国立競技場の話をまとめ。<作って終わりじゃない…毎年巨額の赤字が出る新国立競技場>、<本当に売れる?700万円のVIPルームや年間シートで稼ぐ試算>、<新国立競技場、維持費莫大で毎年数十億円の赤字が出るおそれ>などをまとめています。
●作って終わりじゃない…毎年巨額の赤字が出る新国立競技場
2015/6/29: 最近大きいニュース目白押しで影が薄くなっていますが、新国立競技場の問題で「えっ、そうなの?それ見過ごせなくない?」という話が…。見過ごせない話だと思ったのが、新国立競技場の維持費の問題。莫大な維持費がかかるため、完成後も毎年巨額の赤字が出るというのです。
で、これ本当なの?と検索すると、かなりいろいろな数字が出ていました。試算によって異なるみたいですね。以下によると、「収益予想が38億円」という異常に景気の良い数字も出ていたそうです。これでしたら、赤字ではなく黒字です。
新国立競技場建設問題に関して|三谷英弘オフィシャルブログ「前衆議院議員 三谷英弘's EYE」Powered by Ameba 2015年06月17日 10時31分34秒
<建設後の維持費が35億円を見込んでいるのに対し、収益予想が38億円で黒字なんて答えて頂いていますが、果たして維持費が35億円でとどまるのか?>
ただ、これは例によって怪しい数字。上ではそもそも維持費ですら35億円じゃ済まないのでは?と疑われていました。とりあえず、言い分通りの数字をまとめると以下の通りになるとのこと。赤字だというと問題になるので、維持費と収入を調整して黒字になる数字を出しただけかもしれません。
維持費 年間35億円
収入 年間38億円
黒字 年間3億円
●新国立競技場が巨人の新本拠地に?
前述のように試算値はバラバラですので、以下のような別の予想もありました。この数字は日刊ゲンダイの
日刊ゲンダイ|巨人が新国立「本拠地移転」計画 五輪後の赤字解消に仰天浮上(2015年6月26日)という記事から。タイトルにあるように、野球の巨人の話が出てきています。
維持費 年間35~40億円
収入 年間15~20億円(逆算)
赤字 年間20億円
<五輪後、新国立を運営するのは日本スポーツ振興センター(JSC)だが、その雲行きはかなり怪しい。年間35億~40億円かかる維持費は、サッカーの日本代表戦やコンサートなどで賄う予定だが、見通しは甘く、20億円もの赤字が出るといわれている。想定外の総工費に加え、赤字が続けば国民の怒りが爆発するだろう>
この記事自体は、新国立競技場を巨人の新本拠地にするという読売グループのスポーツ報知の記事を紹介したものでした。"収益性の高いプロ野球開催で黒字化を狙う新国立サイドと、新本拠地が欲しかった巨人"の思惑が一致すると見られています。(2023/06/19追記:ただ、その後の報道によると実現不可能な話の模様。読売は右派ですので、安倍政権擁護だったのかもしれません)
●記録更新となる年間32億円の赤字予想が登場
日刊ゲンダイでは維持費の年間およそ35億円の方は文句つけられていなかったんですが、こっちもかなり甘い可能性があるみたいですね。毎日新聞の紹介した例だと、以下のような悲惨なことになります。
維持費 年間70億円
収入 年間38億円
赤字 年間32億円
社説:新国立競技場 納得できぬ見切り発車 - 毎日新聞 毎日新聞 2015年06月27日 02時30分
<新国立規模の場合、50年間、毎年70億円程度かかるという試算がある。JSCの年間事業収支見込みによると収入は約38億円で、大幅な赤字が見込まれる。>
●本当に売れる?700万円のVIPルームや年間シートで稼ぐ試算
あと、収入の年間38億円の見通しの甘さについてもう少し突っ込まれた記事が以下。政権よりとされることが多い日本経済新聞の
新国立競技場騒動に見る「64年五輪」の呪縛(編集委員 北川和徳 2015/6/5 6:30)という記事です。
<昨年5月時点の計画通りに建設されることを前提としたものだが、国立競技場を所有・運営する文部科学省の外郭団体、日本スポーツ振興センター(JSC)が発表した資料では、完成後の新国立は維持管理費など支出を年間35億1000万円、収益事業の売り上げからコストを引いた収入を38億4000万円として、毎年3億3000万円の黒字を見込んでいる。ただ、その試算の内訳をみると苦笑いしたくなる数字も少なくない。
コンサートを年12回開催して計6億円、サッカーやラグビーの国際試合など大規模スポーツイベント36回で約3億6000万円の売り上げを見込むのはともかく、一般の運動会のようなイベントにも1日46万円から59万円で44日も貸し出すことになっている。国の施設として誰でも使用できる公共性を求められるということか。これは旧国立の運営実績をそのまま引き継いでいるようだ。
一方で、700万円のVIP室(54室)や10万円から15万円の年間シート(約7000席)を企業や富裕層向けに販売するプレミアム会員事業で20億円以上の売り上げを期待する。こちらはまるで民間がやるビジネスだ。だが、国立だから特定のチームの本拠地になるわけにもいかず、集客力の高いSクラスのイベントはサッカー日本代表の試合など年間8日と設定。完成直後はともかく、そんなVIP室や年間シートが完売するだろうか>
●新国立競技場、維持費莫大で毎年数十億円の赤字が出るおそれ
JSCの試算は昨年のものでしたが、巨人の本拠地に!という記事が出てきましたし、特定のチームの本拠地となる可能性を考えている人もいるようです。これで見通しが立ったのかは正直よくわかりませんが、最悪のケースを考えてみましょう。まず、日本スポーツ振興センターの楽観的とも思える試算から見ます。
・日本スポーツ振興センターの試算
維持費 年間35億円
収入 年間38億円
黒字 年間3億円
一方、その他の予想で最悪のものだけ取り上げて計算した場合は以下の通り。これは日刊ゲンダイの適当そうな数字を使っていますし、悪い方を見過ぎたかな?と思いますが、そうじゃないものでも20~30億円あたりの赤字ですからね。黒字予想はかなり虫がよすぎるのではないかと警戒します。
・最悪の予想
維持費 年間70億円
収入 年間15億円
赤字 年間55億円
悪い見方を採用した方が良いというのは、公的な施設では大抵見通しが甘いため。昔書いた
東京オリンピックの建築は、北京の失敗に学べるか 新国立競技場の不安は、北京五輪の施設はその後うまく利用されていないというものでした。日本はあまり中国の失敗に学べていないようです。
なお、今回の話は飽くまで維持費だけの問題ですからね。恐ろしいことに、維持費以外の新国立競技場の総工費、さらにその他の費用でも怪しいところがあるみたいです。一回で書こうと思ってまとめきれなかったので、こちらにについては後日また書きます。 →
新国立競技場の総工費がまだ上がる理由とその他に数百億円いる理由【本文中でリンクした投稿】
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