オキシコドンの件はもういいかなと思っていたんですが、後述する理由でもう1本書いておきます。
●悪質性は低いと判断し、トヨタ役員不起訴(起訴猶予)
不起訴(起訴猶予)の見通しの段階ですが、読売新聞では、ジュリー・ハンプ前常務役員が不起訴となる理由を3つ挙げていました。
(
トヨタ前役員、不起訴へ…「悪質性低い」と判断 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 2015年07月07日 14時30分)
〈1〉ハンプ前役員に違法性の認識はあったが、程度が低い
〈2〉入手先や使途に悪質性がうかがえない
〈3〉逮捕後にトヨタの常務役員を辞任し、社会的制裁を受けている
ただ、オキシコドンは「日本で規制されている薬だと知っていた」と供述している、「ネックレス」と申告されて一見してわからないよう箱の底などに敷き詰められていた、といった話も記事では同時に書いているので奇妙な印象を受けました。
日本で規制されている薬だと知らなかったし、堂々と「オキシコドン」だと申告して持ち込んでいたので悪質性は低い…だったら、たいへんよく理解できる話だったんですけどね。
とはいえ、起訴までしないって選択はよくある話ではあります。それで私も最初は新たに書くつもりがありませんでした。
●別のオキシコドン事件のアメリカ人男性は有罪
しかし、「他の例からすると不公平では?」といった感じの投稿も見つけてしまったのです。
オキシコドン輸入事件、不起訴の判断はほんとうに公平なのか 弁護士小森榮の薬物問題ノート/ウェブリブログ
つい先ごろ、同じオキシコドン21錠を米国から輸入した男性の判決公判が行われ、被告人に執行猶予付の有罪判勝が言い渡されています。このケースと、どこが違っていたのでしょうか。
<7月1日のニュースから>*****
●麻薬密輸 男に有罪判決―東京地裁、オキシコドン21錠
米国から麻薬成分「オキシコドン」を含む錠剤21錠を密輸したとして、麻薬取締法違反(輸入)などの罪に問われた米国籍の男(34)の判決公判が30日、東京地裁であった。大川隆男裁判長は「量は少なくなく親和性、依存性は見過ごせない」として懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)の有罪判決を言い渡した。
判決によると、男は今年4月に米国からオキシコドンを含む錠剤3.6グラムを国際宅配便で東京都内のホテルの気分宛てに送らせたが、日本国内の保税倉庫で税関職員に発見された。公判では起訴内容を認めた。
日本経済新聞2015年7月1日
*****
●普通は薬物の量で罪の重さが決まる
小森榮弁護士は、"一般に、薬物事件には、特有の明快さがあります"としていました。
罪の重さに直接つながる要因の第一は、薬物の量です。たとえば、所持した薬物の量は、通常使用の○回分と計算され、その量が多ければ犯情が重いとされるわけです。
そして、犯罪の立証過程も科学的であり、明快です。犯罪の客体である薬物は、合理的な疑いをさしはさむ余地のないレベルで科学的に鑑定されます。また、輸入事件であれば、その品物が日本の税関に到着するまでの経路が詳細に裏付けられています。
●ジュリー・ハンプ元常務役員は57錠
トヨタ役員は何グラムだったの?と検索しましたが、明記したものは見つからず。とりあえず、錠剤数としては上記の有罪事件の21錠の3倍程度でした。
時事ドットコム:箱の底に麻薬錠剤敷き詰め=送り主、使用有無も捜査-トヨタ役員密輸事件・警視庁
トヨタ自動車の常務役員ジュリー・ハンプ容疑者(55)が米国から麻薬を密輸したとして逮捕された事件で、国際宅配便で送られた麻薬の錠剤が入った箱の詳しい状況が19日、警視庁への取材で分かった。(中略)
錠剤は全部で57錠で、うち39錠が緑色の小箱(縦約7センチ、横約10センチ、高さ約3センチ)の底に敷き詰められていた。(中略)
ペンダントケースの底には13錠あり、紙のようなもので覆われていた。小袋には5錠が入っていた。錠剤は丸型と楕円(だえん)型の2種類があった。(2015/06/19-22:38)
●一般人ならこうはならない?
小森榮弁護士は、"辞職したことなど社会的制裁をうけたこと"にも触れていたものの、他の人だって"社会的な立場を失い、家庭や生活基盤まで失うことも珍しく"ないとしていました。
以下の記事でもこの社会的制裁について触れていました。
日刊ゲンダイ|トヨタ女元常務“不起訴”に現場が怒り「いつもの上のやり方」 2015年7月8日
「ハンプ容疑者が常務役員を辞任し、トヨタも信用を失墜させるなど“制裁”を受けた。『もう十分だろう』と“政治力”がはたらいた、上の方で手打ちしたともっぱらですが、これだけ証拠がそろっていて不起訴なんて、相手が無名の一般人ならあり得ないでしょう」(前出の検察事情通)
●アメリカやトヨタの圧力を疑う声も
たぶんあるだろうな思いましたが、ネットではアメリカやトヨタの圧力を疑う声が出ていました。
日刊ゲンダイの引用部分もそういう話ですね。タイトルに入っている"現場が怒り「いつもの上のやり方」"というのは、現場の捜査員が怒っているというものでした。
ただ、アメリカによる圧力ってのはどうなんでしょうね? 前述の有罪の人もアメリカ人です。まあ、これも有名なアメリカ人と無名なアメリカ人の差ということで説明できてしまうわけなんですが…。
●ジュリー・ハンプ元常務役員は罠に嵌められた?
また、今回の件が仕組まれたもの・嵌(は)められたもので、本来は事件性はないものを無理やり逮捕したのでは?という、逆方向の陰謀を疑う声もありました。
ただ、日刊ゲンダイによれば、「起訴猶予」というのは以下のような意味なんだそうです。(その他、錠剤の量についても前述の通り)
「起訴猶予」とは、裁判で有罪は証明できそうだけど、悪質性が低いなどの理由から、検察官の裁量で不起訴になるケースだ。同じ不起訴でも、証拠が足りないなど、裁判で有罪を証明するのが困難と考えられる「嫌疑不十分」とは違う。
●日本の検察の公平性に疑問符
最後にもう一度、小森榮弁護士の話に戻ります。
日本は、欧米諸国と比べ、薬物事件に対する処分はとても厳しい、しかし、その取扱いはあくまで公平であると、私はずっと信じてきましたし、政治家のコネなど口にする被疑者や被告人にそのような不明朗な扱いはないと断言してきました。
これまで、社会的な注目を集める有名人の事件では、検察官は、むしろ一般人の場合より厳しい対応をとることで、法の公平性をアピールしてきたとさえ、感じてきたのです。
ところが、今回は小森榮弁護士の目にも疑わしく見えたようです。
一般人や日刊ゲンダイが吠えてるくらいならスルーしておくつもりでしたが、弁護士さんとしても腑に落ちないというのなら…というのが、この件でもう1本書いておこうと思った理由です。
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