だいぶ間が開いてしまいましたが、
AO入試の学生が就活で不利で内定取りづらいは嘘?面接は得意では?の続き的なもの。このとき紹介した記事を書いていたクロイワ正一さんは、「AO入試進学者は内定が取れない」という話にたいそうお怒りでした。
●AO・推薦入試経由の学生の内定率は悪いに反論
そして、「AO入試や推薦入試で大学に入ると就職に不利なのですか」という質問に対して、以下のように書いています。
【入試方式と就職1】「AO入試進学者は内定が取れない」は本当か | リセマム 2013年4月2日(火) 08時15分 クロイワ正一
「まともな企業の採用活動では、そのような履歴を問う余裕はありませんし、逆にそんな馬鹿馬鹿しい採用基準をもつ会社に入らない方がいいでしょう」と。
そう即答できた背景には、20数年間、さまざまな企業の人材採用・育成の支援に従事してきた経験から得た採用基準がありました。「企業が採用すべき学生を評価する基準は、そのようなモノサシではない。まして21世紀社会では、なおさらそうである」という確信があったのです。
ただ、前回の
AO入試の学生が就活で不利で内定取りづらいは嘘?面接は得意では?でも書いたように、この記事では特に証拠が書かれているわけではありません。
そして、やはり前回書いたように、むしろAO・推薦入試経由の学生の内定率が悪いというデータなら、他の記事でありました。(そのデータの信頼性も問題ありそうでしたが)
●すべての進学者がそうであるかのように捻じ曲げる物言い
ただ、上記の記事は、"次回は、「AO・推薦入試経由の学生が就職活動で不利」という発言の危うさを、論理的かつ実証的に示します"としていました。次回以降に証拠が出てくるのでしょうか?
その次回の記事というのは、
【入試方式と就職2】経団連が新卒者に求める資質 | リセマム(2013年4月3日(水) 08時15分)。
初っ端から"前回は、大学受験界を巡る「AO・推薦入試経由の学生が就職活動で不利」と言う噂が、いかに妄言・迷言であるかについて説明しました"と書いていて、不安になります。あれで論破できたと考えてしまうとは…。
まあ、とりあえず、今回のものにも"こうした議論の不毛さを実証的かつ論理的に示させていただきます"とありますので、読んでみましょう。
第1に、この話は「AO・推薦入試を経由した進学者の中には、高校時代にあまり勉強しなかった学生もいる」という現実を、あたかもすべての進学者がそうであるかのように捻じ曲げています。指定校推薦で進学する生徒は、高校の成績上位者ですから、むしろ逆です。また、自己推薦、公募推薦、AO方式経由の入学者の中にも、成績優秀で学力の高い生徒はたくさんいます。「AO・推薦入試で大学に入った。ゆえに、学力レベルが低い」という論理は、ここにおいて脆くも崩れます。
だから証拠出しましょうよ…。「AO方式経由の入学者の中にも、成績優秀で学力の高い生徒はたくさんいます」という物言いも、「あたかもすべての進学者がそうであるかのように捻じ曲げ」たという意味では、五十歩百歩です。
●就活は成績よりコミュ力 だからAO・推薦入試組は不利じゃない
ここまでは論外なことしかおっしゃっていませんでしたが、次は初めてそれなりでした。
第2に、「高校レベルの勉強の習熟度が低い。それゆえ、企業は避ける」というロジックにも無理があります。日本経済団体連合会が提示する「新卒者に求める資質」を見ると、上位項目は「コミュニケーション能力、主体性、協調性、チャレンジ精神」となっています。他の調査でも類似の結果が出ています。どこにも「高校時代の成績(勉強のでき具合)」といった項目はありません。さらに言えば「大学時代の成績」すら、さほど問うていないのです。
本来ならきちんと数字で示すことができるものがほしいですが、経団連の「新卒者に求める資質」で「コミュニケーション能力」などが上位、「大学時代の成績」が下位というのは、AO・推薦入試経由の学生が就職活動で不利とは言えない証拠になり得ます。
「証拠があって良かったじゃん」と思ったのですが、この後、"私が言いたいことは「成績優秀者がよくない」ということではありません。就職活動と大学入試の際の受験方式は、別の次元の問題であるということです"と言い訳していました。
しかし、要するに企業は成績は求めていないのでAO入試でも大丈夫ということであり、それどころか「コミュニケーション能力」などを求めているのでAO入試組は有利という情報です。
●あたかもすべての進学者がそうであるかのように捻じ曲げる悪記事
シリーズはもう一つありましたが、宣伝色の強いもの。クロイワ正一さんは、そもそもAO入試振興協会・理事長なんだそうですわ。そりゃ、AO入試を褒めたたえるに決まっていますね。参考になりません。
ただ、"あたかもすべての進学者がそうであるかのように捻じ曲げ"る行為を、こっちの記事でも堂々とやっていて失笑したので引用。
【入試方式と就職3】遠未来、近未来、現在・過去を考える意味 | リセマム 2013年4月4日(木) 08時15分
坂上吾一・太一(ともに仮名)兄弟という、とても印象に残っている教え子がいます。二人とも、同じ私立大学の法学部政治学科にAO入試で入学しました。(中略)
二人とも、高校の先生からは「一般入試ではハードルが高い」と言われていましたが、見事AO入試で合格し、念願の学びの機会を手に入れることができました。そして、吾一くんは、大手シンクタンクに就職し、IT技術で地方自治を支援しています。太一くんは、大手広告代理店と全国紙の内定をダブルで獲得し、後者に入社しました。
個別の事例をあたかも全体で起きているように見せかけています。ひどいですね。
しかし、「一般入試ではハードルが高い」、つまり、一般入試では入れないレベルの学生ということですので、前の記事でご自身が主張した「AO・推薦入試の学生は成績優秀で学力が高い」という主張に不利な例でした。
●やりたい仕事を高校生のうちから決めているので就活で有利?
なお、同じ記事では、AO入試では「大学で学んだことを活かして取り組みたい仕事」などを求められるとありました。その上で、" このようなキャリアデザインを早期から考えていれば、就職活動もスムーズに進みます"と宣言されていました。
ただ、
子供の頃からやりたい仕事がある人ほど就活で内定をとれない?で見たように、早くからやりたい仕事がある人はむしろ内定率が悪いというアンケートが存在しています。
このアンケートにしても、前回の
AO入試の学生が就活で不利で内定取りづらいは嘘?面接は得意では?で出た数字にしても、私は調査としては不十分な点があると思っています。ただ、今回の記事のように具体的な数字もなしに断言するよりはずっと良いです。
こういう口八丁で相手を騙してしまうというやり口は、AO入試の学生に向けられている悪いイメージそのままであり、人によっては余計印象が悪化してしまう記事だったかもしれません。
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