「ご苦労様です」は目上の方に失礼で「お疲れ様です」を使いましょう…というのが、今の若いビジネスマンの一般的な認識じゃないかと思います。ところが、「ご苦労様だけじゃなくてお疲れ様も目上に使うのは失礼だ!」という話が出てきました。いったいどうすりゃいいのよ…という無理難題です。
2015/8/4:
●ご苦労様だけじゃなくてお疲れ様も目上に使うのは失礼だ!
●中高年は拍手喝采も…「お疲れ様でした」以外に言いようがない
●マナー違反は「ご苦労様です」の方 でも気にする上司は意外に少ない
2020/07/27:
●「ご苦労様は目上には失礼」も近年広まった誤解で昔は違っていた
●ご苦労様だけじゃなくてお疲れ様も目上に使うのは失礼だ!
2015/8/4:厳密に言うと、元記事ではそもそも「ご苦労様」の話は出ておらず、お疲れ様だけを問題視するものでした。
「お疲れ様」蔓延の背景 適当な挨拶ないためと金田一秀穂氏 NEWSポストセブン / 2015年8月4日 16時0分(週刊ポスト2015年8月14日号)で以下のような話があったのです。
<7月26日放送の『ヨルタモリ』(フジテレビ系)でタモリが、「子役が誰彼かまわず『お疲れ様です』といって回るのはおかしい」「『お疲れ様』というのは、元来、目上の者が目下の者にいう言葉。これをわかっていないんですね」と力説し、民放連(日本の民間ラジオ・テレビ業者が所属する団体)が子役に「お疲れ様」といわせないよう申し入れをすべきだとまで提言し、波紋を呼んでいる。
「お疲れ様」はいつの間にやら若い世代の中で挨拶のスタンダードになっているが、上から目線の言葉ではないかと違和感を持っている中高年が多く、このタモリの発言に快哉を叫んだ。「お疲れ様です」を巡っては社内で軋轢が生じ「お疲れ様禁止令」が出された広告代理店もあるという>
●中高年は拍手喝采も…「お疲れ様でした」以外に言いようがない
確かに私も社会人になった頃は、「お疲れ様です」に違和感がありました。ただ、先輩方が目上の人に使っていたため、真似して慣れました。郷に入れば郷に従えであり、むしろ真似しない方が叩かれます。面倒くさい世の中です。
本当は「正しくない日本語」も定着すれば、「正しい日本語」になるものです。現在の日本語は元を辿ると間違っているものだらけで、指摘しているとキリがありません。「お疲れ様です」も定着ということで良いと思うんですけどね。言語学者の金田一秀穂さんは以下のような解説でした。
「お疲れ様は、いたわりの言葉。力のある者でなければいたわれないので、いわれた側は“上から目線”を感じてしまう。私も学生が授業が終わった後に、『先生、お疲れ様でした』というのには抵抗があります。ただ日本語には、会った時に目上の人に対してきちっと使える、万能の挨拶語がないんです。
だから、『いつもお世話になってます』とか『先日はありがとうございました』とか、場面によって使い分けるしかなかった。『お疲れ様です』が広がったのは、適当な挨拶が他にないというのも大きな要因でしょう」
●マナー違反は「ご苦労様です」の方 でも気にする上司は意外に少ない
最初に"「ご苦労様です」は目上の方に失礼で「お疲れ様です」を使いましょう"と書きました。同様の話が
上司に「ご苦労様」は本当に失礼? | web R25(2014.12.05(南澤悠佳/ノオト))で出てきます。というか、研修で習うんですから、やはりもう完全に定着していると見て良いでしょう。
<目上の人に“ご苦労様です”は失礼。“お疲れ様です”と言うべき――社会人になりたてのころ、「敬語マナー研修」などで、そんな話を聞いたことのある人は多いだろう>
そして、タイトルでわかるようにこの記事は、「ご苦労様です」すら失礼ではないのでは?というもの。その根拠は?と見ると、アンケートでした。
<ビジネスマナー的にNGとされる言葉遣いを「失礼」と感じる上司の割合>
・「お疲れさまです」ではなく、「ご苦労さまです」と挨拶される(47.7%)
部下を持つ30~50代の会社員281人にインターネットでアンケート調査。※調査協力/ファスト・アスク
「ご苦労様です」でも、失礼だと思うが半数以下。ネットではこういうマナー系はここぞとばかり叩く人が目立ちますが、そういう人は心が狭いんですよね。マナーだとか「正しい日本語」だとかの前に、人間として大切なものを学ぶべきです。
ただ、そうは言っても、心の狭い人はたくさんいらっしゃいます。"「社内はともかく、社外の人にはちゃんとした言葉遣いを…」という意図で、敢えて注意している上司もいる"とのこと。まあ、これもその通りですよね。賢明な判断です。
私も少数の口うるさい馬鹿がいるからということで、言葉遣いはなるべく修正するようにしています。面倒でおかしな世の中だとは思うものの、わざわざ自分からトラブルに顔を突っ込んでいく必要はありませんからね。
●「ご苦労様は目上には失礼」も近年広まった誤解で昔は違っていた
2020/07/27:
いつも日本語で悩んでいます ―日常語・新語・難語・使い方
では、社会言語学が専門の中央学院大非常勤講師・倉持益子さんに意見を聞いています。昭和初期から2010年までのマナー本など200冊を材料に倉持さんが言葉の変遷を調べたところ、「お疲れ様です」以上に問題外にダメとされた「ご苦労様です」すら、最近定着したばかりの非常に新しい習慣のようです。自称「正しい日本語」を知ってる人なんて、こんなもんですわ。
<70年代に「ご苦労様は部下へのねぎらい」という記述が現れ、80年代に増加。90年代には「上司にはご苦労様よりも、お疲れ様がふさわしい」となり、
00年代には完全に「ご苦労様は目上には失礼だ」と変化しました>
(
「お疲れ様」か「ご苦労様」か? いつも日本語に悩んでいる校閲者の格闘…… | ダ・ヴィンチニュース 2018/5/1より)
倉持さんによると、江戸時代では上下に関係なく「ご苦労」という言葉を使っていたとのこと。今よりずっと上下関係の厳しかった時代ですらOKだったようです。現代の辞書でも『広辞苑』は「他人の苦労を敬っていう語」とするだけで上下関係には触れていないし、どちらがふさわしいのか断言はできないことがわかるといいます。
ただ、この前も書いたように、最初は間違っていたとしても定着すれば「正しい日本語」になるもの。歴史的経緯まで考慮に入れると、マナーを知ってる自称物知りは実際には無知な人なわけですが、定着した以上間違いに合わせる必要があります。面倒くさいんですけどね。
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