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ハウステンボスの変なホテルと水上ホテル、澤田秀雄社長の挑戦


 人の代わりにロボットが仕事するというホテルがハウステンボスにできました。ロボットが動きやすくするために、既存のホテルの部屋の作りにこだわらず、再設計されているというのもすごいです。意外なことに、このような人間視点ではない見直しは、人間にとっての快適さにも繋がりそうなものでした。(2015/7/17)

2015/7/17:
●ハウステンボスの「変なホテル」がすごい 人の代わりにロボットが仕事
●ロボットのための部屋としてホテルを再設計
●ビジネスホテルよりハイグレードで価格は安い
●足し算より引き算を、高性能ロボットはいらない
●規制されている分野にチャンス
2016/08/24:
●変なホテル2号店はディズニーランドの近くに
2016/11/22:
●「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」としてギネス認定
2018/01/26:
●都市国家並みの面積があるハウステンボスで様々な実験
●ロボットカフェや海に浮かぶ水上移動式ホテルにも挑戦
2020/01/24:
●ハウステンボスの水上ホテル、失敗して実用化されなかった?
●阪神淡路大震災、前例のない球船…兵庫県の思いが詰まったホテル


●ハウステンボスの「変なホテル」がすごい 人の代わりにロボットが仕事

2015/7/17:前に書いたベンチャー三銃士 ハウステンボス黒字化の澤田秀雄エイチ・アイ・エス会長ですごいと思った沢田秀雄・ハウステンボス社長。

 今回は「変なホテル」の話。「変なホテル」というのは表現ではなく固有名詞。ホテル名が「変なホテル」なんだそうです。もうこの時点で変です。(数カ月前に書いたものなので、今は異なっているところがあるかもしれません)
変なホテル

快適で心地よく宿泊できるホテルを、もっとリーズナブルに提供したい。環境にも配慮した、現代的で「スマートな設備」を備えながら訪れたくなる「楽しさ」ももたらし、思い出も作れたら・・・。

これまで当たり前だと思われていたホテルにおけるサービスと設備をひとつひとつ丁寧に見直し、メインスタッフがロボットという、先進技術を駆使した、世界初となる新しいホテルを考えました。追い求めたのは、快適で楽しみももたらす「究極の生産性」です。けれども、先進技術は日々進化し続けており、数年後には、もっと新しい技術が生まれる可能性は十分にあります。

先進技術を駆使するならば、もはや「変わり続けること」は、自然のことと捉え、「変わり続けることを約束するホテル」というコンセプトを掲げました。

そして、名付けたホテルの名前は「変なホテル」。
ハウステンボスの敷地内に、2015年7月中旬に開業します。

 開業前に予約を受け付けるようですが、「2015年3月1日よりご予約(入札)開始」というのがまた妙です。オークションみたいですね。ホテルでは聞いたことがないやり方です。

 電話予約も可能なものの、"お電話にてご予約頂く場合は、最高値のみでのご案内になります"とのこと。オークションも人件費をかけずにやるということでしょう。


●ロボットのための部屋としてホテルを再設計

 軽く検索したときに「変なホテル」には鍵がないと書かれていました。海外注目の新しいホテル「ファーストキャビン」 1時間800円・ドアなし・稼働率90%なのに高級感を思い出しましたが、鍵がかからないという意味ではないようです。ロボット導入と同様に技術で対応する方向性。

 サイトの「キーレス滞在の実現」では、「最新の顔認証システムが、お客様ご自身を画像認識して登録し、お部屋にお通しいたします」としていました。

 こういった最先端技術ではプライバシーの問題があります。"顔認証されたくないお客様には非接触ICカードキーでご滞在いただけます"と、そういった客への気遣いを見せているのも考えられていると感じました。これも一種の「おもてなし」精神です。

 また、ロボットが入退室しやすいようにという狙いもあるかもしれません。以下のような沢田秀雄社長のインタビュー記事がありました。
生産性世界一のホテルへ 売りは「低機能」ロボ :日本経済新聞 2015/2/15 7:00[日経ヴェリタス2015年2月15日付]大酒丈典

「世界一生産性の高いホテルにします。フロントの接客もコーヒーを運ぶのもロボット。掃除もロボットがするので、部屋は初めから掃除しやすい設計にします」

 部屋に合わせてロボットを作るのではなく、ロボットのために部屋を作る。こういった発想の転換は大事です。意外にできないことだと思います。

 また、ロボットに合わせることは、必ずしも人間にとって過ごしづらいことを示さないのでは?とも思います。バリアフリーの概念なんかは、ロボットの動きやすさと合致するでしょう。さっきのキーレスも「鍵の持ち運びのわずらわしさ、紛失の不安から解放されます」というメリットとロボットの入りやすさ両方が狙えそうでした。


●ビジネスホテルよりハイグレードで価格は安い

 オフィシャルサイトでは、「一般的なローコストホテルの部屋よりもゆとりのある広さ」であることを売りにしていました。日経新聞でも"ビジネスホテルより設備のグレードは高"いと説明しています。

 にも関わらず、「価格はさらに安くなります」。この理由は当然ロボットです。144室のホテルなら"ビジネスホテルでも50人が働いて"いるそうですが、変なホテルでは僅かに10~15人の予定。人件費というのは非常に大きいのです。

 以前、人件費の上昇や移民の必要性などに関して、必要性が高まれば人件費をかけない技術が発達するという主張を読んだことがあります。ハウステンボスの変なホテルはまさにそれを体現したものです。「必要は発明の母」という言葉を思い出します。

 終わり頃に「なぜ誰もサービス産業の生産性を上げようとしないのか。誰もやらないなら、僕がやるしかありません」ということもおっしゃっていました。生産性が上がらないのは、長時間労働や低賃金労働が許されているからでしょう。さっきの「必要性が高まれば人件費をかけない技術が発達する」という話は、確かそういった文脈だったと思います。


●足し算より引き算を、高性能ロボットはいらない

 それから、私が好んで何度も紹介している「足すことより削ることが大事」という話。変なホテルのロボットも、"実は苦労しているのはロボットの機能を高めることではなく、削ること"なんだそうです。

「ロボットメーカーは、関節がたくさんあり、自由自在に動くようなロボットを作ろうとします。これではコストが高くなりすぎて、サービス業界では通用しません。意外かもしれませんが、機能の向上ではなく削減をメーカーと擦り合わせています。重要なのはコストパフォーマンスですから」(沢田社長)

 先ほどの人件費絡みの話では、「変なホテルで使うロボットはまだ1台1000万円以上しますが、600万円台にしたい。人を2年雇うより安くつきます」というのがありました。"機能の絞り込みがうまくいけば"という話ですけど、こうやって見てもやはり人件費というのは高いと感じます。ただ、こういう話をすると、今度はロボットに仕事が取られると怒る方が出てきそうですね。これ系の話もちょくちょくやっています。


●規制されている分野にチャンス

 インタビューでは変なホテル以外の話も。

「当時、日本から欧州に行く航空券は往復で70万円くらいしました。ところが、ドイツの航空券はずっと安い。日本は規制で基本料金が決まっていたのです。これには腹が立つと同時に、ビジネスチャンスだとも思いました。そこでHISの前身となる旅行社を設立しました。閑散期に海外から安く航空券を仕入れるなどして、国内で格安航空券を売りまくりました」(沢田社長)

 規制があるところにチャンスがあるって話は、確かリブセンスの村上太一社長もおっしゃっていた気がします。今回のホテルやハウステンボスはそうでもないと思うんですが、沢田社長の創業したスカイマークはまさにそれです。

 そして、「変なホテルが軌道に乗れば、次は農業への参入を考えています」としていたのも、同じ発想ですね。

「政府が保護してきた日本の農業は極めて生産性が低い。これでは国際競争に勝てません。まずは植物工場から始めたいと思い、ひそかに研究しています。その後は広大な土地で大規模農業ですね」

 ただ、企業の農業参入はあまりうまく行っておらず、「企業がやれば生産性が上がるというのは絵空事、農業従事者と組まないとダメだ」とあきらめムードの記事も出ていました。私は企業の農業参入は大賛成の口なので、この分野のチャレンジも期待したいです。


●変なホテル2号店はディズニーランドの近くに

2016/08/24追記:変なホテルの続報。
なぜ舞浜に? "変なホテル"2号棟が3月開業へ | マイナビニュース [2016/08/10]

'引用者注:ハウステンボス内の変なホテルは)ホテルの全業務をロボットやITに肩代わりさせられるわけではないが、昨年7月の開業時、30人いた従業員は効率化を進めたことで今や10人に減少。開業以降、宿泊棟を追加し、倍の規模になったにもかかわらず、従業員は減っており、将来的には6人まで減らしていく方針だ。

ロボット・ITという側面からだけでなく、ホテル運営の効率化という面からも注目を集める変なホテル。そんな宿泊施設の2号棟が進出するのは千葉県浦安市だ。東京ディズニーリゾートのある舞浜駅北口の徒歩圏内になるという。

2号棟では、ロボットアームやポーターロボットの導入は未定とするものの、オープン時点で受付にロボットを設置するという。(中略)

1号棟の開業から1年。当初から開業1年をノウハウの蓄積のために"溜め"の時期に位置づけており、変なホテルはこれまで展開を控えてきた。ただし、先々で待っているのは猛烈なスピードでの出店計画だ。2016年を基点に、3年以内に100棟を目指すとしている。

●「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」としてギネス認定

2016/11/22追記:何でギネス?と思いましたが、ギネス側から言ってきたんだそうな。「うちの方が先だ!」って異論が出てきそうなもので、ちょっと心配です。
「変なホテル」ギネス認定、恐竜ロボットも働く 2016年 11月17日 19時28分 提供元:読売新聞

長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」(HTB)は17日、昨年7月に開業したロボット対応型のホテル「変なホテル」がギネス世界記録に認定されたと発表した。

 HTBによると、ギネス世界記録への申請はしていないが、ギネス側から「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」として認定の連絡があった。

●都市国家並みの面積があるハウステンボスで様々な実験

2018/01/26:また、澤田秀雄HIS・ハウステンボス社長のインタビューがあって、読んでみました。HIS澤田社長「次は移動式ホテルに挑戦」:日経ビジネスオンライン(東 昌樹 2017年11月30日)という記事です。

 ハウステンボスでは、一見全然関係なさそうな電力事業も手掛けています。これを「どこから発想したのですか」という記者の質問に対し、以下のように回答していました。

「ハウステンボスを運営していて『何でこんなに電気代が高いのか』と痛切に感じました。特に夏場は非常に高い。だったら自分で電力会社を設立して発電所を作ろうと考えたのです。電力を販売もするし自社の施設でも使う。来期には売上高100億円程度になる見込みで、次の事業の柱にしようと思います」

 本業と関係あったんですね。ただ、このような自社で発電所を持っていて、なおかつ販売までしているところは結構あります。そういう意味では続けて説明していたハウステンボスの実験都市的な性格の方がおもしろかったです。

「ハウステンボスは、欧州の都市国家であるモナコ並みの面積があり、都市機能がここに全部そろっているのです。ハウステンボスで実験したことを新規事業につなげます」


●ロボットカフェや海に浮かぶ水上移動式ホテルにも挑戦

 私が一番興味あるロボットホテル関連では、ロボットホテルではなくロボットカフェの話がありました。「ロボットもここで実験してから、展開し始めました。近く東京・渋谷でロボットカフェの出店も計画しています」とのこと。

 一方、記事のタイトルになっていたのは、ロボットじゃないホテル。「次は移動式ホテルに挑戦」と書いていたので、てっきりイベントに合わせて移動する車両なのかと思ったのですけど、そうではなく船…というか、海に浮かぶ物体という妙なものでした。

「ハウステンボスでは沖合にある無人島を購入しました。球形の水上移動式ホテルを用意して夜間に移動して朝、この島に上陸します。ここで朝食を食べて優雅に楽しむプランを考えています。いわば『変なホテル』の新版です。実現したら面白いでしょ。趣味じゃないですよ。来年1月に完成させテスト宿泊を始めます」

 うまく行くかどうかはわからないものの、他で書いているように小さく始めて失敗しながら成功を見つけていくというのは、成功企業の法則。良いチャレンジだと思います。


●ハウステンボスの水上ホテル、失敗して実用化されなかった?

2020/01/24:水上ホテルはその後どうなったか?と検索。前回の追記の後すぐに導入へ…という記事が出ていました。ただ、パッと見た感じ、実際に導入されたという記事は見当たりません。体験談や予約ページなども見つからなかったので、ひょっとしたら見送りになったのかもしれません。

 とりあえず、導入予定としていた記事の中から一つ「世界初」水上の移動球体ホテル 兵庫から長崎へ(2018/3/6 12:13神戸新聞NEXT)を紹介しておきます。

 神戸新聞がハウステンボスの移動式水上ホテルを紹介していたのは、球体が兵庫製であったため。また、球船を考案したのも兵庫県芦屋市で科学技術系のビジネス翻訳を手がける田原潮二さん(69)。阪神・淡路大震災をきっかけに、水に浮かべて災害用シェルターとして使う発想だったということで、兵庫県にたいへん関係が深い船でした。


●阪神淡路大震災、前例のない球船…兵庫県の思いが詰まったホテル

 ただし、球形の船は前例がなく、建造まで至らないままお蔵入りしている状態だったといいます。2015年になってどこから話を聞きつけたのか、HTBの澤田秀雄社長が客室としての実用化を提案。そして、兵庫県姫路市の「オクムラボート」が製造しました。

 一度断念していたものですし、やはり製造には苦労したみたいですね。完全な球形を造るのは難しいので、球を4分割した型を使って製造。また、4トンの重りを最下部に積むことで、波で揺れた際の復原力を持たせたそうです。奥村雅晴社長は「壁に何度もぶつかったが、ワクワクする仕事だった。世界でも例のない宿で滞在を楽しんでほしい」と話しています。まさかこんなに熱い話だとは思わなかったので、読んでびっくりしました。

 前回の追記で、小さく始めて失敗しながら成功を見つけていく…と書いたように、ビジネスで失敗はつきものであり、悪いことではありません。失敗は致し方ないところがあります。ただ、このようにいろいろな意味で兵庫県の思いを乗せた、夢がたくさんつまった球形の船だったので、水上ホテルビジネスが実現に至らなかったとすればたいへん残念なことだと感じてしまいます。


【本文中でリンクした投稿】
  ■ベンチャー三銃士 ハウステンボス黒字化の澤田秀雄エイチ・アイ・エス会長
  ■海外注目の新しいホテル「ファーストキャビン」 1時間800円・ドアなし・稼働率90%なのに高級感

【関連投稿】
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