あまり熱心に読んでいなかったニュースですが、名古屋市議会リコールの件。
これに関して、
大ドンデン返し!名古屋市議会リコール逆転成立が残した重大な教訓 相川俊英 ダイヤモンド・オンライン 2010年12月21日 (閲覧には登録が要るかもしれません)という記事を読んだのですが、私が興味を示したのはタイトルで強調しているような法定数をクリアすることは無理と予測した「無謀な試み」に大逆転で勝利した……といったドラマ性の部分ではありません。
気になったのは、市議OBの市選挙管理委員の露骨に偏った署名審査の話です。
名古屋市の河村たかし市長は議員報酬の半減などの議会改革をめぐって議会と対立し、市議会解散の直接請求(リコール)となりました。当然市議側としてはリコールを成立してほしくないわけですが、市議OBの占める市選挙管理委員会は市議に味方して、審査を厳格にして11万人分を超す署名を「無効」としてしまいます。
これは結局、大量の異議申し出(約3万2000人分)に対する再審査で、「無効」から「有効」に転じる署名が相次ぎ、土壇場での逆転成立となったものの、市選挙管理委員会の審査には疑念が残ります。
私は議会改革が正しいと言うつもりは毛頭ありませんが、それは飽くまで市議会で話し合われる問題であり、市議選で民意を示すものであるはずです。その問題を選挙管理委員会に持ち込むことは間違いなくおかしなことで、これでは選挙管理委員会の私有化です。
選挙管理委員としての資質はないと言って良いんじゃないかと思いますし、公正さを求められる選挙管理委員としては考えられないことです。
で、具体的にこの選挙管理委員会は何をしたのかというのを、時系列的に見ていきます。
まず、10月8日に開かれた選管会議。
伊藤年一選管委員長(元公明党市議)が、「請求代表者(10人)が集めたことになっている受任者欄が空白のものが3分の1もあった。受任者が集めたものであれば、これらは本来、無効になる」と指摘。選管事務局は「提出された署名簿だけをみれば、形式的には無効となるものではありません」と回答。しかし、委員長は納得しません。
そして、10月19日の会議で、委員長は「最終的には11万4千の署名を1人1人確認せざるをえないと思う。そうしなければ、正確な審査の結果を公表できない。1人の代表請求人が1万1千人分の署名を集めることができるのか疑義が残る」と、再審査を主張。さらに「市民の民意を正しく反映させなければならないという責任がある。真意で無い署名が数多くあるように思う」と署名を疑問視します。
これについては、全ての選管委員が委員長に同意しているわけでなく、市議OBでない山田将文委員長代理は「請求代表者から求められて署名をしたかといった趣旨の質問をすることになると思うが、普通は誰が受任者で誰が代表者であるか知らないのではないか」と言っています。
また、事務局も「11万4千件に問い合わせすることは、市民の反感を招くような気がしてなりません。市民を信用していないのかという声があります」という意見を出していますが、いずれも却下されています。
他で読んだ記事ではこういう詳しいところまで書いていませんでしたが、今まで問題視されていなかったところを取り上げて無効にしようとしたといった書き方でした。
ここで出た請求代表者、受任者というのが記事を読んでもよくわからなかったので、
ニュースな言葉 毎日新聞を読みましたので、下記に簡単に書きます。
リコール運動で署名集めができる人
・選管から直接請求の署名活動を認められた請求代表者
・請求代表者から署名収集を委任された受任者
受任者が集めた場合:署名簿の受任者欄に氏名・住所を書かなければならない。
請求代表者が集めた場合:
空欄で可。 つまり、市選管は請求代表者が集めた署名簿は形式に問題はないものの、数が多いから本当は受任者が集めたものを書類不備で提出したのではないかと疑ってかかり、本当に請求代表者に署名したかを確認するため約10万人の署名者に調査票を郵送して本人調査をしたというわけです。
私はてっきり不備があっても通常は問わないところをつついたのかと思っていたのですが、どうも書類の不備すらなかったものにいちゃもんをつけたようです。
普通こんなことします?
(2011/1/6追記:ふと思い出したのですが、私が思っていたのは「住所や氏名などは百パーセント完璧でなければ無効」「署名に1字でも誤字があれば無効」ですね。氏名については普通間違うはずがありませんので、こちらは納得できるものです。
元市議の天下り選管「誤字1字で無効」 名古屋リコール騒動の背景 2010.12.1 産経ニュースより。
ただ、検索したところ署名を集めた側の話ではありますが、「高齢者で字が見づらい」「住所を省略した」という理由を何とか推測できるものがあるものの、大部分はなぜ無効とされたのかもわからないとのことです。
番地、丁目などの書き方や、アパート番号の位置、書き方、有無などは、普段のもの(これも人によって様々)と住民票で違う場合が多いです(市によってかなり違います)。その他思いつくのは、略字、異体字、旧字くらいですが、そこら辺を突かれたんでしょうか?)
今回の請求代表者が行った街頭署名の常設コーナーの中には、1カ所で2万6千人分を集めた事例もあったと説明しているとおり、数が多いからと言って特別不自然なことはありません。
また、法律で定められた形式と違ったら問題になるでしょうけど、仮に書類不備であったとしても署名をしたことには変わらないわけですし、民意を踏みにじるような行為です。
これは法律の方を改めて、そうならない形にすることが望ましいですが、現状のままでも柔軟に対応できます。現実には違憲状態をそのままにしていることがあるのを考えると、それらに比べてごくごく軽微なところを問題化して、わざわざ市民に不利なように運用するというのは馬鹿げています。
それから、卑怯だなと思ったのが、署名の有効性の確認方法。
選管の調査票は「誰から署名を求められたか」を問い、「代表請求者」、「受任者」、「わからない」、「(記事にはありませんでしたが)それ以外」から選択させるというものです。
私も今回わざわざ調べましたが、そんな名称なんて普通は知りませんし、知らなくたってリコールに賛成するという意志を表明することに問題はありません。
実はこれ、「わからない」と回答しても有効とされたのですが、普通は「代表請求者」、「受任者」のどちらかを選ばなくてはいけないと思うでしょう。それで「受任者」を選んだ人はみな無効とされたわけです。
「代表請求者」の集めた署名はみなわざわざ再調査して、「代表請求者」と正しく回答できた人だけがリコールの意志ありというわけですが、そこまでハードルを上げる必要はどこにもありません。
この件でまた余計に税金を使っているわけですし、改革に反対する市議というのは「自分のお金の方が市民のお金より大切だと思っている」と、市民に思われても仕方がないことだと思います。
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