「ファインバブル」とか「ウルトラファインバブル」とか「微細気泡」とか呼ばれる技術があるそうです。正直胡散臭いと思って読み始めたものの、説明を見ると納得できるもの。
用途や効果としては、魚や農作物の成長を促進したり、トイレなどの洗浄したりといったもの。魚は今まででは考えられないほど大きいし、洗浄力は薬品以上といった感じで、マジ?と思うほどの効果のようでした。(2015/10/4)
2018/03/03追記:
酸素の代わりに窒素を使うと魚の鮮度を保つ効果
細菌の殺菌、ショウガの栽培にも利用
健康や美容は科学的根拠なく詐欺の疑い
2018/05/29:
カキのノロウイルスをウルトラファインバブルで除去?
ノロウイルス舐めんな…胡散臭いと話題のカキの研究
●胡散臭いほど画期的なファインバブルの効果
2015/10/4:流行りものの言葉っぽいですが、NHKの看板番組であるクローズアップ現代の
放送予定(放送が終わると、内容は書き換えられてしまいます)では、微細な泡を液体に注入するだけで、魚のサイズが2倍、食品の保存期間が5倍といった感じで、胡散臭さ全開。疑似科学じゃないの?と思うほどです。
No.3712 2015年10月6日(火)放送
小さな泡が世界を変える!?~日本発・ファインバブル革命~
直径ナノレベル~0.1ミリほどの微細な泡を液体に注入すると、信じられないような効果が生まれる―ウルトラファインバブル(極小の泡)を使った技術で様々な産業に革新が起こりつつある。極小酸素は養殖魚や農作物の成長を促進し、魚のサイズを2倍にまで伸ばす。極小窒素を水揚げした魚に使えば、雑菌の繁殖を抑え、食品の保存期間を5倍に延長させる。界面活性効果で工業製品の洗浄力は薬品を上回り、最新医療ではウィルスや細菌を破壊、一部高温状態にすれば醸造・発酵にも活用できるなど、様々な効果が確認されつつある。環境に優しく低額投資で応用が広がるこの技術、日本で20年ほど前から研究が始められ、最近一気に実用化が進んだ。開発の主体となっているのは地方の中小企業や大学だ。国際標準つくりへ向けての全国の連携も始まった。日本が独走する「バブル革命」、驚きの可能性を探る。
●食品以外でも洗浄で活躍するファインバブル
上記は放送予告ですので、内容はよくわかりません。ただ、NHKでは別の番組(Eテレの「サイエンスZERO」の「日本発 驚異の泡! ウルトラファインバブル」(8月30日))で、既にファインバブルについて特集していました。その感想が以下で少しありました。
2015年8月30日の放送|NHK「サイエンスZERO」
当方が触発されたのは、ナノバブルが洗浄や医療分野への活用が期待できることで、医療分野については消化不良ですが、空気ナノバブルによる洗浄効果は西日本高速の60%のサービスエリアのトイレ洗浄で導入されており、洗剤不要で極小空気泡の破壊で汚れを落とす洗浄は環境に優しく広範囲の応用用途が期待でき日本社会を変容させると思いましたね。
●「ファインバブル」と「ウルトラファインバブル」の違い
ファインバブルについて興味を感じて書き始めたわけですが、情報が少なすぎて弱りました。ニュース記事は全然ない上に、あっても専門系で登録が必要な媒体ばかり。
ということで、企業サイトも覗いてみました。以下は全般的な説明ですが、「ファインバブル」と「ウルトラファインバブル」の違いを説明してくれているのが素晴らしいです。
ウルトラファインバブルとは| IDEC(アイデック)株式会社
液体の中の気泡は、「水槽の散気板からブクブク出る泡」や「ビールの泡」のように、気泡径が十分大きいと直接目視で確認することができます。それより小さい数十ミクロンの気泡径のファインバブルの場合は、気泡が散乱体となるため「液体が白濁」することで存在が認識できます。さらに小さい数十ナノメートルの気泡径になると、光の波長よりも小さくなるため視認することができなくなり、液体は透明になります。この極めて小さな気泡をウルトラファインバブルと呼びます。
ウルトラファインバブルは透明で見えないこと以外にも、様々な特性を持ちます。例えば、気泡が極めて長期間液中に存在することや、気泡が電荷を帯びることや、気泡内部が超高圧状態になることなど、これまでの気泡にはなかった振る舞いをします。
●「ファインバブル」と「ウルトラファインバブル」の特徴
このサイトは本当良いですね。他のところもわかりやすくて、おもしろいです。以下、そのまま引用ではなく、少し書き換えて。
(1)気泡の上昇速度と停滞
通常の気泡は、急激に水液中を上昇し最終的に液面で破裂する。
しかし、ファインバブルは気泡体積が微細であるため、上昇速度が遅く長い間、水液中に滞在し続ける。例えば、直径10μmの気泡は一分間に3mm程度の上昇しかない。
ウルトラファインバブルの場合は、水液中に最大6ヶ月以上留まることが確認されている。
(2)自己加圧効果
気相と液相などの界面間では、界面張力により加圧が発じる。気泡径が小さくなると、表面張力による内圧が高くなる。
このため、微細気泡は圧力により一層小さくになり、さらに圧力が高まる。また、加圧効果により効果的に気体が水中に溶解する(ヘンリーの法則)。
(3)表面電位特性
ファインバブルはコロイドとしての側面があり、負に帯電をしている。このため、ファインバブル同士は反発し合う。この性質のため、ファインバブル同士の結合がなく、気泡濃度が減ることがない。
●ファインバブルが魚の育成に良い理由
以上のような感じですが、なぜファインバブルが魚に良いのか?というのを、わかりやすく説明したものも見つけて、やっと魚に良い理由が納得できました。前述の特徴のうちの「(1)気泡の上昇速度と停滞」の関係みたいです。
微細気泡:ミクロの泡を農漁業に 産官学で活用法研究 高知 /徳島 毎日新聞 2015年09月30日 地方版
ファインバブルは非常に細かいために液体中に長くとどまり、水中の酸素の濃度を高める特徴がある。(中略)
(引用者注:高知工業高等専門学校の秦隆志准教授のグループによる)研究では県内の農業、漁業の現場で実際に使用。養殖魚が酸欠で死ななくなったほか、県特産のショウガは傷を付けずに洗浄できて節水の効果も確認された。作物によっては泡を含む水で育てると根が強くなった。
今回の話では、魚への利用を先に紹介して、トイレなどの洗浄を後で紹介しました。しかし、ひょっとしたら、洗浄用途が先だったのかもしれません。この記事によると、"主に洗浄用として精密機械や高速道路のサービスエリアのトイレなど実用化されている"という説明の後に、「高知県を支える1次産業にも泡の特性が貢献できないか」と研究したと書かれていました。
首を傾げながら調べ始めましたが、ファインバブルってかなりおもしろそうですね。
●酸素の代わりに窒素を使うと魚の鮮度を保つ効果
2018/03/03追記:最初疑いながらだったものの、最終的にはすごくおもしろいと思ったファインバブル。ただ、その後もあまり情報は増えていないようです。今探してできたのは、上記のクローズアップ現代の放送後の話でした。
この記事での新しい情報というと、魚の鮮度を長く保つ効果について。バブル水に10分くらいつけておくと、ぐっと長持ちするそうです。
ただし、育てるときと違うのは、酸素ではなく、窒素を使ったバブル水を使用すること。これで逆に酸素の量がめちゃくちゃ少なくなります。そして、魚の表面は酸素が少ない状態になり、酸化や菌の繁殖を防ぐことができると考えられています。
(
“小さな泡”が世界を変える!?~日本発・技術革命は成功するか~ - NHK クローズアップ現代+ 2015年10月6日(火)放送より)
●細菌の殺菌、ショウガの栽培にも利用
また、糖尿病患者に見られる足の傷の治療の用途についても。傷に繁殖した細菌には、塗り薬が細部にまで届きにくいことが問題でした。しかし、オゾンを微小な泡にして傷の隅々にまで送り込むことで、殺菌できるようになりました。細菌に接触して、はじけると殺菌できるのだそうです。
さらに、大腸菌やサルモネラ菌A型インフルエンザなど、さまざまな細菌やウイルスにも効果を示すことがわかったということで、夢のような話になっています。
寺坂宏一・慶應義塾大学教授によると、日本は古くからこういう泡の研究が非常に得意な国。例えば、カキの養殖に利用していて、やはり養殖の速度が速まるといった画期的な効果を得ていました。
新しいものとしては、ショウガの栽培。微細な気泡の入った水を使うことで、ショウガの根が非常に太く、大きく育てることに成功しているそうです。
●健康や美容は科学的根拠なく詐欺の疑い
ただ、こういう胡散臭いほど画期的でなおかつちょっとわかりづらいものは、詐欺に使われることが多いです。酸素入りバブル水とか、あるいは水素入りバブル水とか、いったものが既に売られているとのこと。
バブル水を飲んだ場合の美容や健康への効果はまだ分かっていないのに、そういったウリ文句を入れて売っているようです。科学的根拠のないことが記載されていると説明されていました。
また、科学的根拠がないだけでなく、商品を分析機器にかけて調べても、微小な泡はほとんど検出されず。そもそも大嘘でした。残念ながら、こういう話は詐欺とセットになっている気がします。
●カキのノロウイルスをウルトラファインバブルで除去?
2018/05/29:
カキのノロウイルス、極小の泡で除去 京都の企業が開発 : 京都新聞【 2018年05月25日 22時02分 】が話題になっていました。
記事によると、京都市の電子部品メーカーのトスレックが、極小の泡を使ってカキの内部からノロウイルスを取り除く技術を開発した、と発表。カキを提供するなど研究に協力した京都府宮津市の海洋高で成果報告会を開いています。専門家らも加えた研究グループが行った研究だそうです。
直径1ミクロン未満(ミクロンはミリの1000分の1)の微細な気泡「ウルトラファインバブル」を、均一に発生させるトスレックの装置で、マイナスの電荷を持つ気泡がカキの内部に入り込み、プラスの電荷を持つウイルスに吸着させ、カキの体外に排出させる仕組みだという説明。
実験は、ノロウイルスと構造や大きさが近い代替ウイルスを感染させた広島県産のマガキなどを使用。マガキでウイルスを99・96%、岩ガキで99・92%取り除くことに成功しています。いずれも従来の紫外線を使った方法よりも多く除去できました。東北大の高橋計介准教授は「ウイルスをほぼ浄化できる可能性が示された」としています。
●ノロウイルス舐めんな…胡散臭いと話題のカキの研究
相変わらず本当かよ?という内容で、
はてなブックマークでは、いくつかのネガティブなコメントが人気になっています。
kuippa うさんくさい臭が。 ノロの感染力3個ぐらいで充分なんじゃなかったっけ。
nutahuate …んん?理解し難い。ウィルスに感染してるのに泡で何が出来るの? それが出来るなら人体に応用してインフル治療に充てたほうが良くない?
sgo2 ナノバブルとかマイナスイオンとか洗浄とか、なんか水素臭が…。実際に水素であっても本当に効果があるなら素晴らしいけど。
ただし、このはてなブックマークの「ノロの感染力3個ぐらいで充分なんじゃなかったっけ」は違うようですね。
(PDF)10億個(109/g)のノロウイルスの量とは - 厚生労働省では、10~100個としていました。それでも少ない個数ではありますので、カキに付着しているノロウイルスの量によっては効果が不十分な可能性がありそうでした。
で、ノロウイルスの量も検索するとデータありましたわ。
東京都健康安全研究センター くらしの健康(第10号)によると、汚染されたカキは1gあたり4.1万~70万遺伝子コピー数(ウイルスの個数を表す単位)とのこと。最初勘違いしましたが、1gあたりでこの量なので相当な量。やはり実用化は無理そうです。
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