有機~とか、オーガニック~とか言われる野菜について。安全性が売りになっている有機栽培野菜ですけど、実際には下手したら死ぬという結構難しい栽培方法です。安全性・栄養で比較した研究では、有機栽培野菜に有利なものもあります。ただ、そういった有機栽培に有利な調査では、データ的な証拠を出していないといういかにも怪しいものも含まれており、他の研究と合わせて考えると大差なしといった感じに見えました。
あと、味について比較してもらったら、専門家も素人も有機栽培野菜の方が劣るという結論になったという身も蓋もない調査まで出ています。有機栽培野菜の方がおいしいってのは、オーガニックというブランドによる思い込みかもしれません。人間の味覚って、かなり事前の情報に影響されるんですよね…。
2018/02/07:
●一時ほぼ全くなくなかったのに…無農薬野菜ブームで寄生虫感染が復活?
2021/04/23:
●化学肥料を使わずに栽培される野菜が増えたことで起きた問題とは? 【NEW】
●オーガニック食品は安全ではなく危険?普通の野菜に比べるとむしろ…
2015/8/16:
有機農業は化学肥料よりずっと危険 食中毒では死ぬが、残留農薬では死なないと似た話ですが、有機栽培野菜の怖さについて。
そろそろ無農薬/有機栽培野菜に対する盲信を見直してはどうか - A Successful Failure(2008-08-17)によると、ミネソタ大学の研究で以下のようなことがわかったそうです。
<2004年、ミネソタ大学のAvik Mukherjee博士らは『ミネソタの農場で有機栽培および通常栽培された果物や野菜の、大腸菌群、大腸菌、サルモネラ菌、大腸菌O157:H7 の収穫前評価』という農場レベルにおける有機栽培果実や野菜に関する初めての微生物学的評価を発表した。
調査では新鮮な476種類の有機栽培農作物と129種類の通常栽培農作物の大腸菌群による汚染状況を調べている。有機栽培農作物の大腸菌群汚染率は9.7%と、1.6%の通常栽培農作物に比べ6倍もの高率を記録した>
大腸菌群汚染率が高い理由は、有機栽培においては家畜の糞尿を原料とする有機質肥料や堆肥がよく利用されるため。私も有機栽培ではこれが一番怖いですね。大腸菌というのは、例のO157が有名です。ですので、当然生命に関わってきます。
O157が猛威をふるった年として知られているのは、1996年。
O157 - Wikipediaでも<1996年(平成8年) - 岡山県邑久町(現瀬戸内市)を始めとしてO157の集団感染が多発し、被害は、発生件数179件、患者数14,488人、死者8人。連日の報道で多くの人々にO157の危険性を知らしめることになった>と書かれています。
ただ、Wikipediaに載っているだけでももっとたくさんの例があるんですよ。有機栽培野菜はそもそも主に安全性を売りにして消費者に買ってもらっているのですから、これを否定されたら終わりですね。ただ、もちろんオーガニックな野菜を食べたら必ず死ぬというわけでもありませんよ。
有機農業は化学肥料よりずっと危険 食中毒では死ぬが、残留農薬では死なないでは、有機栽培農家の安全への意識がイマイチだったという話が出ていました。とはいえ、きちんとした手順さえ踏めば、消費者の口に入る前のどこかで危険な菌は除去されているはずです。「普通の野菜よりは危険」というだけで、危険で食べちゃいけないようなものではありません。
●有機栽培野菜は普通の野菜に比べてむしろおいしくない
安全性に比べれば重要度は落ちますが、おいしさについても否定的な研究が多いようです。この手の話の個別事例としては以前、
高く売れる野菜は有機栽培・無農薬じゃなくて普通においしい野菜で書いています。ただ、先のA Successful Failureさんの話は文献に基づいているってのがいいですね。以下の通りですけど、先ほどの安全性についても触れらていますので、まとめて両方否定する形です。
・英国食品基準庁は2003年、「有機栽培農作物が通常栽培農作物に比べて、より安全とかより栄養があるという科学的な証拠は現時点ではない」とする見解を発表している。
・フランス食品衛生安全機関(AFSSA)が公開した報告において、食品の安全性及び栄養において有機栽培農作物と通常栽培農作物の間に有意な差を見出せないと結論している。
・スウェーデンの国家食品も同様の報告を挙げている。
これらは差がないというものですが、さらに痛いのが消費者団体Which?の"Organic vs non-organic"というリリースです。<有機栽培農作物と通常栽培農作物の比較試験を行った結果、通常栽培農作物のほうが美味しく、栄養価も高かった>とのこと。ブラインドテストでは、専門家でも素人でも有機栽培野菜より通常栽培野菜の方が有利な結果になったようです。
●有機栽培野菜に有利な研究も出ている!安全性・栄養で比較した結果…
A Successful Failureさんは極めて有機栽培に批判的でしたので、念のために他も見てみましょう。結局、Wikipediaを見ると楽だったんですが、こちらだと有機栽培に有利な情報もあります。ただ、信頼性も含めて全体に見た感じ、ほとんど差はないのかな?といった感じになりました。
有機農業 - Wikipedia(最終更新 2015年1月19日 (月) 08:15)から、有機栽培に有利なものを○、そうじゃないものを×にして、箇条書きにしていきます。なお、前述の情報と重なるものもそのまま載せました。
× 2003年、英国食品基準庁は「有機食品のほうが良いというエビデンス(研究による科学的根拠)が全くない」という姿勢をとっている。
○ 2006年9月、英国食品基準庁は有機的に飼育された牛乳に関してはω-3脂肪酸が多いため栄養価に違いがあるという科学的証拠があったと見解を出している。
○ ニューキャッスル大学による研究中である4年間のプロジェクトでは、有機食品は抗酸化物質をより多く含み、脂質はより少ないという一般的な傾向があり、小麦、トマト、ジャガイモ、キャベツ、タマネギの栄養素を20~40%多く含んでいるとされた。有機的に飼育された牛乳の抗酸化物質含量も有機農業の方が50-80%高いとされた。
× ただし、発表が2007年10月だったにも関わらず、ニューキャッスル大学による研究は未だに論文にされていない。
× カリフォルニア大学のAlyson E. Mitchellらは10年間調査してきた結果、有機食品は、抗酸化物質であるフラボノイドを多く含んでいると報告した。フラボノイドは、養分欠乏や傷害や病害や紫外線などの環境ストレスによって生合成が誘導される物質。
○ 2006年、スイスの200以上の農場で行われた大規模調査では、フィトケミカルやビタミンCが多く、硝酸のような望ましくない物質についてもメリットがあり、保存性についても上がると報告した。
× 2009年7月29日、英国食品基準庁(Food Standards Agency (FSA))は、有機食品と慣行農法による食品の間には栄養素の含有量や健康上の利点において重要な違いがないと発表した。また、その違いは公衆衛生において意味を持たないと説明した。
●残留農薬の点ではオーガニックにメリット?
同じくWikipediaに載っていた残留農薬に関する以下のような研究は、有機栽培に有利なものになっています。そもそも有機栽培というのはそういうものなので、これは当たり前ですけどね。
○ 有機的な食事をした場合に尿に排出される有機リン化合物が減ったので、残留農薬による不確実なリスクを避けることができるだろうと報告された。
○ 血中の残留農薬濃度が高い子どもは注意欠陥・多動性障害(ADHD)の発症リスクが通常の2倍であるという報告がある。
ただ、大腸菌は大抵除去されてしまうという話をしたように、残留農薬というのもかなり減っています。私も過剰な農薬の使用が良いと考えているわけではありません。要はバランス問題ですからね。また、個人的には、万が一残っていた場合の危険性の大きさでは、比較にならないとも思います。有機栽培野菜は結局、農薬のリスクを下げた分、別のリスクを上げているということになっています。
カリフォルニア大学の研究では、"慣行栽培であれ、有機栽培であれ、過剰施肥はトマトがもたらす健康面での利点を減らすことになるだろうと警告"されていました。ごく当たり前の話でしょう。
また、農作物の有用さは有機栽培かどうかより、それ以外のもろもろの要素の方が影響が大きいという指摘もあります。比較的オーガニック食品に有利な見解をとったとしても、あまりオーガニックにこだわる利点はなさそうな感じです。
ただ、科学者が何を言おうがオーガニック何とかといったものは売れやすいので、商売的に有機栽培が重要なのは間違いありません。オーガニックのブランド価値は非常に高いのです。要するに「儲かる」という話。したがって、ビジネス的には有機栽培に大いにメリットがあると言えるでしょう。
●一時ほぼ全くなくなかったのに…無農薬野菜ブームで寄生虫感染が復活?
2018/02/07追記:その後、有機栽培野菜に関する話はいくつか書いています。その中で一番強烈なのは、
有機栽培野菜は危険?大量の寄生虫が出たのは人糞肥料のせいか?日本では禁止ではないが細菌リスクもでしょう。
タイトルになっている「大量の寄生虫が出た」というのは、北朝鮮の兵士の話。北朝鮮では、人糞肥料が今でも主力なんだそうです。この人糞肥料は、日本では禁止されたものと言っている人が多いのですけど、どうも誤解である模様。実際に、現在でも人糞肥料を用いている農家の方がいらっしゃるようです。
人糞肥料を使うと、必ず寄生虫に感染してしまうかというとそんなことはありません。ただ、当初の投稿で書いたものと同様に農家さんの作業に不備があるとリスクが高まってしまいます。人糞肥料が盛んだった昔の日本で寄生虫だらけだったのは、昔の日本の農家が適切に作れていなかったためでした。
で、今の農家さんが完璧な作業をしているか?というところが問題になってきます。日本の話はわからなかったものの、韓国では一時ほぼ全くなくなっていた寄生虫感染が、無農薬野菜ブームによってまた増えてきているという話が出ていました。日本でも似たようなことが起きているかもしれません。
●化学肥料を使わずに栽培される野菜が増えたことで起きた問題とは?
2021/04/23:内容的にはすでに上記で書いたものの繰り返しとなるのですが、別のところに載せた話をこちらにも追記。
O157、食中毒予防の注意点は? 野菜しっかり洗って:朝日新聞デジタル(2016年9月8日)という記事の話です。この記事自体は、当時、老人ホームで腸管出血性大腸菌O157の集団食中毒があり4人が亡くなったのがきっかけでした。
O157は、牛など家畜の糞便(ふんべん)中に見つかり、菌に汚染された飲食物で感染します。この記事のタイトルにあった「野菜しっかり洗って」というのは、この菌が野菜についていることが多いためでした。安井良則・国立感染症研究所・元主任研究官は、以下のように注意喚起しており、やはり有機栽培野菜のリスクがわかるものです。
「最近は化学肥料などを使わずに栽培される野菜が増え、野菜に肥料の牛のふんなどが付いていることもある。O157が付着したまま調理することがないよう、しっかり洗ってほしい」
「浅漬けなどを作る場合は、野菜をしっかりと洗うことが大切だ。そうでないと同じことがまた繰り返されてしまう」
【本文中でリンクした投稿】
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有機農業は化学肥料よりずっと危険 食中毒では死ぬが、残留農薬では死なない ■
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