ノーベル賞に関する話をまとめ。<人種差別発言で科学界から追放されたジェームズ・ワトソン氏>、<「二重らせん」の立役者らを悪役として描く「捏造」があった>、<大発見に繋がるライバルの写真を無断で見るズルもしてた…>などをまとめています。
2023/10/01:
一部見直し
●人種差別発言で科学界から追放されたジェームズ・ワトソン氏
2015/9/29:理研のSTAP細胞問題のさなかに書いた
理研の野依良治理事長、過去に3300万申告漏れ 脱税で追徴課税にでは、ノーベル賞の受賞と人格の良さには関係がないとしました。また、それで構わないとも書いています。優れた能力を持っている人が良い性格だとは限りません。むしろ偉人と言われる人は、性格的に欠陥がある場合が多いです。
確かノーベル賞受賞者でめちゃくちゃ破天荒な方がいらっしゃったと思ったので、そんな問題のある例として出そうと思っていたのですが、名前を忘れてしまいました。ただ、その人の代わりに良さそうだなと思って、昨年(2014年)にブックマークしていた記事があります。
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DNAの構造を発見した生物学者がノーベル賞メダルを競売に:日経ビジネスオンライン FINANCIAL TIMES 2014年12月3日(水) David Crow(©Financial Times, Ltd. Nov. 28, 2014)
<1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞したジェームズ・ワトソン氏が同賞のメダルを競売に出す。2007年に人種差別的な発言したことで、科学界から追放されていた。>
●アフリカの人々の知能が我々と同じという前提は間違い
でも、フィナンシャル・タイムズの以下の書き方を見てみると、発言がそこまでひどい内容ではなかった可能性も感じました。残念なことですが、人種によって知能指数やテストの点数に差があること自体は事実なんですよね。
<同氏は、知能と人種を関連付ける人種差別的な発言をしたために、科学界から締め出されていた。(中略)
ワトソン氏は、アフリカの人々の知能が白人よりも先天的に劣っていると示唆して、激しい非難を浴びたのだ。>
ところが、実際の発言を見て、また考えを改めます。ジェームズ・ワトソンさんは「私がアフリカの人々の知能指数が低いため彼らのことを心配していることを、どういうわけか(ジャーナリストに)記事にされてしまったことを謝罪する。あのようなことは口にすべきではない」と言って、誤解されたと主張。でも、実際にされた発言は、あまり思いやりを感じないものでした。
<英サンデータイムズ紙が2007年、ワトソン博士のインタビュー記事を掲載した。その中でワトソン氏は、「アフリカの未来を考えると暗い気持ちになる。アフリカの人々の知能が我々と同じだという前提に基づいて社会政策が作られている。だが、すべてのテストがそうではないことを示しているからだ」と語っている。
彼は新聞記者に、人は皆同じ知能を持って生まれてくると人々は信じたがるものだが、「黒人の従業員を雇う人々はこれが真実ではないことに気付いているだろう」と述べた>
●「二重らせん」の立役者らを悪役として描く「捏造」があった
ここらへんは一応グレーな感じです。ただ、性格的に問題があるというのが、もっとストレートにわかる話も、検索していると見つかってしまいました。
(PDF)隠された科学者─ロザリンド・フランクリン(青山学院大学理工学部化学・生命科学科教授福岡伸一 )という記事の話です。(改行を追加)
<大発見の影には知られざるドラマがあり,偉人伝の裏には必ず隠された暗部がある。ワトソンとクリックによるDNA構造という世紀の大発見も例外ではない。1968年,ワトソンが出版した『二重らせん』は科学読み物としては一大ベストセラーとなった。DNA構造の解明競争にまつわる研究者たちの赤裸々な実態,不安や焦燥,猜疑心,嫉妬やねたみなどが余すところなく描き出されたドキュメントとして,この本は高い評価を受けた>
ところが、「この本はフェアではなかった」とのこと。要するに捏造ですね。ワトソンさんは自分だけを「無邪気な天才」という安全地帯において,他の登場人物を戯画化。これには複数の関係者が異議を唱え、相棒のクリックさんでさえも不快感を表明。特にひどかったのが、すでに亡くなっていたロザリンド・フランクリンさんでした。
<彼らの華々しい成功─それは1962年のノーベル賞という形で最高潮を迎えた─のために欠くことのできない役割を演じた人物,それなのに,『二重らせん』では,気難しく,ヒステリックで,自分のデータの重要性にも気がつかないような視野狭窄な,暗い女性研究者(ダークレディー)“ロージー”として描かれていた人物。それがロザリンド・フランクリンである。彼女は自分があまりに不当に描かれていることはおろか,研究上の確執があったモーリス・ウイルキンスが,ワトソン,クリックとともに,1962年のノーベル賞に輝いたことも知ることなく,1958年,その短い人生を閉じていた。>
●大発見に繋がるライバルの写真を無断で見るズルもしてた…
ワトソンさんは、フランクリンさんと険悪になったんだそうな。そこで、同じくフランクリンさんと対立関係にあったモーリス・ウイルキンスさんと「被害者同盟」を結びます。それだけなら問題ないものの、何とフランクリンさんと同じ研究機関にいたモーリス・ウイルキンスさんから、こっそり「二重らせん」において重要な写真を見せてもらっているのです。
<ウイルキンスは秘密を語った。彼は,密かにフランクリンの撮影したDNAの三次元構造を示すX線写真を複写しているというのだ。その場面を,ワトソンは次のように記述している。
─そのX線写真模様はどんなふうなのかと質問すると,モーリスは隣の部屋から,彼らが「B型」構造とよんでいる新形態を示す写真のプリントをもってきた。その写真を見たとたん,私は唖然として胸が早鐘のように高鳴るのを覚えた。>
●名誉だけでなくカネにもなるノーベル賞
話は変わりますが、ノーベル賞というのは非常に栄誉なだけでなく、莫大なカネにもなるもののようです。最初のフィナンシャル・タイムズには、以下のような話がありました。
<ワトソン氏はフランシス・クリック氏とモーリス・ウィルキンス氏と共同でノーベル賞を受賞した。クリック氏のメダルは、(彼の死後9年経った)2013年に、230万ドル(約2億7000万円)で、バイオテク関連の中国人起業家ジャック・ワン氏に売られた。
ワトソン氏は、自分の死後、有名な著書『二重らせん』の手書き原稿を子供たちが競売にかけることを望むと語っている。「これはメダルよりもずっと高く売れるだろう。最低落札価格は1000万ドル(約11億8000万円)以上だ」。>
もちろん1000万クローナ、現在のレートだと1億4000万円程度の賞金もこの他にあります。ノーベル賞は人格と関係あるべきではないと書いたものの、こういう話を見ていると、複雑な気分になりますね。やっぱり人格も考慮した方が良いのかもしれません。
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