ストレートな自殺の前兆 「死にたい」と言って亡くなった事例集など、繰り返し書いている「本当に死にたい人は黙って死ぬ」という誤解についての話絡みで、また痛ましい事件がありました。
●いじめを訴えていた生徒が事故で亡くなる 自殺の可能性
自殺?中2、担任へのノートに「死にたい」 いじめ示唆:朝日新聞デジタル 斎藤徹、松本龍三郎 2015年7月8日05時41分
生徒の父親(40)や学校によると、生徒は担任とやりとりする「生活記録ノート」に4月以降、「体操着や教科書がなくなった」と書くようになった。6月以降は特定の生徒名を出し、「なぐられたり首しめられたり悪口言われた」「もうつかれました。もう死にたいと思います」と記した。
6月28日には「氏(死)んでいいですか?(たぶんさいきんおきるかな)」、翌29日には「もう市(死)ぬ場所はきまってるんですけどね」と書いていた。
●校長「いじめと断定できない」
この状態でも、校長は「このようなことが起きて痛恨の極みだが、現段階でいじめと断定できない」と話しているそうです。なぐられたり首しめられたり悪口言われたのがいじめじゃないわけないだろうと思うのですが、一応、生徒が嘘を書いていたという可能性はあります。
ただ、このような状況の中でそういう話をするか?とは思わざるを得ません。これ以外のところもそうなのですけど、この校長はズレています。
●死にたいは「助けて」の意味
ズレていると思ったのは、いじめの有無以上に大切な「氏(死)んでいいですか?」という直接的なメッセージを発した事実を無視していることです。
死にたいは「助けて」の意味だと考えた方が良いです。たとえいじめがなかったとしても、生徒が救難信号を送っていることには変わりありません。最も大事なことは、いじめかあったかどうかというところではなく、助けを求めていたということです。
●生徒によるいじめの告発に対して、「上から目線」と返した教師
個人の問題にすべきではないのですが、正直個人の能力の問題も大きいかもしれません。以下のような報道もありました。
【岩手の中2自殺】「いじめている人を教えます」→「上から目先(目線)ですね」 担任がコメントしていた The Huffington Post | 執筆者: 安藤健二 投稿日: 2015年07月08日 16時29分 JST
モーニングバードによると、ノートの最後には「ボクがいつ消えるかはわかりません。ですが、先生からたくさんの希望をもらいました。感謝しています。もうすこしがんばってみます。ただ、もう市ぬ場所はきまってるんですけどねw まあいいか……」(原文ママ)という記述があったが、担任のコメントは「明日からの研修たのしみましょうね」と、そっけないものだった。
また、日時は不明だが「先生にはいじめの多い人の名前をおしえましょう。もうげんかいです」と訴える生徒の記述に対し、担任は赤ペンで「上から目先(目線)ですね」と書いていた。
●担任は慕われている「いい先生」の評価
ただ、この文章で受ける印象とは異なり、生徒の評判は上々だったそうです。自殺した生徒がどう思っていたかもわかりませんが、文章で残っているのを見るだけではわからないものですね。
クラス内で暴力行為、担任叱る…岩手の中2死亡 2015年7月9日 14時42分 読売新聞
ある生徒は担任について、「優しくて、いい先生だった。生徒から慕われ、相談にもよく乗ってくれた」と取材に答えた。
●担任は問題行為のグループを叱っていた
また、問題行為のグループについてもお咎めなしではなく、叱っていたそうです。私はそもそも「叱る」が教育方法として優れていないと考えていますが、今回の件について「今の教師は叱らないから悪い」と書いていた人の主張はある程度崩れたかもしれません。
この「ある程度」というのは、今度は「いじめが繰り返されないように、もっと厳しく叱るべきだった」と言いそうなためです。結局、下記のように問題行動は改善しませんでした。
生徒の一人によると、死亡した男子生徒は4月以降、特定のグループから頭をたたかれたり、髪の毛をつかまれて机に打ち付けられたりしていた。担任がこうした行為を見つけ、グループの生徒らを注意したこともあった。取材に応じた生徒は「(担任が教室とは)別の部屋に連れて行って叱っているのを何度か見た」と話すが、グループの態度はその後もあまり変わらなかったという。
●いじめを失くすにはいじめの発見件数を増やせ
担任や校長に問題ありといった報道もあったわけですが、これで担任叩きや校長叩きになってしまってもあまり問題は解決しないでしょう。今のいじめ問題に対する日本社会の姿勢を改める必要があると思われます。
何を改めるべきか?と言うと、いじめが起きて当たり前だと認識を改めるべきだと考えます。そして、いじめがそこら中にあるのだから、その発見に力を入れるべきなのです。
私は他の問題との共通点を挙げなら説明することが多いですが、この「発見をより重視すべき」という考え方は、児童虐待、内部告発、研究不正、工場の事故、製品への異物混入などでも書いてきました。
今回の事件もそれっぽいところがありますけど、現在はいじめがあった時点で大問題という意識が強すぎるために、隠蔽に走ってしまうことが多いです。また、一刻も早く「問題を解決した」という形にしたがるために、対応が徹底されないおそれもあります。別に教師らを擁護するわけではないのですけど、心理的にそうなりやすいことは確かです。
また、いじめの数が少なければ少ないほど良いというのが、そもそもの間違いでもあります。これはいじめがもっと起きると良いと言っているわけではないですよ。現在のいじめの数は実際のいじめの数ではなく、見かけのいじめの数のためです。
見かけのいじめの数を減らすには隠ぺいするのが一番ですが、それでは問題解決からむしろ遠ざかります。いじめの数が減ることが望ましいとは限らないのです。
逆に言うと、見かけのいじめの数が増えることは、今まで隠されていたいじめをあぶり出すことなのですから、まず「いじめの発見を歓迎する」くらいに発想を転換しないといけないでしょう。
追加
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