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正常性バイアスと多数派同調バイアスの危険な合わせ技と具体例


 メインで使う記事では、単に"認知科学では、「同調」と呼ばれる"といった感じで説明していました。ただ、一般的に「多数派同調バイアス」といわれるようですし、他に「集団同調性バイアス」と書いている方もいらっしゃいました。

2015/7/9:
●簡単な問題でも間違い続出!多数派同調バイアスのものすごさ
●テレビ番組の「ドッキリカメラ」で見られた多数派同調バイアスの例
●狂っているように見えた国民心理も多数派同調バイアスで説明できる?
●都合の悪いことを軽視してしまう「正常性バイアス」にも注意
●実は全くいらないわけではない…正常性バイアスは必要でもある
●自然災害・火事・事故・テロなど正常性バイアスの具体例
●ネットで偏狭な意見が育ちやすい理由も多数派同調バイアス?
2020/05/13:
●まるで多数派同調バイアスみたい!集合知は他人の意見を知ると精度低下


●簡単な問題でも間違い続出!多数派同調バイアスのものすごさ

2015/7/9:私が特におもしろいと感じたのが、1950年代に心理学者ソロモン・アッシュさんが行ったという以下のような手順の実験です。

(1)一室に集めた30名ほどの人に、極めて簡単な問題を出す。
(2)実は集まった人のうち1人だけが本当の被験者で、残りは全員サクラ。
(3)サクラが一致して誤った答えを言い、その後に本当の被験者が答える。
(長いものには巻かれるべきか 多数派に従う「同調」の心理|マーケットで成功するための投資の心理学|ダイヤモンド・オンライン  林 康史 [立正大学経済学部教授]  2007年11月13日 )

 上記のようなことをすると、明らかにわかる問題であるにも関わらず、被験者の3割以上がサクラと同じ誤った答えを選んでしまいました。また、"正解の答えを選んだ人も、自分の見たままを答えるために、多くは冷や汗をかくなど必死の思いだった"そうです。

 答えが簡単にわかるような問題ですらこうなのですから、そうではない微妙な問題となると「同調」の影響の強さは半端ないことが予想されます。


●テレビ番組の「ドッキリカメラ」で見られた多数派同調バイアスの例

 立正大学の林康史教授によると、テレビ番組の「ドッキリカメラ」でも同調の強さを示すシーンが見られるそうです。以下のような2つの例が載っていました。

(1)エレベーターに乗ろうとして、ドアが開くと、エレベーターの乗客が全員、ドアに背中を向けて乗っている。そういう場面に出くわした人の多くが他の乗客の真似をして、ドアに背中を向けて乗った。

(2)診療してもらうために病院に行くと、待合室の人がみんな裸。この場合ですら、他人の真似をして、待合室で裸になってしまった人が現れた。


●狂っているように見えた国民心理も多数派同調バイアスで説明できる?

 最初に出ていた心理学者ソロモン・アッシュさんは、"「集団内少数者が多数の圧力に屈した反応をする」ことを明らかにして、学会に衝撃を与えた"そうです。また、アッシュさんは"子どものころにポーランドから米国に亡命した"方であり、ナチスや独裁国家を意識していたといった話もあります。

<正しかろうが間違っていようが、無意識のうちに、人は他人を真似るという行動に出る。ファシズムや軍国主義、あるいは独裁者への個人崇拝等々、意識して迎合する人もいるが、無意識のうちに賛同している人も結構いるだろう>

 こういった心理の怖さとしては、ミルグラム実験とスタンフォード監獄実験 ネットリンチと正義の暴走もそうですね。


●都合の悪いことを軽視してしまう「正常性バイアス」にも注意

 「多数派同調バイアス」を検索していると、かなりの高確率で「正常性バイアス」がセットで出てきました。こちらはWikipediaに単独の項目があります。正常性バイアス - Wikipediaでは、以下のような説明をしていました。

<正常性バイアス(せいじょうせいバイアス、英: Normalcy bias)は認知バイアスの一種。社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと。 自然災害や火事、事故・事件・テロリズム等の犯罪などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価したりしてしまい、「逃げ遅れ」の原因となる。「正常化の偏見」、「恒常性バイアス」とも言う>


●実は全くいらないわけではない…正常性バイアスは必要でもある

 これはちょっとややこしいと感じてしまうところなんですけど、正常性バイアスの場合は必ずしも悪いことだとは言えないようです。ときには必要なときもあるんですね。

 Wikipediaでは、"日々の生活の中で生じる予期せぬ変化や新しい事象に、心が過剰に反応して疲弊しないために必要なはたらきで、ある程度の限界までは、正常の範囲として処理する心のメカニズムが備わっていると考えられる"としていました。

 私は疑似科学問題などで思考停止しないように!疑ってよく考えるように!という話を繰り返ししています。ただ、何も考えずに誰かの意見に従うというのも必要なことです。すべてにおいて厳密に考えていると、頭がパンクしてしまいますからね。思考を省略する場面もあるべきなのです。


●自然災害・火事・事故・テロなど正常性バイアスの具体例

  自然災害や火事、事故・事件・テロリズム等と先にありましたが、Wikipediaにあった具体例もことごとくそういったものでした。ただ、説明がなく項目のみというものも多いです。以下、内容をまとめながら紹介していきます。

・アメリカ同時多発テロ事件

・大邱地下鉄放火事件

・ハリケーン・カトリーナ
 2005年8月、アメリカのニューオリンズでは、ハリケーンが来る前に避難命令が出ていて、80%の住民が避難していた。
 避難しなかった20%は、危険減少・復旧センターの所長であるマイケル・リンデルによると、避難しなかった人たちは「逃げなくてもいい」という信念を持っていたという。
 避難しなかったのは主に老人で、過去にニューオリンズでは「カトリーナ」に匹敵するハリケーンの来襲を二度受けていた。これらのハリケーンでニューオリンズが暴風雨に耐えたことを老人たちは知っていたため、彼らは「今回も大丈夫」という信念を持ったとされる。

・東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
 地震発生直後のビッグデータによる人々の動線解析で、ある地域では地震直後にはほとんど動きがなく、多くの人々が実際に津波を目撃してから初めて避難行動に移り、結果、避難に遅れが生じたことが解明された。

・福島県沖を震源とする地震による津波
 津波を経験した人たちでさえ「今回は大丈夫」という心理がはたらいた例。東日本大震災から約3年半後の2014年7月12日に、福島県沖を震源とする地震で津波が発生し、沿岸部には避難勧告が発令されたが、ほとんどの人が避難しなかった。
 岩手、宮城、福島の3県では、約27,000人なのに、避難したのは自主避難を含めても858人。岩手県釜石市は、11,895人に中33人。

・福島第一原子力発電所事故

・2014年韓国フェリー転覆事故

・2014年の御嶽山噴火噴火
 御嶽山の噴火では、死亡者55人のほぼ半数が噴火後も火口付近にとどまり噴火の様子を写真撮影していたことがわかっている。
 「自分は大丈夫」と思っていた可能性が指摘されている。


●正常性バイアスと多数派同調バイアスという危険な合わせ技

 この正常性バイアスと先の多数派同調バイアスがセットになって出てきやすいというのは、たとえば、下記のような具合です。これはたぶんWikipediaで名前だけあった「大邱地下鉄放火事件」のことでしょうね。

<2003年2月18日午前9時13分、通勤ラッシュが一段落した韓国・大邱市の中央路駅で地下鉄放火事件が発生しました。この事件で約200人の尊い人命が奪われてしまいました>(防災心理学、正常性バイアス、多数派同調バイアス、より)

 奇妙さがよくわかるのは、公表された写真の中に、"煙が充満しつつある車内に乗客(10人くらい)が座席で押し黙って座っている"という奇妙な写真があったこと。煙が車内でいっぱいで明らかにマズいをわかりそうなものなのに、逃げずに座り続けていたわけです。

 これについて著者は、"「多数派同調バイアス」(majority synching bias)と「正常性バイアス」(Normalcy bias)に陥ってしまったのではなかろうか"と考えていました。
 煙が駅と車内に充満したとしたら、心の警報が鳴り響き、直ちに避難するなどの緊急行動をとると思うのが自然です。しかし、過去経験したことのない出来事が突然身の回りに出来したとき、その周囲に存在する多数の人の行動に左右されてしまうのです。それはその人が過去様々な局面で繰り返してきた行動パターンでもあるのです。どうして良いか分からない時、ほかの人と同じ行動を取ることで乗り越えてきた経験、つまり迷ったときは周囲の人の動きを探りながら同じ行動をとることが安全と考える「多数派同調バイアス」(集団同調性バイアスともいう)の呪縛に、心が支配されてしまうのです。

 (中略)加えて、こんなことは起こるはずのない信じられない出来ごとと捉え、リアル(現実)ではなく今、目の前に起きていることはヴァーチャル(仮想)か、何かの間違いか、訓練なのではないか、これは異常ではなく「まだ正常」という心理が働き、「異常事態発生!」という緊急スイッチが入らない状態、つまり異常をも正常の範囲内ととらえてしまう「正常性バイアス」に陥っていたものと思われます。

 この想像は正しそうです。というのも、"ある番組で、この地下鉄放火事件時の車内写真に写っていた人のうち助かった若者を探し出し、その時の心理状況を聞い"ているのです。

「最初は、まさかこんな大変な火災が発生していたとは思わなかった」=正常性バイアス
「みんながじっとしているので自分もじっとしていた」=多数派同調バイアス

 御嶽山で噴火の様子を写真撮影していた人が多かったという話がさっきありました。御嶽山では助かった方もたくさんいるものの、かなりの人数残っていたところを見ると、やはり正常性バイアスと多数派同調バイアスの合わせ技が悪さをしたのかもしれません。


●ネットで偏狭な意見が育ちやすい理由も多数派同調バイアス?

 この話の前に!と思ったので昨日慌てて投稿したのですが、新聞はいらない? 新聞不要論とネットで偏った意見が目立つ理由の中で、「ネットで偏狭な意見が育ちやすい理由」というのをやりました。この考え方は次のようなものです。

 まず、ユーザーの好むものを切り取って提示する…というネットのサービスの特徴が前提にあります。しかし、ユーザーは情報が操作されていることは意識せず、自分に近い意見が多いのだと勘違いしてしまいますから、ますます自分の意見に確信を持つのでは?という話でした。これが今回で言う多数派同調バイアスですね。

 正常性バイアスは主に災害に関する場面で使われていますので、それ以外の場面に適用するのは正しいかどうかわかりません。ただ、多数派同調バイアスに加えて、正常性バイアスでもやはり「ネットで偏狭な意見が育ちやすい理由」を説明できそうです。たまに自分と異なった意見を見かけたとしても、正常性バイアスで軽視してしまうと考えられるためです。

 さらに言うと、自分の意見が先に決まっているような場合、認知的不協和理論によって自己正当化するバイアスが働くこともわかっています。(参考:認知的不協和理論の例 自分の選択を正当化するバイアスが働く人間の心理)

 こうして人はどんどんと深みにハマっていってしまうんじゃないのかな?と思いました。


●まるで多数派同調バイアスみたい!集合知は他人の意見を知ると精度低下

2020/05/13:読み直していて、集合知のメリットとデメリット 集合なのに他人の意見を知ると逆効果にのことを思い出しました。タイトルにあるように、集合知は他人の意見を知るとむしろ精度が低下してしまう…という研究があったんです。独立して考えたものを合わせなくちゃいけないんですね。以下のようなことがわかったとされていました。

「集団は最初のうちは『賢い』が、他者の推測を知らされると、意見の多様性が狭まり、それによって(集合知が)低下する」
「穏やかな社会的影響であっても、集合知効果に悪影響が及ぶ」

 上記にあるように、これは「意見の多様性」というのがポイントではあります。ただ、独立性を維持していないと問題があるという意味で、「多数派同調バイアス」との共通点を感じてしまいました。なお、多様性の欠如については、ひとつ前の「ネットで偏狭な意見が育ちやすい」との親和性の高さも感じるものでもあります。


【本文中でリンクした投稿】
  ■新聞はいらない? 新聞不要論とネットで偏った意見が目立つ理由
  ■ミルグラム実験とスタンフォード監獄実験 ネットリンチと正義の暴走
  ■認知的不協和理論の例 自分の選択を正当化するバイアスが働く人間の心理
  ■集合知のメリットとデメリット 集合なのに他人の意見を知ると逆効果に

【関連投稿】
  ■赤ん坊を殺したフリードリヒ2世の人体実験とオキシトシンの効果
  ■プロスペクト理論とは?その例は? 行動経済学でわかる人の心理
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  ■科学・疑似科学についての投稿まとめ

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