アニメーターの年収は結局いくら? 110万円は大嘘、300~400万円程度で私は、アニメ業界はやりがい搾取型のブラック業界ではないか?といった話をしました。
今回の記事のくみかおるさんも、アニメ"業界全体で巨大なブラック企業となっている"としていました。(2015/9/10)
2017/10/28追記:アニメ産業の市場規模、史上初の2兆円突破!
●なぜ劣悪な環境なのにアニメーターは仕事を請けるのか?
2015/9/10:あるアニメーター出身のアニメ監督が、ブログに記した以下の逸話というのも、やはりブラック企業的な話です。
「良い作品を作ろう!」主義がもたらす弊害――日本のアニメはブラック業界 / くみかおる / 著述・翻訳家 | SYNODOS -シノドス- 2015.06.09 Tue
今から5~6年前に私は新人アニメーターの困窮する現状を見かねて、関東経済産業局に現状改善の相談に行った事があります。
一枚200円の動画単価を続けてはアニメーターの新人は育たず、日本のアニメ界は遠くない将来、国際競争力どころか制作力自体を失ってしまう。「行政指導による最低賃金を保証する方法は無いものか?」と訴えたのでした。
しかし、担当の方から返ってきた答えは、
「なぜ、そんなに低い労働単価なのに皆さん仕事を請けるのですか?」と言う、扱くシンプルな疑問でした。
「一枚1~5円の袋貼りやネジの仕分け梱包作業の単価が適正か?適正でないか?それはその金額で請け負う人が居るか居ないかで我々は判断します。その金額で受ける人が居るのであれば、それは適正価格なのではないですか?」
と聞かれたのです。
「アニメの場合は袋貼りの内職とは中身が違って…」と仕事の質や業界においての新人アニメーターの意味を懸命に説明したのですが
「では、なぜ会社や業界が自ら新人を育てないのか?」と続いたのです。
確かに、この業界に関係の無い立場から見たら、まったく理解出来ない事が平然とまかり通っているのがアニメ業界の現状です。
●離職率90%なのに「夢がある」と誘うアニメ業界
上記はアニメ業界が特殊という書き方をしていますが、なぜブラック企業を辞めないのか?という外野からの声はアニメ業界以外でもあります。
理由は、無知なためであったり、周囲の状況に流されてしまっていたり、洗脳されたような形になったり、同僚の迷惑になると考えてしまったりと、いろいろとあるでしょう。
アニメ業界の場合にも上記のアニメ監督の話からわかるように、無知ゆえというのがありそうです。ただ、私はアニメ業界にピッタリだと思うのは、やはりやりがいによって劣悪な労働環境を受け入れてしまうという説明です。以下なんかも「夢がある」といった文句で誘い込んで、新人を搾取している印象を受ける話です。
それにしても離職率90%という想像を絶する急坂を駆けあがって、とりあえず食べていけるようになり、やがて中堅やベテラン、それも「勝ち組」になると、今度はなぜ「新人たちが苦しんでいる」と世にアピールするわりには「それでもかけがえのない夢がある仕事です」とか「あきらめずに続けていればちゃんと幸せに生きていけます」とか必ず補足をしたがるのだろう。(中略)
90%が三年で挫折するとわかっていても「この仕事は夢がある」とか「20代で頭角を現す者だって何人もいる」とか呼びかけるのが、数少ない「勝ち組」の人びとだ。年金制度と同じで、若者がたくさん入ってこなければ自分の生活が成り立たなくなってしまうからだ。
●アメリカの労組は労働環境改善をもたらし、日本の労組は名作をもたらした
元記事は相当長いものです。その元記事とは完全に順番が逆になったのですが、タイトルになっていた"「良い作品を作ろう!」主義がもたらす弊害"について。これはアメリカのアニメの労働組合が「UNFAIR!(不公平)」と叫んだのに対し、日本の労働組合が「良い作品を作ろう!」と叫んでいたことに由来するみたいですね。
アメリカの労組は本来の目的である労働環境のために戦ったのに、日本にかつてあったアニメの労組は方向性が違いました。
例えば、東映アニメで1961年に労働組合が結成されたものの、やがて「良い作品を作ろう!」が謳われるようになってしまいました。若き宮崎駿さんもメインスタッフとして参加した野心作『太陽の王子ホルスの大冒険』(1968年)は組合主導の企画だったそうです。
●「良い作品」のために労働環境を犠牲にして良いのか?
この「良い作品を作ろう!」が日本アニメ界に名作をもたらしたのは事実のようです。にも関わらず、くみかおるさんがこれこそがいけないというのは、労組の本来の目的である労働環境の悪化を招いたためです。
このスローガンのもと『ホルス』を作り上げた高畑勲、宮崎駿コンビは、組合活動の先行きを見限ってテレビアニメの世界に移り、そして制作したのが名作『アルプスの少女ハイジ』(1974年)だった。
品質の維持のためにあえて少数精鋭主義を取ったこともあって、一日の平均睡眠時間が二時間という信じがたい激務に晒されたスタッフ(しかも男性ではなく女性である)までいたという。
これは嫌々働かせられていたというわけではないかもしれません。しかし、くみかおるさんは、"たとえそれが当人たちの自発的意思だったとしても、そして高畑、宮崎コンビこそが誰よりも不眠不休で働いていたのだとしても"、本当にそれは許されるのだろうか?としていました。
こういう風に自発的に劣悪な労働環境に向かわせてしまうというのが、まさにやりがい搾取型の典型だと思います。
●アニメ産業の市場規模、史上初の2兆円突破!
2017/10/28:"アニメ産業 市場規模 初めて2兆円超え"(NHKニュース 10月24日 4時59分)というニュースがありました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171024/k10011195241000.html
アニメーションの制作会社などで作る日本動画協会は国内にある制作会社およそ100社を対象に、テレビや映画、動画配信、海外展開など9つの項目ごとに売り上げを算出し、毎年、アニメ産業に関する市場規模の調査結果をまとめています。2016年はおととしを1800億円ほど上回る2兆9億円の市場規模となり、初めて2兆円を超えたのだそうです。
ちなみにこれらの項目で最も大きいのは、意外なことに海外での映画の上映やDVDの販売で、7676億円でした。別の話で、単純な話国内より国外の方が市場が大きいんだから海外を狙うべきということを書いたことがあります。アニメでも海外市場をもっと狙うべきって感じがしますね。
このような話をなぜこのページに追記したのか?というと、
はてなブックマークの人気コメントが、「現場で働く人たちに報いてほしい」というものが多かったためです。
grizzly1 多角化しているから一概には言えないけど、原画家から販売員など現場で働く人達の賃金アップにもつながって欲しいもの。
chocolaterock 利益が出たなら還元してあげて欲しい…
sotokichi 現場へのトリクルダウンは
pikopikopan アニメーターさんにお金流れるといいなあ
iuhya 現場が死に体。
nibo-c 現場の待遇に変化ないんだろうなあ…。
privates 安い給料でアシスタントが頑張ったおかげです。
一方、私がこのニュースを見てパッと思い浮かんだのは、アニメ好きへの差別・偏見がなくなるといいなというものでした。
産経新聞が女子中学生誘拐で犯人をオタクと決めつけてヘイトする記事を書くなどで書いているように、マスコミはアニメ・ゲーム関連への偏見が強すぎます。
まあ、大きい市場の趣味だけでなく、小さい市場の趣味でも差別しちゃいけいないことに変わりないのですが…。
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