すっかり遅くなりましたが、
機能性表示食品とトクホの評価 「CONSORT声明」と「UMIN臨床試験登録システム」で言っていた怪しい機能性表示食品について。

●ファンケルのえんきんの効果を専門家が疑問視 根拠論文がひどすぎ
疑問視されている「機能性表示食品」は、(株)ファンケルの「えんきん」です。
機能性表示食品「えんきん」の根拠は、お粗末すぎる | FOOCOM.NET 2015年5月1日 松永 和紀
元記事は非常に長く、指摘している内容も多い(ただ、掲載したもの以外にもまだ問題があるそう)ので、なるべく簡単に書きます。
とりあえず、最も問題となるのは、根拠とされている科学論文の質が低いことです。どうも「科学論文」の域に達していないといった感じですね。
●サプリによるピント調節機能の補助効果が微妙
えんきんは「手元のピント調節機能を助けると共に、目の使用による肩・首筋への負担を和らげます」と謳っています。じゃあ、「統計的に有意な差があった」ことがわかったのだろう、と論文を読んでみると、ズッコける内容でした。
調節近点距離については、両目で見ると、プラセボと関与成分入りサプリとの間で、統計的に有意な差があると言えたようです。ただ、問題なのは、片方の目ごとにみると、プラセボと関与成分入りサプリとで有意差は見られなかったということです。
片目では差があると言えないのになぜ両目だと言えるのか?と言うと、片目では僅かすぎて意味のある差ではないためです。そのような僅かな差を両目合わせて差が広がったからといって、意味があるとしてしまって良いのか?という疑問なのだと思われます。
●実は15項目調べて、効果が見られたのは僅かに2項目
"「目のかすみ」「肩や首の凝り」の方はもっと問題がある"と、松永和紀さんは言います。
疲れ目/目の痛み/なみだ目/目の充血/いらいら/頭が重い/頭痛/小さいものが見えにくい/焦点を合わせにくい——等々、計15項目を試験前と、摂取し始めて4週間後に質問し、その中で統計的に有意差ありだったのが、「目のかすみ」「肩や首の凝り」の2項目なのだ。ほかの13項目は、プラセボと関与成分入りのサプリメントで有意差はない。
●チョコレートダイエットのデタラメ論文と似た手法
13項目でダメでも2項目で良かったのだからいいじゃない…と思います? 実はこれが良くないのです。"たくさんの項目を挙げて調べれば、一つや二つは偶然、差がつく、ということはおおいにあり得る"ためです。
実は
科学論文ニュースに注意!チョコレートダイエットの嘘に世界が騙されるで紹介したチョコレートダイエット論文では、これと似た手法が使われていました。この論文はマスコミを騙すために作られた質の低い論文であり、科学の域に達していません。結果は捏造していないものの、デタラメ論文と言って良いものです。
ということは、えんきんの効果の根拠論文もその程度だということになってしまいます。
通常の論文なら、この差が本当に意味のある差なのかどうか、13項目と作用メカニズムのどこに違いがあり、このような結果になるのかなどを試験で調べたり論考したり、ということになるのだが、この論文では、なぜこの二つのみ差があるのか、まったく考察していない。そもそも、一つ一つの項目に定義が書かれていないので、なにが違うのかがよくわからない。私なら、「肩や首の凝り」と「頭が重い」と「頭痛」を区別するのはかなり難しい。
●禁断の技・データ削除を多用
また、怪しさを増してしまっているのが、本来慎重になるべきデータ削除を連発していることです。
論文としてさらに問題なのは、各項目の対象とした数がそれぞれバラバラなことだ。48人の参加者のはずなのに、「目のかすみ」対象者は関与成分入りのサプリとプラセボ合わせて計25人、「肩や首の凝り」は計41人、「目の疲れ」は46人、「目の痛み」は9人、「頭痛」は9人などと、項目ごとに違っている。つまり、なんらかの理由により、参加者から相当数のデータが削除されている。なのに、まったく説明がなく、にもかかわらず、それぞれの項目について、平均値や偏差、P値などがもっともらしく記述されているのだ。
●本来査読が通るはずがない低レベルな論文
松永和紀さんは、えんきんの効果証明の論文の掲載誌について、以下のように書いていました。
掲載誌は、Immunology Endocrine and Metabolic Agent in Medicinal ChemistryのVol.14-Number.2。2014年に出ている。この雑誌は米国の国立生物科学情報センターが運営しているデータベースPubmedには収録されていない。
「Pubmedには収録されていない」というのはおそらくこの掲載誌が、海外で高い評価を受けているものではないということ、もっと露骨に言うと怪しい掲載誌である可能性を匂わせたのだと思います。
これは後半の部分で、もっと具体的に書いています。
この「えんきん」の論文は、試験参加者に行った質問表のデータの取り扱いの記述がない。これは、科学的には信用に値しない。普通の学術誌なら、査読を通過できず、間違いなく掲載拒否される。
しかし、この論文は査読のある学術誌に掲載された。消費者庁は論文のレベルについて、「国際的にコンセンサスの得られた指針に準拠した形式」も求めているが、私は要求レベルを満たしていない、と考える。
科学雑誌掲載の論文はデタラメだらけ 偽論文を査読は見破れないなどでやったように、査読ありの学術誌でも嘘論文がガンガン通ります。有名誌ですら引っかかるのですから、どこの馬の骨とも知れぬ学術誌ならさらに怪しいです。
実はこの掲載誌の関係者がまたきな臭いのですけど、その件はまた次回。今日は科学論文としていかんという話をもう一つ書いて終わり。
一つ前のデータ削除がダメか?と言う説明で、松永さんは「データ削除を恣意的にやれば、論文筆者はどのような結論も導き出せるから」と書いています。
項目の定義なし、説明もなく対象者のデータを大量に削除…など、かなり杜撰な論文だったという見方です。
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