2014年の国際自然保護連合(IUCN)では、ニホンウナギを絶滅危惧種に指定しています。そういったうなぎ不足に関する話です。「うなぎを保護しない中国 ニホンウナギが不足で絶滅危惧種に」というタイトルにしていますが、実は日本自身、全然うなぎを保護しない国として知られていますので、そういった話も出てきます。
2021/11/30追記:
●密猟や産地偽装か?日本のウナギの多くが出所不明の不正流通 【NEW】

●うなぎを保護しない中国 ニホンウナギが不足で絶滅危惧種に
2015/8/4:産経新聞が
【主張】ウナギ資源保護 意識低い中国に対応迫れ(1/3ページ) - 産経ニュース(2015.8.3 05:01)とする記事を書いていました。
<水産庁は国内外のウナギ資源管理のため種々手を講じてきた。(中略)
しかし、肝心の中国では養殖業者が増産の動きを加速させているという。中国でのウナギ食への関心の高まり、消費拡大に加え、養殖業者の倫理観の希薄さが拍車をかけている。
「闇ルート」とされる北アフリカや南米からの稚魚調達だ。日本は国際組織とも連携し、摘発、壊滅に知恵を絞る必要がある>
ただ、そもそも産経新聞の記事は、"今年は2度目、土用の丑の日が巡ってくる。5日もきっとウナギ好きでにぎわうことだろう"で始まっているんですよ。後述するように、中国のうなぎをたくさん食べているのは日本人なのです。中国への圧力以外の対策も産経新聞は書いていましたが、日本人がうなぎを食べまくっていることに関しては、なぜか触れていません。
それどころか、日本人がうなぎを買い占めることは絶対にやめるべきでではないと思っているような感じ。産経新聞が細かく文章を分けてページビューを稼いでいるせいもあり、以下の「断固阻止したい」の意味がわかりづいのですが、たぶん「ニホンウナギの国際取引制限」を日本は何が何でも阻止すべきということっぽいです。つまり、ニホンウナギを自由に取引したいってことなんでしょうね。
<来年開催予定のワシントン条約締約国会議では、ニホンウナギの国際取引制限が提案される可能性は高い。昨年の国際自然保護連合(IUCN)による絶滅危惧種の指定が尾を引く。
断固阻止したい。日本のイニシアチブで、周辺国・地域への働きかけを強めたい>
●うなぎを食べ過ぎな日本人 マスコミの豊漁報道にも問題がある
冒頭の「ウナギ好きでにぎわうことだろう」の後は、"平成26年度漁期の好調にも支えられ、流通量は増えた。しかし、油断してはならない"と書いていました。実はこういった豊漁報道にも批判があります。ひとつは以下のように、産経新聞といっしょで中国が嫌いなため。ただ、これは日本が中国からうなぎを大量に買い入れているということの裏返しです。
「中国産はいらない」
「中国製の食品は怖くて食べることができない」
「安くても、中国製ではね~ 中国製で喜んでる人の気が知れない」
「うなぎ豊漁」報道に批判の声多数 web R25 / 2015年7月25日 11時21分 そして、もう一つはウナギを獲り過ぎというものでした。
「『豊漁』ではなく『ここ数年くらべると増えた』って程度、少ないのは変わってないから間違えちゃいけないよマスコミ」
「史上最低レベルから増えた、というのを『豊漁』と表現するのはやめろ!」
「『採れるから採る』が失敗のもとなんじゃ」
「いつと比べて『豊漁』って言ってるんだか…こんなだからそのうち食えなくなるんだよ」
ここらへんは他の魚、特にマグロなんかでもいっしょです。むしろ日本は資源保護の意識が低い国なんですよね。
うなぎ・マグロ不足は食べ過ぎだから 稚魚まで獲るから当然減るや
漁業衰退は政治の問題 先進国は成長産業なのに日本だけ衰退の謎で書いています。
●お前が言うな!うなぎを買いながらうなぎを売る中国を批判する日本
といったわけで、産経新聞記事の
はてなブックマークでは、猛批判に…。
“奴隷商人が、供給国に文句をつける構図。”(zhy 2015/08/03)
“今日の「お前が言うな」会場。ネット上でも指摘があるがむしろ鰻を絶滅の危機に追いやってるのは日本だろ。中国の養鰻場も輸出先は日本だし(メインは中国国内消費ではない)”(bogus-simotukare 2015/08/03)
“もう購読者に馬鹿しかいないから、そのレベルに合わせてわざと書いてるんだろ?”(genkiegao 2015/08/03)
“産経がウナギ問題を語れば当然こういうニュアンスになるだろうな。ウナギに限っては、爆食しているのは圧倒的に日本人だという事実から目を逸らすな。中国で養殖されたウナギの行き先はどこだと思っているのか。”(ncc1701 2015/08/03)
“意識の低い日本人が食わなければ済む話ではないですかね”(QJV97FCr 2015/08/03)
“その発想はなかった、さすが産経だわ。”(ad2217 2015/08/03)
“ウナギに限らず、何でもかんでも中国のせいにすれば(産経的には)丸く収まるという考え。ホントに意識低い。”(dd369 2015/08/03)
“
ヤクのユーザーがヤクの売人のモラルを問う意識高いコラム”(bigburn 2015/08/03)
“牛丼屋までうな丼を出すこと自体が問題だろが。果ては、ビカーラ種にまで手を出しているようだが。”(hyolee2 2015/08/03)
●世界中で獲れるうなぎの7割が日本人の胃袋に入るという事実
産経新聞はめちゃくちゃですので、一般的なうなぎ不足に関する報道も見てみましょう。
なぜニホンウナギは絶滅しそうに?うなぎにまつわる豆知識 nanapi / 2015年6月15日 12時0分では、以下のようなうなぎ不足の理由を挙げていました。ただ、別の理由も挙げているので、セットで紹介しておきます。
<うなぎの食べ過ぎ>
ニホンウナギ絶滅に一役買ってしまっているのが、私たち日本人。なんと、世界中で獲れるうなぎの7割を日本が消費しているそうです。シラスウナギといううなぎの稚魚の年間漁獲量は1960年代には200トン以上あったものが、2012年には3トン程度。ニホンウナギの漁獲量が減ると、ヨーロッパウナギなどを海外から輸入するようになり、なんとか国内需要を賄っていましたが、それも2009年に国際取引規制がされて風前の灯火という状態です。新しい輸入先として、東南アジアのピカーラうなぎを検討している業者もあるそうで、まだぎりぎりなんとか日本のうなぎ文化は保たれているようです。
<環境の悪化>
うなぎには稚魚のシラスウナギを捕まえて育てる”養殖”と、川に遡上してきたものを捕獲する”天然”があります。しかし、川のダム開発などの影響でうなぎが住めなくなり、天然も養殖も難しくなってきています。(中略)
<養殖が難しい>
うなぎは川に生息していますが、遠く東南アジアあたりの海で生まれます。約300キロ程度泳いで日本の川にたどり着くわけですが、まだ海にいる段階の稚魚を捕獲して育てるのがうなぎの養殖方法です。現在では、うなぎの産卵、孵化を人工的に行うことが難しく、実用化には至っていません。
といった感じで、基本的にはうなぎ不足の原因は日本を抜きにして語れません。あと、うなぎ不足とはあんまり関係ないんですが、同じ記事には"どの養殖場でどんな風に育てられたか?ということの方が重要で、必ずしも国産のほうがおいしいというわけではない"なんて話もありました。
要するに、「国産うなぎがおいしいというのは嘘」ってことですね。これは「あんたら、騙されてるよ」という話かもしれません。ただ、途中で中国産を叩く話があったように、国産うなぎを欲しがる日本人は減らないと思います。
●密猟や産地偽装か?日本のウナギの多くが出所不明の不正流通
2021/11/30追記:そもそも日本人が悪いよね…の関係では、
ウナギ稚魚36%出所不明 2020年採捕、「不正流通」が横行|あなたの静岡新聞(2021.2.9)という記事が出ていました。静岡県はうなぎの産地ということで関心が高いのか、静岡新聞による記事です。
<2020年漁期(19年11月~20年5月)に国内で採捕されたシラスウナギのうち、36・8%が出所不明だったことが8日、水産庁への取材で分かった。シラスウナギは絶滅が危惧されるニホンウナギの稚魚で、養殖に使われる。国や採捕を許可する都府県は取引の透明化を進めているが、密漁や横流しなどの不正流通が依然として横行している実態が浮かび上がった>
2020年漁期に国内の養殖業者が池入れしたシラスウナギは計20・1トン。このうち3・0トンは中国などからの輸入でした。この残りの17・1トンは国内の漁師が採捕したことになるはずなのですが、各都府県への報告は10・8トンにとどまり、6・3トンが出所不明となっています。密漁や横流しなどの不正流通とあったように、日本の業者が偽装している可能性が高そうです。
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