<厳しいしつけ・虐待・体罰でいい子が育つ?犯罪者の家庭環境調査の結果>、<子どものウソは、叱る派? 年収1000万円以上の人に聞いてみた>、<叱る派が出す例がブーメラン 叱るしつけを受けた社長の末路…>など、叱るしつけ・体罰に関する話をまとめています。
2022/03/26まとめ:
●子どものウソは、叱る派? 年収1000万円以上の人に聞いてみた
●叱るしつけで育てられなかった子が経営者になるとおかしくなる?
●叱る派が出す例がブーメラン 叱るしつけを受けた社長の末路…
●良いしつけ?いじめに加担した息子へ体罰を行った父親を逮捕
2021/10/16追記:小学生の息子2人の顔面を殴ったとして、67歳の父親の男が逮捕されたというニュース。自宅で10歳未満の小学生の息子2人の顔を平手で殴る暴行を加えた疑いだとのことで、<「弱い者いじめさせないようしつけのため」友人とのトラブルで対話中に息子2人"平手打ち" 父親逮捕>(2021/10/13(水) 12:35配信)では、以下のように報じていました。
<警察によりますと事件前息子と友人のトラブルをめぐり友人の親などが訪れ話し合いをしていて、当初被害を受けていたとみられていた男の息子も何らかの加害行為をしていた可能性があることが発覚。立腹した男が暴行したということです。
通報で駆け付けた警察官が2人が出血しているような様子を確認し"お父さんに殴られた"などと話したため、翌10月13日に逮捕しました。
当時男は酒を飲んだ状態で、調べに「弱い者いじめをさせないよう、しつけのためにたたいた」と容疑を認めています>
https://news.yahoo.co.jp/articles/10f09788f06b3c624545c5ae0fadc246b5a93351
●「こりゃ、大人が舐められ、少年犯罪がなくならないわけだ」
私が興味あったのは、一般人の反応。体罰に賛成する意見もあるのではないか?と思ったんですよね。すると、やはりヤフーニュースの上位コメントは、良いしつけだとして賛同が多くなっていました。というか、私が想像した以上の状態で、人気上位はすべて体罰賛成コメントですね。ここまで体罰賛成が多いとは思いませんでしたわ…。
<トラブルの内容にもよるが、昨今は自分の子供は悪くない!相手が悪い!前提で怒るモンスターペアレントが多い世の中で、自分の息子にも非があるならそこは親として叱る>
<自分の息子がいじめの加担していたことを知って、息子を殴ったってことよね これで逮捕なの? 虐待ではないでしょうに。 通報したのは誰なんだろ? こりゃ、親が舐められ、大人が舐められ、少年犯罪がなくならないわけだ>
<なんだかおかしな世の中ですね。事情を聞いて厳重注意で良くないかな?理由的にも変な話じゃなさそうだし>
<男の子なら特に少しひっぱたく位しないと言う事を聞かない事も沢山あると思うので、これで逮捕されるのもなんだかなぁという気持ちです>
<まともなお父さんだと思う。そりゃ鼻血出るほど強かったのは良くないかもしれないけど。自分はやられた側!!と言って居て一方的にされて居たかと思いきや、我が子もイジメに加担していた。私も引っ叩くと思う。叩かれアザが出来てもそのうち消える。痛いのもその時だけ>
<状況にもよるが、いじめをした息子をしつけるのは当たり前>
<こんなんで捕まる時代じゃ子供の少年犯罪増えるわけだぁ!>
<平成3年生まれの男ですが、自分が小学生・中学生の頃なんか、叱られる時よく叩かれていましたし、物置小屋で反省しなさいとかよくありましたよ>
「体罰でいい子が育つ?」というテーマであるページに追記したのはなんとなく…だったのですが、「こんなんで捕まる時代じゃ子供の少年犯罪増えるわけだぁ!」などの反応があって、予想外にピタリと合う内容でした。ここらへんの話は以降を読んでほしいのですが、そもそも凶悪犯罪を含めた少年犯罪が減っていることは指摘しておきます。体罰と関連付けるのなら、「体罰が減ったおかげで少年犯罪も減った」と言わねばいけません。
●厳しいしつけ・虐待・体罰でいい子が育つ?犯罪者を見ると…
2010/11/23:私は検索大好きで1日に何十回も検索するのですが、その際に目的と違うページに目が行って脱線することがしばしばあります。そんな感じで昔見つけたページに、
誤った親子関係か脳機能の異常か -人格障害者の誕生- 2007-09-22 ワンニャン物語プラス・アルファというページがあり、興味深いものでした。作者は受刑者や非行少年の心理調査という仕事をしていた方で、「 『懲役』と『担当さん』の365日」という本も出されています。
先のページによると、この方は受刑者の面接を始めてからしばらく経った後に、「子供の頃、親から厳しく育てられた」 と言う受刑者が少なくないということに気付いたそうです。厳しく育てて犯罪者になるの?と不思議に思うかもしれませんが、受刑者らの言う「厳しく」は、普通に言う「厳しく」ではなく、内容は「親からの体罰や虐待」だったようです。
たとえばそれは、殴られた、蹴られた、布団叩きやハタキの柄やズボンのベルトなど手近の物で叩かれた、熱い湯茶を浴びせられた、タバコの火を体に押し付けられた、針で刺された、バケツの水の中に頭を押し込まれた、食事を与えられず外に締め出された、紐で縛られ物置で一晩明かしたなどのようです。
ちょっと検索して読んでみると、ネット世論はパッと見9:1か8:2ぐらいで体罰賛成論で占められていますが、おそらく上記のようなもの(特に熱湯、タバコ、針など)は想定していないでしょう。これは「体罰」というよりは、明確に「虐待」と呼んだ方が良さそうです。
●犯罪者の家庭環境調査の結果 「甘い」が少なく「厳格」が多い
作者は受刑者を主観的な判断ではあるものの、以下の三つに分けてみました。
「厳格」(罵倒、体罰、虐待あり)
「普通」
「甘い」(大抵、欲しいものは買って貰えた、わがままが通った)
そもそもこれらが一般人で三等分されるかどうかもわかりませんが、結果として「甘い」 は僅かで、「厳格」 が3分の1以上になったそうです。そして、特に「厳格」 は、暴力団関係者など粗暴犯受刑者(傷害、暴行、恐喝など)、それも少年院歴のある者、累犯者に目立ったとのことです。
この他、柏原智子 「女子犯罪と成人矯正」 『犯罪と非行』 No.138 2003年で、栃木刑務所に服役中の女子受刑者372人の調査結果では、37%の者に幼少時に親からの虐待経験があったという話も紹介されています。これらの理由としては、暴力的なしつけを受けた人は、親の姿に学び、思い通りに事が運ばなくなると、直ぐにいら立ち、攻撃的な衝動が抑えきれず、暴力的言動を現すためだそうです。
また、さっき少し話した「体罰」の話ですが、作者は基本的に体罰反対のようで、子供が親の望む方向に矯正されたとしても、それは、罰への恐怖の結果であって、自制心、善悪の判断力、良心が育ったわけではないとおっしゃっています。
●犯罪者と虐待経験者に相関性があるという研究は存在するのか?
私は本当に犯罪者と虐待された経験者の相関性があるのかを知りたかったのですが、検索してもそういうデータはありません。どうやらあまり広く研究されていないのかもしれません。ちょっと関連するのは、
犯罪を起こすのは幼児虐待か、あるいは遺伝子か。 神経症を治すホームページくらいでした。
ここで翻訳されていたHealthScoutNews Reporter (By Adam Marcus 2002年8月2日) というレポートは「何故子供の頃虐待された経験があるのに、あるものは粗暴犯罪に走り、他のものはそうならないのか遺伝子の面から研究した」ものだといいます。
子供の頃虐待された経験のある人が粗暴犯罪に走りやすいことがそもそもの前提となっているような書き方です。ということで、直接私の知りたいデータはなかったのですが、犯罪者と虐待経験者に相関性があるのはよく知られた事実なのかもしれません。
ちなみにレポートでは、活動が弱いMAOA(モノアミンオキシダーゼA)遺伝子を持つ男子は子供時代に虐待を受けると、普通のレベルで活動するMAOA遺伝子をもつ男子より、反社会的行動をする傾向が高い事が判明したというものです。また、活発型MAOA遺伝子を持つ人は、たとえ児童虐待を受けても反社会的行動を起こしにくいともあります。
犯罪は遺伝子と環境の両方の影響を受け、遺伝子は1つでなく多くの遺伝子が関連していると思われるそうですが、とりあえず、「MAOA遺伝子が弱い & 虐待を受ける = 犯罪を起こしやすい」ということがわかったそうです。
私はこれによって体罰反対を唱えようというつもりは、毛頭ありません。社会で行われる法による罰則というのも、ある意味体罰みたいなもので、それらに抑止効果がないとは直ちに信じられないからです。ただ「(良いしつけである)体罰」と「虐待」の境界は非常に微妙なものだと思いますし、なぜそれがいけないことなのかを学ぶ方が体罰より大切だということは、最初に引用の作者に賛成します。
●虐待未満の体罰や恐怖を利用したしつけについての研究も発見
2018/04/06;これを書いた当時は特に体罰反対ではなかったのですけど、その後いろいろ読んでいくと、全然体罰や厳しいしつけはダメだとわかりました。例えば、
虐待未満の体罰でも家庭のしつけとしては逆効果 子供の問題行動が増加してしまうでは、虐待ではない体罰でも効果ありとする研究がほとんどないという話をやっています。
さらに体罰まで行かなくても、恐怖を利用したしつけですらむしろダメという研究もあります。こちらは、
恐怖を利用したしつけは逆効果と研究で判明!叱るや「勉強しなさい」も子供の脳に悪影響でやった話。この投稿のタイトルにもなっているように、そもそも「叱る」の効果もあまり良くないということがわかっています。最初の投稿を書いた当時は、ここまで悪いものだとは予想できませんでした。
こうした結果については、「当然だろう」という反応もあるのでしょうが、自分で勝手に決めつけるんじゃなくて、ちゃんと研究や調査、データなどを探してみるってのは大事です。結果的に正解であっても、直感や思い込みや感情で決めちゃうというのは危険なことですからね。
●子どものウソは、叱る派? 年収1000万円以上の人に聞いてみた
2016/3/24:普通の叱る・褒めるという話ではなく、「子どもが嘘をついたとき」について聞いたアンケートがありました。そうじゃなくても叱る教育が浸透しているのですから、嘘をついているときにも当然叱る派が多数です。ただ、アンケートは「叱る」の反対の選択肢を「黙認」という極端な選択肢にしていて、どうかと思うものでした。
また、調査は、年収1000万円以上で「自分は幸運だ」と思っている人(幸運者)と、年収300万円以下で「自分は不運だ」と思っている人(不運者)、各100人にアンケート調査を実施したというもの。なので、以下のように、幸運者と不運者で分けています。ただ、どちらにせよ叱る派が大多数となっています。
幸運者 叱る派 75% 黙認派 25%
不運者 叱る派 86% 黙認派 14%
(
子どものウソは、叱る派? 黙認派? 何気ない人生の選択33:PRESIDENT Online - プレジデント(2016年2月28日 PRESIDENT 2015年6月15日号 著者 鈴木 工)より)
●叱るしつけで育てられなかった子が経営者になるとおかしくなる?
子どもが嘘をつくというのはある意味当たり前です。そもそも
やはり男より女の方が嘘つきだった?1日に嘘をつく回数は何回かでやっているように、大人も毎日嘘をつき続けています。特に子どもに対して嘘をつく親なんてのは多いんじゃないですかね。
私も嘘つきは嫌いですが、これは大人が子どものことばかり言えないという話ですし、同時に昔ながらの嘘をつくことを叱る教育が嘘を撲滅できていない…という話でもあります。ただ、今回は「じゃあ、どうすりゃいいの?」というところは面倒なので深追いしません。それはたぶんめちゃくちゃたいへんな話になります。
一方、今回はアンケートをしていたプレジデントの記事で出てきていたエピソードがおもしろかったので、そっちを紹介したかった…というもの。出てくるエピソードがみんな変なんですよ。300人以上の経営者を取材してきたというジャーナリスト・國貞文隆さんは、「叱って当然だ」とまず言っていました。
「同族企業のジュニアは、ある程度年を取ったら、何らかの形で会社に関わるわけで、将来を問われる存在。そこで親はしつけようとするのが当たり前。ウソを見て見ぬフリしていれば、将来、経営がおかしくなりますから」
そして、ベンチャー系は、"経営者は多忙をきわめ、ほとんど子どもの面倒を見れなくなる"としていました。叱ることが大事ということなので、この「面倒を見れなくなる」というのは、叱ることもできなくなるといった意味なのでしょう。ところが、叱れなくて失敗した例というのが以下のような説明なんです。
「そこで起こりやすい問題があります。ひとつは親の監視から逃れて、趣味や遊びに溺れてしまうケース。カジノ賭博に夢中になって、100億円を超える資金を個人流用した、大王製紙の御曹司・井川意高氏がいい例です」
いや、大王製紙というのは、「経営者は多忙をきわめ、ほとんど子どもの面倒を見れなくなる」というベンチャー企業ではなく、むしろ典型的な同族経営企業なんですけど…。大王製紙創業者の子供で2代目だというのならこの説明でもわかるのですけど、創業者の孫である3代目なんですわ…。ちなみに、創業者の家業もクズ紙原料商であり、紙関係の仕事として見ると、もっと長いです。
<井川 意高(いかわ もとたか、1964年(昭和39年)7月28日 - )は、日本の実業家。大王製紙の前会長。
大王製紙創業家3代目で、同社創業者・井川伊勢吉の孫。(中略)
愛媛県伊予三島市(現四国中央市)を拠点とする製紙会社、
大王製紙の創業家2代目、井川高雄の長男として生まれた>(
井川意高 - Wikipediaより)
●叱る派が出す例がブーメラン 叱るしつけを受けた社長の末路…
さらに「叱らないと会社がおかしくなる」という主張なのに、次に出てくる逸話が叱ったことが裏目に出た例というのも変でした。いわゆるブーメランになっています。こういう例を出すのでしたら、むしろ叱ることはあまり良くないということを強調する流れにすべきでしょうね。
「もうひとつは、母親主導の教育になって、たまに帰ってきた父親があまりにも叱りすぎるため、萎縮してしまうケース。たとえばワコール社長の塚本能交氏は、父であり創業者の幸一氏に怒られすぎて引っ込み思案になり、一時期、思うような経営ができませんでした」
記事で実際に怒られたと公言している例は、他にもう一つしかなかったのですけど、これは「林原」でした。<2011年、突然倒産した岡山県の名門バイオ企業だった林原も、徹底した長男至上主義を貫き、しつけがきびしい環境だった。社長だった林原健氏が、父から手をあげられ反発を覚えたと告白している>とのことです。
そして、この体罰を含むしつけがきびしい環境の経営者がいた「林原」というのも、またなぜか悪い例なんですよ。上記ですでに書かれているように倒産(会社更生法申請)しています。以下のように、ちゃんと林原健さんのときに問題が起きていますから、後の代で潰されたという話でもありません。
<1990年代以降、甘味料などに用いられる糖質トレハロース、抗がん剤用途のインターフェロンを生産し世界市場で販売する。ただし林原健の弟で専務取締役を務めた林原靖によると、林原インターフェロン製造のために建設された吉備製薬工場は稼働実績で二割を上回ったことがなく、後の経営破綻の最大の原因の一つとあげている>(
林原 (企業) - Wikipediaより)
國貞文隆さんがやったような事例を挙げていくやり方もあって良いのですが、都合の悪い例をカットできるために信頼性は低いです。特に叱る派が圧倒的に多数派であることを考えると、良い例でも悪い例でも見つけやすいでしょう。やりようによって、いくらでも都合の良い主張が展開できます。
なので、叱る教育を受けた成功経営者の話を多数挙げて、叱るしつけを正当化するインチキもできました。にも関わらず、今回出てきたエピソードがことごとく叱ったことで裏目に出ているもの…というのは不思議。ひょっとしたら、國貞文隆さんはむしろ「叱る教育はいけないよ」と伝えたかったのかもしれません。
【本文中でリンクした投稿】
■
虐待未満の体罰でも家庭のしつけとしては逆効果 子供の問題行動が増加してしまう ■
恐怖を利用したしつけは逆効果と研究で判明!叱るや「勉強しなさい」も子供の脳に悪影響 ■
やはり男より女の方が嘘つきだった?1日に嘘をつく回数は何回か【関連投稿】
■
体罰などの体育会系マネジメントはカルト宗教の洗脳手法 精神的に監禁し支配するのが大事 ■
子供や部下を 叱る・怒る VS 褒める 効果を比較した研究はある? ■
橋下聖子の内部告発者の名前公表要求に見る日本のパワハラ・いじめの背景 ■
学校・教育・子どもについての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|