新聞生き残り関係の話をまとめ。<ワシントン・ポストは有力化に逆行!Amazon流で利益度外視戦略>、<新聞はなくなる?ネット記事有料購読化で本当に生き残れるのか?>、<低迷で迷走?紙の新聞生き残りをかけてなぜか新聞にWeb面を新設>、<デジタルで成功のフィナンシャル・タイムズ 日経新聞買収の理由か?>などをまとめています。
2022/10/19中ほどにまとめ:
●低迷で迷走?紙の新聞生き残りをかけてなぜか新聞にWeb面を新設
●「無料で良質なネットニュースが読める時代は終わる」は本当か?
2015/9/18:
無料で良質なネットニュースが読める時代は終わる|ダイヤモンド・オンライン(2015年6月11日 奥村倫弘 [ワードリーフ 代表取締役社長] )という記事がありましたが、これは当初紹介しないつもりでした。
なぜ紹介しないつもりだったか?と言うと、本文は以下のように収益化に成功すれば…という話だけですし、「なるかもしれません」というもの。特に根拠がある話ではないためです。ただし、これは作者の奥村倫弘さんのせいではなく、断定的なタイトルをつけたダイヤモンド・オンラインのせいでしょう。タイトルは普通編集がつけるものです。
<「価値ある記事は有料にすることで収益化できるのではないか」という希望も出てきています。もし、これが成功すると、何年か先に歴史を振り返ったとき「ユーザーが無料で良質なニュースを読めたのはここ20年間の、まれな時期だった」ということになるかもしれません>
●「なんてことのない記事」と「良質な記事」の違いとは何か?
ネットで真実に目覚めた人たちにとっては、そもそも良質なニュースなんかないだろうと思う人が多そうです。ただ、以前から書いているように新興ネットニュースサイトや2ちゃんねるなどのネットサイトは、結局、従来型メディアの情報に乗っかったものが多いです。
また、奥村倫弘さんの言う良質なネットニュースというのは、以下のような例を見ると何となく言わんとしていることがわかると思います。
なんてことのない記事ばかりがネットに溢れる理由 ダイヤモンド・オンライン 奥村倫弘 [ワードリーフ 代表取締役社長] 2015年5月28日
「ネットには、なんてことのない記事を配信しておけばいいんですよ」
私は、これと同様の趣旨の発言を、いずれも紙の時代からニュースを発信している複数のメディアの担当者から、ここ数ヵ月のうちに聞きました。(中略)
ある日、とあるキュレーションアプリで「いちゃいちゃしすぎだろ! 濃厚な絡みのAVが出現」という記事を見かけました。「よくも、こんなけしからん記事を配信するメディアがあるものだ」と仕事4割、興味6割でリンクを開いてみたら、そこにはお互いをなめ合う子猫と子犬の写真が……。AVというのは、アダルトビデオではなく、アニマルビデオの略なのだそうです。
一杯食わされて、良い意味でにやっとしました。売れ筋はこうした工夫で作られるんだな、その発想がさすがだなと。しかも、これは個人の思いつきで書かれた記事ではありません。非常に質の高いテック系の記事で知られるアイティメディア株式会社が運用する、新媒体「ねとらぼ」が配信した記事であり、同社の戦略的事業ポートフォリオのなかに組み込まれた、れっきとした戦略商品なのです。
同社の決算書類のなかでは、「ねとらぼ」は「PV重視の新モデルで急成長中」と報告されており、ニュースに公益性が必要かどうかという議論はさておいて、会社の成長・規模拡大を視野に入れた場合に、「なんてことのない記事」は、メディア事業として無視できない領域だということでしょう。
●新聞社の苦戦は日本だけ…というのは間違い、海外でも苦戦
「無料で良質なネットニュースが読める時代は終わる」はそもそも「かもしれない」だったわけですが、これは毎日新聞や朝日新聞、日本経済新聞が有料サービスをやっているという話に関係しています。
最初の記事では何かインターネットに記事を無料で公開した最初の新聞社が悪かったみたいな話を、なぜか日本の例だけ見て言っていて、その部分も良くない記事でした。というのも、新聞社の直面している危機というのは世界的なもののためです。日本だけ特別ってわけじゃないんですね。
で、海外の例で私が興味があるのが、経営不振でアマゾンのジェフ・ベゾスCEOに買収されたワシントン・ポスト。ワシントン・ポストのその後について書いている新しい記事があったので、前置きとして上記の話を載せたわけです。
●気前の良いベゾス氏、編集に口は出さずに金を出す
今回メインの記事はイギリスのエコノミスト誌のもの。まず、おもしろかったのは、編集方針についてはてんで口を出すつもりがなさそうなベゾスさんの姿勢です。
この下書きを終えただいぶ後に、"高い買い物?日本経済新聞社がフィナンシャル・タイムズ買収の衝撃"(この後掲載)の件がありましたが、この買収でも注目されていたのが、編集権の独立でした。
アマゾン流を取り入れるベゾス氏のワシントン・ポスト:日経ビジネスオンライン The Economist 2015年6月5日(金)
米ネット通販大手アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏は2013年8月、慢性的な赤字経営に苦しんでいた米ワシントン・ポスト(WP)紙を2億5000万ドル(約310億円)の個人資産で買収すると発表した。
発表後ほどなく、ベゾス氏は同紙論説主幹のフレッド・ハイアット氏と夕食を共にした。同紙の編集方針について自分の意向を反映させるのに申し分のない機会だった。ところが、伝えられるところによると、ベゾス氏はむしろ、月の裏側の探査など、ほかの関心事について話したがったという。
ベゾス氏の情熱は、ジャーナリズムにではなく、テクノロジーに向いている。今のところ同氏は、新聞屋にとって理想の社主であり続けている。編集上の問題にはあまり口を出さず、実験的な試みには喜んで資金を出し、損失は自ら負担する。
「実験的な試みには喜んで資金を出し、損失は自ら負担する」という方針は、以前の方針と著しく異なります。
WP紙は、以前の社主グレアム家の下で野心を失い経費削減に汲々としていたが、現在はベゾス氏の下、読者数を増やし、活気にあふれている。米国のほかの新聞各紙がスタッフを減らし続ける中、WP紙は買収発表後、100人以上の記者を新規に採用した。
ただし、"年金の給付額を、今年に入って減額した"とのこと。技術や試みに金は出すが、人に対して同じように出すわけではないということですね。
●ワシントン・ポストは有力化に逆行!Amazon流で利益度外視戦略
アマゾンのジェフ・ベゾスCEOらしいなというのは、まずは利益を度外視するという戦略を取っていること。ベゾスさんはアマゾンを成長させるにあたり、まず規模の拡大に集中し、その後で利益を上げることを考えました。ワシントン・ポスト紙についても同様に、まず国内外の読者層を拡大することに力を集中させているそうです。
買収発表後、同紙のウェブサイトの米国でのトラフィックは倍増。2015年4月の利用者数(重複訪問を除く)は5100万人に達したといいます。同紙はソーシャル・ネットワーク上で絶え間なく記事を宣伝し、ネット上の他サイトのコンテンツを利用した情報を提供し、自身のウェブページの読み込みの高速化を図っているとのこと。
また、"キンドルに搭載されるアプリは、最初の6カ月は無料で、続く6カ月は1ドル(約124円)で利用できる"ということで、これも利用者拡大優先です。
さらに、他紙の購読者が、"自分の電子メールアドレスでWP紙のサイトにログインすれば、無料でWP紙の記事が読める"といった「パートナー」プログラムも導入。広告で稼いでいる他、顧客データ獲得を目的としていると考えられます。
データで稼ぐというのはグーグルがうまいですが、"アマゾンも顧客のデータを集め、それを利用して、より多くのモノを売り込んだ"と類似性が指摘されていました。
●アマゾン流は本当にネットニュースに通用するのか?
ただ、アマゾンがネット販売やクラウドサービスでやったように、この作戦がうまくいくかはちょっとわからんなと思います。
一つは成功例においてアマゾンは開拓者であるなど、先行するサービスだったものの、ネットニュースでは完全な後発なためです。アマゾンは同じく後発参入であったスマートフォンでは、大々的に失敗しています。前半の話であったように、無料ニュースなどが蔓延し、ライバルが既に多数いて、なおかつ参入障壁も低い中では、独占・寡占的に利用者を獲得するというのは少なくとも無理でしょう。
もう一つはこの規模と関係しますが、利用者が多数得られなかった場合、投資に見合う十分な利益を得られないということです。
●ワシントン・ポストはネット販売のおまけにする可能性も
利益の上げ方としては、キンドルのような使い方が現実的かもしれません。アマゾンのタブレットのキンドルは、キンドル自身で稼ぐというよりは、アマゾン本体の販売の補助です。
アマゾンの年会費を支払うプライム会員は、現在すべての配送料が無料になる以外に、映画やテレビ番組をネットで無料で視聴できます。ネット動画は飽くまでおまけであり、こういったおまけの中にワシントン・ポストの購読も加わるのでは?と、過去にも報道されていました。
こういうことができるのは、本業が別だからですね。以前も書いたように、市場の破壊者となるのは、それまでの市場のルールを守る必要がないよそものであることが多いのです。
●新聞はなくなる?ネット記事有料購読化で本当に生き残れるのか?
途中で書いたように、ニュースの場合はちょっと難しいところがあるとは思います。ただ、アマゾンらしくチャレンジしていておもしろいですね。興奮する話です。
そして、特に利益度外視の拡大路線のやり方は、前半で書かれていた「無料で良質なネットニュースが読める時代は終わる」の描く未来とは全く異なることがわかります。多くの新聞社は生き残りの道として、ネット記事有料購読化という選択をしています。ワシントン・ポストは逆行する形です。
エコノミスト誌も、<この動きは、ほかの多くの新聞が向かう方向とは逆向きだ。新聞各社は、広告収入の落ち込みは止められないと見て、読者から十分な購読料を取ることに力を注いでいる>と指摘。
実を言うと、アマゾンの方の記事は読まずにを書き始めていたのですが、予想以上に良い対比になりました。
●ワシントン・ポストの路線は成功か?デジタル広告売上大幅増
2018/02/22:注目していたワシントン・ポストで、儲けてるぞ!という感じの
ワシントン・ポスト、売上好調を示す「社内覚書」が流出:「我々のビジネスは成長している」 | DIGIDAY[日本版](2016/9/15 Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)という記事が出ていました。
今回流出した社内の覚書を書いたのは、ワシントン・ポストで最高売上責任者(CRO)を務めるジェッド・ハートマンさん。ハートマンさんは覚書のなかで、「我々のビジネスは成長している」との楽観的な見通しを示しました。
覚書で詳しい数字を出しているわけではないものの、年間デジタル広告売上が「9桁」(数億ドル[数百億円]台)だと書いています。これは、「ニューヨーク・マガジン」が最近予測していた金額は6000万ドル(約60億円)を大きく上回るものであり、「儲かっている」と言って良さそうでした。
また、ワシントン・ポスよりはるかに規模が大きい「ニューヨーク・タイムズ」の場合、2015年のデジタル広告売上は1億9700万ドル(約197億円)であり、この比較から見ても成功していると言えそうでした。2015年にはトラフィック数でも、何度かニューヨーク・タイムズを上回ったそうです。
なお、覚書によると、8月にはデジタル部門の売上が48%増加したため、全体の広告売上は前年と比べて増えているとのこと。デジタル部門のなかで最も増加したのが275%増のネイティブアドで、92%増のプログラマティック広告、82%増の動画広告が続くとしていました。
ただし、当初書いたのと違って、有料コンテンツ購読者の拡大に本腰を入れ始めたとのこと。その結果、デジタル版の購読件数が145%増加していました。他紙と同じく最終的には有料購読重視ではあるものの、当初は規模の拡大を優先という戦略だった模様です。
これはビジネス的に学びがあるものでおもしろいには違いないのですけど、他紙とは全く違う路線だと思っていたので個人的にはちょっと残念でした。
●低迷で迷走?紙の新聞生き残りをかけてなぜか新聞にWeb面を新設
2022/10/19追記:ここから「新聞にウェブ面を作り、売り上げ拡大?」や「紙の新聞生き残りをかけてWeb面を新設した新聞社はどこ?」などのタイトルで書いていた投稿をまとめています。
2009/8/1:
産経新聞「ウェブ面」新設 生き残りかけネットに活路(J-CAST,2009/7/30)という記事を見て首を傾げました。J-CASTによると、産経新聞は2009年7月30日から日本の一般紙では初の試みとして「Web(ウェブ)面」という新紙面をスタートさせ、毎週木曜日(一部地域は金曜日)に、インターネットに関する様々なニュースを取り上げることになったそうです。
ウェブ面の狙いは2つ。1つは、「ネットは敷居が高い」と感じている産経新聞の既存読者にインターネットという新しい世界の情報をわかりやすく伝えること。2つ目は、ふだん新聞をあまり読まないネットのヘビーユーザーが好みそうな話題を提供して、これを機に産経新聞を手に取ってもらうことだといいます。
でもこれで本当に売り上げが伸びるんでしょうか? 「う~ん」と思わず首をひねってしまう狙いです。特に狙い2がわかりません。これまで新聞紙不要の生活をしているネットのヘビーユーザーが1週間に1度掲載される情報のために新聞を読むとは思えないためです。
また、ある程度理解できる狙い1についても、既存読者がインターネットに目覚めて「新聞紙」離れしてしまう危険性もあるのではないかと感じました。というか、そもそも「既存読者が知って得する情報」と「ネットヘビーユーザーが知りたい情報」は乖離が大きいでしょう。二兎追う者は一兎も得ずな狙いで、チグハグだと感じます。
●新聞社の持っている能力は高い 必要なのは新たなビジネスモデル
ウェブではマスコミを何でもかんでも悪く言ってしまう傾向がありますが、私は新聞社などは経営モデルが悪いのとネット敵視などの偏りがあるだけで、その能力は非常に大きいと思っています。記事中でも「新聞は新しい話題をかみくだいて説明するのがうまい」(ITジャーナリストの津田大介)とあるように、記事を作っている人は基本的には優秀でしょう。
また、マスコミを一度も通さないニュースも増えてきたものの、今現在ネットで目にするニュースのほとんどはどこかでマスコミを経由したものばかりで、まだまだその役割や能力は大きいはずです。問題はその能力をどう生かしていくかで、今回のように「紙」の新聞の売り上げ増加にこだわってしまうのは、新聞社の寿命を縮めるだけではないかと思います。
それより、押し紙のような詐欺なしで健全に儲けられる経営モデルを考えるとか、対象を特化してニッチに訴える新聞にするとか、すべきじゃないかと考えます。いずれにしろ新聞の売り上げはこれから減る一方で、増えることを考えた経営モデルは成り立たないはずですので、減ることを前提に新聞紙以外で安定的に収入を得られるものを作っていくことが最も急がれるでしょう。
産経新聞社は過去に
産経新聞社が「無断リンク」に警告(スラッシュドット・ジャパン、2003/3/13)のようなネットを敵視する問題も起こしていますが、記事中にあるように「ネットとの連携」に積極的な新聞社という印象はありますので「頑張って欲しいなー」と思っています。
(2018/04/26;…と当時は書いていましたが、偏見と捏造が多い新聞社だとは当時は知らなかったため。今は応援していません)
2018/04/26追記:このWeb面って今もあるんだろうか?と検索。すると、検索でヒットするページは、Web面新設の翌年の2010年までの話題ばかりでした。なので、もう既に無くなったのではないかと思うのですけど、廃止になったという情報もまた見当たらず、よくわかりませんでした。
●日本経済新聞社がフィナンシャル・タイムズ買収の衝撃ニュース
2015/7/24:"日経 フィナンシャル・タイムズを買収へ NHKニュース"(7月23日 23時44分)というニュースが入ってきました。たぶん興味ないって人が多いと思うんですが、私は大興奮。ニュース見て鳥肌が立ちました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150723/k10010163851000.html
<発表によりますと、日本経済新聞社は23日、イギリスのメディア大手、ピアソンからフィナンシャル・タイムズ・グループを買収することで合意したということです。日本経済新聞社は8億4400万ポンド(日本円にしておよそ1600億円)でフィナンシャル・タイムズ・グループのすべての株式を取得します>
単に海外新聞社買収だからすごいというのではなく、フィナンシャル・タイムズってのがすごいところ。NHKの説明は以下でした。
<フィナンシャル・タイムズは、1888年に創刊されたイギリスの有力な経済紙で、サーモンピンク色の紙に印刷されていることで知られています。競合するほかの新聞との合併などを経て、1957年にピアソンに買収されました。
世界各国に50か所以上の拠点を持ち、500人のジャーナリストが取材活動に当たっていて、経済分野の報道に定評があります。
発行部数は、印刷物とデジタル版で合わせて73万7000部に上り、このうちおよそ7割は、過去5年の間に急成長したデジタル版での購読となっています>
●最有力候補はドイツ、日経新聞社は突然登場 劇的な逆転で買収に成功
ロイターによると、もともとはドイツの新聞社が買収先として有力でした。どの記事で書かれていたかわからなくなって引用できませんが、日経新聞は5週間くらい前に突然出てきた…という話も読みました。とりあえず、
日経がフィナンシャル・タイムズ買収、親会社から1600億円で | Reuters(2015年 07月 24日 09:20 JST)では、以下のように書いています。
<FT自身、ドイツの新聞・出版大手、アクセル・シュプリンガーが最有力候補と伝えていた。ほかに、トムソンロイター(TRI.N)なども候補に取りざたされていたが、日経の買収は関係者にとって、青天のへきれきだった>
投稿直前に見直していたら、5週間前に突然登場したという話の元ネタが出てきたので追加します。
時事ドットコム:「最後の10分」で形勢逆転=自社買収劇の内幕報道-FT紙という記事で書かれていました。
<【ロンドン時事】英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の電子版は23日夜、日本経済新聞社による自社買収劇の内幕を報じた。日経は交渉で劣勢だったものの、同日になって突然、ライバルを上回る額をすべて現金で支払うという想定外の好条件を提示。「最後の10分」で形勢を逆転させ、土壇場で競り勝った。
それによると、23日の早い段階で先行していたのは独メディア大手アクセル・シュプリンガー。同日午後にはFT自身も「シュプリンガーが優勢」と報じていた。しかし、日経が示した条件を聞いたシュプリンガーは買収を断念し、報道を打ち消す声明を発表。FT親会社の英出版大手ピアソンが正式に日経への売却を発表したのは、その7分後の午後3時13分だった。
シュプリンガーは昨年からFTへの一部出資について協議を開始し、数週間前から買収交渉に切り替えていた。一方、日経の参戦は5週間ほど前だったという。(2015/07/24-07:48)>
●デジタルで成功のフィナンシャル・タイムズ 日経新聞買収の理由か?
既に少し出ていたように、フィナンシャル・タイムズはデジタル事業が得意なようです。最初のNHKでは、以下のように書いていました。
<新聞業界は、発行部数の減少や広告収入の大幅な落ち込みで、経営環境が厳しさを増していて、日本経済新聞社、フィナンシャル・タイムズ・グループともに、新たな収益源としてデジタル事業に取り組んでいます。今回の買収で、日本経済新聞社は、世界的に経済報道を充実させるとともに、フィナンシャル・タイムズ・グループの顧客基盤を活用して、デジタル事業を強化することをねらっています>
フィナンシャル・タイムズは世界で最もデジタルで成功しているメディアだとのこと。日経新聞も一応日本では最もデジタルで成功しているところではあるでしょう。ただ、デジタルの強化という意味では理解できる買収です。
ロイターによると、"複数のFT記者はロイターに、日経についてほとんど知らず、多少の不安があると語った"そうです。日経新聞は、海外では無名なんですね。で、どの記事かわからなくなっちゃったんですが、今回の買収は日経新聞の海外進出の足がかりではないか?というものもありました。
とは言っても、この海外進出について書いていた
日経が経済紙の最高峰、フィナンシャル・タイムズ(FT)を英国のピアソンから買収 - Market Hack(2015年07月24日00:46)でも、以下のように「デジタル事業のため」にという説明の方が多かくなっています。
<フィナンシャル・タイムズは世界の経済紙の中で最も信頼されている高品質な新聞で、最近の業績も好調です。サブスクライバー数は72万人(紙+オンライン)で、このうちデジタル・サブスクライバーは50.4万人、つまり全体の70%に達しています。(中略)
フィナンシャル・タイムズは2002年からデジタル・サブスクリプションを開始しており、これまでにいろいろな課金戦略を試してきました。ネット記事への課金という点では、あらゆるメディアで最も成功しているうちの一社と言えます。日経新聞はFTのデジタル戦略のノウハウを今後の戦略で参考にすることが出来ると思います。
FTの読者は良い情報を得られるなら、お金に糸目をつけません。このこともデジタル・サブスクリプションへのアグレッシブな移行が成功した理由かもしれません>
●共通点はブランド力の高さだけでなく、「ページ・ブレイクなし」という方針も
また、"フィナンシャル・タイムズの読者は世界中の裕福層で、広告媒体としては極めて魅力的"という話もありました。本来、クオリティペーパーってそういうものですけどね。読者を選ばずに読者数を増やすことで「稼げていた」というメリットもあるのですが、日本の新聞は大衆向けすぎます。
ただ、日経新聞も日本の新聞としては最も高級な感じです。これが日本のデジタル事業で先行できている理由かもしれません。他紙よりブランド力があるのです。このように多少似ているところはあるのですが、Market Hackは以下のような共通点を指摘した上で、違いについて触れていました。
<日経とFTには、編集上の大きな共通点があります。それは「ページ・ブレイクなし」という方針です。ページ・ブレイクとは、第一面の記事が、話の途中で後ろのページに飛ぶことを指します。このように記事が分断されると読みにくいし、あちこちめくらないといけないので、読む方としては忙しくなってしまいます。日経もFTも、そのようなレイアウトを採用してないので、読みやすいです。
その反面、「ページ・ブレイクなし」の方針だと深掘りした長尺記事を第一面に持ってくることが出来ません。つまり喰い足りない、上っ面だけを報じる記事にならざるを得ないのです。
FTの場合、そういう制約の中で簡潔な中にも味わいや含蓄のある記事の書き方が殆んど芸術の域にまで高められています。残念ながらそのような味わいは日経新聞にはありません。(中略)
最近は紙の記事以外にもFT blogなどで記者の手持ちのネタのアウトレットが増えているので、個々の記者の個性に合わせた長尺記事やタイムリーな記事が日の目を見る機会は増えているようにも感じます。このへんにも日経はFTから学ぶべきものが多いのではないでしょうか?>
●日本人は買い物が下手…日本経済新聞社は高い買い物をした?
「日本経済新聞社は高い買い物をした」という批判があるようです。ただ、これはちょっと誤解も含まれているかもしれません。今回の記事では新聞業界の縮小や買収される新聞の例とともに伝えられていることが多いです。しかし、フィナンシャル・タイムズはそれらとは違い、成功している企業。少なくともダメ企業の買収とはわけが違います。
親会社のピアソンが手放したのもフィナンシャル・タイムズがお荷物事業だからではなく、本業が不振なので優良資産でも売らなくてはいけなかったためなんですよね。それでもなお「高すぎる」という可能性はあるものの、これを理解した上で、高いか安いかという話をしなくてはいけません。
<今回の買収はフィナンシャル・タイムズの営業利益の約35倍のマルチプルです。これを「高い買い物をした!」と批判する声があるけれど、僕はそうは思いません。なぜならフィナンシャル・タイムズはdamaged goodsではないからです。業績が漂流中のニューヨーク・タイムズなどと同列に論じることは出来ないのです。今回、FTを手放すピアソンは教育市場部門が不振で、リストラを迫られています。FTを手放すと決めたのは、そのため>
これまたどこで読んだか忘れちゃいましたが、ワシントン・ポストだったかな?「企業報道が両紙は異なる」としていました。日本経済新聞社は実際にはあまり口を出さない感じではあるものの、これはこれで他の日本企業と同じように買収が失敗になるおそれがあります。
ただ、フィナンシャル・タイムズは今うまく行っていますからね。うまく行っているときに無理して口を挟む必要はありません。問題はうまく行かなくなったときです。今回の買収でフィナンシャル・タイムズがどう変わるかよりは、日経新聞がどう変わるかの方が当面注目されるところでしょう。
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