日本企業は新興国が苦手な場合が多いのですが、ユニ・チャームは中国やインドネシアで成功している企業です。その成功の秘訣として、欧米企業よりも徹底して現地に合わせた…という話がありました。
2023/09/06:
一部見直し
●日本企業らしくない…中国とインドネシアで強いユニ・チャーム
2015/7/1:今回読んだのは、「新興国売上比率でP&G超え」と強調した
【ユニ・チャーム】新興国売上比率でP&G超え 和製グローバルが突き進む茨の道|数字で会社を読む|ダイヤモンド・オンライン( 週刊ダイヤモンド編集部 2015年5月1日)というタイトルの記事です。
ユニ・チャームの新興国売上高は非公表ですが、ダイヤモンドでは45.6%と試算。私は新興国売上比率だけ見ても仕方ないんじゃ?とも思わなくもありません。とはいえ、日本企業が苦手な新興国の比率が高いというのが、ユニ・チャームのおもしろさだと思います。
"新興国における目下の稼ぎ頭は、売上高の3割近くを占める中国(売上比率18%)とインドネシア(同11%)"です。中国の話はやってませんが、インドネシアに関してはうちでも、
インドネシアで庶民の味方になった日本企業ユニ・チャーム アジアシェア首位というのでやりました。
両国とももともと人口が多いところなので売上が大きいのでしょうが、ユニ・チャームはシェアも高いです。なので、本当に成功しているんだな…と感じさせるところがあります。
<ユニ・チャームのシェアは、中国のフェミニンケアで17%と地元企業に次ぐ2位で、P&G(3位)を上回る。一方、インドネシアでは、ベビーケア、フェミニンケア共に、P&Gや花王といった内外のライバルを抑え、トップシェアを誇る。>
この中国とインドネシアがなぜ大事か?と言うと、人口の多さだけでなく潜在消費者の多さです。以下のように紙おむつを使っている人がまだ少ないんですね。これは他の新興国にも言えるでしょうし、紙おむつ以外にも言えるでしょう。将来伸びる市場だから…というわりと単純な話です。
<日本を100%とした場合の紙おむつの使用率>
中国 21%
インドネシア 41%
●ユニ・チャームの強みはローカライズ 欧米企業と徹底ぶりが違う
おもしろい!と思ったのが、「P&Gなど欧米企業は、アジア向けの商品開発は行っても、個別の国に絞った商品開発までは行わない」というユニ・チャーム幹部の話。そもそも私がユニ・チャームが気に入ったのは、ローカライズする企業のためです。欧米企業と比べてローカライズの徹底ぶりが違うんですね。
ローカライズとは - はてなキーワード<ある国で作られた製品やサービスを、別の国や地域で販売する際、その国の言語・法令・慣習に合うように製品を修正・改訂すること。localize。>
以前紹介したユニ・チャームの話もそういう現地に合わせるという話でした。今回も以下のようなエピソード。本当、こういうの大好きですわ。
<強さの秘密は、個別のお国柄に合わせた商品開発だ。インドネシアに投入した生理用品の場合、経血を洗い落としてから生理用品を捨てるという同国女性の習慣に合わせ、水洗い可能な強度と、汚れの落ちやすさを兼ね備えた商品を真っ先に開発。>
記事のタイトルは新興国売上高の強調の他に、「茨の道」という言葉も使っていました。理由はいくつかありますが、得意だった中国の中国のベビーケア市場でシェアを落としたというのもあります。原因は「都市部での商品のプレミアム化が想像を超えていた」(ユニ・チャーム幹部)ことなのですけど、これも現地の事情に合わせるというユニ・チャームの本領を発揮して乗り切ってくれるのでは?と期待しています。
●海外でもユニ・チャーム式を徹底という説明も
2017/11/09:ローカライズが好きな私は、ユニ・チャームのローカライズを褒めていたのですが、別記事を読んでいたら一見全く反対のような話が出てきて戸惑いました。
上記の徹底的に現地に合わせるという話のベースは、ユニ・チャーム幹部でしたので外部の人が言っているわけではありません。では、今回が外部なのか?というとそうではなく、高原豪久ユニ・チャーム社長の話がベースです。以下のように説明されていました。
"日本でうまくいったやり方を海外に移植するのもユニ・チャーム流だ。成長市場への参入では、地場の既存企業を買収するケースもある。ただ、活用するのはブランドと流通資産のみ。商品や生産、マーケティングはすべてユニ・チャームのやり方に刷新する。「各国の市場は違いより共通する部分が大きく、共通部分に最適化したやり方で進めたほうが成功しやすい」という考えからだ"
(
売上高4倍を実現した「ユニ・チャーム」2代目社長の勝ちパターン | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン) 2017/11/08 17:00 Forbes JAPAN 編集部 ,より)
買収企業の商品ややり方をそのまま使わないというところが主なので、一応ローカライズとは矛盾しませんかね? ただ、強調する方向が異なっていますので、困惑しました。
●「経営の現地化をもっとすべきだった」と反省
ユニ・チャーム式を現地でもやるということに関しては、共有すべき価値観や行動原則を「ユニ・チャームウェイ」として一冊のバインダーにまとめ、全社員に携行させているといった話もありました。ユニ・チャームウェイは、現場や経営層に散在する暗黙知を形式知化して、さらに組織知として浸透させるツールとして活用されているとのことです。
また、ローカライズに関するものとしては、「経営の現地化が遅れていました」という反省の弁もありました。結局、ローカライズを重視する部分もあるようです。
「今回、伸び悩んだのは日本人社長と現地ローカル幹部社員のコミュニケーションに課題がある国でした。海外市場における商品の本当の評価は、その国の空気を吸い、物を食して育った人の肌感覚でないとわからない部分があります。現地の優秀なマーケッターやリサーチャーは育ってきましたが、経営者はこれからで、まだ追いついていなかった」
●「小さく生んで、大きく育てる」も重視
この記事の前半では、成長市場に対しては、「小さく生んで、大きく育てる」という話も出ていました。これも私が好むやり方。社運を賭けた大型プロジェクトや大型買収…みたいな話よりも、小さく失敗したり、目立たない企業買収を成功に繋げたりといった話の方が好みです。
後半にもこの「小さく生んで、大きく育てる」に関わる話がありました。今年は年1回の社長賞の選考基準を変更。今まで重視していた、すでに実行に移され、売り上げでインパクトを残したプロジェクトではなく、まだ売り上げがほとんど立っていないものを選びました。
今回選ばれたのは、高齢犬用のベッド。犬も寝たきりになると褥瘡(床ずれ)ができて死んでいくので、ペットとの共生社会を謳うなら、もっと長生きできるようにケアをするべきだという、メッセージ性を評価したようです。
この商品が実際に売れて大きな市場になるかどうかはわからないのですけど、このようにまだ価値がわからない新しい小さな提案をどんどんしていくということが大事なのです。
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