<モーリシャスで貨物船が座礁し重油流出事故…責任は日本ではなくパナマ?>、<海難事故のニュースの船が、パナマ船籍が多いのはなぜ?>、<パナマ船籍にするのは税金面で有利だから…ではなかった!>、<親日国なのに…台湾企業が日本企業に全責任があるとわざわざ宣言>などの話をやっています。
冒頭に追記
2022/04/25追記:
●船の事故では溺死以外で亡くなる…救命胴衣だけでは助からない
●「今日は波が高い」別の運航会社や漁協組合長が止めたのに出港
2022/05/05追記:
●安全軽視でお金儲け優先が事故を起こすという典型的なパターン
●繋がらない携帯電話で審査突破 安全対策軽視な国の姿勢も問題
2022/05/15追記:
●船が欠航になると、それに文句を言うときだけ事務所に来る社長
2022/05/22追記:
●「怪我を押して出場」の逸話聞かせて、職員に「甘え許されぬ」 【NEW】
●船の事故では溺死以外で亡くなる…救命胴衣だけでは助からない
2022/04/25追記:知床観光船事故の話をこちらに。ただし、今回、船籍の話は出ていません。そもそも国内の観光船なのでパナマ船籍にするメリットもなさげ。このページとは正直全然関係ありません。ただ、こちらでは船の事故関連の話を多数やっており、その関係でこちらに追記。他に適切な追記先が見つかりませんでした。
知床観光船事故で不思議だったのは、救助されても助からない人が多かったこと。この理由は
【知床観光船事故】北海道の海に10分投げ出されれば低体温症に、救命イカダがあれば…/識者 - 社会 : 日刊スポーツ[2022年4月24日21時3分]でわかりました。溺れなくても体温が低下して亡くなるようなのです。
「体温35度以下が続いてしまえば、偶発性低体温症になってしまいます。夏の沖縄周辺であっても海水に継続的につかっていれば体温が時間の経過とともに奪われて、体力も失っていきます。救命胴衣を船が搭載しているから大丈夫ということではない。北海道の冷たい海に10分も投げ出されれば、救命胴衣を着用していても浮いているだけのことでしかない。
寒冷域などを航行する大型船舶の搭載する、体全体をおおうことができて体温を保持できるイマーションスーツや救命イカダのようなものがあったならば事態は変わったと思われます」
(水中での調査や工事に関する潜水作業の業務に従事する「朝日海洋開発」代表取締役で、水難学会副会長の安倍淳さん)
●「今日は波が高い」別の運航会社や漁協組合長が止めたのに出港
朝日海洋開発代表は、「遊覧船の運行に関して運営会社がどのように判断したかは分かりませんが、現場の船長が危険だから出船できないとの断固たる決断を重視できる状態だったのかどうかが気になります」ともコメント。別記事では多数の問題が指摘されており、安全軽視で利益優先だった可能性を感じました。
<北海道の知床半島の沖合で乗員・乗客26人が乗った観光船が行方がわからなくなっている事故。観光船の乗客と乗員の救助活動が続き、第1管区海上保安本部によりますと、これまでに救助された10人の死亡が確認されました>
<観光船「KAZU 1」は、第1管区海上保安本部によりますと、去年6月にウトロ漁港を出港した直後に浅瀬に乗り上げる事故を起こしています。(中略)この事故では、今回の遭難で行方が分からなくなっている豊田徳幸船長(54)が業務上過失往来危険の疑いで書類送検されていました>
<24日朝、斜里町のウトロ港で、行方が分からなくなっている観光船とは別の運航会社の男性が記者団の取材に応じました。男性は「海が荒れるのが分かっていたので、きのうは行くなと言った。なぜ行ってしまったのかと思う」と話していました。
また地元の漁協の組合長が取材に応じ観光船が出港する前、船長に対し、「波が高くなるから出港しない方がいいと忠告したが、出て行ってしまった」と当時の状況を証言しました。
斜里町にあるウトロ漁協と斜里第一漁協は、24日午前6時半から合わせて10隻の漁船を現場の海域に出して捜索を行いました。ウトロ漁協の深山和彦組合長は、観光船が出港する前の状況について「組合員の漁業者が観光船の船長に『きょうは波が高くなるから出港しない方がいい』と忠告したが、船長は『波が高くなったら港に戻るから大丈夫だ』と言って出ていってしまった」と証言しました>
( 知床 観光船事故 何が起きたのか…【経緯】 NHK 2022年4月24日 20時47分より)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220424/k10013596361000.html
もともと現場のカシュニの滝付近について「潮の流れが速いほか、暗礁があり危険な場所だ」とのこと。他社よりもサービスするために沿岸に近づいた可能性があるかもしれません。また、浸水などのトラブルが、利益優先でメンテナンス不足によるもの…という可能性もあるでしょう。
なお、このページに関係ない話…と書いたものの、利益優先が理由だった場合、日本の会社が関わる船の多くがパナマ船籍であることと同じ理由です。日本船籍でやるには莫大なお金が必要でそりゃ無理…というのは理解できるところですが、利益重視が行き過ぎると安全軽視につながることがあり、注意が必要でしょう。
●安全軽視でお金儲け優先が事故を起こすという典型的なパターン
2022/05/05追記:前述の知床観光船事故の件ですが、やはりお金儲け至上主義なところがあった模様。船長の経験不足という問題もありそうでしたが、これも結局、利益優先の方針が関係しています。知床は岩礁が多く、特に現地での経験豊富な船長が必要だったにも関わらず…ということで、起こるべくして起こった事故のようでした。
<『KAZUI』の運航会社を知る人によりますと、2〜3年前に社長が代わり、社員にも変化があったといいます。
運航会社を知る人:「一流のベテランばっかり4〜5人いた。船長も責任者が4〜5人いた。それを(社長が)全員解雇した。経験のあるものは給料が月30〜35万になる。でも全員解雇してバイトを集めれば、15万か20万で頼める」>
(
社長が代わり「全員解雇」運航会社“安全管理”に問題は…知床観光船事故11人死亡|テレ朝news- 2022/04/25 23:30]より)
●繋がらない携帯電話で審査突破 安全対策軽視な国の姿勢も問題
会社は新型コロナウイルス問題で窮状だった…という話もあります。そういった意見は目にしていませんが、これで「だから感染対策は不要」と利用する人もいるかもしれません。ただ、そもそも感染対策も安全のなのですから同じ方向性。国が対策しなかった場合、安全軽視な人たちで無法状態になったと考えられます。
この国の対策で言うと、知床観光船事故でも国の安全対策に問題があった可能性もありそう。今回の場合は会社があまりにも悪すぎて目立たないのですが、安全関連の審査があまりにも緩すぎるように見えました。実際、国も見直しを検討するとのこと。経済重視を旗印に安全を軽視する人の意見を尊重すると、まずいことになることがわかるでしょう。
<船が陸上と連絡する主な手段は「無線機」「衛星電話」「携帯電話」の3種類です。しかし「知床遊覧船」では、会社事務所に設置されている無線のアンテナが破損。衛生電話は故障し船に積んでいなかったとみられています。
また事故発生の3日前には、通信手段を衛星電話から携帯電話に変更する申請が認められていました。しかし、航路の大半は電波の届かないエリアで機能していなかったとみられています>
(現場で感じた捜索活動の難しさと事故の教訓【知床観光船事故】取材記者の報告 5/4(水) 20:30配信 福島テレビより)
https://news.yahoo.co.jp/articles/fba7a36750dc2970b94dd0c6dbd8c56f4164a273
<国土交通省によりますと、携帯電話は航路で通信ができる場合にかぎり認められることになっていて、機構の担当者が確実につながるかを確認したところ、船長が「つながる」と答えたことから検査を通したということです。
ただ、海上保安庁によりますと、申請があった携帯電話のキャリアでは現場海域には電波が届かない「不感地帯」があるということで、船と海上保安庁の通話も1度しかできていないほか、船の無線は他の運航会社としか交信できず、衛星電話もつながらなかったことが明らかになっています。
海上での通信に詳しい神戸大学大学院の若林伸和教授は「会社側の申請は疑問で、安全意識は薄いと言わざるをえない。一方でチェック機能が働かない国の検査にも問題があり、在り方を考えなければならない」と指摘しています>
(知床 観光船遭難 通信設備を携帯電話で申請 国の検査を通過 NHK 2022年4月30日 6時02分より)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220430/k10013606251000.html
●船が欠航になると、それに文句を言うときだけ事務所に来る社長
2022/05/15追記:知床遊覧船の件。<【また疑惑】知床遊覧船・桂田社長が担っていた「運航管理者」とは… 船舶免許や船での実務経験が必要>(22/5/5(木) 18:44配信 STVニュース北海道)によると、桂田社長はKAZUⅠの運航管理者だったものの、要件を満たしていなかった可能性が浮上。不正であり、完全にダメです。
<運航管理者になるためには、・船長としての3年以上の経験 または、・運航管理補助者としての3年以上の経験など いくつかある要件のうち、いずれかに該当しなければなりません。
しかし、桂田社長はそのどれにも該当していなかったというのです>
https://news.yahoo.co.jp/articles/90a8147a5576d8074864e4f8b42924392d191435
同業者の男性は「(桂田社長は)もともと宿泊業が本業ですから、観光船とか船は全く関係ない人でしたから。全くの素人というか、そういう感じ」と言っていました。これを聞いて「やっぱり社長は経験者じゃないと」と思う人もいそうですが、そこは本質じゃないんですよ。
事故・トラブル多発のスカイマーク、安全は眼中になしで書いた安全軽視なスカイマークの社長は異業種参入で一見似ています。ところが、この社長はパイロット免許を取得し、「専門家」でもありました。免許取得で当時は称賛も浴びていたのですが、ここは本質ではなく重視する方がむしろおかしくなるとわかります。
より本質的に問題だと思ったのは、同業者男性の別発言の後半部分。「桂田社長は、船舶免許もなく船での実務経験はない。事務所にも、船が欠航になった日に文句を言いにくるくらいだった」とも言っていたんですよ。社長が欠航に圧力をかけると、船長らは不安全でも出航してしまいやすくなり、極めて危険です。
これで思い出したのは、自民党から立候補して政治家にもなっちゃったワタミの渡邉美樹会長。インフルエンザ休みの社員に「なぜ店を心配して何度も電話しない?」と激怒したらしいんですよ。こういうことをやると、社員らは安全軽視で危険な行動をしやすくなります。遊覧船事故でもここらへんが一番問題でしょう。
●「怪我を押して出場」の逸話聞かせて、職員に「甘え許されぬ」
2022/05/22追記:前回書いた「船が欠航になった日に社長が文句を言いにくるので、危険なときでも船長が出航しやすくなりリスクが高まった」という話。これで思い出したとして、自民党で政治家になった渡邉美樹ワタミ会長の同系統の話を書いたのですが、そういや当時の自民党トップでも似た話があったんでした。
当時の自民党トップ・安倍首相は新人官僚に対し、負傷を押して出場し、劇的な逆転優勝を飾った日本人横綱稀勢の里の逸話を挙げた上で、「高いプロ意識」「甘え許されぬ」と精神論を主張。本来なら安全のために「病気のときはちゃんと休むように」と言うべきところで、逆に病気でも休みなしなブラック労働を要求しました。
安倍首相が不思議なのは、同じ訓示で「働き方改革」も強調していたこと。国民が求めるのは「病気でちゃんと休める社会」だと思うのですが、安倍首相的には「病気でも出社」だったようです。こんな安全軽視な自民党政権が言う働き方改革は悪夢ですし、安全軽視な法令運用で船舶事故を起こしたのも必然だと感じます。
●モーリシャスで貨物船が座礁し重油流出事故…責任は日本ではなくパナマ?
2020/08/14:インド洋の島国モーリシャスの沖合で大型貨物船が座礁。大量の重油が流出しました。周辺海域に貴重な野鳥の生息地があるなどしており、被害は甚大。モーリシャスは特に観光を中心とした国ですので、経済に与える影響も他の国と比較して極端に大きいと考えられます。
(
モーリシャス座礁、重油1千トン超流出 商船三井が謝罪:朝日新聞デジタル 2020年8月9日 19時44分より)
この件では船を運航していた商船三井が謝罪会見をしています。これについて、船主や船籍は別で商船三井だけの問題なのか?という擁護のようなものが出ていました。結論から言うと、実際100%商船三井の問題ではなく、船を所有していた岡山県の長鋪(ながしき)汽船にも当然責任があると言えます。
ただし、船籍国について責めるのはお門違い。今回もパナマ船籍であったようですが、これは所有者らが利益を得るために便宜的に海外の船籍にしているだけなんですね。これがこの後掲載している、もともと書いていた話です。船籍がパナマというだけでパナマにも責任があると言われてしまうと困ると思います。
あと、今回の件では、無理筋なときに難癖つけて中国に責任を負わせようとするくせに、「日本の責任だ」という論調は少ないな…とも感じました。日本政府が素早く専門家を派遣した…という声も見かけたものの、実際にはかなり時間が経ってからであり小規模な支援です。
また、マスコミ報道も遅く、それほど大きくないもの。さらに、過去の商船三井の大規模な事故でも報道が少なかったことが指摘されていました。マスコミは反日!という主張が多いのですけど、実際のところ、日本のマスコミもかなり日本に有利な報道をしており、その意味で言うと「親日的」なところがあります。
●日本向けの船だけど船籍はパナマ、日本人がいるかどうかも不明
2015/8/1:
カニ密漁船を銃撃・拿捕=日本向け、宗谷海峡で―ロシア 時事通信 / 2015年7月31日 21時59分は、ロシアに日本の船(?)が拿捕されたというニュース。ただ、「日本の船」の後にハテナマークをつけたように、知識なく読んでいると、日本の船なのかどうかはよくわからない感じもするでしょう。"日本の漁港に水揚げする予定だった"とはあるものの、船籍はパナマみたいなのです。
【モスクワ時事】ロシア国境警備当局は31日、サハリン(樺太)・北海道間の宗谷海峡で30日に停船命令を無視したカニ密漁船を銃撃し、拿捕(だほ)したと発表した。パナマ船籍とみられる「サキマル」で船員はロシア人と外国人というが、日本人が含まれるかは不明。
インタファクス通信などが伝えた。発表によると、密漁船は警告射撃に従わず、日本側の水域に逃れようとしたため、国境警備当局が銃撃して停止させた
●海難事故のニュースの船が、パナマ船籍が多いのはなぜ?
上記は拿捕というものですが、海難事故などのニュースの船でも、パナマ船籍が多い気がします。これは単純にパナマ船籍の船が多いからだと思われます。
では、みんなパナマ船籍にしたがるのは、いったいなぜ?と検索。出典のないヤフー知恵袋の記述ですが、良さそうなものがありましたので理由が大きい順に入れ替えて紹介します。まず、最も大きいのは船員の問題だとのこと。(文章も少しだけ変更)
<1番目の理由 船員問題>
<日本船籍の船には日本人以外の船員は乗せられません。日本人船員はとても不足しています>
(
『パナマ船籍』の貨物船が多いのはなぜですか?その船員の国籍は中... - Yahoo!知恵袋 2014/3/20 07:00:14より)
上記が本当であれば、日本船籍の船というのは相当難しそうですね。日本人がやりたがらない作業をする船や海外の船員が含まれる確率が高くなる特に大きな船で、日本船籍にするのはたいへんそうです。
●パナマ船籍にするのは税金面で有利だから…ではなかった!
他の理由も書いていましたが、税金対策といった理由は大きくないとされていました。意外です。
<2番目の理由 会社役員の問題>
<日本船籍の船を運航するためには社長が日本人でなければなりません。さらに役員も2/3以上が日本人である必要があります。国際化が著しく、国際的な人材登用を阻むことになります。
10年くらい前まで役員は全員日本人であることが条件でした。大きな船会社が役所にクレームをつけて現在のように緩和されました。
北米の支社長も、南米の支社長も、ヨーロッパの支社長も全員日本人でなければならない。これでは国際競争で勝ち残れません>
<3番目の理由 税金が安い>
<真っ先に思いつくものですが、前述の理由の方が大きくなっています>
●ロシアの排他的経済水域(EEZ)の漁で漁獲枠の超過で拿捕の例
表題の件はこれでわかっちゃったんですが、最初の件は日本側へ逃げた船が本当に悪いのかよくわかりませんでした。で、検索して出た
ロシアが北海道の漁船拿捕 漁獲枠超過か、乗組員無事 :日本経済新聞(2015/7/18 19:19)でわかった!と思ったのですが、よく見ると全くの別件。こちらは普通に日本人船長らしきものです。
<ロシア国境警備局が17日午後、北海道広尾町の広尾漁協所属のサケ・マス流し網漁船第10邦晃丸(29トン)を、漁獲枠超過を理由に拿捕(だほ)した。(中略)
広尾漁協によると、漁船は今月6日、北海道根室市の花咲港からロシアの排他的経済水域(EEZ)に向けて出漁。漁船は漁を終えて、17日午後6時50分ごろ、根室市・納沙布岬の南東約50キロのチェックポイントでロシア当局の漁獲量検査を受け、472キロ(漁獲枠103.25トン)の超過が見つかったという>
●今年で最後だったロシアでのサケ・マス漁、漁獲枠超過の理由か?
同じ件の別記事
ロシア、北海道のサケ・マス漁船を拿捕 最後の流し網漁:朝日新聞デジタル(2015年7月18日19時54分)。こちらを見て、ああ、あの話か!と思いました。サケ・マス漁で漁獲枠を超えて獲ったのは、翌年から漁ができないためだったのかもしれません。もちろんだからと言って不正して良いという意味ではなく、普通に悪いんですけど…。
<この水域のサケ・マス流し網漁は、ロシアが来年からの禁止を決め、最後となる今年の漁獲割当量も日ロの政府間交渉で前年の7割減と激減していた。操業は27日までで、第十邦晃丸は漁を終えて帰港途中だった>
2013年の安倍首相のロシア訪問が日本では大々的に報じられました。安倍政権は積極的にロシアと仲良くしています。ただ、最近のロシアの政策などは日本に対してむしろきついものが多くなっています。例えば、
露、流し網漁禁止へ…日本サケ・マス船に打撃 読売新聞 / 2015年6月25日 1時5分という記事が出ていました。
記事によると、<安倍首相は24日夕、プーチン大統領と電話会談し、日本の漁業関係者の懸念を伝えたうえで、法案成立を回避するように協力を求めた。だが、その約4時間後に法案は可決された>とのこと。パナマ船籍が多い理由もやりくりがたいへんなんだろうと感じさせるものでした。燃料の関係で、円安も基本的にはマイナス要因だと思われます。日本の漁業は苦しそうですね。
●よりによってスエズ運河をさえぎるように座礁した船、やはりパナマ船籍
2021/03/25:パナマ船籍のコンテナ船が2021年3月23日午前、紅海から地中海に向かう途中でスエズ運河をさえぎるように座礁し、他の船舶が航行できなくなっている…というニュースがありました。またしてもパナマ船籍ですね。さらに、< スエズ運河 愛媛の会社所有のコンテナ船座礁 他船舶航行できず 2021年3月24日 18時34分 NHK>によると、また日本関係であったようです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210324/k10012933841000.html
国土交通省などによれば、今回座礁した船は愛媛県の正栄汽船が所有していました。運航していたのは海外の会社なのでここに本来なら責任を押しつけたい人が多いでしょうが、台湾の会社だということです。座礁したコンテナ船を運航する台湾のエバーグリーン・マリンは「船主(正栄汽船のこと?)には、関係機関と話し合ってできるだけ早い復旧に協力するよう求めた」とコメントしています。
スエズ運河でコンテナ船が座礁したことについて、日本の海運大手の日本郵船、商船三井、それに川崎汽船の3社は、いずれも今のところ、船の運航に大きな影響は出ていないとしていました。ただ、国土交通省は、復旧にかかる時間が長期間におよび、別のルートにう回する必要が生じた場合、物資の遅配や運賃の高騰など経済への影響も懸念されるということで、情報収集に当たっていたそうです。
●親日国なのに…台湾企業が日本企業に全責任があるとわざわざ宣言
2021/03/30:上記の件ですが、座礁して動けなくなっていた大型のコンテナ船がついに離礁に成功。スエズ運河の通航も再開されています。ただ、6日にわたって塞がれた状態となったことで。世界の物流に影響が出ているほか、運河の通航料が重要な収入源となっているエジプト政府にも大きな損失が出ているという深刻な損害は出ました。加えて、通常の状態に戻るには、さらに時間がかかると見られています。
(スエズ運河 通航再開 コンテナ船座礁から6日ぶり 原因調査へ 2021年3月30日 11時52分 NHKより)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210330/k10012943681000.html
ところで、前述の台湾企業エバーグリーン・マリン(長栄海運)は、その後、座礁やそれにより派生する第三者への責任などに関連する費用や船体の損失はいずれも船主(日本の正栄汽船)が責任を負うとの声明をわざわざ発表。ネットでは台湾企業へのバッシングが相次ぎ、「親日国なのに」とか「中華系企業の反日テロではないか」とか言った声も出ていました。ただ、船主が責任を持つ契約は、この業界では一般的みたいですね。
(
スエズ運河座礁船 運航のエバー「船主が責任負う」愛媛の会社が所有/台湾 | 社会 | 中央社フォーカス台湾より)
損害に関しては、<座礁、毎時間436億円の損害 スエズ運河の航行停止で台湾紙>(3/25(木) 21:25配信 共同通信)などの記事が出ています。台湾紙、工商時報が、エジプトのスエズ運河で座礁したコンテナ船を巡り、運河内の航行停止による損害額は単純計算で毎時間4億ドル(約436億円)に上ると報じていました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/68e25c381e5fc31e08aae10c04aab28dbd73add5
また、別記事
スエズ運河の座礁船、所有者と保険会社に数百万ドルの賠償請求も | ロイターは、<保険会社やブローカーによると、船を所有する正栄汽船(愛媛県)と同社の保険会社はスエズ運河庁から座礁による収入面の損失を補償するよう請求される可能性があり、航路を妨害された他の船舶からも賠償を求められるかもしれない>と書いています。
●ひどい事故を起こした船の乗組員に日本人はおらず、~人だった!
一方で、
【スエズ座礁事故】船主責任、貨物損害 免責に。サルベージ費用は負担か|日本海事新聞 電子版という記事も出ていました。座礁事故の原因は強風と見られており、「予見可能性」と「結果回避可能性」を考慮して過失がないと見なされることがあるとのこと。前述の件とも合わせて、ネットで多かった「運行していたやつが悪い」も無理筋の可能性が高そうでした。また、たとえ過失があったとしても運河の滞船で第三者の船に生じた遅延による損失は、船主の賠償責任の範囲外となるそうです。
<一般的に座礁船の離礁にかかったサルベージ費用や船の修繕費用は、操船上の過失の有無にかかわらず、船主が負担する可能性が高い。一方、貨物の損害に関するカーゴクレームは、操船上の過失があった場合も国際条約「ヘーグ・ヴィスビー・ルール」に基づき、船主は免責される>
なお、正栄汽船によると、座礁した船はちゃんと保険に入っている船。ただ、私が読んだ記事の時点では、まだ費用面の話は出ておらず、把握できていないと会社の人が答えていました。それどころじゃないでしょうしね。あと、同じ記事では、船の乗組員25人(全員がインド国籍)という情報もあったので、ひょっとしたらインド人叩きも出ていたかもしれません。
また、スエズ運河では2017年にも、日本のコンテナ船が座礁し、航路をふさぐ事故が起きていたとのこと。このときは機械的な問題があったと報告されたそうですが、記事では損害賠償などの話はなし。また、当時は、エジプト当局がタグボートを展開し、コンテナ船は数時間で離礁したということで、今回ほどひどい損害ではなかったようです。
(
スエズ運河の座礁船、所有会社が謝罪 離礁は「困難極める」と WEDGE Infinity(ウェッジ)より)
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