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世界一だったのに衰退した日本の製造業 半導体・液晶・スマホなど


 日本の製造業に関する話をまとめ。<世界一だったのに衰退した日本の製造業 半導体・液晶・スマホなど>、<自動車、製鉄、電機…「日本製」製造業が全部終わる…って本当?>、<日本の技術はすごいし真似できない…豪語していた家電メーカーの没落>などをまとめています。

 その後、<半導体技術者「日本が悪くなったのは政府が関与してきたせい」>、<高い技術で勝った日本、時代変わっても成功体験に固執し自滅>を追記しました。

2023/05/17追記:
●半導体技術者「日本が悪くなったのは政府が関与してきたせい」
2023/08/22追記:
●高い技術で勝った日本、時代変わっても成功体験に固執し自滅 【NEW】


●世界一だったのに衰退した日本の製造業 半導体・液晶・スマホなど

2022/05/24:最初に紹介する記事は水素関連の話でも使った<日本が水素で負けるのか?>(NHK 2022年5月11日 19時41分 経済部記者 佐々木悠介)という記事。記事では、この水素で日本は先行していたとされているものの、スマホや半導体のように欧米にまたもや抜かれてしまうかもしれない…と書いていました。

<日本のエネルギー政策の司令塔である経済産業省。ある幹部が私に深刻な表情でこう打ち明けました。「日本が脱炭素燃料でも世界に負けてしまいかねない事態だ」(中略)この幹部が危機感を募らせていたのは水素のことです>
<水素の実用化に向けて海外が猛追してきています。
 代表格はドイツです。(中略)国内の水素技術の創出や海外との連携におよそ90億ユーロ、日本円で1兆円を超える強力な支援を決めました。
 そして、再生可能エネルギーから水素をつくる装置の設備投資に多額の補助金を拠出します。この装置を水素の製造コストが安い中東やアフリカなどに輸出し、現地で製造した水素をドイツに輸入する戦略を動かし始めています>
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220511/k10013620711000.html

 「スマホや半導体のように抜かれる」に関しては、本文だと「半導体や液晶パネル、携帯電話や太陽電池など」で、初めは先頭を走っていたのに抜かれてしまったとの記述でした。このうち半導体だけ具体的なデータも。半導体は1980年代後半には日本の世界シェアは5割以上あったのが、2019年には1割未満まで低下しています。

 なお、記事を読んでいて思ったのは、半導体や液晶パネル、携帯電話や太陽電池などと水素の場合は状況がかなり異なるのでは?ということ。というのも、水素と違って、これらはある程度普及して大きな事業となっており、業者も程度の先行者利益を上げていたと思われること。水素とだいぶ状況が違う気がします。


●自動車、製鉄、電機…「日本製」製造業が全部終わる…って本当?

 これを読んでいて思い出したのは、別のところで使ったさらば「日本製」…まもなく日本の「基幹産業」がどんどん消えてなくなる!(週刊現代)という記事。正直言って、タイトルが極端すぎるために嘘くさいと思った記事ですけどね。サブタイトルなんかはもっとひどくて、「自動車、製鉄、電機…ぜんぶ終わる」というものです。

 このうち製鉄は、6基の高炉がフル稼働し、10万人を超える人々が働いていた北九州八幡地区で、高炉1基に3000人が従事するレベルまで減少。日本製鉄は'23年までに茨城県鹿嶋市、和歌山県和歌山市、広島県呉市にある各製鉄所の閉鎖や高炉の休止に踏みるなど、製鉄業界は縮小の流れ。さらに、二次メーカーも衰退しているとのこと。海外需要ならあると思うのですが、日本メーカーは海外開拓が苦手で完全に出遅れたともされています。

<'90年代までは、当時世界最大手の新日本製鐵を皮切りに、川崎製鉄、住友金属工業の3社が世界の粗鋼生産量トップ10に食い込んでいた。しかし'19年のランキングに目を移すと、トップ10に名前があるのは新日鐵と住友金属が合併して生まれた日本製鉄(3位)のみ。
 中国や欧州の製鉄大手は合従連衡を繰り返して急成長を遂げ、価格競争で優位に立っている。日本の各社も、川上から川下まで束にならなければ戦えない状況に追い込まれたのである>


●首相推進の「脱炭素社会」が衰退している日本の製造業にとどめを刺す

 記事によると、自民党の菅政権が目玉に掲げた「脱炭素社会」「二酸化炭素排出ゼロ」が凋落した業界に追い打ち。日本製鉄社長で日本鉄鋼連盟会長を務める橋本英二さんは、菅政権が「脱炭素」の徹底を業界に求めてきたことを念頭に「実現までに10年、20年はかかる。ゼロからの研究開発を、個別の企業でやり続けるのは無理だ」と苦言を呈していました。

 なお、中国の場合、政府の支援でこの技術が日本より進んでいるというのも踏まえていた批判である模様。「排出量の削減には研究開発が不可欠。そちらにカネをかけるべき時に、税金を取るなんて逆効果です。ここで中国に負けたら、世界は中国産の鉄を使うようになり、日本の鋼材は使用禁止になるかもしれません」と菅政権を批判していました。

 これはいわゆる「ゲームのルールの激変」であり、かつての成功体験、伝統、技術といったものが通用しなくなるということ。自動車業界においても、ガソリンエンジンの製造に関わる中小のメーカーも、トヨタをはじめ大手から「2020年代の半ばからは、仕事が減ると思っていてください」と言われているそうです。

 トヨタはEVシフト叩きを続けてきているものの、2020年には主にエンジン製造を担当する下山工場(愛知県みよし市)の生産ラインを2本から1本に減らしているなど、トヨタの豊田章男社長は「二枚舌」ではないかと疑われているとのこと。で、そのトヨタも危ないのでは?とされていました。ただ、EVは非現実的でトヨタの得意なハイブリッドがまず普及するし、EVなんか簡単なのでいつでも作れる…といった非常に楽観的な反論も別記事を読んでいると見かけます。


●日本の技術はすごいし真似できない…豪語していた家電メーカーの没落

 今回の記事では、この製鉄や自動車の衰退で起きている問題は、「他のどの国にも作れないと思っていたものが、いつの間にかどの国でも作れるものになっていた」という厳しい現実から、目を背けてきたという共通点があると分析していました。そして、こうしたことがいち早く起きたのが、家電メーカーだったとされています。

<「技術っちゅうのは、ウナギ屋の秘伝のタレみたいなもの」こう豪語したのは、'98年から'07年までシャープの社長を務めた町田勝彦氏だ。町田氏は「液晶一本足打法」で全経営資源を液晶の生産に投入した。「我が社の高品質な液晶は誰にもマネできない」という自信に裏付けられた決断だった。そしてそれは、しばらくの間は正しかったのだ。
 だが、あっという間に韓国や中国のメーカーは「秘伝のタレ」を完璧に模倣した。大画面液晶はありふれたものとなり、同社は破綻の瀬戸際に追い込まれて、'16年には台湾メーカーの鴻海(フォックスコン)傘下となった>

 パナソニックも同様で、テスラと'11年にEV用電池の生産で協業に入ったものの、テスラはいつしか韓国のLG化学、中国の寧徳時代新能源科技などとも取引を始め、「出入り業者のひとつ」に格下げになっていると指摘されていました。さらに、テスラが自社で電池の内製を進めているというところまで来ている…とのこと。記事ではパナソニックも終わる…という勢いでした。


●半導体技術者「日本が悪くなったのは政府が関与してきたせい」

2023/05/17追記:製造業衰退や自民党が好む政府介入の問題と絡みそうな経産省が出てきた時点でアウト…日立の元技術者が「日本の半導体の凋落原因」として国会で陳述したこと  「技術で勝って、ビジネスで負けた」は大間違い | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)(2023/05/15)という記事が出ていました。

 日立製作所の半導体技術者で、現在は半導体産業コンサルタント、ジャーナリストである湯之上 隆さんは、2021年6月1日、衆議院の「科学技術・イノベーション推進特別委員会」から、半導体の専門家として参考人招致を受け陳述。「日本半導体産業の過去を振り返り、分析、反省し、その上で将来どうしたらいいか?」について、意見陳述を行うよう要請されたそうです。

 湯之上 隆さんの意見のポイントは3点。1つは、「日本のDRAM産業は、安く大量生産する韓国の破壊的技術に駆逐された」という、過去の振り返り・分析の話。一方で、「日本は、競争力の高い製造装置や材料を、より強くする政策を掲げるべきである」というのが、3番目のポイントとなっており、将来の方向性が見えます。

 ここだけ見ると、全体タイトルの「経産省が出てきた時点でアウト」とは違う感じ。自民党が好む政府主導をむしろした方が良いように見えます。ただ、間にあった2つ目のポイントが「日本半導体産業の政策については、経済産業省、産業革新機構、日本政策投資銀行が出てきた時点でアウトとなった」であったために、こういうタイトルだったみたいですね。


●高い技術で勝った日本、時代変わっても成功体験に固執し自滅

2023/08/22追記:前回の続き。湯之上 隆さんは前述の通り、日立製作所の半導体技術者でした。ただ、日本の半導体衰退のせいで早期退職することに。このとき転職したのが同志社大学の経営学研究センター・専任フェローで、ここで「なぜ、日本のDRAM産業が凋落したのか?」を研究したそうです。

 日本が強かった1980年代半ば頃、DRAMはメインフレーム(汎用の大型コンピュータ)用に使われており、25年壊れない長期保証を求められていました。日本はこの要求に見事応えて世界を席巻。技術の高さで勝つという日本の典型的な成功パターンでした。ただ、その後、長期保証はいらない…という時代に変わってしまったそうです。

<ところが、1990年代にコンピュータ業界にパラダイムシフトが起き、メインフレームの時代は終焉を迎え、パーソナル・コンピュータ(PC)の時代がやってきた。そのPCの出荷額の増大とともに、韓国のサムスンがDRAMのシェアで急成長してきた。
 この時、サムスンは、「PC用に25年保証は必要ない。5年も持てばいい。それよりも、PC用DRAMは安価でなければならない。その上、PCの出荷台数が桁違いに多いから、そのDRAMは安価に大量生産しなければならない」という方針でDRAMを製造し、日本を抜き去ってシェア1位に躍り出た>

 短期で買い替える製品が多いので、これは今だとよくわかる話。しかし、当時の日立製作所などの日本のDRAMメーカーは、相変わらず25年壊れない超高品質製品を製造。サムスンが伸びているのはわかっていたものの、そこから学ぶことすらできずに旧態依然としたやり方を続けて負けてしまったといいます。


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