日本の女子スポーツはなぜ男子より強いのか?という話がありました。理由としては、単に恵まれているからでは?というのが挙げられており、私もそう考えていました。しかし、おもしろかったのが男子よりスポーツを楽しんでいるからという説明があったこと。スポーツ心理学的には、根性や闘争心よりも楽しいと思う方が大切だとされているんだそうです。
2018/01/19追記:
●「楽しいから強い」「厳しいから弱い」の事例が次々と見つかる
2020/12/28追記:
●観客の応援が力になって力を発揮する!実は全く科学的根拠なし?
●「勝てると思っていた」「4点取られても、負ける気はしていなかった」
2015/7/19:2015年の女子ワールドカップ(W杯)カナダ大会決勝。米国代表と対戦した日本代表「なでしこジャパン」は、試合開始早々にセットプレーから相次いで失点し、今大会初めて先制を許した。その後も守りのミスから失点を重ね、前半16分までに0-4と大きくリードされてしまいました。
日本は同27分にエースの大儀見優季(おおぎみゆうき)(ウォルフスブルク)の今大会2得点目で1点を返し、同33分からベテランの澤穂希(ほまれ)(INAC神戸)を途中出場させて懸命の反撃を展開。後半に一時は2点差まで追い上げましたが、最終的に2-5で敗れ、二〇一一年ドイツ大会に続く二連覇はならず準優勝でした。
(
なでしこ連覇ならず W杯決勝で米に2-5:一面:中日新聞(CHUNICHI Web) 2015年7月6日 夕刊より)
普通なら4点取られた時点で精神的に切れます。ところが、カナダで取材したスポーツライターの松原渓さんによると、驚くことを本人たちは言っていたそうです。
「前半の16分で3点も取られたときは、見ているのも辛いような状況でした。だけど、キャプテンの宮間あや選手は『5点目を取られるまで勝てると思っていた』と、川澄奈穂美選手も『不思議と4点取られても、負ける気はしていなかった』と平然と言っていました」
(
日本の女子スポーツは、なぜ強いのか? 日刊SPA! / 2015年7月18日 13時40分 取材・文/遠藤由次郎)
実際には負けたわけですが、ちょっと考えられない発言です。
●日本の女子スポーツは、なぜ男子より強いのか?
私が一番おもしろかったのは上記の話ではなく別の話ですが、その前に「日本の女子スポーツは、なぜ強いのか?」というタイトルの話のフォロー。日本のスポーツで女子が男子に比べて強いのは、世界的に見ると恵まれているからだと私は思います。男女平等ランキングで日本は発展途上国に混ざって下位ではあるものの、これは日本の男性との差が大きいという理由でしょう。
海外では経済的・社会的な理由でスポーツなんかやってられないという女性が多いので、相対的に見ると十分恵まれているからだろうと思いました。スポーツ全般に詳しいブロガーのフモフモ編集長さんも同じような見解でした。
「世界には女性の自由、社会進出が進んでいない国がまだまだあり、国際大会などでも宗教上の理由から不自由を抱えているケースも散見されます。一方、日本の女子は学生でいられる期間は、概ね好きなスポーツに打ち込めますし、社会人となっても、仕事として競技を続けられるケースも少なくないです」
(2018/01/21追記:この論法で行くと、じゃあ、日本がパラリンピックでめちゃくちゃ弱いのは、障害者に冷たいせいか?といった話になりかねなくて、結構墓穴なんですけど…。関連:
パラリンピックは廃止すべき!障害者スポーツとオリンピックのあり方)
●スポーツで勝つには、根性論や闘争心より楽しいと思う方が大切
さて、ここからが私が一番おもしろいと思った話。女子スポーツが強い理由を、スポーツ心理学なるもので説明しようとしたところがとても刺激的だったのです。
"スポーツ心理学に基づくメンタルトレーニングを行っている大儀見浩介"さんは、"男子選手たちは、どちらかと言えば根性論や闘争心を基礎に戦っている"としていました。根性論は時代遅れと思う人が結構いるでしょうが、闘争心まで評価されていないようです。では、何がもっと重要なのか?と言うと、楽しいと感じることだそうです。
「スポーツ心理学では、楽しいと感じているほうが力を発揮できるという研究結果が出ています。ほどよい緊張感やプレッシャーの中で、ほどよくリラックスしているのがベスト。前回、W杯で優勝を果たしたなでしこたちが見せた、決勝のPK直前の笑顔は、まさにそれを物語っています」
記者は"笑顔でプレーしていると、「不謹慎だ、不真面目だ」とされる"(おそらく「男子スポーツ界では」という意味)が、"女子スポーツ界では、笑顔は珍しいものではない"としていました。
なでしこジャパンの例以外にも、女子バレーは"満面の笑みでハイタッチをする"、"オリンピックや世界選手権などの大舞台でも、笑顔を見せるのは女子選手が多い"と例示しています。真偽の程についてはもう少し調べた方が良いと思いますけど、おもしろい話でした。
●「楽しいから強い」「厳しいから弱い」の事例が次々と見つかる
2018/01/19:「スポーツで勝つには、根性論や闘争心より楽しいと思う方が大切」という話に非常に興味を持ったので、その後気にして見ています。肝心の研究論文の裏付けが見つかっていないのですが、楽しむ心で説明できそうな事例はあり、何度か触れています。
一つが素晴らしい実績を持つファン・ハール監督と、素晴らしい選手の揃ったマンチェスター・ユナイテッドが、期待ほど活躍できなかったという話。当時の「監督を怖れて、選手が自由にプレイできていない」「楽しんでいない」といったことが言われていました。
(関連:
強いチーム作りは楽しいチーム作り マンUが弱い理由は厳しいから?)
次に書いた
小さな島国がラグビー大国に勝てた秘密は?強豪国指導者が視察には、アイルランドが小国であるにも関わらず、ラグビーや競馬で活躍するのは、ラグビーや競馬が好きだからではないかと想像したものでした。
最も最近書いたのは、
先輩後輩文化をぶち壊した青山学院大学、箱根駅伝などで大活躍という投稿。青山学院大学の黄金時代を築いた原監督は、世羅高校の2年生だったとき、昔ながらの伝統的な厳しいやり方を経験しました。当時の3年生らは、史上最強軍団といわれ、優勝候補にあげられ、NHKまで取材に来たが、全国高校駅伝は3位でした。
一方、悪習を撤廃した原監督の3年のときは、「駄馬」と呼ばれるくらい弱かったはずなのに、最強世代より良い2位になってしまいました。これはチームの「和」という点が強調されていたものの、「楽しさ」でも説明可能ではないかと思ったものでした。
といった感じで、説明できそうな事例はあるものの、やっぱりもっとちゃんとデータ的に比較したものがほしいですね。もう少し探してみます。
なお、ビジネスに関しては似たような研究があり、一生懸命働いて成功すれば幸せになるのではなく、幸せだからこそ成功するということがわかっているとのこと。「楽しいから強い」に関連する研究では、これが今のところ一番良さそうなものでした。
(関連:
成功者はもともと幸福を感じるのが得意?幸せに働くから成功する)
●観客の応援が力になって力を発揮する!実は全く科学的根拠なし?
2020/12/28:前回もリンクした
成功者はもともと幸福を感じるのが得意?幸せに働くから成功するでは、部下らを厳しい心理状態に追い込むよりも、ストレスを与えない方がチームの生産性が上がるといった研究も紹介しています。ビジネスで言うとそりゃそうだという話。冷静に考えれば、スポーツでも当然そうなると考えられる話です。
ただ、なぜかスポーツだと精神論・根性論が跋扈。ストレスを感じずにプレーすることよりも、闘争心のようなものが重視されがちです。…とここまで書いてから思ったのですが、そういや日本では仕事でも精神論・根性論が大切にされていますよね。いわゆるブラック企業では、精神論・根性論重視的な言動が今でも見られています。
あと、その後やった、
スポーツでは観客の応援が力に…科学的根拠なし?ホーム効果の誤解という話では、プレッシャーの問題が出てきました。意外なことに観客の応援がスポーツでマイナスに働くことは非常に多いとのこと。これもスポーツで勝つには、根性論や闘争心より楽しいと思う方が大切…といった話と似た方向性の知見でした。
【本文中でリンクした投稿】
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先輩後輩文化をぶち壊した青山学院大学、箱根駅伝などで大活躍 ■
小さな島国がラグビー大国に勝てた秘密は?強豪国指導者が視察に ■
パラリンピックは廃止すべき!障害者スポーツとオリンピックのあり方 ■
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