前半は、<ないことの証明はほぼ不可能…悪魔の証明のわかりやすい説明>、<悪魔の証明の具体的な例を見ると、さらにわかりやすく…>などといった話です。また、後半には実は今使われている「悪魔の証明」という言葉の使い方は誤用なのではないか?という話についてもやっています。
●ないことの証明はほぼ不可能…悪魔の証明のわかりやすい説明
2010/12/15:以前、
悪魔の証明と題されたジョークを紹介して、そのときに普通「悪魔の証明」と言うときは別の意味ですよという話を書きました。で、いつかはその普通の意味について書こうと思っていたのですが、ずっと後回しで1年半近く経ってしまいました。
ところが、先日、
詭弁【○○でないという証拠がないから○○である(未知論証・悪魔の証明)】 論理的な議論の仕方という、わかりやすく説明しているページを発見。Wikipediaだと「全称肯定命題」だとか、「特称否定命題」だとか、言葉が難しくてちんぷんかんぷんだったので、これは大助かりです。
こちらではまず、「起きないこと」や「存在しないこと」を証明することは困難であることを指摘しています。「ある(存在する、起きる)」ことを証明するためには一例を挙げれば良いだけである一方、「ない(存在しない、起きない)」ことを証明するためには、世の中の森羅万象を調べ尽くさなければならず、それはほぼ不可能であるためです。
そのため、議論の一般的ルールとして、「ある」と主張した者が、それを先に証明しなければならないという暗黙の了解があると説明されていました。
●悪魔の証明の具体的な例を見ると、さらにわかりやすく…
具体的な例を見てみると非常にわかりやすいので、いろんなサイトを見て探してみました。悪魔の証明を用いてへんてこな自説を強弁しようとしている例です。
『霊が存在しないという証拠は無い。ゆえに、霊は存在する。』
『宇宙人が存在しないという証拠は無い。ゆえに、宇宙人は存在する。』
『超能力が存在しないという証拠は無い。ゆえに、超能力は存在する。』
『神が存在しないという証拠は無い。ゆえに、神は存在する。』
『空飛ぶ犬が存在しないという証拠は無い。ゆえに、空飛ぶ犬は存在する。』
(
詭弁【○○でないという証拠がないから○○である(未知論証・悪魔の証明)】 論理的な議論の仕方より)
明日、東京で震度7の地震が起こる。そうでないとお考えの方がいましたら、その証拠をお示し願いたい。証拠を示せないというのなら、それがすなわち私の主張が正しいという証拠です。
(
詭弁【○○でないという証拠がないから○○である(未知論証・悪魔の証明)】 論理的な議論の仕方より)
月の裏側には、ウサギが存在する。なぜなら月の裏側にウサギはいないという証拠がないからだ。
(
Wikipediaより)
「お前、カンニングしただろう!」
「してません、勉強を頑張ったんです」
「嘘をつけ、この野郎。カンニングしないで、お前にこんな成績が取れるわけないだろう」
「違います。濡れ衣です」
「じゃ、カンニングをしていないという証拠を出せ」
(
OKWaveより)
●「悪魔の証明」ではない正しい証明方法の例もセットで見ると良い
また、正しい証明の仕方とセットで書いているサイトもいくつかありました。よりわかりやすいんじゃないかと思います。
<悪魔の証明::いわゆる「言いがかり」の例>
A. お前、悪魔だな?
B. 違いますよ。
A. 嘘付け。じゃあ「悪魔じゃないと言う証拠」を見せてみろ!
B. えぇ……ッ!
A. 悪魔ではないと言う証拠が無いんだから、お前は悪魔に決定だッ!!
B. えぇ……ッ!!
<正しいの証明::証明責任の例>
A. お前、悪魔だな?
B. 違いますよ。私が悪魔だと言う証拠があるんですか?
A. う…!?いや、証拠は無い…ッ!
B. なら私は悪魔じゃありませんよね?
A. うん…。疑ってゴメン…。
B. いいえ、分ってくれてありがとうございます。
(
OKWaveより)
例 黒いカラスはいる
これを証明するのは、非常に簡単です。その辺のカラスを捕まえれば、大抵黒いのですぐに証明できますね。
例 紫色のカラスはいない
これを証明することは、ほとんど不可能です。全てのカラスを捕まえて、紫色のカラスはいなかった、と証明しなければなりません。
常識的にはいないでしょうが、突然変異で、どこかにひっそりと暮らしているかもしれません。なので、絶対にいないとは言えないので証明ができません。
(
OKWaveより、一部変更)
ところで、何でこれをなぜ「悪魔の証明」と言うのかと言うと、この証明が悪魔でもなけりゃ証明できないほど無茶だからということだと言われています。しかし、現在でもこの無茶苦茶な悪魔の証明を求められる場合があるので、悪魔の証明はおかしいということを覚えておいた方が良いでしょう。
●実は誤用だった?二つの悪魔の証明 ~probatio diabolicaと詭弁~
2011/12/31:といった感じで、ここまで「悪魔の証明」の話をしてきたのですが、このような使い方で「悪魔の証明」と使うのは誤用であるという説もあるんですよね。
Wikipediaによると、中世ヨーロッパの法学者が、「古代ローマ法において所有権の帰属を証明することが極めて困難であった」とする学説を主張するにあたり、比喩として用いたというのが「悪魔の証明」の最初だそうです。このWikipediaがわけわかんなくて前は嫌になったのですけど、一応悪戦苦闘して解読してみると、以下のようなこをを指して、「悪魔の証明」としたようです。
(1)原告が所有権を証明するとき、係争物を市民法の規定する方法で取得したことを証明する。
(2)さらに原告の前の持ち主が所有権者であったことを証明する。
(3)そして、さらに前の前の持主へ……という具合に、最初の占有者まで遡っていき、無権利者から取得した者ではないことを証明しなければならない。
しかし、最初の方で書いたように、今日日本で一般的に使われる悪魔の証明は、非常に困難である「起きないこと」や「存在しないこと」の証明のことを主に言います。この変化については、Wikipediaに明記されていません。
●「悪魔の証明」の起源が「古代ローマ法」というのは本当なのか?
そもそも今回読んだWikipediaの悪魔の証明は、以前読んだときよりだいぶ記述が少なかったんですよね。変だなと思ってよく見ると、以前はなかった「信頼性について検証が求められています」などのタグがついていました。「あれ?」と思ったのでノートも見てみます。
本文では、"ローマ法以来、いわゆるprobatio diabolicaすなわち悪魔の証明とは、「所有権を証明責任を負う当事者が、無限に連鎖する継承取得のいきさつを証明することの不能性および困難性があって必ずや敗訴する」という理屈を意味していた"とあり、出典も以下のように明記されていました。
"七戸克彦「所有権証明の困難性(いわゆる「悪魔の証明」について) : 所有権保護をめぐる実体法と訴訟法の交錯」、『慶應義塾大学大学院法学研究科論文集』第27号、慶應義塾大学、1988年3月、pp. p73-97"
ところが、ノートではこれがそもそも違うのでは?という話になっており、まだ議論がまとまっていませんでした。どうやら「悪魔の証明」の起源を解明するのはかなり困難であるようです。この調子だと下手したら起源は1個や2個でなく、いくつも出てくるかもしれませんね。
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