石油は植物の化石…は間違いだった?近年注目の石油無機起源説で出てきたトーマス・ゴールドさんについて、もう少し知りたいと思っていました。
●石油無機起源説のトーマス・ゴールドとは?
Wikipediaによると、本職は天文物理学者。既に亡くなっている方です。
・トーマス・ゴールド(Thomas Gold, 1920年5月22日 – 2004年6月22日)。
・オーストリア生まれで、アメリカ合衆国で活動した天文物理学者。
(
トーマス・ゴールド - Wikipedia 最終更新 2013年3月29日 (金) 03:04)
Wikipediaの主な受賞歴では、以下2つの紹介がありました。
・1979年 フンボルト賞
・1985年 王立天文学会ゴールドメダル
フンボルト賞は、ドイツ政府が全額出資する国際的学術活動の支援機関アレクサンダー・フォン・フンボルト財団が創設した学術賞。受賞者が多い上に、受賞者全体のリストは非公表というよくわからないものです。
一方、王立天文学会ゴールドメダルは、原則的に毎年2つのメダルが贈与されるといった数が少ないもの。フンボルト賞が様々な分野だったのに対して、王立天文学会ゴールドメダルは、天文学の分野の功績、地球物理学の分野の功績に対して贈られています。
王立天文学会というのは、イギリスの王立天文学会のことですので、ドイツの賞とイギリスの賞という違いもあります。
Wikipediaでは、"学際的な分野、生物物理学、天文物理学、宇宙工学、地球物理学の分野に独特の観点で取組んだ"ともあり、主張のユニークさとともに、幅の広さもゴールドさんの特徴のように見えます。
●ビッグバン理論とは異なる定常宇宙論を提唱
宇宙絡みの話としては、以下が有名なようです。
・フレッド・ホイル、ヘルマン・ボンディと共に定常宇宙論を提唱した。
定常宇宙論 - Wikipedia 最終更新 2014年6月21日 (土) 15:25
定常宇宙論(ていじょううちゅうろん、steady state cosmology)とは、1948年にフレッド・ホイル、トーマス・ゴールド、ヘルマン・ボンディらによって提唱された宇宙論のモデルであり、(宇宙は膨張しているが)無からの物質の創生により、任意の空間の質量(大雑把に言えば宇宙空間に分布する銀河の数)は常に一定に保たれ、宇宙の基本的な構造は時間によって変化することはない、とするものである。
ただし、これは石油の無機起源説がそうであるように、一般的な理解ではありません。有力なのは、ご存知ビッグバン理論(ビッグバン仮説)です。そのため、ビッグバン理論支持者らからは、定常宇宙論は「非標準的宇宙論 」の一つと見なされているようです。
この定常宇宙論とも絡むトーマス・ゴールドさんの経歴について。
ウィーンの出身でスイスで学んだ後、ケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジで学んだ。第二次世界大戦の勃発により、敵国地域の出身ということで拘束された時に、同じ境遇のヘルマン・ボンディと会った。開放された後、ホイル、ボンディとレーダーの開発に従事し、3人は宇宙物理学の研究を共同で行った。1950年代に定常宇宙論を発表した。グリニッジ天文台、ハーバード大学で働いた後1959年からコーネル大学の宇宙物理学の教授となった。
トーマス・ゴールドさんはこれ以外でもやはりユニークな説を唱えていたようです。
ゴールドは宇宙と、磁気圏の研究を行った。ボンディと定常宇宙論を発展させた。1968年にパルサーが発見されると、パルサーが強い磁界を有する中性子星が高速で回転している天体であることを示した。
ゴールドは長い間、月の表面の岩石が熱サイクルの作用によってダスト状になって、厚く月の表面を覆っているという説を唱え、アメリカ月飛行衛星の計画に影響を与えたが、その問題はそれほど大きな障害になることはなかった。
●トーマス・ゴールドといえば、やっぱり石油の無機起源説!
Wikipediaでも扱いが大きかったのが、石油の無機起源説です。トーマス・ゴールドさんと言うと、これみたいですね。
・石油は定説では大昔の生物の死骸が地下に埋もれて圧力・温度の下で分解して生成されたとする有機起源と考えられている。
・しかし、有機起源説では存在を説明できない地層からも石油・天然ガスの貯留層が見つかっている。
・ゴールドは星間物質に大量に含まれる炭化水素を石油の起源とする石油の無機起源説を唱えた。
以下も掲示板サイトの阿修羅にあった石油の無機起源説の話。
天然ガス、石油は自然に生じ、有限の化石燃料ではないと言う著名な科学者 万事急須 投稿者 万事急須 日時 2004 年 12 月 15 日 17:34:02
"ゴールド博士は10月28日のラジオ「フリー・アメリカ」(アメリカン・フリープレス出資)のゲストとして出演した"とありますが、いつの「10月28日」なのかは不明です。
普通に考えると、投稿日から直近の2004年10月28日だと考えられるのですが、Wikipediaによるとゴールドさんは2004年6月22日に亡くなっていますので、それはあり得ません。
とりあえず、ここの書き込みではゴールド博士のラジオ出演したときの話の要約を英語と日本語で書いてくれています。うちではそこからさらに抜粋していくつか紹介する形にします。
・恐竜やシダがない地球以外の惑星においても、大量の炭化水素があることを測定できる。炭化水素、即ち石油、ガス、石炭は、宇宙ではよくある物質である。
・石油、そして石炭は原子量の重い炭化水素を含む物質からできている。隕石は惑星の形成過程において外に飛び出した残骸だと知られているが、それらは酸化されていない炭素を炭化水素、すなわち石油や石炭様粒子として含んでいる。ある大きいクラスの隕石や、他の多くの太陽系の天体においてそれを見つけている。地球が形成された時に、大量の炭素が含まれていたことは明白。
また、地球においても従来の理論では見つけられないところから、石油を見つけたという話を強調していました。
・スウェーデンのある巨大なクレーターは純粋な花崗岩でできており、沈殿物が何もなかった。何も生物学的なものがなく、ただ硬くもろい岩だった。石油地質学者によれば石油は出ない地域とされる。しかし、クレーター内部で深部掘削を行ったところ、石油を発見することができた。
・ここの石油の内部にはバクテリアが棲んでいた。その深度の温度で生息できるような種類のもの。これらの地中に住んでいるバクテリアが、石油とガスを主要な栄養として繁殖し、それらがエネルギー源となっている事は疑いようがない。
・スウェーデンのようにロシアでもこのような巨大な岩場を300箇所掘り、殆どの場所で石油を発見した。ベトナム沖のホワイトタイガーフィールドも、同様の巨大な岩場から石油を非常によい率で産生している。
そして、ヘリウムについての話。
・石油について特筆すべき点は、世界のどこでも、常に天然のヘリウムガスを高濃度に含んでいるという点。これらのヘリウムガスは、生物とは完全に関係のない物質。生物がヘリウムガスを生産したり集積したりすることはない。これは化学反応を起こさない元素で、生体内には存在しない物なので、生物がこれを生産することはできない。
・従来の説で生じる非常に大きな問題として、なぜ生物とは全く無関係であるヘリウムが、石油から見つかるのかという点がある。仮に恐竜や植物から石油が生じるというのなら、一体どうやってヘリウムガスが石油の内部に濃縮されて存在すると言えるのか?
・ヘリウムが石油に濃縮されうる唯一の方法は、他の物質に由来する大量の高圧のヘリウムが、石油の存在する多孔性のスペースに拡散していくというもの。石油が上昇するのは、そのような多孔性スペースに残存ガスが充満している時に起こる現象。そして、それが地表付近に達すると、深部からの物質を含んだ石油が湧き出してくる。非生物学的なヘリウムは、他の石油内の生物物質と同様に、1000以上の様々なメカニズムにより高濃度に濃縮されたのだろう。
●トーマス・ゴールドの著書『未知なる地底高熱生物圏』のレビュー
トーマス・ゴールドさんの著作で、アマゾンのレビューが多かったのは、
未知なる地底高熱生物圏―生命起源説をぬりかえる
(2000/9 トーマス ゴールド (著), Thomas Gold (原著), 丸 武志 (翻訳) )です。
タイトルでは石油無機起源説をクローズアップしていないものの、やはりその関係の内容が含まれているみたいです。
・地下生物圏の発見は石油無機起源説の検証過程に於いて偶然発見されたもの。発見された当時、地下深くまで生物が存在するという事はにわかには受け入れられず、誰も取り合わなかった。しかし地下から次々と新事実が発見されるに至り、地下生物圏は今や常識となりつつある。(ノンマルトの使者 投稿日 2006/12/20のレビューを要約)
・化石のできる条件は限られるのに、石油石炭のあの埋蔵量は不思議でなりませんでしたが、その謎が解けた思い(ラキオ 投稿日2007/10/23)
・考えてみれば、他の惑星にも生物起源ではない有機物がたくさん存在しているわけで、地球の有機物のみが生物起源であるというのは不自然な話。(2013/6/7投稿者 ながぴい)
石油以外ですと、以下のような話も。
・トーマス・ゴールドは、地中深く微生物が地上よりもはるかに多く生存していて、それが地球環境の安定化に貢献していることや、かつて地軸が180度でなく90度傾いていた可能性も言及しています。(2011/4/18投稿者 こんにゃく尻)
結局、石油無機起源説ばかりとなってしまいましたが、他の話もゴールドさんの個性が伝わってくるものでした。
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