかにも、病院用なら、かならず病院に使わないといけないし、道路用なら、かならず道路に使われる。
最初と同じページによると、沖縄振興予算は以下のような内訳だそうです。
平成26年度沖縄振興予算の総額 3,460億円
(沖縄振興一括交付金 1,759億円 国直轄事業を中心とした公共事業関係費 1,382億円)
国直轄事業を中心とした公共事業関係費は自由なお金じゃなさそうです。では、沖縄振興一括交付金は?と見ると、国庫支出金だとあります。
ただし、「沖縄の振興に資する、沖縄の特殊性に基因する事業を対象とする使途の自由度の高い国庫支出金」とありました。この説明だけ見ると国庫支出金だけどある程度自由度があるのかな?と思いますが、一方で、"使途の定めのない一般財源としての「地方交付税交付金」とは異なります"ともはっきり書いていました。
●人口一人あたりの国庫支出金なら全国1位
国庫支出金と地方交付税の合計額の話ですが、様々な条件で見ていくと沖縄県が1位になっているところもあります。
沖縄県平成24年度決算ベース(都道府県・市町村分合計額 岩手、宮城、福島を除く)
国庫支出金 3,155億円(全国11位)→ 人口一人あたり 224千円(全国1位)
地方交付税 3,678億円(全国15位)→ 人口一人あたり 261千円(全国16位)
国庫支出金+地方交付税 6,833億円(全国17位)→ 人口一人あたり 485千円(全国6位)
(PDF)<参考>本県と他府県の国からの財政移転の比較 こうなると、やっぱり1位じゃねーか!と言う人が出てきそうですね。ただ、前述の国庫支出金と地方交付税の性格の違いを考えると、自由度の高い地方交付税の金額が多くない沖縄県が特別に優遇されているようには見えませんでした。
●本土復帰するまで支援を受けられなかった沖縄県
沖縄タイムスの以下の記事も沖縄が特別扱いではないということを強調していました。
[Q&A]優遇は誤解 沖縄振興予算 | 沖縄タイムス+プラス 2015年1月13日 10:35
Q 政府の予算編成の大詰めの時期に、新聞やニュースなどで大きく取り上げられる「沖縄振興予算」ってなに?
A 沖縄の本土復帰を機に、沖縄が抱える特殊事情の課題解消を目的に、国の責任で支援することを定めた沖縄振興特別措置法(沖振法)を根拠に振興策を実施する予算のことだよ。国が各省庁を通して他県などに支出している国庫支出金と国の直轄事業費のための資金がほとんどだ。沖縄だけが「別枠」でもらっていると誤解している人も多いようだね。
以下も同様の主張。
この振興予算の10兆円は沖縄だけが特別に受けていると誤解されがちだ。振興予算の中身は他県も受け取っている国庫支出金が主。人口や経済規模が同じ県なら近い額を国から受けているはずだ。
だから「沖縄だけが甘やかされている」という批判もおかしい。
また、"もっと言えば、本土復帰するまでの27年間、ほとんど他県並みに国から資金を受けていない"ともしていました。
●国から貰うお金より国にあげるお金が多かった時期もあった?
2つ前の「国庫支出金+地方交付税」での計算については、合計で計算するのがおかしいという指摘がありました。ただ、国から出るお金ということで、2ついっしょに見ている沖縄県の見方の方が妥当に思えます。
また、1つのうちよりどちらを重視するか?と言うと、沖縄県が多い国庫支出金よりも、沖縄県が多くない地方交付税交付金の方をむしろ見た方が良いのでは?という気さえします。前述のように、地方交付税交付金の方が自由度の高いお金のためです。
それから、今回調べていて気になったのが、国から沖縄県に行くお金の方が沖縄県から国へ行くお金より少なかった時期があるという話です。よくわからなかったんですが、沖縄県が特別に多くもらっているどころか、国に奪われているという正反対の話なんでしょうか?
沖縄振興予算の名称と内容の見直しを求めることに関する質問主意書 平成二十七年二月十二日提出 提出者 仲里利信
一 (中略)沖縄からの国税収納額と国からの財政移転額を比べてみると、二〇〇二年度から二〇一一年度までの沖縄振興計画期間中は国税収納額が財政移転額を上回るという、いわゆる沖縄から持ち出しの状態が続いていたとの識者の指摘があることを考え併せると、国からの財政移転は相当不十分なものと言わざるを得ない。
ちなみに回答はこちら。えらいあっさりです。
一及び二について
お尋ねについて、政府としては、沖縄振興予算に関し、引き続き、沖縄振興を推進するために必要な額を内閣府において計上していく考えである。
衆議院議員仲里利信君提出沖縄振興予算の名称と内容の見直しを求めることに関する質問に対する答弁書
この「沖縄からの国税収納額と国からの財政移転額」が気になって検索。もう一つ出てきた!と思ったら、同じ仲里利信議員でした。
知事発言検証 | 仲里利信|公約を守る!信頼の「オール沖縄」
沖縄振興開発事業費の総額を予算額と国税収納額で見比べる、いわゆる国からもらった額と国に納めた額との比較で見比べると、1972年 度から2001年 度までの第1次から第3次までの沖縄振興開発計画では6兆7,271億 円を国からもらい、4兆8,285億 円を国に納めた結果、差し引き1兆8,986億 円が沖縄にもたらされたことになるが、2002年 度から2011年 度までの沖縄振興計画期間中(つまり稲嶺恵一知事の2期 目と仲井眞知事の1期 目から2期 目全て)は、国からもらうのと納めるのが逆転するのである。つまり、国から2兆4,910億 円もらってはいるが、国に2兆6,080億 円納めており、差し引き1,170億 円も沖縄県から吸い上げられているのである。
これは見る時期によって異なるということになるわけでしょうが、やはり言うほど沖縄県は優遇されていない感じですし、そもそもむしろ国からのお金が少なすぎるのでは?とすら思わせます。
以上のように、沖縄県が厚遇されていないという方向性に働く話ばかりでしたね。他にも別の反論があるのかもしれませんけど、今ざっと見た感じだと「甘やかされている沖縄」という批判は、完全に的外れなように見えます。
●沖縄に関するデマ訂正の教科書、振興予算に関してはまだ問題あり
2017/12/22追記:
沖縄経済は米軍基地に依存していないし、お金がほしいわけでもないでは、2016年の帝国書院の教科書が「県内の経済が基地に依存している度合いはきわめて高い」というデマを書いて訂正したという話を追記しています。
これは訂正されたので良いのですが、政府が基地と引き換えに「ばくだいな振興資金」を支出しているとの記述を削除し、米軍施設が沖縄に集中していることなどを理由に「毎年約3千億円の振興資金を沖縄県に支出している」との記述を追加したことについては、まだ問題があると指摘されていました。
(
<沖縄基地の虚実10>県民総所得の5% 基地収入にまだ誤解 - 琉球新報 2016年5月22日 20:02より)
最初の投稿で出てきたように、振興予算というのは、沖縄だけが特別に受けているものというのは誤解。中身を見ると、他の都道府県と変わらず、国庫支出金が主です。
記事では、沖縄関係予算を「資金」と表現していて、教科書を読んだ高校生を誤った解釈に誘導する内容になっていると、懸念していました。ネットでは沖縄を叩くことがなぜか愛国者の証のようになっており、沖縄への偏見を深めてしまいそうで心配です。
【本文中でリンクした投稿】
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沖縄経済は米軍基地に依存していないし、お金がほしいわけでもない ■
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