魚売り場はとにかく手間がかかり、スーパーにとって厄介な代物であり、これを縮小、あるいは失くすといった選択をするところも増えているそうです。ただ、高松のスーパー「きむら」は、むしろ難しいからこそ差をつけられるとして力を入れて成功したとのことでした。
2015/8/9:
●難しいからこそチャンスがある、高松のスーパー「きむら」の逆転の発想
●生鮮食品なら差をつけられる…水族館のような楽しい売り場も作成
●木村宏雄社長自身がプロ志向、中小企業が伸びるには代替の効かないプロに…
2020/07/12:
●未公開株全国上位企業だったマルナカ、イオングループに吸収される
●難しいからこそチャンスがある、高松のスーパー「きむら」の逆転の発想
2015/8/9:数年前に
日本人の魚離れは深刻 あと数年でスーパーの魚売り場はなくなる?というのを書いています。でも、数年経っているのに、スーパーの魚売り場はなくなっていませんよね。元記事はやっぱり大げさだったのかな?と思います。
ただ、このとき用いた記事での魚売り場衰退の理由の大切なポイント自体は、嘘ではないでしょう。スーパーにとって魚の扱いが難しくて面倒くさくて知識を深めるのがたいへん…という指摘でした。
ところが、このスーパーにとってたいへんだということは、差別化するチャンスがあるとも言えます。いわゆる逆転の発想ですね。なるほど!と感心したこの発想で伸びているのが、高松のスーパー「きむら」だそうです。
新鮮市場きむらを運営するきむらの木村宏雄社長が脱サラし、妻の実家が運営する食料品店を手伝い始めた1980年代の香川県内は、マルナカの一人勝ち状態だったそうです。圧倒的な購買力を誇るマルナカに対抗するためには、どうすればいいかと考えて、木村社長が目をつけたのが生鮮食品だったそうです。
●生鮮食品なら差をつけられる…水族館のような楽しい売り場も作成
なぜ生鮮食品だったのか。スケールメリットが効きやすい加工食品や酒、日用品などの物販ではマルナカには太刀打ちできません。また、たとえそこで戦ったとしても利益はほとんど出ません。一方で、加工の仕方などで小売りでも工夫ができる青果や鮮魚、精肉はいわば“製造業”。
扱いが難しいからこそ、差別化もできるという考えだったそうです。
この話があったのは、<高松のスーパー「きむら」は「水族館」で勝つ:日経ビジネスオンライン>(中 尚子 2015年5月25日)という記事でした。記事のタイトルになっている水族館という表現は、水槽には、天然ヒラメやオコゼが泳ぎ、発泡スチロールに魚が山盛りにされているためのようです。
<壁には大漁旗まで掲げられてあり、その様子はまさに魚市場そのもの。魚の臭いが立ち込め、雑多に見える店頭だが、見たこともない魚が並ぶ店内を歩くのは、なんだかとっても楽しい。この不思議な“ワクワク感”こそ、新鮮市場きむらの持ち味らしい>
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20150521/281431/
●「きむら」の売り場担当者は本物のプロ
水族館のような売り場というのは、確かに楽しいだろうなと私も思います。ただ、ポイントはここではなく、担当者がプロであることでしょう。きむらは飲食店向けの高級魚を増やして、稼ぎ頭に育ててきました。プロのお客が多いのです。これは取り扱っている魚の種類だけの問題ではありません。
鮮魚売り場の店員もまた元料理人が多く、「さわらのメスとオスの違いについて、話ができる店員がいるから、仕入れにきた料理人に信頼してもらえる」(木村社長)とのこと。また、売り場担当者もバイヤーと分かれているのではなく、買い付けも自分で行います。これには以下のような効果もありますが、やはり「プロだ」とまとめられます。
<きむらの鮮魚売り場では、売り場の担当者が毎日市場に行って、買い付けをする。そのため、きむらは店舗ごとに並ぶ魚が違う。売り場の担当者が仕入れから販売までを担い、売り上げに責任を負うため、モチベーションも上がる。鮮魚売り場が一つの店舗で、売り場担当者は店主のような役割を担う>
●木村宏雄社長自身がプロ志向、中小企業が伸びるには代替の効かないプロに…
プロ志向はそもそも木村宏雄社長からしてそうです。まず、卸店で肉の部位から解体の仕方を学んだり、地元のスーパーで鮮魚の買い付けの仕方を学んだり、調理学校に通って惣菜作りの知見も深めたり…。
<牛肉などを一頭買いしていかに無駄を出さずに商品にしていくかというノウハウを蓄積した。(中略)
競争力のある新鮮な食品を安く仕入れて、余った食材を惣菜にすることで、無駄を出さずに活用する>
全然話が異なるのですが、何となく思い出したのが、
ベストセラーが売れない恵文社一乗寺店が、本屋生き残りのヒントにという本屋さんの話です。
恵文社一乗寺店のポイントは"「モノ」を売っているわけでなく「体験」を売っている"というのもあるんですが、信頼された目利きという書籍のプロ的なところがあります。こちらもポイントのひとつでしょう。
で、この話をブログ内で検索していたら、モロにそういうテーマである別投稿の
中小企業の生き残り戦略・成長戦略 必要とされる目利きになる!(「必要ないから潰れる…酒商山田に学ぶ酒屋が生き残る方法とは?」にタイトル変更)という話も出てきました。これはお酒の目利きということで食べ物系ですので、さらに近い例ですね。
単純な価格や利便性などで負ける中小企業などが生き残る道としては、こういう方向性が一つの答えかもしれません。
●未公開株全国上位企業だったマルナカ、イオングループに吸収される
2020/07/12:香川県内で一人勝ち状態だったというマルナカはどんな企業なのだろう?と思い、こちらについても検索。すると、今はすでにイオングループに取り込まれているということでびっくりです。ただ、極端な業績不振というよりは将来を見据えて…な感じですね。
マルナカがすごかった…というのは予想以上であり、
マルナカ (チェーンストア) - Wikipediaによると、当時の社長であった中山芳彦夫妻と資産管理会社のマルナカホールディングス(旧:マルナカ開発)がほとんどの株式を持つ非上場企業で、毎年日経未公開株上位にランクされていたそうです。
マルナカホールディングスは、マルナカと山陽マルナカを持っており、関西を含めて四国や瀬戸内海地域に次々と出店する「瀬戸内リージョナルチェーン構想」を掲げて、鼻息も荒かった感じ。ただ、もともと書いていた「きむら」などといった競合他社との競争の激化により、この計画は挫折します。
<しかしながら、近年においては県内のマルヨシセンターやきむら、ムーミーとの競合に加え、県外からもフジ、ママイ、サニーマート、キョーエイ、ハローズ、大黒天物産、イズミ、イオングループなどが進出。また山陽マルナカにおいても、岡山県内において天満屋ハピータウン、ニシナ、ハローズ、大黒天物産、イオングループなどとの競争が激化していた>
マルナカはどこのボランタリー・チェーンにも属さず完全独立を守っていたものの、2010年8月11日に、ライバルのひとつであったイオン株式会社や三菱商事株式会社と包括業務提携契約などを締結。さらに、電子マネーの運営やPBの連続した充実などの変化に対応するには莫大な資本が必要だとのことで、2011年10月には、イオングループの子会社となることが発表されます。
また、2016年5月27日には、マルナカ初の創業者一族以外の社長として、イオングループ出身者の平尾健一さんが就任。2019年にはイオングループであるマックスバリュ西日本の完全子会社化となっています。今後は、分けていたマルナカ、山陽マルナカを経営統合する計画とされていました。
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