<名経営者のように見えてそうではない…カリスマ社長はなぜ悪い?>、<長期政権の社長は実力がある証拠という反論 データを見ると…>、<カリスマ社長と老害の違い 孫正義・渡邉美樹・山田昇はどっち?>など、カリスマ社長・名経営者に関する話をまとめています。
冒頭に追記
2022/03/25追記:
●プーチン大統領のウクライナ侵攻でわかる「ワンマン社長の弊害」
2022/04/19追記:
●悪い情報が伝わらない…恐怖支配のカリスマ指導者の典型的失敗 【NEW】
●ゴマすり部下の都合の良い情報で楽観シナリオ?速攻で勝利宣言 【NEW】
●正確な情報で指導者に反対する部下は辞任…イエスマンだけ残る 【NEW】
●正しいことを言う部下は「全て死罪」と宣言した中国の王の話 【NEW】
●プーチン大統領のウクライナ侵攻でわかる「ワンマン社長の弊害」
2022/03/25追記:別のところで書いた二度目のウクライナ侵攻の話をこちらにも追記。記事そのものは希望的観測が混じっていそうで本当かいな?というものだったのですが、とりあえず、「叱ることが悪い理由」「ワンマン社長の弊害」「ホウレンソウの失敗」の典型例になっていました。
私が読んだ記事というのは、<情報機関がプーチンに反旗?ロシア内部に大きな亀裂の兆し>(2022/3/23(水) 11:01配信 JBpress 藤谷 昌敏)というもの。タイトルになっているのは、プーチン大統領の強さの理由であった情報機関の支持が崩れて、内部リークも起きている…といった話です。
一方、私が興味を示したのは、<報道によれば、ウクライナ侵攻後、FSB(連邦保安局)で外国の諜報活動を担う部門のトップ、セルゲイ・ベセダが自宅軟禁された>からの部分。自宅軟禁されたのは大統領に逆らったからではなく、大統領が怖くて正確な報告ができずウクライナ侵攻で苦戦したため…とされていたのです。
<第5局は侵攻に先立ち、ウクライナの政治情勢を報告する任務にあったが、プーチンを怒らせることを恐れて、ウクライナ軍の士気、ゼレンスキー政権の統率力、民衆の支持状況などについて、耳ざわりの良いことだけを報告していたようだ>
https://news.yahoo.co.jp/articles/ccff312d8e4df2a2e0f3fea5a9f8623c82e9873f
叱る上司が悪い理由のひとつは、このように「悪い情報」という本来ならたいへん重要な報告が上がってこなくなること。ワンマン社長では特に起きがちなことで、周りがイエスマンばかりになり耳に痛い忠告がでなくなってしまいます。そして、これらの状態は典型的な「ホウレンソウの失敗」だと言えるでしょう。
●悪い情報が伝わらない…恐怖支配のカリスマ指導者の典型的失敗
2022/04/19追記:前回書いたプーチン大統領の件では、他にも「典型的なワンマン社長の弊害」を思わせる報道が続出。そのときにも書いたように、欧米側に都合の良すぎる情報で事実ではない可能性も考えているのですが、ちょくちょくブックマークしていました。多すぎるのでなるべく端折って紹介していきます。
<ホワイトハウスのベディングフィールド報道官は(中略)「プーチン大統領の側近は真実を伝えるのを恐れており、ロシア軍の侵攻がいかにうまくいっていないか、欧米の制裁措置でロシア経済がいかに打撃を受けているかについて、誤った情報を伝えられているとわれわれは確信している」と語った>
<欧州の上級外交官は、(中略)「プーチン大統領は実際の状況よりも事が順調に進んでいると考えていたようだ。この問題は『イエスマン』に囲まれ、長テーブルの端に座っていることに起因しているのだろう」という見方を示した>
(
プーチン氏に戦況の誤情報か、側近「イエスマン」が真実報告恐れ | ロイターより)
<プーチンは当初、 ウクライナ侵攻は2~3日で終わるだろう なぜならお笑い芸人大統領のゼレンスキーが逃亡し、政権は即座に崩壊するからだ ウクライナ国民の半数以上は、ゼレンスキー「ネオナチ政権」を嫌悪している だからロシア軍は、「解放軍」として、歓喜してむかえられるだろう 欧米は、ロシアからの石油、ガスに依存しているドイツの反対で、強い制裁を打ち出せないだろう こんな超楽観的シナリオを描いていたのです。
ちなみに、このシナリオをプーチンに伝えていたFSB第5局のセルゲイ・ビセーダ局長は「処分」されたとか。
このあまい見通しは、完全にはずれました。
ゼレンスキーは逃亡せず、政権は維持されている プーチンは「現代のヒトラー」(プトラー)と呼ばれ、ゼレンスキーはウクライナだけでなく、「世界の英雄」になった ウクライナ国民は、ロシア軍を歓迎するどころか、憎悪している ドイツはウクライナ侵攻がはじまった2月24日以降、豹変 2月26日には、ロシアをSWIFTから排除することなどが決まった 結果、ロシア経済はボロボロになっている>
(
プーチンはロシア国民も殺す。地獄の制裁で経済成長率マイナス20%の衝撃 - まぐまぐニュース! 2022.03.28 by 北野幸伯より)
●ゴマすり部下の都合の良い情報で楽観シナリオ?速攻で勝利宣言
欧米側に都合の良すぎる情報で事実ではない可能性も考えている…と書いたものの、以下のように、実際にロシア側が楽観的すぎるシナリオを描いていた可能性を感じさせる「ミス」も起きています。もちろんこれで「確定」というものではありません。ただ、楽観シナリオを描いていた可能性は十分ありそうな話でした。
<もともとロシアはどういうシナリオを描いていたのか?その手がかりになるのが、軍事侵攻開始のわずか2日後に国営の通信社が配信し、直後に削除した記事です。(中略)
「ロシアによる進撃と新たな世界の始まり」という壮大なタイトルの記事はすぐに削除され、今は見ることができません。しかし多くの人が記事を保存していたことからSNSで瞬時に出回ります。「ウクライナは戻ってきた」と書かれていますが、この時点どころか、今もウクライナは抵抗を続け、ロシアに屈服していません。
午前8時という切りのいい時間に配信されたこともあって、欧米メディアは、事前に準備していた「勝利を祝う予定稿」が誤って自動配信されたのではないかという見立てを伝えました>
<イギリスの公共放送BBCは「ロシアの通信社が勝利の論説を削除」という見出しで「プーチン大統領がウクライナ問題を解決したことを称賛し『軍事行動によってウクライナがロシアに戻った』としている。これは著者が早期の勝利を予想していたことに加え、記事の掲載が時期尚早だったことを示唆している」と伝えています>
(< 詳しく】思っていたのと違う?誤配信に見るロシアの誤算> 2022年3月29日 16時28分 NHKより)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220329/k10013557011000.html
なお、こページのテーマとは離れますが、誤配信記事の内容は日本でもロシア擁護の右派が主張する「ウクライナで迫害されているロシア系の住民を保護」ではなかったそうな。実際には「戦争の結果、ロシア人とウクライナ人とベラルーシ人の結び付きを取り戻した」という内容。本来の目的はこちらのようです。
この考え方は2021年7月にプーチン大統領が発表した『ロシアとウクライナの歴史的な一体性について』という論文の内容とおおむね一致するそうです。これはまたイエスマンを生んでいる…といった話。マスコミも悪い情報を書けずに泥沼にハマり失敗…というのは、日本の太平洋戦争ともよく似ています。
●正確な情報で指導者に反対する部下は辞任…イエスマンだけ残る
こうした失敗は悪い情報を伝える必要な部下を叱ったり遠ざけたりした結果起きやすいです。ただ、プーチン大統領はこの状況でまた粛清を行っているらしいので、ますます悪い状況になっているかもしれません。また、正しい判断できる部下がプーチン大統領の元を去る…といったことも起きているとされていました。
<バイデン米大統領は31日、ロシアのプーチン大統領が「顧問らを解任したり、自宅軟禁下に置いたりしたことを示唆する情報がある」と明らかにした。また「彼は(側近を遠ざけて)自ら孤立化しているようだ」とも語った>
(
プーチン氏、側近を解任・軟禁か 「自ら孤立」―米大統領:時事ドットコム 2022年04月01日より)
<ペスコフ大統領報道官は23日、国際機関との協力を担当してきた大統領特別代表のチュバイス元第1副首相が辞任したことを明らかにした。英BBC放送などによると、ウクライナ侵攻に反対しての辞任で既に出国したという>
<一方、ベラルーシの反体制派ネットメディア「ネフタ」によると、ウクライナ侵攻を指揮する立場にあるロシアのショイグ国防相が、今月11日を最後に公の場に姿を見せていない。欧米メディアによると、心臓病を患っているという。ロシア大衆紙は同国軍の兵士の死者数を9800人余とウェブ上で示した直後に削除した。侵攻に伴い甚大な被害が出ているとされる>
<ロシア下院の与党は23日、所属議員が許可なく出国することを禁じた。亡命などを防ぐためとみられる>
(
ロシア政府高官らが辞任や不明 大統領特別代表・チュバイス氏→侵攻に反対し出国 国防相→2週間動静不明 中銀総裁→辞意報道:東京新聞 TOKYO Web 2022年3月24日より)
●正しいことを言う部下は「全て死罪」と宣言した中国の王の話
ここらへんの話から「鳴かず飛ばず」の故事を思い出しました。今は悪い意味で使われる「鳴かず飛ばず」ですが、本来は前向きな意味だったんですよね。もともとは、正しいことを言う部下を排除するダメ指導者のふりをして、悪い部下と良い部下を見定めていていた…という話なのです。
<荘王(そうおう、? - 紀元前591年 在位:紀元前614年 - 紀元前591年)は、中国春秋時代の楚の王。(中略)楚の歴代君主の中でも最高の名君とされ、春秋五覇の一人に数えられる>
<荘王は全く政治を見ず、日夜宴席を張り、「諫言する者は全て死罪にする」と宣言した。(中略)家臣達は呆れ返ったものの諫言も出来ずに見守っていたが、遂に3年目となって伍挙(伍子胥の祖父)が両側に女を侍らせていた荘王に進み出て、「謎かけをしたいと思います。ある鳥が3年の間、全く飛ばず、全く鳴きませんでした。この鳥の名は何と言うのでしょうか?」と言った。荘王は「その鳥は一旦飛び立てば天まで届き、一旦鳴けば人々を驚かせるだろう」と返したが、伍挙はなおも言い下がろうとしたので、荘厳な声で「お前の言いたい事は解っている。下がれ!」と言って下がらせた。その後も淫蕩に耽ったが、大夫蘇従が諌めてきた。荘王は気だるげに「法(諫言すれば死罪)は知っているな」と問うたが、蘇従は「我が君の目を覚まさせることができるならば、本望です」と答えたので、荘王は「よくぞ申した」と喜び、これを機にそれまでの馬鹿のふり(仮痴不癲)を解いた。
荘王は3年間、愚かな振りをする事で家臣の人物を見定めていたのである。悪臣を数百人誅殺し、目を付けておいた者を新たに数百人登用して、伍挙と蘇従に国政を取らせた。民衆の人気は一気に高まり、国力も大きく増大。楚は周辺諸国を脅かす存在となった。
この故事からじっと機会を待つ状態の事を「鳴かず飛ばず」と言うようになった(ただし現在では長い間ぱっとしないと言う意味で使う事が多い)>
(
荘王 (楚) - Wikipediaより)
●名経営者のように見えてそうではない…カリスマ社長はなぜ悪い?
2019/06/28:
スティーブ・ジョブズらカリスマ社長はなぜ悪い?デメリットが多数あるでは、ハーバード・ビジネス・レビュー誌のサイトに掲載された「カリスマのダークサイド」と題する英ロンドン大学教授のブログ記事の話が出てきました。政治家について書いたものですが、経営者でも同じことが言えるだろうとして、以下が紹介されています。
1.カリスマは判断力を薄める
2.カリスマは中毒的である
3.カリスマは狂気を隠蔽する
4.カリスマは集団ナルシシズムの温床となる
「カリスマは判断力を薄める」は特にうなずけるもの。カリスマ社長が決めてしまうために、他の人たちが判断する機会を奪われてしまうということでしょう。
さらに言えば、ワンマンタイプの社長は意見を異にするタイプを排除し、周囲をイエスマンで固めやすいため…というところまで私は想像しました。よく「名経営者引退で会社が悪化した」といったことが起きるものの、実際には前任の経営者の責任と言える場合が含まれています。前任の経営者が、能力ある後継者を育てなかったり連れてこなかったりしたために会社がうまくいかなかった…というパターンですね。
なので、継承までうまくやって初めて「名経営者」と呼ぶ方がふさわしいと思います。ただ、実際には元社長がいなくなって悪くなった方が「やっぱり~さんじゃなきゃダメだった…」となるので、名声が逆に高まりやすいというところもあるかもしれません。
●長期政権の社長は実力がある証拠という反論 データを見ると…
なんか感情論っぽいなと思って本文まで読まなかったのですけど、高齢の経営者が老害と呼ぶのは正しいのか?という記事も最近見かけました。検索結果で見えている本文の一部を見ると、長期政権の社長は実力があって良いといった感じで、むしろ望ましいといった調子です。
私も高齢経営者=老害と決めつけるのには賛同しません。ただ一方で、長くやっている経営者=名経営者というのも結局同じく根拠が無いため、やはり賛同ではできません。個別事例ではそういった例はあるでしょう。ただ、「感情論っぽいなと思って」と書いたように、こうしたものはデータ的な証拠が必要なのです。
で、そういった研究の一つを、
高齢で長期政権は社長が良い証拠?若手社長と比較してみた結果…で紹介しました。こちらによると、長期政権の高齢CEOは創業者であろうがなかろうが、そうじゃない会社よりうまくいかない傾向にあるとのこと。老害という言い方は口が悪すぎますが、基本的に高齢社長、在職期間の長い社長は良くない傾向があるようです。
●カリスマ社長と老害の違い 孫正義・渡邉美樹・山田昇はどっち?
こうしたことからすると、本当の名経営者というのは、辞め方が大事だと言えそうです。こうした話は何度かやっており、その一つが、
老害化するカリスマ社長はヤマト運輸の小倉昌男に学べ クロネコヤマト宅急便の生みの親でした。また、
引退するのが難しい創業者、ココイチ宗次徳二氏はスッパリ会社を辞めたも良い例。このふたりはきちんと後継に道を譲りました。
一方、ココイチの話のときに悪い例として挙げたのは、一旦道を譲りながら復帰してしまったヤマダ電機の山田昇会長やワタミの渡邉美樹会長、ユーシン・田邊耕二社長といったところです。より最近の例ですと、セブンイレブンで騒動を起こした末に引退に追い込まれた鈴木敏文さん。独裁化していたことや後継者を排除しようとしていたことは共通しています。
(関連:
セブンイレブンオーナーは鈴木敏文と古屋一樹を慕ってるって本当?)
また、ソフトバンクの孫正義社長も一旦ニケシュ・アローラさんを後継に指名しておきながら撤回し、「69歳まで社長」宣言するなど老害社長パターンの王道に…。ただ、ソフトバンクの本業はもう投資業のような感じ。優秀な経営者がいなくても投資アドバイザーさえ雇えばやっていけるかもしれません。
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