ノーベル賞になるのでは?と言われているものの一つにリチウムイオン電池があります。仮にリチウムイオン電池でノーベル賞となった場合、日本では元ソニー技術者の西美緒さんや旭化成フェローの吉野彰さんの受賞が期待できます。(2015/10/6)
2015/10/6:
●工学分野のノーベル賞を受賞した西美緒氏、吉野彰氏
●リチウムイオン電池がノーベル賞を受賞できない理由とは?
●京都大学出身で旭化成に入社…吉野彰・旭化成フェローの経歴
●慶応大学出身…元ソニー技術者である西美緒氏の経歴
2018/01/31:
●2018年の日本国際賞は吉野彰名誉フェローのみ受賞
2019/07/02:
●欧州発明家賞に吉野彰名城大教授…日本人の受賞は4年ぶり
2019/10/10:
●吉野彰氏がついにノーベル賞!ただし、西美緒氏は外れてしまう
●日本と縁が深く災害に役立つ電気自動車、日本人はなぜ嫌い?
●工学分野のノーベル賞を受賞した西美緒氏、吉野彰氏
2015/10/6:日経新聞によると、ノーベル賞では、リチウム(Li)イオン電池関連が、長らく「受賞の可能性あり」とみられているそうです。
(
ノーベル賞有力候補、リチウムイオン電池の「未解決リスク」 :日本経済新聞(2014/12/25 7:00)(日経エコロジー 大西孝弘)より)
このリチウムイオン電池では、日本の技術者たちが基本原理を発明しています。2014年2月、元ソニー技術者の西美緒さんと旭化成フェローの吉野彰さんら4名は、既に"「工学分野のノーベル賞」と呼ばれる「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」を受賞していました。
ここで名前が出ているのは2人だけなのは、他は日本人ではないため。
全米技術アカデミー - Wikipediaによると、顔ぶれは以下の通り。
<2014年: ジョン・グッドイナフ、西美緒(Yoshio Nishi)、Rachid Yazami、吉野彰(Akira Yoshino)。小型で軽量のモバイル電子機器を可能にしたリチウムイオン二次電池(LIB)の設計に対して>
本当のノーベル賞を既に受賞した発光ダイオード(LED)関係のチャールズ・スターク・ドレイパー賞受賞は翌年の2015年。リチウムイオン電池の方が先だったようです。
<2015年:赤﨑勇(Isamu Akasaki)、M. George Craford、Russell Dupuis、ニック・ホロニアック、中村修二(Shuji Nakamura)。世界に先駆けた発光ダイオード(LED)の開発に対して[15]>
●リチウムイオン電池がノーベル賞を受賞できない理由とは?
一方、未だにリチウムイオン電池がノーベル賞の方で受賞できないのは、安全性がネックになっているのでは?というのが、日経新聞のテーマでした。「ノーベル賞の審査委員たちも未だにトラブルが続く技術に賞を与えづらいのではないか」との声が、電池業界関係者の間で上がっているというのです。
実際にそういったことが関係するといった発表はありません。とはいえ、トラブルがつきまとう技術に賞を与えることは、ノーベル賞の信頼性にも関わってくるのではないかという推測です。
リチウムイオン電池がソニーと旭化成などによって初めて実用化されたのは1991年。携帯機器を中心に採用が広がありました。ところが、リチウムイオン電池の魅力できる高いエネルギー密度は、異常発熱や発火といった“負の側面”ももたらしたといいます。
2006年には携帯電話やノートパソコンに搭載されたリチウムイオン電池のトラブルが続出。リチウムイオン電池実用化したソニー系でも大きなトラブルが起きました。ソニーエナジー・デバイス製の電池を搭載したノートパソコンが発火事故を起こし、同社が世界で約960万個を回収する大きな事態に発展。
さらに最近でも、米航空機大手ボーイングが鳴り物入りで投入した新型機「787」に搭載したジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ)製リチウムイオン電池が、2013年1月に発火事故を起こしています。
●京都大学出身で旭化成に入社…吉野彰・旭化成フェローの経歴
ノーベル賞有力候補とされる西美緒さんと吉野彰さんについても少し。吉野彰さんは、
ノーベル化学賞日本人予想 柳田敏雄、藤嶋昭、吉野彰、水島公一など、何度か名前が出てきています。定番の方ですね。
<略歴>
1970年3月 京都大学工学部 石油化学科卒
1972年3月 京都大学工学研究科 修士課程修了
1972年4月 旭化成(株)(旧旭化成工業(株))入社
1992年3月 旭化成(株)イオン二次電池事業推進部商品開発グループ長
1994年8月 (株)エイ・ティーバッテリー技術開発担当部長
1997年4月 旭化成(株)イオン二次電池事業グループ長
2001年5月 旭化成(株)電池材料事業開発室 室長
2003年10月 旭化成フェロー(現在)
2005年8月 旭化成(株)吉野研究室 室長(現在)
<主な受賞など>
1999年3月 (社)日本化学会より平成10年度「化学技術賞」(リチウムイオン二次電池の開発の功績)
1999年10月 米国Electrochemical Soc.より "1999 Technical Award of Battery Division"(Pioneering work on lithium ion battery technologyの功績)
2001年4月 (財)新技術開発財団(市村財団)より「市村産業賞功績賞」(リチウムイオン二次電池の開発と製品化の功績)
2001年10月 (社)発明協会より「関東地方発明表彰文部科学大臣発明奨励賞」
2002年6月 (社)発明協会より「全国発明表彰文部科学大臣発明賞」
2003年4月 文部科学省より「文部科学大臣賞科学技術功労者」
2004年4月 日本国政府より「紫綬褒章」
2011年11月 財団法人材料科学技術振興財団より山﨑貞一賞
2011年11月 公益財団法人NEC C&C財団よりC&C賞
2012年3月 (社)日本化学会より「第5回日本化学会フェロー」
2012年6月 米国IEEEより「IEEE MEDAL FOR ENVIRONMENTAL AND SAFETY TECHNOLOGIES」
2013年6月 ロシアより「The Global Energy Prize」
2013年11月 公益財団法人加藤科学振興会より加藤記念賞
2014年2月 全米技術アカデミーより「The Charles Stark Draper Prize」
(
吉野 彰 プロフィール | リチウムイオン電池生みの親 | 旭化成株式会社より)
●慶応大学出身…元ソニー技術者である西美緒氏の経歴
一方の西美緒さんは初耳。私が忘れていただけということもよくあるのですが、ブログ内を検索しても出ないので、うちでは本当に初登場みたいです。
<西美緒技術研究所 所長:西美緒(にし よしお) 略歴>
1966年3月 : 慶応大学工学部応用化学科 卒業
1966年4月~2006年6月 : ソニー株
(株)ソニー・エナジーテック専務取締役
ソニー(株)業務執行役員上席常務
マテリアル研究所CTO
ソニー(株)社友
受賞歴 : Charles Stark Draper Prize
電気化学協会技術賞
Electrochemical Society Technical Award
加藤記念賞、日本農芸化学会技術賞、市村賞
(
西美緒技術研究所より)
「工学分野のノーベル賞」と言われる「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」は、4人の受賞者がいました。しかし、ノーベル賞は3人までしか同時に受賞できません。前述の通り、お馴染みだったのは吉野彰さんの方ですが、「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」の名前の順番だと、西美緒さんが先でした。
仮にリチウムイオン電池がノーベル賞になったとしても、どちらかが外れてしまうことは十分にありそうですね。
●2018年の日本国際賞は吉野彰名誉フェローのみ受賞
2018/01/31:国際科学技術財団は2018年1月30日、今年の日本国際賞にスマートフォンなどに幅広く使われているリチウムイオン電池の開発に貢献した旭化成の吉野彰名誉フェロー(70)ら3氏を選んだと発表しました。
旭化成の吉野彰名誉フェローはコバルト酸リチウムを正極、炭素系材料を負極とし、独自素材も合わせた設計で軽量・大容量・長寿命のリチウムイオン電池開発の道を開きました。最近は電気自動車にも搭載され、環境分野への貢献も評価されたといいます。
他の二人は日本人ではありません。最初の投稿では人数の関係で、西美緒さん、吉野彰さんのどちらかが外れる可能性はあると書いていたのですけど、そもそもリチウムイオン電池関係では1人しか選ばなかったみたいです。
他の二人はともに免疫関係。免疫学者の米エモリー大医学部のマックス・クーパー教授(84)と豪ウォルター・アンド・イライザ・ホール医学研究所のジャック・ミラー名誉教授(86)が選ばれました。体内に侵入した異物に対する免疫をつかさどる主要な細胞系列「Bリンパ球」と「Tリンパ球」の存在を明らかにしたという業績だそうです。
(
旭化成の吉野氏ら3人に 毎日新聞2018年1月30日 18時32分【荒木涼子】より)
●欧州発明家賞に吉野彰名城大教授…日本人の受賞は4年ぶり
2019/07/02:名城大の…と紹介されていた吉野彰教授(71)が2019年6月、欧州特許庁主催の欧州発明家賞を受賞したというニュースがありました。ヨーロッパの人を押しのけて…というものではなく、非欧州諸国部門という部門があるみたいです。あと、また吉野彰さんだけ受賞というパターンですね。
吉野彰氏に「欧州発明家賞」 元九州大客員教授 リチウムイオン2次電池開発(2019年6月21日)|西日本新聞では、元九州大客員教授といった経歴を強調。欧州特許庁(EPO)が主催する「欧州発明家賞」(非欧州諸国部門)での日本人の受賞は4年ぶりだそうです。
優れた発明をたたえる欧州発明家賞は、5部門(産業、研究、中小企業、非欧州諸国、功労賞)で構成。最終選考に残った各部門3組の中から大賞が選ばれるほか、全部門15組の中で一般からの投票数が最も多い「ポピュラープライズ(人気賞)」が決められます。
これまで日本からは、14年にQRコードの開発に携わったデンソーウェーブの原昌宏さんらが人気賞に選出。また、15年にはカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)を発見した名城大の飯島澄男終身教授のチームが非欧州部門の発明家賞を獲得していました。
●吉野彰氏がついにノーベル賞!ただし、西美緒氏は外れてしまう
2019/10/10:私はノーベル賞は実用化もキーポイントでは?と見ているので、リチウムイオン電池は本来筆頭候補だと思っていたのですけど、なかなか決まりませんでした。2019年になってやっと来ましたね。
前述の通り、「工学分野のノーベル賞」と言われる「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」では、4人の受賞者がいました。その中から1人外れる可能性があると思っていたのですけど、2人外れて1人入れ替える形。西美緒さんとRachid Yazamiさんが外れて、以下の3人となりました。
ジョン・グッドイナフ 国籍・アメリカ合衆国(ドイツ出身)
スタンリー・ウィッティンガム 国籍・アメリカ合衆国(イギリス出身)
吉野彰 国籍・日本
グッドイナフさんはなんとなく名前が印象的で覚えていました。彼が筆頭。最高齢の受賞者でもあるらしいです。「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」では、西美緒さんの名前が先になっていたものの、知名度的には吉野彰さんの方が有力だろうと思っていたらそうなりましたね。
●日本と縁が深く災害に役立つ電気自動車、日本人はなぜ嫌い?
あと、当初書いていた「リチウムイオン電池がノーベル賞になれないのは危険性のため」という日経新聞の話で、電気自動車(EV)トラブルの話も書いていたと思ったのですけど、読み直してみるとありませんでした。
トヨタが一時非難していたなど、日本人ではEV嫌いの人が結構いるように見えます。ただ、リチウムイオン電池は本来このように日本とも縁が深い技術。災害時の非常用電源にも使えるため、災害大国である日本とも相性が良いように思えます。
うちでは、
災害時に役立つ電気自動車 災害大国の日本がなぜEVを冷遇?という話もやっていますが、日本にはもっとEVを注目してほしいとずっと思っていました。この機会に改めて見直されないでしょうか?
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