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~を使うと記憶力が衰える ソクラテスが指摘した現代人が馬鹿な理由


 「古代人に比べて現代人のIQは低い」と主張しているサイトが以前ありました。農薬や化学調味料などを含む食事のせい。といううんざりするような理由です。

 そもそも古代人に比べて現代人のIQは低いって証明されているの?と思いますが、まあ、ここらへんの話は別の機会に。

 じゃあ、今日は何の話をするかと言うと、かの有名な大賢人ソクラテスさんが指摘した「記憶力が衰える」というあるものについてです。ソクラテスの指摘が正しければ、古代人に比べて現代人が馬鹿であることは確かだという、よく使われているものなのです。

 これについては、クイズ的な感じで書きました(2015/10/11)が、同系統の批判の話"1880年代に若者のモラルを低下させると叩かれた意外なもの"を最後に追加しています。(2017/04/16)


●~を使うと記憶力が衰える ソクラテスが指摘した現代人が馬鹿な理由

2015/10/11:さて、ソクラテスが指摘した利用することで記憶力が衰える悪いものとは、いったい何でしょう? 以下、それに該当する部分を隠すために改変して伏せていますので、想像してみてください。(改変部を太文字にしています)
「いまもあなたは。~の生みの親として、愛情にほだされ、~が実際にもっている効能と正反対のことを言われた。人々がこの~というものを~すると、記憶力の訓練がなおざりにされるため、その人達の魂の中には、忘れっぽい性質が植え付けられることだろうから。それはほかでもない、彼らは~を信頼して、ものを思い出すのに、~によって外から思い出すようになり、自分で自分の力によって内から思い出すことをしないようになるからである」

●古代ギリシャ人による新興メディア叩き?

 引用元を書くとネタバレしちゃうので、そこは伏せていたのですが、そちらのサイトさんではこれは古代の新興メディア叩きだと言っていました。

 ソクラテスの時代ですので当然そんなものはないわけですが、確かにそれっぽいものがうまく当てはまりそうです。いろいろと入れてみましょう。

・インターネットを使うことで記憶力が衰える。インターネットを信頼して、ものを思い出すことをしなくなるからだ。
・パソコンを使うことで記憶力が衰える。パソコンを信頼して、ものを思い出すことをしなくなるからだ。
・スマホを使うことで記憶力が衰える。スマホを信頼して、ものを思い出すことをしなくなるからだ。

 テレビ叩きはちょっと古いですが、最近はネットで復活してきていますかね。定番の一つではあるものの、これはうまく合いません。

・テレビを使うことで記憶力が衰える。テレビを信頼して、ものを思い出すことをしなくなるからだ。


●ソクラテスが批判したもの それは「文字」

 さて、答えです。ソクラテスが叩いた驚きのものは、なんと「文字」でした。文字を用いる「本」も同様ですので、先ほどと同じ感じで書くと、以下のような形になります。

・文字を使うことで記憶力が衰える。文字を信頼して、ものを思い出すことをしなくなるからだ。
・本を読むことで記憶力が衰える。本を信頼して、ものを思い出すことをしなくなるからだ。

 元ネタは以下のサイトさん。
古代人「文字を使うとバカになる」 ~新興メディア叩き in 古代ギリシア~ : とらっしゅのーと(2010年 09月 26日)

●●なんか使うと、人間バカになり、人格も歪むと、とあるモノを酷く批判しています。
●●にはなんだか色々入りそうですね。
一昔前ならテレビ、今ならインターネット辺りを放り込んで、テレビを見れば賢くなるvsバカになる、インターネットを使えば賢くなるvsバカになるといったところでしょうか。

ところが、世の自称良識派の皆さんが小躍りして喜びそうなこの小うるさい文章、●●にはテレビもインターネットも入りません。(中略)
 「王様、この文字というものを学べば、エジプト人たちの知恵はたかまり、もの覚えはよくなるでしょう。私の発見したものは、記憶と知恵の秘訣なのですから。」──しかし、タモスは答えて言った。
 「たぐいなき技術の神テウトよ、技術上の事柄を生み出す力をもった人と、生み出された技術がそれを使う人々にどのような害をあたえ、どのような益をもたらすかを判別する力をもった人とは、別の者なのだ。いまもあなたは。文字の生みの親として、愛情にほだされ、文字が実際にもっている効能と正反対のことを言われた。なぜなら、人々がこの文字というものを学ぶと、記憶力の訓練がなおざりにされるため、その人達の魂の中には、忘れっぽい性質が植え付けられることだろうから。それはほかでもない、彼らは書いたものを信頼して、ものを思い出すのに、自分以外のものに彫りつけられたしるしによって外から思い出すようになり、自分で自分の力によって内から思い出すことをしないようになるからである。じじつ、あなたが発明したのは、記憶の秘訣ではなくて、想起の秘訣なのだ。また他方、あなたがこれを学ぶ人たちに与える知恵というのは、知恵の外見であって、真実の知恵ではない。すなわち、彼らはあなたのおかげで、親しく教えをうけなくてももの知りになるため、多くの場合ほんとうは何も知らないでいながら、見かけだけはひじょうな博識家であると思われるようになるだろうし、また知者となる代りに知者であるといううぬぼれだけが発達するため、つき合いにくい人間となるだろう。」
(プラトン『パイドロス』藤沢令夫訳 岩波文庫 134、135頁)


●「文字に頼ると記憶力が減退する」は古代ギリシャ人の総意?

 『パイドロス』というのはプラトンの著作です。先の方は以下のように解説されていました。
この話、こんな風に相手を納得させる道具として主人公ソクラテスに使われたということは、プラトンやソクラテスといった古代ギリシア屈指の賢人によって、自分の論述に組み込んで相手の説得材料に使っても恥ずかしくないパーツであると見なされていたということになるはずです。つまり古代ギリシア人的に、文字を使うとバカになるというのは、単なる一部跳ねっ返りの暴論ではなく、割りと正当な主張として社会に許容される主張であったということ。
だから敢えてこう書いてしまって良いと思います。

古代ギリシア人「文字を使うとバカになる。」

 プラトンが書いたのであれば、本当にソクラテスがそう思っていたかどうかはわからないように思えます。しかし、Wikipediaでは以下のような書き方をしていました。
文字 - Wikipedia

ヨーロッパ世界では、伝統的に、文字は音声言語の補助にすぎないという考え方が根強くあった。ソクラテスは、文字に頼ると記憶力が減退するし、文字で書かれたものは弁舌よりも説得力が劣ると考えた[6]。

●文字を使って本を書いているくせに文字批判ってどういうこと?

 それから、『パイドロス』という本を書いているんだから、やっぱり文字って重要なんじゃね?という疑問も湧きます。これとさっきの本当にソクラテスの意見なのかどうか?というのは、以下である程度説明ができます。

 Wikipediaでは、"ソクラテス自身は著述を行っていないので、その思想は弟子の哲学者プラトンやクセノポン、アリストテレスなどの著作を通じ知られる"と書いていました。ソクラテス自身は本当に文字を嫌っていて、著作すら残さなかったのです。
ソクラテス - Wikipedia

 著作をおこなわなかった理由

ソクラテスは、書記言語が野放しの状態の普及を激しく非難していた[18]。

ソクラテスは、話し言葉、つまり「生きている言葉」は、書き留められた言葉の「死んだ会話」とは違って、意味、音、旋律、強勢、抑揚およびリズムに満ちた、吟味と対話によって1枚ずつ皮をはぐように明らかにしていくことのできる動的実体であると考えた。書き留められた言葉は反論を許さず、柔軟性に欠けた沈黙であったので、ソクラテスが教育の核心と考えていた対話のプロセスにはそぐわなかったのである[19]。

ソクラテスは、書き言葉が記憶を破壊すると考えた。個人的知識の基盤を形成するにふさわしい厳密さを期待できるのは暗記するという非常な努力を要するプロセスのみであり、そうして形成した知識基盤は教師との対話の中で磨いていくことができるという信念を抱いていたからである[20]。

ソクラテスは、読字を恐れていたわけではないが、過剰な知識が必然的にもたらす結果、表面的な理解しかできないことを恐れていた[21]。

 …といった感じですが、現代人が馬鹿な理由は文字を使っているから!ということになります。現代においては文字の役割を軽視するなんてとんでもない!という人が多い、むしろ賢くなるために「本を読みなさい」なんて人が多数派だと思うのですが、どうなんでしょう? ソクラテスさんの指摘に納得しちゃった方いますかね?


●1880年代に若者のモラルを低下させると叩かれた意外なもの

2017/04/16:メディア叩きの話を追加…なのですが、元記事は、日本の女子高生は未来技術を先取りしていた 英エコノミスト誌が「2050年の技術」を予測 東洋経済オンライン / 2017年4月14日 12時0分という不思議なタイトルのもの。

 英『エコノミスト』編集部による新刊『2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する』は、例えば、以下のような予想をしているそうです。

・自動運転車によって、都市の車両数は90%減少する
・人間の脳はインターネットに接続され、図書館やスーパーコンピュータと直接つながるが、同時にウイルスやマルウエアまで一緒に取り込んでしまう


 で、記事ではこの書籍の冒頭を紹介しており、その中に日本の女子高校生が出てきたのです。どういう話かと言うと、日本におけるガラケーは他国より数年先を進んでいて、『WIRED』誌にはしばらくの間、「日本の女子高生ウォッチ」なるコラムがあったほどだ、という内容でした。

 ただ、ご存知の通り、日本は現在、スマホ市場では完全に蚊帳の外。シェアは全然です。また、未来予測の難しさとして、まったく予想しなかった、あるいは予想とは違う方向へ進むものもある例として、もう一度携帯電話の話が出ており、これが日本がダメになった理由にもなっています。

"欧米では、携帯端末は当初、日本と同じ軌道をたどるかと思われたが、iPhoneをはじめとするタッチスクリーン端末の登場によってまったく違う方向へと進んだ"

 以上がタイトルに関わる部分だったのですが、私が興味をひいたのが「歴史は繰り返す」と指摘していたところ。新たな発明は、プライバシー侵害の懸念を巻き起こすことが多いとして、"1880年代には初代のコダックカメラが「どこで撮影されているかわからない」というパニック"の例を挙げていたのです。

 記事ではそれ以上カメラの説明はなかったものの、カメラの歴史 - Wikipediaを見ると、写真フィルムが初めて使用されたカメラ。でかい箱のカメラなのですが、それでも以前より持ち運びしやすい…みたいな理由で叩かれたのかもしれません。

 このカメラは当時としては低コストだったことが一番の特徴であり、そのせいか「コダックのカメラは若者のモラル低下を招く」とも批判されたそうで、これまた何度となく目にしてきた話。書籍では、1790年代の小説、1910年代の映画、1950年代のマンガ、1990年代のビデオゲームに向けられた批判と同じだと指摘してます。

 なお、最近、『君の名は。』大ヒットの理由はスマホ中毒 岸博幸教授が珍説を披露という投稿も書きました。こうした意味不明で根拠のない批判は、これからも続いていくものと思います。


【本文中でリンクした投稿】
  ■『君の名は。』大ヒットの理由はスマホ中毒 岸博幸教授が珍説を披露 パクリ(オマージュ)についても指摘

【その他関連投稿】
  ■日本語で高等教育できなかったら本屋が英語本に占拠されていた?
  ■ビジネス英語は正しい英語じゃなくていい…でも、例外も少しある
  ■エリートが会社を潰すは本当?グーグルは学歴重視、一流大だらけの有名経営者
  ■Wikipediaの信頼性 学術論文でも参考文献として引用される時代に
  ■Wikipediaは政治的に偏っている? 保守度・リベラル度を調査
  ■学校・教育・子どもについての投稿まとめ

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