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安売りしている企業が高収益企業になる理由 高く売るは間違い?


2015/8/24:
●小売り企業を高収益化する方法、「高く売る」は間違っているのか?
●なぜ安売りしている企業が高収益企業になるのか? 回転率が鍵
●回転率を高めるのは普通のやリ方 「水平展開」「垂直統合」などが効果的
●ニトリの本当の特色は製造小売り(SPA)とトータルコーディネート
●物価上昇で成長してると錯覚!日本企業の営業利益率は完全に右肩下がり
2020/06/05:
●アマゾンCEO「将来の変化を予想するより変わらないものの方が大事」


●小売り企業を高収益化する方法、「高く売る」は間違っているのか?

2015/8/24:元ネタは、なぜ、大塚家具はニトリに負けたのか(プレジデント社 7月3日(金)10時15分 神戸大学大学院経営学研究科教授 栗木 契)というもので。ただ、あまり企業名にはこだわらず一般論的に見ていきます。

 うちでは安売りを高売りしましょう!といった話を何度もやっています。今回の話でもこれが間違いか?と言うと、そう言っているわけでもありません。

 家具屋さんで、"投資(総資産)からより大きなリターンを得るには、どうすればよいか"と考えたとき、まず普通の人が考えるのが、"仕入れた家具をいかに高い価格で売りさばくか"だと記事では言っていました。"「利幅の拡大」は、高収益化のひとつの源泉"だと、栗木契教授はおっしゃっています。間違いではないのです。


●なぜ安売りしている企業が高収益企業になるのか? 回転率が鍵

 ただし、高収益企業になる道はこれだけではありません。他にも方法があるよ、という話でした。実を言うと、高く売らずに安く売っても高収益化できるのです。なぜ?と不思議に思う話ですね。

 安くしてしまうと、利益が小さくなり、高収益にするのは無理なように見えます。しかし、「回転率」が高ければ高収益化は実現するとのこと。より具体的に言うと、仕入れた家具を、損にはならない価格でいち早く売り切ってしまい、その売り上げを原資に次の仕入れにするのです。

 これで終わりではなく、さらにそれを売ってそのまた次の仕入れ…といった感じで、このサイクルを続けるわけです。例えば、半額セールなどかなりの安売りをしても、1年間に50回転させると、年2回転しかしない店舗の10分の1の利幅だったとしても、1年を通してみれば、この回転率の高い店舗のほうが投資効率は2〜5倍も高くなる計算だそうです。理論上可能ですし、ニトリのように実際成功している企業があるわけですね。


●回転率を高めるのは普通のやリ方 「水平展開」「垂直統合」などが効果的

 こうやって聞くと珍しい企業の話だと思うかもしれませんが、実は"回転率を高めることは、小売りの収益性向上の基本路線"だそうです。ただ、家具の場合は結婚や住宅購入でもなければなかなか購入するものではありません。回転率を高めたくてもそうバンバンは売れるものではないでしょう。

 そして、"少子高齢化の進む日本では、2000年以降には婚姻数も新設住宅着工件数も減少"していきます。"大塚家具とニトリの収益性に逆転が生じたのも、実はこの00年以降"だそうです。

 これはつまり大塚家具が婚姻数・新設住宅着工件数の低下に対応できず、ニトリが対応可能だったということです。このポイントについては、栗木契教授は「水平展開」や「垂直統合」だとしていました。

 三品和広・神戸大学教授の『経営戦略を問いなおす』 (ちくま新書)によると、「利幅の拡大」や「回転率」を高める方法は以下の3通りであり、ここに「水平展開」や「垂直統合」の説明があります。

「均整を深める」小売企業であれば、これまでの商品取り扱い技術のオペレーションを整え、高度化していく。
「水平展開を図る」取り扱う商品の分野を広げる。
「垂直統合」販売する商品の生産に、自ら乗り出す。



●ニトリの本当の特色は製造小売り(SPA)とトータルコーディネート

 大塚家具とニトリ・イケアの違いは価格や品質ではない 何が違う?など、他のニトリの話でも書いているように、ニトリの大きな特徴は単なる価格の安さではなく、製造小売り(SPA)の企業であることと、トータルコーディネートです。

 今回の話で言えば、製造小売り(SPA)は「垂直統合」であり、「利幅の拡大」と安い価格による「回転率」上昇の両者を実現させました。また、トータルコーディネートは「水平展開を図る」に当たります。
トータルコーディネーションに取り組んでいるニトリは、共同開発や自社生産によるPB商品を主力とする製造小売り(SPA)の企業であり、価格が安く、しかも統一感のある住空間を誰でもコーディネートできる商品を取りそろえることで、関連購買を促している。(中略)

ニトリは生産段階に踏み込み、原材料の手当てや検品・品質管理の徹底に取り組み、原価を引き下げることで利幅の改善を促してきた。もちろん、安価な輸入家具の仕入れを増やしたり、工場との直接取引を行ったりすることも、高い収益性に貢献する。だが、それらに加えて生産段階に踏み込むことができれば、収益性はさらに高まる。

 前述の婚姻数・新設住宅着工件数の低下ですが、ニトリは水平展開によってホームファッションを中心とした売り方も可能にしたため、市場変化にも対応できたという説明。なので、厳密に言うと、ニトリは家具屋さんではないんですね。栗木契教授は「ビジネスモデルの重要さを改めて考えさせられる」としていました。


●物価上昇で成長してると錯覚!日本企業の営業利益率は完全に右肩下がり

 途中で出てきた三品和広・神戸大学教授の『経営戦略を問いなおす』 (ちくま新書)のアマゾンページも見てみました。31レビューあって、5つ星のうち 4.5 と好評です。書籍の紹介を見ると、単なる拡大路線は良くないという見方をしていますね。
経営戦略を問いなおす (ちくま新書)

内容(「BOOK」データベースより)
世の大半の企業は、戦略と戦術を混同している。成長第一で事業を拡大したのに何の利益も出なかった、という企業が少なくない。見せかけの「戦略」が、企業の存続を危うくする。目指すべきは、長期で見た利益を最大化することである。それを実現する戦略はマニュアル化になじまず、突き詰めれば人に宿る。現実のデータと事例を数多く紹介し、腹の底から分かる実践的戦略論を説く本書は、ビジネスパーソン必読の書である。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
三品/和広
1959年愛知県生まれ。82年一橋大学商学部卒業。84年同大学大学院商学研究科修士課程修了。89年ハーバード大学文理大学院博士課程修了。ハーバード大学ビジネススクール助教授等を経て、神戸大学大学院経営学研究科教授。専攻は経営戦略。『戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか』(東洋経済新報社)で第45回エコノミスト賞、第21回組織学会賞(高宮賞)、第5回日経BP・BizTech図書賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 最初の記事も高収益化について書いていましたが、単なる拡大ではダメというのが利益率の悪さです。レビューの中に以下のような話がありました。海外との比較がないと日本がひどいかどうかわからないものの、とりあえず、利益率だけを見てみるとひどい有様のようです。

<日本の企業の多くが40年間という長期で見ると、営業利益は物価上昇分しか増えていないというややショッキングな分析があり、売上高の成長を鑑みると営業利益率は完全に右下がりなっている様子が分析されている>


●アマゾンCEO「将来の変化を予想するより変わらないものの方が大事」

2020/06/05:アマゾンは先進的な企業というイメージがあるためか、ジェフ・ベゾスCEOはよく「5年後、10年後には何が変わっているだろうか?」と尋ねられるみたいですね。しかし本当に重要な質問は「5年後、10年後にも何が変わっていないか?」だといいます。

 これだけ聞くと意味がわかりませんが、続きを聞くと意味がわかるでしょう。また、一見このページに関係ない話だとも思ったかもしれませんけど、これもこの続きの部分を読むことによって、関係性がわかってきます。

 今から5年、10年経ってユーザーがジェフ・ベゾスさんののところに来て「ジェフ、値段をもっと高くしてくれないか」ということは想像できないでしょ?という話。「配達を遅くしてくれ、品揃えを少なくしてくれ」などとも言いませんよね。つまり、低料金、速い配送、幅広い品揃えは何十年経ってもユーザーが望むものだとわかります。
(利益率たった1%で突き進むアマゾンの奇才経営者:日経ビジネスオンライン 滑川 海彦 2014年1月14日より)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140108/257918/

 私は最初のときの投稿部分で、「高く売る」が間違っているわけではないと書いています。ジェフ・ベゾスさんも「高利益率ビジネスはうらやましい」としていました。しかし、「リーンな低利益ビジネスを追求してきた」というのが「アマゾンの文化」。そして、それで世界最高峰の成功した企業になったわけです。


【本文中でリンクした投稿】
  ■大塚家具とニトリ・イケアの違いは価格や品質ではない 何が違う?

【関連投稿】
  ■マイケル・ポーターの競争戦略 マクドナルドとモスバーガーの違い
  ■寡占市場の具体的な例20 ゲーム機・携帯電話・ビール・航空機など
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