高齢者の感情コントロールは、子供なみだというショッキングな話。<60歳の老人と6歳児はキレやすさがいっしょ 高齢者犯罪が激増している日本>、<若者より老人が短気でキレやすい理由 脳の老化こそキレる原因>などをまとめています。
●異常と言って良いほど!高齢者犯罪が激増している日本
2010/12/2:もともと調べていたのは、高齢の犯罪者についてで、
「居心地いい刑務所へ戻りたい」 読売ウイークリー2008年3月9日号 秋本 宏みたいな記事を読んでいました。この記事は刑法犯全体は減少傾向にあるなか、高齢者の犯罪が急増しているという話です。
ただ、全文が読めるわけでなく、「これ以降の記事は、読売ウイークリーをお買い上げの上、お読みください」と書かれていて途中までしか読めませんので、キレやすい方はご注意を。有料部分しか読めないために、全体としてどういった論調になっているのかはわかりません。
とりあえず、この記事の無料部分での論調は「貧困が原因で仕方なく」といった感じで穏やかですが、他のサイトも読んでみると「むしろノリノリ」とか、「高齢化が進んでいる他の国と比較して異常に多い」とか、「少年犯罪防止よりもむしろ大きな問題」とか過激な感じでした。
●60歳の老人と6歳児はキレやすさがいっしょ
でも、今日書きたいのは犯罪の話ではなく、キレやすさの話なんです。読売ウイークリーでは、加齢に伴い、脳の前頭前野の外側部が衰えてくると、怒りっぽく、キレやすくなることを指摘。諏訪東京理科大の篠原菊紀教授(脳・人システム論)は、以下のようにおっしゃっていました。
「高齢者がキレやすいことは、抑制力がなくなってきていることの表れです。幼稚園児から80歳までの脳を調べていくと、怒りなどを抑制する機能は 30歳をピークに徐々に落ち始め、60歳になると、6歳児とほぼ一緒になってくるのです。高齢になればなるほど先のことが思いえがけなくなって、衝動的に目先のことばかりに思考がいくのです」
「60歳の老人と6歳児はキレやすさがいっしょ」というのには驚きました。以前
ノアの箱舟の教訓を書いたときに、キリスト教では「年を取ると人は理性をコントロールする能力を失ってわがままになるものだ」と考えているらしいという話も紹介しましたが、本当にそうなんですね。
しかも、まだ60歳ですよ。仕事の定年の年齢(65歳定年制なら60歳は現役!)で6歳児並だと言うのです。さらに役員などでしたらもっと上の年齢の方もいますが、忍耐強さは幼稚園児並ということなんでしょうか? これには、ショックを受けてしまいます。
●加齢によって最も弱くなるのが「前頭前野」若者も 他人事ではない
他の記事ではどう書いているだろう?と探してみると、
国立長寿医療研究センターの何やら専門的な文章(ページタイトルなし)が出てきました。ここの「1.老化による前頭前野の機能低下の発生機構と漢方薬による制御に関する研究」によると、加齢性変化が最も強く現れるのは先程の読売でも出ていた「前頭前野」であり、その影響は海馬よりも強いとされているそうです。
そして、この前頭前野は、他の脳部位を統御することにより、情動(急激な怒り・恐れ・喜び・悲しみといった感情)などをコントロールすると考えられているます。そのため、老化により前頭前野の機能が低下した状態にストレスが加わると、過剰に反応してしまい、情動異常が発生する可能性が考えられるそうです。
たぶん60歳の人は今日のタイトルを見た時点で読んでいないと思いますし、この文章を読んでいる皆さんはおそらくもっと若いでしょう。しかし、「俺は30歳で死ぬことにしている」といった方などおいった奇特な一部の例外の方を除き、間違いなく年を取るわけですから他人ごとではありません。
老人になって心身が衰えるのは仕方がないことではありますが、怒りっぽくなるというのは周りの方にも迷惑をかけてしまいます。自分もそんな風になってしまうのかーと考えると、何だか悲しくなってしまいました。どうにかならないもんですかねー?
●前頭葉の萎縮は認知症の一種…最近の高齢者は昔の高齢者の3倍犯罪
2017/07/30:今回は別記事を紹介します。
News Up キレる高齢者増えた?その訳は‥‥ | NHKニュース(7月28日 17時17分 ネットワーク報道部 管野彰彦記者)という記事がありました。「あしかりクリニック」の院長で精神科の芦刈伊世子医師は、やはり前頭葉でキレやすさを説明しています。
ただ、認知症の一種であるという説明は初耳でした。芦刈伊世子医師は「前頭葉が萎縮するのは認知症の1つで、記憶力などに問題はないが脳機能が低下することで感情の抑えが効かなくなって我慢ができない状態になる。早い人では60歳ぐらいから症状が出始める」と説明していたんですよ…。
今日読み直すまで、冒頭の導入部で「日本は異常に高齢者犯罪が増えている」という話を書いていたことは、すっかり忘れていました。しかし、ちょうど良いことに、今回の記事では犯罪に関する話も出ています。法務省の犯罪白書によると、おととし刑法犯で検挙された65歳以上の高齢者は4万7632人。これは、平成元年に比べて7倍以上に増えているという数字です。
高齢者人口自体が増えているために、高齢者の犯罪が増えることは当然といえば当然。ただ、65歳以上の人口10万人あたりの「割合」で見ても、3倍以上に増加していることがわかっています。つまり、単純に人口が増えただけでなく、犯罪を犯す割合が激増していたのです。
犯罪の多さ=キレやすさではないものの、こうやって変化が見られているということは、単純な加齢の問題ではないのではないか?と思わせるところがあります。
●仕事人間で自信と誇りを持った人間が犯罪者になりやすい
この理由をたった4人に話を聞いただけで説明するというのは、正直かなり乱暴で良くないと思うのですが、NHKでは、放火や殺人未遂の罪などで服役している受刑者や刑期を終えて刑務所を出た人など4人から話を聞いて、2つの共通点を見出していました。
(共通点1・“仕事人間”)
一つ目は全員が仕事を生きがいとする「仕事人間」だったことです。4人とも「仕事は楽しかった。生きがいだった」と口々に話しました。「団塊の世代」など今の70歳前後の人たちは「モーレツ社員」とも呼ばれて日本の高度経済成長を支え続けてきました。それだけに仕事を失った時の喪失感が深く大きかったように感じました。
(共通点2・自信と誇り)
二つ目は自分の生き方に強い自信や誇りを持っていることです。過去の成功体験にこだわるあまり、年を重ねてからの挫折を受け入れられず、苦境に立たされた時も周囲の目も気にして誰にも相談できなかったと話していました。
なお、問題があったときに、弱みを見せられないというのは、男性全体の特徴としてよく指摘されています。これは精神障害の発見や回復などでも大きな妨げになります。
●「社会的な孤立」でキレやすくなる老人たち
前述の通り、上記のまとめは乱暴だと思ったものの、「社会的な孤立」という言い方をされると、一応筋は通っていると感じられます。この「社会的な孤立」について、犯罪学が専門の龍谷大学法学部の浜井浩一教授は高齢者がキレることと関係していると指摘していました。
「70歳前後の世代は仕事が自己実現の場であった人が多く、会社を退職すると社会とのつながりが希薄になっていく。日本で犯罪を抑止しているのはモラルより同僚や上司、それに部下といった周りの目を意識した相互チェックであり、社会とのつながりが弱くなれば秩序の維持が難しくなって、キレたり事件を起こしたりしてしまうことにつながる」
日本は犯罪が少ない国だと言われていますが、これは相互監視社会のせいと分析されることが多いです。上記の分析は、社会的に孤立することにより、相互監視の目が薄れ、キレて犯罪に走りやすく…といった話でしょう。
これが正しいかどうかはわからないものの、老人に限らず「社会的な孤立」が問題を引き起こすことは間違いありませんから、対策が必要だという点は同意します。
●気の短い運転手にクラクションを鳴らされたら、やはり高齢者
2016/11/4:学生の頃の友達は、足の歩くのに遅い老人らに毎度イライラしていました。お年寄りは動作が緩慢なので私もたまに早く抜きたいと思うことがあり気持ちはわからなくもないのですが、そこまでイラつくことはないだろう…という感じでした。
ただ、「キレやすい若者」というイメージとは裏腹に、一般的に若者より老人らの方が気が短いです。なぜか?と言うと、前半ででやったように、脳が衰えるためです。あまりこういう話をしてしまうのも、良くないですけどね。老人バッシングに繋がりかねないという若者側の問題が一つあります。
また、こういう知識を得てしまうと、老人らが思い込みで余計感情をコントロールできなくなってしまうというのもあります。感情を抑えられないことを正当化して、ますます遠慮無くキレてしまうというのもあるかもしれません。
とりあえず、私が最近こうした話を思い出したのは、この前、道を歩いていて自動車からクラクションを鳴らされたためでした。歩いていたのは、道幅が極端に狭いところではなかったものの、自動車2台と歩行者が同時はちょっときついくらいの道路です。
進行方向右側には自動車が止まっていて、さらに狭くなっていました。私は前の歩行者に合わせて右側を通行。そして、右側には自動車が止まっていてその隣を通っていてもう少しで通り終わるというところで後ろからクラクション(ホーン)が鳴らされました。
ただ、クラクションはこれで終わりではなく、駐車している自動車を過ぎてすぐにもう一度。たぶん最初のクラクションは歩かずに早く行け、2度目は車の横を過ぎたらすぐに避けろってことだとは思うのですが、そんなに早く避けられませんし、イライラしすぎだろう…と振り向いて運転席を見らた、おじいさんだったのです。
で、やっぱり老人って感情がコントロールできないんだなという前述の話を思い出したというわけでした。私の反省点としては、こんなんで轢かれては敵わないので、駐車してある自動車を抜く前に立ち止まって、おじいさんの自動車を先に行かせてしまうべきだったかな?というところ。
そもそも気が短い人は歩行者が多いところでもかなりスピードを出すので、予想するのが難しいかもしれませんけどね。普通のドライバーは歩行者が多いところでは、「かもしれない運転」でスピードを抑えます。
だろう運転 - Wikipedia<だろう運転(だろううんてん)とは、自動車の運転において、事故に繋がるような楽観的予測に基づいた運転を戒める日本語の慣用句。(中略)
かもしれない運転
「だろう運転」の対義語として、より悲観的な視点から様々な可能性を想定し、十分な余裕(安全マージン)を持って運転することを指すのが、「かもしれない運転」である>
あと、老人は老人で、運転以外の意味でも危ないなと思います。クラクション鳴らされた人の方も短気だったら、因縁つけられたり、自動車蹴られたりでトラブルになりかねません(実際、殺人も起きています)。私の場合、後ろ姿からして明らかにガリガリなので、そういうタイプには見えなかっただろうと思いますが…。
●若者より老人が短気でキレやすい理由 脳の老化こそキレる原因
今回の話の関連で…ってことで検索したら、
「スマホ分からん!」などでキレる老人 その理由を脳の観点から考察 2016年4月11日 16時0分 NEWSポストセブンという記事も見つけました。
最近、キレる老人による事件が増えている。たとえば、タバコのポイ捨てを小学1年生男児から注意された75歳の男が男児の首を絞めて逮捕されたという騒動なども。なぜ、キレる老人が増えているのだろうか。「脳」の観点からこの問題を考察するのは、脳情報を提供する「脳の学校」の代表取締役で医学博士の加藤俊徳さんだ。
これまで1万人以上の人間の脳と向き合ってきた脳のスペシャリストは、「脳の老化こそキレる原因」と指摘する。
「高齢者の脳は、使っていない範囲がどんどん増えていき、それに伴って脳の機能が衰えていきます。それゆえ物事に対する理解力が低下して感情的にイライラしやすくなる。一方で、老化によって、脳内の感情をコントロールする部分が縮み、怒りの感情を抑制することが難しくなります。理解力の低下と感情を抑制できなくなることが車の両輪となり、暴走老人を生むのです」(加藤さん)
脳はさまざまな機能を分担する「脳番地」に分かれて働いており、そのうち、物事や言葉を理解するのに関係する「理解系脳番地」と、感性や社会性に関する「感情系脳番地」の働きが劣化することで、キレる老人が出現するというのだ。
ただ、考えてみると、
遅い車にイライラする人ほど運転が下手?スピードを出す運転手はストレスに弱いをやったように、運転手がやたらとイラつくというのは老人に限った話ではありません。暴走事故のニュースもよく聞きますし、歩行者としてはもっともっと警戒した方が良いかもしれません。
●会社では偉かったんだ!退職後の変化に怒る老人たち
2017/11/19:同じような話になりそうですが、補足的に。2017年11月17日放送【おはよう日本 けさのクローズアップ】(NHK)によると、65歳以上の高齢者に「日常生活の中で怒りを我慢できない時はあるか?」とアンケート調査を行なうと、「よくある」が4%、「たまにある」が46%という結果になりました。
これは年齢による変化が不明でよくない調査だと思ったものの、3割が「年を取るにつれ、怒りを抑えることが困難になる」と答えたということで、変化を自覚している人もいくらかいることがわかりました。このように加齢とともに怒りっぽくなることに関して、番組で挙げられていた理由は3つ。前頭葉以外の説明もありました。
(半数が経験、突然キレる高齢者が激増中 脳の衰えと退職後の生活の変化に理由が J-CAST ニュース - 11月19日 08時00分 より)
http://ecnavi.jp/mainichi_news/article/b541789e98f70f37b9bdffbe317d6b6d/
(1)年をとると怒りを抑える前頭葉の機能が衰え、抑えが利かなくなる。また、加齢とともに記憶力や聴力も衰え、相手の話を理解できず、怒りに拍車をかける。しかも、脳の衰えを本人が自覚していない。ただし、個人差があり、すべての高齢者に言える説明ではない。(加藤俊徳医師の説明)
(2)年功序列により会社では良い待遇を受けていたため、退職後に同じ態度で接してもらえないことに不満を感じる。(社会学者の小宮信夫・立正大学教授の説明)
(3)高齢者には、今の情報社会、ITやSNSに付いていけず、置いてきぼりにされているという不安がある。(社会学者の小宮信夫・立正大学教授の説明)
(2)に関しては、社会の方が間違っています。一つは年齢が上だからと行って威張るというのがおかしいということ。さらにもう一つ、上司や先輩が権威主義的に振る舞うというのが、そもそも間違いであるというのがあります。
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私は年齢に関係なく、相手に一定の敬意を払うべきだと考えていますので、上司や高齢者にぞんざいな態度で接して良いとも思っていません。ただ、「年齢が上だから敬え」が弊害を起こしている部分がありますので、もう少し改めていった方が良いと思います。
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