2015/7/1:
「朝型勤務」を国が推進
朝型勤務を「ゆう活」と命名
「朝型勤務」に反対する理由
「朝型勤務」のメリット
死亡事故や心筋梗塞が増加するサマータイム制度のデメリット
サマータイム制度のメリットは?
永続的な「朝型勤務」でもデメリット
成人の3割は夜型
「朝型勤務」の本当のメリットは企業の経費削減?
●「朝型勤務」を国が推進
2015/7/1:"最近、「朝型勤務」が話題だ"とのこと。全然知りませんでした。(順番が逆になりましたが、
朝型勤務・日本版サマータイムは大迷惑 産経新聞が安倍首相批判で下書き済みと言っていた投稿です)
私は聞いたことないよと思ったものの、記事によると、"安倍首相が閣僚懇談会で朝型勤務の推進を直接指示した"ということで、話題性はともかく国が推進することは間違いないようです。
"言い出しっぺの政府から範を垂れるということか、まずは今夏7〜8月に国家公務員の始業時間を原則1~2時間前倒しすることを決めた"ともありました。
(
第24回 朝型勤務がダメな理由 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト 三島和夫
この記事自体はうちのブログ投稿がリンクされていた
5月14日のtwitter : 5号館のつぶやきで見つけたもの)
●朝型勤務を「ゆう活」と命名
基本的にこの投稿は5月に書いたものです。ただ、以下だけは7月1日の追加。「ゆう活」なんて名づけているみたいですね。
時事ドットコム:朝型勤務「ゆう活」スタート=国家公務員22万人対象-政府
国家公務員を対象に実施する夏の朝型勤務「ゆう活」が1日、スタートした。全国で約22万人の職員が8月末までの2カ月間、勤務時間を1~2時間前倒しする。今夏が初めての試みで、長時間労働を抑制し、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現を目指す。
安倍晋三首相は1日朝、首相官邸で記者団の取材に応じ、「この『ゆう活』を日本の長時間労働の慣行を変えるきっかけにしたい。私も有効に活用したい」と語った。
(中略)通常よりも約2時間早い午前7時半に出勤したという内閣官房内閣人事局の土屋絢子係長は「少し眠い」と目をこすりつつ、「これまでの働き方を見直す良い機会。夕方以降の時間で英語の勉強をするつもり」と話した。(2015/07/01-09:40)
●「朝型勤務」に反対する理由
最初の記事を読んで東日本大震災のあった年、節電絡みでサマータイム制実施を叫ぶ政治家がいたことを思い出しました。しかし、電力が逼迫するピークタイムに減らすのが大事なのであって、全体に前倒しするサマータイムは電力不足対策としては的外れでしたので首を傾げました。今回はそういう目的ではなさそうです。
(2018/08/09:確か石原慎太郎さんが言っていたはず。検索してみると出てきませんけど、都庁では節電のためにサマータイムを導入するとしていました)
では、今回の朝型勤務推進なら賛成か?と言うと、そうではありません。やはり私は良くないと思います。というのも、
寝る子は育つ 子どもの成績は何より睡眠時間が大事・肥満も減少において、始業時間を遅らせた方が高校生の成績が上がったという報告があったためです。
夜の習慣はそうそう変わらないでしょうから、始業時間を遅らせたことは睡眠時間の増加に寄与したと思われます。今回のものは逆方向ですので、むしろ国民の健康を悪化させて、仕事の効率を落とす方向に働くのではないか?というのが、私の反対理由です。
●「朝型勤務」のメリット
最初の記事でも同じく朝型勤務に否定的だというのが、「朝型勤務がダメな理由」というタイトルでわかります。しかし、記事ではまず行政や企業側の考える朝型勤務のメリットを挙げています。
・残業を減らせる
・生産性が向上する
・社員のライフワークバランスが改善する
ただ、"「減るのは会社での残業だろ!」とか余計な突っ込みは止めておこう"と、記事では同時に軽く書いてありました。おそらく会社での残業が減るだけで、持ち帰り型の数字に現れない残業が増えるのでは?ということでしょうね。
あと、「生産性が向上する」「社員のライフワークバランスが改善する」は、私の挙げたデメリットと全く正反対のものに見えます。
●死亡事故や心筋梗塞が増加するサマータイム制度のデメリット
「朝型勤務がダメな理由」というタイトルだけだとわかりませんでしたが、この記事は睡眠関係の連載だそうです。私と同様に政府の考えとは逆に睡眠にとってマイナスと考えているのかもしれません。
また、記事ではこれまた私と同様にサマータイム制について触れていました。そして、このサマータイムの研究によって、驚くべきことがわかっているのだそうです。
朝型勤務と似た制度としてサマータイムがある。ご存じの読者も多いと思うが、サマータイムでは3月の第2日曜に時計を1時間進め(夏時間)、11月の第1日曜に標準時刻に戻す。今回公務員を対象に行う朝型勤務は期間は2カ月と短いが、変動幅は1時間以上と欧米のサマータイムよりも大きい。実はこれ、事故や体調不良を引き起こす最悪パターンである。
というのも、米国、フランス、ドイツ、カナダなどサマータイムをすでに導入している欧米各国の研究者の調査によれば、時刻の切り替え時期(特に夏時間への移行時期)に死亡事故や心筋梗塞など心身の不調が顕著に増加することが明らかになっているからである。勤務時間をコロコロ入れ替えるのが一番よくない。しかも、1時間の変更でも人々の安全や健康に多大な影響があるのに2時間も前倒ししたら……。
これは私の予想した単純な睡眠時間の低下ではなく、時刻の切り替え時期がマズいということですね。そういえば過去にブログで紹介した記事でも、夜勤それ自体よりも日勤と夜勤を繰り返すことが、睡眠への悪影響が強いと書かれていた記憶があります。従来の説明とも一致するものです。
●サマータイム制度のメリットは?
一方、サマータイムのメリットは?と言うと、「残念ながら、期待された省エネ効果はさほどでもない」とのこと。先の調査に関わったフランスの議員団は、このような人為的で不自然な制度は止めるべきであるという勧告までしているそうです。
筆者の三島和夫さんはサマータイム自体が「時代遅れの制度」であるとしていました。しかも、今回の「朝型勤務」は改悪版サマータイムで、「科学的な視点から見ればその導入には理がない」と一刀両断です。
福田内閣時代にサマータイムの導入が検討されたときにも科学的な見地からの反論が出てとりやめになったそうですが、政治家はなぜか学問的に根拠がないことを一生懸命やりますね。
●永続的な「朝型勤務」でもデメリット
では、永続的な「朝型勤務」には短所はなく長所ばかりなのでしょうか? 三島和夫さんはやはり否定的です。
早朝に太陽光を浴びることで、体内時計時刻の光位相反応(朝型シフト効果)を得て、「体内時計をリセット」することができます。これは「朝型勤務」でも大丈夫だという論拠になっているようです。
ところが、"光位相反応は基本的に1日しか持続"しません。"7割以上の人では体内時計周期が24時間よりも長いため、早起きの努力を怠れば寝起きの時間は自然に夜型にずれ込"みます。早朝に起きるのに慣れたと思っても一日でも休めばまたズレてやり直し。「夏時間への移行」のような変化を繰り返すことになりそうです。
また、休日も含めて毎日早起きを続けても、朝型の睡眠習慣が安定化するまでに時間がかかるとのこと。夜型が強い人でなくても3週間程度、夜型が強い人は当然もっと長く…です。そして、慣れるまでの間は睡眠不足が続くという危険なことになります。
さらに"若い世代で23時に寝つくのは体内時計の特徴や夜間照明の影響などでかなりハードルが高い"ともありました。これは私が最初に想定していた問題ですね。朝早くしても結局夜眠れる習慣ができないために、睡眠不足を増やし、結果的に健康を悪化させます。
●成人の3割は夜型
夜型の話が出ていましたが、「成人の3割は夜型」とのこと。そして、"夜型の人ほど光による朝型シフト効果が出にくく、また休日に逆戻りしやすい"とのこと。もともと向いていないわけで、「朝型勤務」に慣れないだけでなく、メリットも受けづらい人がかなり多くいるようです。
ちなみに国立精神・神経医療研究センターで実施した1170名での調査結果によると、以下のような分布です。
超夜型 8.4%
夜型 22.7%
中間型 41.0%
朝型 22.0%
超朝型 5.9%
●「朝型勤務」の本当のメリットは企業の経費削減?
こんなメリットがあるんじゃん!というのが、最後のところで出てきました。
・夜の残業が減ると、会社の電力消費量を抑えることができる。ある大手企業では朝型勤務に夜間残業と同じ割増賃金を乗せるというインセンティブをつけても総人件費を減らすこともできた。
これは企業にとっては願ってもない話です。ただ、その分社員の健康を犠牲にしているわけですから、メリットだと言えるのは飽くまで「企業にとっては」という話。
また、"会社の近くのスタバが残業持ち帰りの社員で満席になったなどという話もある"そうなので、持ち帰り残業が増えるだけという可能性もあります。三島和夫さんが最初にちらっと書いていた「減るのは会社での残業だろ!」の可能性ですね。
うーん、科学的な根拠がないだけでなく、誰のための制度なのか?というところまで考えると、怪しい朝型勤務の推進ですね。
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