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国策企業東芝の倒産危機は国に責任 原発推進でWH買収に圧力かけて高値買い


 "不適切会計の一因は国にも?国策企業・東芝と佐々木則夫元副会長の問題発言"(2015/7/28)に、"国策企業東芝の倒産危機は国に責任 原発推進でWH買収に圧力かけて高値買い"(2017/03/31)を加えて、タイトルも変更しました。


●まるで中国みたい…東芝は政府の影響力が強い国策企業との見方

2015/7/28:東芝、不正の土壌は“国との蜜月”か|inside Enterprise|ダイヤモンド・オンライン(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史、鈴木崇久、森川 潤  2015年7月28日)という記事で、「あの会社は、もう“国策企業”だから」という会話が出てきました。ここで言う「あの会社」というのは、東芝のこと。"重電業界では、東芝をこう評する言葉がよく聞かれる"そうです。

 東芝を「国策企業」というのは、ちょっと大げさなところがあります。"重電分野を持つ企業は、電力やインフラなど官製需要に頼ることが多く、多かれ少なかれ、どの会社も国との関係は大きい"と記事でも書いていました。とはいえ、"その中でも東芝と国の“蜜月”は際立っていた"というのが記事の内容。たとえば、以下のような逸話がありました。

<2013年中ごろ、東京・霞が関。経済産業省の一室には、東芝、経産省の幹部らが、米国のファンド関係者と向き合っていた。
 「STPの電力を購入できるようにするから、シェールガスの契約を結ばないか」。米ファンドの関係者が切り出した。
 STP(引用者注:サウステキサスプロジェクト)とは、東芝が米国テキサス州で進めていた原子力発電所のプロジェクト。当初は、東京電力との共同出資の案件だったが、福島第1原発の事故を受け、東電が撤退。その後、米電力会社も離脱したことから、プロジェクトの実現性が不透明になっていた。
 そんな中で、救いの手を差し伸べたのが、経産省だった。原発事故後に原発が停止し、代替となる火力発電の燃料が大量に必要となる中、経産省は、当時価格が安かった米国産のシェールの調達を推し進めていた。(中略)
 こうして9月、東芝は米フリーポート社と、液化加工契約を結んだ。(中略)だが現在、原油価格が下落する中、シェールの価格優位性も薄れ、「誰も買い手がいない」(競合他社幹部)状況が続いてしまっている>

 記事では、そもそも問題になっている"米ウェスチングハウスの買収自体が、国が推し進めていた原発輸出戦略に寄り添ったものだった。だが、それ以外も枚挙にいとまがない"とも書いていました。このウェスティングハウス(WH)の説明を補足。また、後で付け足した追記で書いているように、国策に沿ったものというだけでなく、国はウェスティングハウスを買うように直接、圧力をかけていたみたいですね。

ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー - Wikipedia
<ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーLLCは原子力関連の広範な製品の販売とその関連サービスを行う多国籍原子力関連企業。核燃料、サービスとメンテナンス、制御と計測、原子炉の設計などを行っている。旧ウェスティングハウス・エレクトリック(WE)の一部で独立した原子力企業であったが、1997年にWEはCBSを購入し、原子力部門を英国核燃料会社に売却、2005年には東芝に売却され、現在は東芝グループの一部となっている>

 最初の記事にあったウェスティングハウス以外の国と東芝がズブズブな例というのは、例えば、09年の仏アレバの送電網部門の売却。このとき、経産省が出資する産業革新機構の後ろ盾になり、応札に乗り出したとのこと。この革新機構は11年、東芝によるスイスの電力計メーカー、ランディス・ギアの買収に際しても550億円を出資しています。

 さらに、半導体メーカーのエルピーダメモリが倒産危機に陥った際には、経産省の幹部が、東芝関係者を連れて提携を画策しています。これも直接的なものですね。一方、国策にそって空気を読んだというものが、国が医療輸出を掲げるた際に、目玉である重粒子線治療のシステムに本格的に乗り出したというものでした。


●自民党とも近い東芝の歴代社長

 トヨタ自動車の歴代社長の学歴・出身大学と学部 理系・文系多いのはどっち?で書いたように、産経新聞は国の国立大文系学部廃止・転換に絡めて東芝の社長を叩き、政権の援護をしていました。ただ、どうも東芝の歴代社長というのは、政府や自民党と近い人が多いようです。

 今回辞任したうちの1人である佐々木則夫元副会長は、自民党政権になって経済財政諮問会議に呼ばれた人なんですよね。あと、もっと政治の場に出てくることが多い西室泰三さんも、東京証券取引所会長の前は東芝だったというのにも驚きました。これは知りませんでしたわ。
(西室さんは、安倍首相の戦後70年首相談話の有識者会議の座長なんかもしています)

<特に、家電部門から社長になると、急に国との関係が深くなり、よりのめり込むこともある。
 そして引退後も、より名誉を求めるのか、財界活動にまい進する例も珍しくない。
 2000年まで社長を務めた西室泰三氏が代表例で、安倍晋三政権との距離も近く、日本郵政社長の座を得たほか、2代前の佐々木則夫氏も、日本経済団体連合会副会長や、政府の経済財政諮問会議の民間議員を務めた>

佐々木則夫 (実業家) - Wikipedia 最終更新 2015年7月28日 (火) 02:07
<東芝電力システム社社長時代にアメリカ合衆国の総合電機メーカーであったウェスティングハウス・エレクトリックの買収事案に携わる。2008年に代表取締役副社長執行役員に就任。
2009年6月に、西田厚聰の後任として株式会社東芝社長に就任。2013年1月から、経済財政諮問会議の民間議員に就任(~現在)。2013年6月より、株式会社東芝副会長、日本経済団体連合会副会長に就任する>


●不正を指示しているに等しい佐々木則夫元副会長の問題発言

 政治の話は置いておき、今回一番驚いたのは、佐々木則夫元副会長の発言でした。本文ではなく画像になっているところに、「社内で残り3日での営業利益120億円の改善を強く要求」とありました。こりゃ完全にアウトでしょう。

 田中久雄社長が利益のかさ上げ指示? 東芝の不正経理・粉飾決算疑惑で書いたように、「利益を上げろ」という要求だけでただちに問題だとは言えません。しかし、明らかに無理である場合は、事実上不正を要求しているのといっしょになります。

 3日間で120億円もの巨額の利益が改善することはあり得ないことですので、これならもう不正の指示とみなして良いと思います。あんまり最近関連記事を読んでいなかったので私が気づかなかっただけかもしれませんが、こんなヤバイ発言が大きく報道されていなかったというのは不思議です。


●ウェスチングハウスでさらに損失拡大の可能性

2015/07/30追記:断末魔の東芝、破滅に突き落とす原発ビジネス“負の遺産”とは 週プレNEWS / 2015年7月29日 6時0分(取材・文/姜誠)というウェスチングハウスの記事があったので紹介。過激な言い方しているところは割引が入りますが、ウェスチングハウスがうまく行っていないというのは確かな話なのでしょう。

<「このWH(引用者注:ウェスチングハウスの略)の業績がさっぱりで、高値で買ってくれそうな企業はなかなか見つからない。原発世界最大手の仏アレバ社が経営危機にあえいでいることもあって、新たな原発ビジネスに進出しようとする企業が少ないんです。しかも、もし売却に成功したとしてもその後に爆弾が待ち受けている。それがのれん代の償却です」(前出関係者)
のれん代とは買収金額からその企業の純資産額を差し引いたもので、ブランド力や製品開発力など目に見えない無形資産を指す。
「WHの評価額はせいぜい2千億円から高くても3千億円とされていました。しかし当時の東芝経営陣が買収に6千億円以上ものお金をつぎ込んだため、少なく見積もっても3千億円以上の差額がのれん代として会社の資産に計上されてしまったのです。WHを売却すれば、これを償却しなければいけない。今の東芝にその体力はありませんよ」(同)
実際、東芝のバランスシートを調べると、のれん代はなんと1兆1538億円(2014年末現在)もの巨額に達していた。経済ジャーナリストの須田慎一郎氏が指摘する。
「のれん代が1兆円を超えるなんて、ありえません。経営陣が無謀な買収をし、その損失を表に出したくないから資産計上してやり過ごしてきたのでしょう。(中略)
本来なら東芝はのれん代が減損していることを認め、早い時期に引当金を積んでバランスシートを健全化しておくべきでした」>


●国策企業東芝の倒産危機は国に責任 原発推進でWH買収に圧力かけて高値買い

2017/03/31:ウェスチングハウス(WH)は、東芝が国の方針に従って空気を読んだというだけでなく、直接的な圧力もあったようです。当時の交渉担当幹部は、経済産業省が「とにかく日本勢に『買え、買え』とうるさかった」としていました。

 おかげで、当初は「2千億円ぐらいが妥当」(当時の東芝副社長)とみていた買収額は、約6千億円まで膨らむという企業にとって不利なことに。交渉担当幹部が「投資の回収ができない」と懸念を伝えても、西田厚聡社長は高値での買収に踏み切りました。ビジネスの世界に政治を持ち込むと、ろくなことにならないという好例です。

 ただ、そもそも東芝が争って値を吊り上げていた相手は、別の日本企業でした。2回目の入札で西田社長のもとにいったん「落札」の報が届いたのですが、すぐに「日本のある会社が思い切った価格を示してきたので、再度入札をしたい」と連絡が入っています。その企業というのは、WHとと提携関係にあった三菱重工でした。
((泥沼の原発ビジネス:中)WH争奪戦、陰に経産省 震災後も二人三脚、深手負う:朝日新聞デジタル 2017年3月10日05時00分より)

 結局、国が圧力をかけることで、日本企業同士で競り合って高く買わせたという形。そして、それが東芝の倒産危機を招きました。馬鹿らしい話でしょう。


【本文中でリンクした投稿】
  ■田中久雄社長が利益のかさ上げ指示? 東芝の不正経理・粉飾決算疑惑
  ■トヨタ自動車の歴代社長の学歴・出身大学と学部 理系・文系多いのはどっち?

【関連投稿】
  ■企業・会社・組織についての投稿まとめ

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