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新聞はいらない? 新聞不要論とネットで偏った意見が目立つ理由


 新聞不要論を言う人が、実はよく新聞由来の情報について話をしているということがあり、本当にいらないの?と思います。ただ、それ以外にもアメリカで実際に起きている、新聞がなくなったことの弊害の例がありました。

 また、新聞のデメリットであり、ネットのメリットである個人最適化が、ネットで偏った主張が育ちやすい理由にもなっているという話も書いています。(2015/7/8)

2018/01/11追記;好きな情報だけしか見ないことで先鋭化 


●「新聞はいらない」と言って新聞記事を引用する人たち

2015/7/8:ネットでは新聞不要論をよく見かけます。「新聞はいらない」は2種類あって、「新聞を取らなくても良い」と「新聞そのものがいらない・新聞社がなくていい」というものがあります。

 私自身、新聞はとっていませんので前者はあれですが、後者ははっきり賛同できないと言えます。

 たとえば、新聞不要論の多い2ちゃんねるなんかがそうですが、新聞メディア系の情報を大量に引用しています。ネットニュースも既存の通信社・新聞社の情報にタダ乗りしている場合が多く、新聞の取材力がなくなるとかなり情報は減っていくと思われます。


●権力の監視機関としての新聞の役割

 そういう方向性ではなくて、新聞がなくなるとそんな問題があるのか!と意外でおもしろかったのが、以下の話です。
紙の新聞はやっぱりなくなる?:日経ビジネスオンライン 池上 彰 2015年5月11日

 今、アメリカでは地方新聞が経営難を理由に次々に廃刊していて、まったく新聞がない地域が広がっています。日本の地方紙ほど規模が大きくなく、部数が3万~4万部程度の、地域紙に近い地方紙です。

 その結果、何が起きているかというと、自治体や地方議会を舞台とした汚職の蔓延です。

 地域に根差した新聞社が潰れ、その地域に新聞がなくなったことで、議会を傍聴する記者がいなくなりました。すると、ある地方の議員たちは、自分たちの給料を何倍にも勝手に上げてしまったのです。

 そんな議員たちの横暴を取材し、報道する人がいれば、大問題になったでしょう。ところが報道する人がいませんから、議員の賃上げは、地元の住民が知らない間に進められました。新聞記者による監視の目がなくなったことで、こうした汚職まがいの行いが蔓延してしまったそうなのです。

 あるいは、新聞がなくなった地域では、市長選挙や市議会議員選挙の投票率がどんどん落ちてきています。新聞がなくなってしまったので、そもそも地方選挙があるというニュースを誰も報じず、結果、地域の誰も知らない、という状況が生まれています。

 新聞がなくてもテレビがあるじゃないか、と思われるかもしれませんが、アメリカの場合、テレビ局はたいがい州単位で存在しているので、小さな町の選挙のことまではちゃんと報じません。つまり、地方紙がなくなったことで、地方においては民主主義の危機とも呼べるような状態が起きているのです。

●アメリカの特殊事情で日本の場合はちょっと違うかも

 ただ、アメリカ独特の事情もあると思われます。世界の新聞発行部数ランキング 読売新聞など日本が上位占拠でやったように、日本は海外ではほとんど例がない新聞大国であり、発行部数がたいへん多いです。

 この発行部数の多さはいろいろと理由がありますが、その一つが全国津々浦々で読まれている全国紙の存在の大きさです。アメリカの場合は日本と異なり、全国紙と言える新聞自体少ない上に部数も少ないので、大新聞が地方の出来事まで網羅していないのだと思われます。そういった場合、地方に根ざした新聞社が潰れれば、即情報がなくなるというのはわかります。

 "新聞がなくなってはじめて、新聞は民主主義社会を支えるインフラの役割を担っていたのではないかということに、アメリカの地方の人たちが気付き始めています"は、日本の場合、ちょっと事情が変わってくる可能性はあります。

 ただ、この記事の感想見ると、理由なくただ否定しているものが多かったですね。せめて何か理由つけないと、単に新聞を否定したいだけになってしまいます。感情的で非論理的です。

 あと、これは地方紙がなくなったら…に限った話で、本当に全国紙までなくなってしまった場合は、やはり同じようなことが起きるかもしれません。廃刊にまでいたらなくても、地方の記者から先に減らす…ということが起きるでしょう。もしかしたら既に起きているかもしれません。


●新聞の良さ・ネットニュースの良さとは?

 この記事は東工大の授業みたいですね。学生が「紙の新聞だからこそ得られるもの、逆に、ウェブでニュースを読むからこそ得られるものがあれば教えて下さい」という「いい質問」がありました。

 池上彰さんが考える新聞の良さは「一覧性」です。
 ぱっと1面を見た瞬間にこういう記事があるんだな、あるいは、アラブの春の4年間を総括しているんだなとか、把握できます。

 私の家には毎朝8紙が届きますが、朝はそれを見るのに20分ほどしか時間をかけていません。1面から順番にぱらぱらとめくって見出しを見るだけです。そうやって、昨日から今日にかけて何が起きているのか、全体をつかみます。もし、8紙を隅から隅まで読んでいたら一日ずっと家にいなくてはならなくなるでしょう。だから、朝は8紙をざっと見る。紙の新聞だからできることです。

 ウェブはやはり速報性です。
 一方で、ウェブには最新の情報が載っています。紙に載る前の段階の情報が出ていることもあります。ただし、特ダネはすぐには出ません。各社とも、ウェブで速報してしまうとそれがその社に分かってしまうからです。特ダネがウェブに掲載されるとしたら、朝刊の締め切りを過ぎた、午前2時過ぎごろです。

 ああ、ネット掲載のニュースで真夜中の更新があるのはそういうわけなんですか…。


●ネットで偏った主張が育ちやすい理由

 私が思うネットニュースの長所と短所は、必要なところを必要なだけ取り出せるというところです。

 大したことないと思いますが、紙の辞書の優位性として「知りたい語以外も目に入り勉強になる」と言う人がいます。同じように紙の新聞の場合は、興味ない項目も目に入りやすいです。前述の「一覧性」がそういうものですね。

 これは逆に不要な情報が入りやすいとも言えます。ウェブの場合は一番見たい!という需要の高い情報だけを目立つところに置くことができます。検索でニュースを読む場合は、なおさらその傾向が強まります。他人などの紹介で見るとしても、もともと興味ある人のサイトを見ているため同様で、ある程度絞り込みができています。

 やり方によっては、ニュースサイトでも一人ひとりの好みに合わせた表示が可能でしょう。こうやって個人のニーズに合わせるというのはニュースに限らず、ウェブサービス全般の大きな特徴です。このことはサービス利用者が望んでいるからでもあります。

 ただ、この強みが同時に弱点にもなります。あるときの選挙結果について、「私の周りは同じ考えの人ばかり。検索結果でもそういう情報しか出てこない。だから不正選挙だ!」と主張して笑われてる人がいました。ウェブサービスはその人が好むものだけを絞り込める分、自分の嫌いな情報が見えなくってしまい、視野が狭くなりがちです。

 私ならこのような話をするな…と思いながら読んでいましたが、普通に池上彰さんもおっしゃっていました。
 ただ、ウェブでニュースを探すときに気を付けなければいけないのは、自分が知りたいことだけを知る可能性が大いにあるということです。

 例えば、福島では原発の事故がありました。どれだけ危険なのかと不安になった人は、「原発事故」「危険」というキーワードで検索するでしょう。すると、いかに原発事故が危険かという情報が山のように出てきます。危険だと思っていた人はそれを見て、やっぱり危険なんだと確信します。(中略)

 ネットには、知りたいことだけを知るという危険性がある。ネットでニュースを読む際には、こういうことを自覚しておいた方がいいと思います。

 ネットで偏狭な意見が目立ってしまうというのは、このように考えると必然かもしれませんね。

(「ネットで偏った主張が育ちやすい理由」を、3つのバイアスで説明してみたものもあります → 正常性バイアスと多数派同調バイアスの危険な合わせ技と具体例)


●好きな情報だけしか見ないことで先鋭化

2018/01/11追記;トランプにフェイスブック社員が協力、毎日6万の個人広告を作成していたでは、フェイスブックがトランプ陣営に社員を常駐させて、個人にピタリと合う広告を1日6万件も作っていたという話でした。

 記事では、その他に、こちらの投稿で書いていた「ネットで偏った主張が育ちやすい理由」と同じものについても出ていました。バイラルメディア、アップワージーのCEO、イーライ・パリサーさんも、フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF)という書籍で、同じような警鐘を鳴らしいてたんだそうです。

 フェイスブックの場合、ユーザーの興味や嗜好に応じてAIがニュースフィードをカスタマイズしており、ユーザーに関心のある情報を流してしまいます。これが加速すると、ニュースフィードが狭い世界で閉じてしまい、異なる意見や価値観に触れる機会がなくなっていくという指摘でした。
(FBはトランプとロシアにどう使われたか?:日経ビジネスオンライン 篠原 匡 2017年11月8日より)



 記事では、新聞に関しても最初の投稿と同じようなことを書いていました。右から左まで色があるものの、基本的に紙の新聞は網羅的で、ざっと読めば前日に起きたことが関心のないことも含めてとりあえず把握することが可能であったと指摘。ところが、ネットの場合、自分が必要な情報を選択的に取りに行くか、フィードに流れるおすすめ記事を見るのが普通となってしまっています。

 これ自体は時代の流れで仕方ないだろうとも書いていたものの、異なる価値観や考え方を理解しなければ討論も合意形成もできないことには言及。そして、それぞれがそれぞれの好きな情報に浸かっていることで、それぞれが急進化しているのが現状だとすれば、米国の民主主義は長期的に弱体化していく、としていました。

 この最後の部分でわかるように、飽くまでアメリカの話ではあったものの、日本の場合にもある程度同じようなことが言えるんじゃないかと思われます。


【本文中でリンクした投稿】
  ■トランプにフェイスブック社員が協力、毎日6万の個人広告を作成していた
  ■世界の新聞発行部数ランキング 読売新聞など日本が上位占拠
  ■正常性バイアスと多数派同調バイアスの危険な合わせ技と具体例

【関連投稿】
  ■マスコミの捏造・偏向報道・情報操作とマスコミを操る広告代理店
  ■広告で見る新聞読者の特徴比較 日経新聞,朝日新聞,産経新聞,読売新聞,毎日新聞など
  ■フジサンケイ扶桑社がハーバードビジネスレビューのパクリサイト?
  ■主なニュースサイトの一覧とその運営会社・グループの系列
  ■戦争取材でフリージャーナリストが戦地に行く意味はあるのか?
  ■社会・時事問題・マスコミについての投稿まとめ

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