北朝鮮拉致日本人遺骨問題、捏造したのは日本側？ネイチャー指摘

　私は今頃知って驚いたのですが、当時は話題になったんですかね？ 新聞社もそういう認識で書いていないので、あまり知られてないのではないかと思います。


●北朝鮮が拉致被害者の遺骨の偽造を画策中？

　北朝鮮拉致日本人の遺骨に関しては、最近産経新聞がこういう話を書いていました。

拉致再調査１年　「遺骨偽造」研究か　物証工作の過去、日本側警戒　産経ニュース / 2015年7月4日 8時7分

　拉致被害者らの再調査から１年となり、報告期限ともされる７月４日を前に、被害者家族の緊張感は高まっていた。

　その背景には、拉致被害者の支援組織「救う会」が入手した情報がある。北朝鮮が最近、高温で焼いてＤＮＡ型鑑定が困難になった骨に、別人の体液などを混入し、別人の遺骨に偽造するという実験を進めているというのだ。

　実験が成功しているとすれば、北朝鮮は“拉致被害者の遺骨”の偽造が可能だということになる。

●北朝鮮の偽装工作を見破った日本

　これはタイトルに入っている「物証工作の過去」でわかるように、以前も北朝鮮は偽装工作をしたという認識をベースにした批判です。

水害などで流失したと主張して「遺骨はない」という不可解な説明のほか、被害者のものとする遺骨を提示し、日本政府に偽物と見破られたこともあった。(中略)

　北朝鮮はこれまで、日朝首脳会談で「死亡した」と説明した８人について、主張の裏付けとなる“物証”の提示や説明を繰り返してきた。

(中略)松木薫さん（６２）＝同（２６）＝に関しては、北朝鮮側が「本人のものと思われる骨」を出してきた。その人骨は２度にわたって焼かれ、さらにハンマーのようなもので粉々に砕かれていた。ＤＮＡ型鑑定は困難とされたが、残っていたあごの骨の一部を鑑定した結果、別人のものと判明した。

　さらに、２年後の日朝実務者協議では、松木さんのものとする「遺骨」に加え、横田めぐみさんのものとする「遺骨」も提示。「火葬した」という説明だったが、通常の火葬時よりかなり高温の１２００度で焼かれ、あごの骨の破片もなかった。１４年の偽遺骨から、“教訓”を得たことは明白だった。

　ＤＮＡ型の検出を困難にし、鑑定不能とすることで、被害者が「死亡した」と印象づけようとする北朝鮮の意図がうかがえたが、日本側は約１カ月をかけてＤＮＡ型鑑定を進め、別人の骨であることを確認した。

●北朝鮮拉致日本人遺骨問題でネイチャーが指摘

　私も概ね上記のような認識でした。ただ、実は日本側のDNA鑑定も非科学的で怪しいものだという指摘が過去にあったと知り、驚きました。

　以下のWikipediaは、独自研究の可能性や要出典がついているところがありますので、出典の有無もそのまま引用します。

北朝鮮による日本人拉致問題 - Wikipedia　最終更新 2015年7月5日 (日) 12:53

　遺骨問題の真偽

DNA鑑定の依頼を受けた帝京大学医学部講師、吉井富夫の鑑定[69]により、日本政府は「遺骨」とされた骨は別人のものと判断した。但しこの鑑定では本人のDNAが検出されなかったということだけであって、これを以って別人だと断定出来るのかという声[要出典]があがった（同時に鑑定を行なった科学警察研究所では「判定不能」）。

69^ ネイチャー2005年2月号に記載有

　まず、上記の部分だけで、科学警察研究所の鑑定では「判定不能」だったということがここでわかります。また、この後出てきますが、判定できたという吉井富夫講師は別に火葬遺骨鑑定のスペシャリストだったわけではないようなのです。

　Wikipediaによれば、問題を指摘したのは、あの科学誌のネイチャーです。Wikipediaでは、「特に2005年2月2日付けの『ネイチャー』誌で指摘されたことで問題が表面化した[70]」としていました。

70^ DNA is burning issue as Japan and Korea clash over kidnaps（natuer）、邦訳ダイジェスト

　ただ、前述の産経新聞の記事はこの指摘について全く考慮していません。産経新聞のことですから、わかってはいるものの自己の主張を有利にするために敢えて無視している…という可能性もありますが、あまり知られていないのかもと感じました。


●遺骨問題で捏造したのはむしろ日本側？　ネイチャーが批判

　さて、ネイチャーの指摘の中身についてです。以下で出てくるコンタミネーションというのは、同じくネイチャー絡みのSTAP細胞問題でES細胞が検出されたあれと同じです。
(STAP細胞の場合は意図的な混入も疑われています。こちらの場合は最初で出た北朝鮮が捏造を画策ってのと同じ話になります)

まず「遺骨は火葬されたものであり、DNAは残っていないはず」というものである。DNAは熱に弱いために、火葬された遺骨からDNAが検出される事自体がおかしいのではという指摘がある。 また、コンタミネーション（試料汚染）の可能性も懸念される。帝京大学が行なったDNA鑑定はネステッドPCRという方式をとっているが、この方式は非常に敏感であり、コンタミネーションに由来しない論拠を示す事が非常に重要である[71]。 さらに、吉井はそれまで火葬遺骨鑑定が未経験で当該鑑定が初めてであったことも指摘されている。日本政府はこれらに対し、火葬した骨の一部が熱に十分さらされなかったためDNAが残存していたと説明した。遺骨は鑑定のために使い果たし、再試は困難であるとされている。

71^ http://www.bio.uio.no/bot/ascomycetes/PCR.troubleshooting.html#anchor654323

　ネイチャーはその後さらに批判を加えています。むしろ捏造しているのは日本政府の方だといった論調です。

『ネイチャー』はこの問題、特に時の官房長官・細田博之が「記事は一般論を述べており今回のケースでそうであると特定していない」と発言した事について、3月17日号に論説『政治と真実の対決』を掲載して、「日本の政治家たちは、どんなに不愉快でも科学的に信頼できないことを正視しなければならない。彼らは北朝鮮との闘いにおいて、科学的整合性を犠牲にすべきではない」と反論した[72]。更に別人判定を下した帝京大講師がその後に警視庁科学捜査研究所の法医科長となりインタビューが事実上不可能になった事について、『転職は日本の拉致調査を妨害する』（4月7日号）[73]で日本政府を批判している。

72^ "Politics versus reality"、邦訳ダイジェスト
73^ "Job switch stymies Japans abduction probe"

●北朝鮮の対応は怪しいが…

　もちろんこの件で北朝鮮が誠実な対応をしているとは私も考えていません。

元々朝鮮半島には火葬の習慣はなく、火葬されていること自体が北朝鮮の捏造を裏付けるものである、とする主張もある[要出典]。前述の通り火葬に際しては、日本のように専用の施設を用いたものではなく、開放された空間で行われた、いわゆる「野焼き」に近いものだと日本国内では推定されているが、北朝鮮政府は専用の施設を使って火葬したと説明している。また、北朝鮮側の説明によれば、いったんは土葬された遺体を、離婚した夫が掘り返して火葬し、その遺骨を（現在の妻と住む）自宅に保管していたとされる。

　ただ、政治的に都合が良いからと言って、不確かなものをさも事実であるかのような主張をして良いということにはなりません。それを許してしまった場合は、日本に慰安婦問題や南京事件の大げさな主張を批判する資格もなくなります。(これらの問題では日本側にも韓国・中国と同様に極端な主張をしている人がもともといますが)


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