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マルチタスクの効果、論文で否定 音楽を聞くだけで仕事の効率が落ちることが多い


 マルチタスク関連の話をまとめ。<マルチタスクは愚かな仕事の仕方 論文で効果を否定>、<有用性を信じる人ほど、実際にはマルチタスクができていない>、<8歳児なみにIQが低下する!マルチタスクの衝撃的な効果>、<音楽を聞くと集中できないって本当?音楽のBGMに関する研究では…>などをやっています。

2022/06/08追記:
●ラジオがかかっているだけで驚くほど運転の集中力が削がれる… 【NEW】


●マルチタスクは愚かな仕事の仕方 論文で効果を否定

2015/10/12;スタンフォード大学のマルチタスクに関する研究は、二兎追うものは一兎をも得ず、ということわざのような実験結果になりました。マルチタスクを行う傾向と、それが作業能率向上につながると信じているかどうかに基づいて被験者をグループ分けし、比較した結果、以下のようになったのです。

<研究者はすべての被験者のマルチタスクを行う際の能率について計測し、ひとつずつ仕事をしていくよりも生産性が低いことを突きとめました。さらに驚くことに、マルチタスクを行う人は、ひとつずつ作業を終わらせていく人のように「注意を払うこと」「情報を思い出すこと」「ひとつの仕事から別の作業へ移行すること」ができないことも明らかになりました>
(マルチタスクは作業効率だけでなくIQも低下させる:実験結果 | ライフハッカー[日本版] 2015.01.25 06:00 pm The Real Harm in Multitasking|Inc.com Travis Bradberry(訳:Conyac)より)

 記事では、マルチタスクが作業の質や能率を落とすのは、私たちの脳が一度にひとつの物事に集中するようにできているからとされていました。もともと人間はマルチタスク用にできていないんですね。このために、2つの物事を一度に行おうとすると、脳はどちらもうまくこなすことができなくなってしまうとされていました。

●有用性を信じる人ほど、実際にはマルチタスクができていない

「マルチタスクな俺、格好いい!」みたいなマルチタスクの信奉者の方もいるでしょう。ところが、非常におもしろいことに、普段からマルチタスクの実践している人ほど、実はマルチタスクが苦手なんだそうです。実験の結果、マルチタスクを頻繁に行い、それが仕事の能率を高めると思っている人々のグループは、実際には一度にひとずつ作業を進める人々よりもむしろマルチタスクが苦手であることが明らかになったとされていました。

 前述の通り、人間の脳が一度にひとつの物事に集中するようにできているからだとされています。ただ、そうであっても、普段からマルチタスクの訓練を置こうなうことにより、マルチタスクに適した脳になり、マルチタスクの効率が高まる…といった可能性もありそうに見えました。ただ、現実は逆に悪かったようです。

 記事では、このことについて、マルチタスクを頻繁に行う人の作業能率が低かった理由は、考えを整理し無関係な情報を排除することに苦労したことと、ある作業から別の作業へと移るのが遅かったからです…としていました。ただ、これは作業が遅かった理由であり、マルチタスクを普段からしていることの影響の説明ではありませんけどね。


●8歳児なみにIQが低下する!マルチタスクの衝撃的な効果

 ここまでは納得の行く話でしたが、元ネタのタイトルになっている「マルチタスクは作業効率だけでなくIQも低下させる」となってくると、胡散臭いなと警戒しながら読みました。

 ロンドン大学で行われた研究では、認知課題に取り組んでいる最中にマルチタスクを行った被験者について、マリファナを吸ったり徹夜したりした場合に予想される状態と同じようなIQスコアの低下が見られました。マルチタスクを行う男性被験者群では、IQが15ポイント低下し、8歳児の平均値と同様にまで落ち込んだというのです。

 記事では、マルチタスクをやると、"あなたの認知能力が8歳児にメールを書かせているようなレベルに低下している"とも書いていました。でも、IQってそういう理解でいいんでしたっけ? 異なる年齢の子供のIQを比較するのは無意味って言われていた覚えがあります。実験内容はともかく、IQうんぬんの話はちょっと保留しておきたいです。


●一時的な作業効率の低下では済まない…マルチタスクの怖さ

 あと、IQとは無関係で、マルチタスクによる認知機能障害は一時的なものだと長く信じられてきたものの、そうではなかったという研究の話もありました。マルチタスクグループが余計マルチタスクができなかった…というのは、持続的な影響があるためだと考えられるためでしょうね。

 イギリスにあるサセックス大学の研究者たちは、テレビを見ながらメッセージを打つといった、被験者が複数の情報デバイスに使う時間を脳のMRIスキャンと併用して比較しています。すると、マルチタスクをよく行う人ほど、共感、認知や感情の制御を司る前帯状皮質という脳の一部の密度が低いことが分かりました。

 先の実験によれば、マルチタスクを普段からする人は、注意力などの低下が見られていました。これが正しければ、当然ある程度持続した何らかの影響が出て良さそうなものだと思います。


●効率的どころじゃない!40%も生産性を低下させるマルチタスク

 検索すると、ライフハッカーでは他にもマルチタスクバッシングをしていました。でも、まあ、事実なら仕方ないですけどね。「時間節約にならないばかりか、生産性が40%も低下する」とこの記事では書かれていました。効果がないどころの話ではなく、驚くほど非効率な最悪の方法…といった極端な結果です。

 この話があったマルチタスクをやめれば生産性が40%アップする | ライフハッカー[日本版] 堀込泰三 - 2015.06.13 09:00 pm Stop This One Bad Habit and You'll Increase Productivity 40 Percent | Inc. Minda Zetlin(訳:堀込泰三)では、他にも以下のように書いています。

<この恐ろしい数値は、「Only Connect Consulting」のCEO。Devora Zackさんが発表したものです。『Singletasking: Get More Done--One Thing at a Time』の著者でもあるZackさんは、マルチタスクほど有害なものはないと述べています。会議に出席しながら、レポートを書いて、さらに家族にメールなんてことを同時にやっていたら、脳は複数の行動の間をノンストップで行ったり来たりしなければなりません。これでは効率が下がり、脳細胞にも悪影響です>


●マルチタスクに効果があると誤解するのは、すごく気持ちいいから?

 何気なくさっき「マルチタスクな俺、格好いい!」などと書いてしまったのですが、こちらの記事でおもしろい話がありました。

 困ったことに、マルチタスクは有害にもかかわらず、快感をもたらすんだそうです。本当かよ?と思いますが、"タスクを切り替えるたびに、新しさを感じた脳が、ドーパミンという名の麻薬にも似た脳内化学物質を分泌する"という説明。

 そういや、同じライフハッカーを元ネタにして書いた脳トレーニングの効果はない? 脳トレに関するネイチャーの論文では、締め切りなどで追い込まれれば追い込まれるほど脳が力を発揮するというのは、大間違いだという話も出てきました。人間はこういった錯覚を頻繁にやっているのかもしれません。


●音楽を聞くだけで仕事の効率が落ちることが多い…という研究も

2017/08/21:音楽を聞きながら作業を行うこともマルチタスクの一種…という話をここに追加しようと思って、検索してみました。ただ、マルチタスク (心理学) - Wikipediaを読んでみると、こちらはマルチタスクの問題とは異なる話の可能性もありそうです。

 Wikipediaでは、音楽を聴きながら作業することについては、音楽を聴くときに使われる脳と作業するときに使われる脳は、全く別の領域であることがわかったと説明。しかも、周りの他の雑音を遮断でき、作業に集中するのに役立つとも書いています。こうなると、音楽は問題ないどころか、効果的なように思えてきます。

 ところが、BGMで勉強・仕事に集中できるは嘘でむしろ逆効果だと研究で判明でやった話によると、むしろ音楽で仕事の効率が落ちるという研究の方が多いとのこと。かろうじて効果がある可能性が感じられたのは、単調な作業の場合のみ。また、さっき書いたWikipediaに載っていたものも、他の雑音がある場合ですから、こういった特殊なケースでは効果がもたらされる可能性があるかもしれません。

 一方、多くの研究で音楽を聞きながらの作業の効率が悪くなるという、音楽を聞くことへの否定的な結果が出ていることからすると、いくつか書いたような限定的で特殊なケース以外では、「音楽を聞きながらの作業も効率が下がることが多い」という理解で良さそうでした。


●オープンオフィスがダメな理由もマルチタスクの問題だった…!

 もう一つ、別でやったデメリット多数のオープンオフィスは最悪!生産性上げるどころか…でも、マルチタスクの問題と関連しそうな話がありましたので、こちらのページでいっしょに紹介。こちらは上記の最後で出た「他の雑音」とも関係するものです。

 このときの研究では、オープンオフィスを採用することで生産性は15%低下し、従業員の注意力が乱されることが判明。その理由は、人間がマルチタスクに向いていないということ。周囲に気を取られることで集中力が切れてしまい、再び集中した状態に戻るのに20分以上も要するという困ったことになっていました。

 周囲の音を聞いてしまう…という時点で、人間はマルチタスクの作業をさせられていて、それにより集中力が途切れちゃうんですね…。前述のWikipediaの話は、これを遮断するためなら音楽はアリ…というもの。それがまたたいへんなのですが、本来なら無音の部屋で作業をするのが一番効率が良さそうです。


●100%の集中力を分割したら、効率が落ちるのは当たり前

2018/09/19:マルチタスクが生産性を阻む理由について、脳への定着度で説明している記事がありました。マルチタスクのように複数の業務を同時並行しながら得た情報は、脳によって新たなスキルの単純習得として保存され、定着しない可能性があるんだそうです。

 一方で、一つの学習事項にのみ注力すれば、脳の長期記憶をつかさどる部分が活発に活動するようになるとのこと。そうすれば記憶は長期間保持され、将来思い出しやすくなります。

 米科学誌ニュー・アトランティスの上級編集者クリスティーン・ローゼンさんは、2008年に同誌が掲載した記事「The Myth Of Multitasking(マルチタスキングに関する誤った通念)」で、一つのことに集中したときよりもマルチタスクを行うときのほうがストレスホルモンが放出されやすいと述べています。このストレスホルモンは不安や不快感を生むだけでなく、短期記憶も悪化させ、いくら努力しても情報が保持できなくなるとのこと。やはり記憶保持の話になっていました。

 また、神経心理学者のシオドア・ツァウシデスさんは、マルチタスクが悪い理由を以下のように非常にわかりやすく説明していました。これがすべてですね。

「マルチタスクは、100%の集中力をそれぞれのタスクに振り分けるものなので、一つのタスクに向けられる集中力は100%よりも小さくなる。結局、取り組むべきことに100%の注意と関心を向けられていない」
(マルチタスクは非効率的 成功のための正しい作業方法とは? | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)  2018/01/22 16:00 Ian Altmanより)


●音楽を聞くと集中できないって本当?音楽のBGMに関する研究では…

2021/10/15追記:「音楽を聞くだけで仕事の効率が落ちることが多い」に関連する話を追記。別のところでやった話なのですが、自動車の運転と音楽との関係について調べた研究です。2002年にイスラエル・ベングリオン大学のウォレン・ブロズキー研究員らのチームが実験して、イギリスの科学雑誌『New Scientist』に論文を発表していました。

 これによると、ユーロビートのようなテンポが速い(BPMが多い曲)を聴いているときに信号無視や急発進、急ハンドルなどの動作が増えるという、あまりにも予想通りな結果に。紹介記事もユーロビートを聴きながらの運転は非常に危険---研究成果が明らかに | レスポンス(Response.jp)(2002年3月15日(金) 12時00分)というタイトルでした。

 では、一方で遅い曲が最適かというと、そうでもないんですよ。あまりにもゆっくりしたテンポの音楽でもダメで、やはり意識レベルが低下してしまうそうです。では、適度なテンポの真ん中らへんの曲の方が良いのかというと、そうなんですね。人間が最もリラックスできるBPMは、心拍数と同じ72と言われているとのこと。そのため、運転の際にもこれに近いテンポの音楽を選択すれば、人体に与える影響を最小限にできる、と書かれていました。

 ただ、注意が必要なのは、飽くまで「影響を最小限にできる」といった言い方であり、「運転中は心拍数くらいの音楽をかけるのがベスト」という意味ではなさそうなうこと。適度なテンポの音楽を聴いている場合にも、脈拍の変動が小さくなり、リラックスした状態になるものの、逆にこのために生じる注意力散漫の影響の方が大きいとされるているそうなのです。

 記事によると、論文では、「音楽を聴いているときと、聴いていないときでは、後者のほうがより運転に集中できることも明らかになった」と書かれていたみたいですね。結局、音楽をかけないのがベストという結論になっちゃいました。もともとこのページで書いていた「音楽を聞くだけで仕事の効率が落ちることが多い」を補強する内容でした。


●ラジオがかかっているだけで驚くほど運転の集中力が削がれる…

2022/06/08追記:他でも使った話をこちらにも追記。私は以前音楽をかけて運転していたのですが、上記の研究を知ってからはかけていません。ただ、父が乗った後はラジオがかけっぱなしになっていることがあります。そのときに驚いたのがラジオがかかっているだけで運転の集中力が削がれる…ということです。

 逆に言うと、以前はかなり注意散漫で運転していた可能性も…。昔は車を運転していて焦る…ということがよくあったものの、今はほとんどなくて音楽などをかけない効果が出ている感じがします。他に車間距離を極端に開ける、あらかじめルートを考えて車線を選ぶ…といったことの効果が大きい気もしますけどね。

 ところで、ラジオの場合、会話内容があるというのが特に悪そうな感じ。会話があると、その内容を理解しようとして、無意識に集中力の一部がそちらに分散してしまいます。音楽以上に集中力を下げてしまう要素がラジオにはあり、危険かもしれません。ラジオはむしろ運転のお供的なポジションなんですけど…。


【本文中でリンクした投稿】
  ■BGMで勉強・仕事に集中できるは嘘でむしろ逆効果だと研究で判明
  ■デメリット多数のオープンオフィスは最悪!生産性上げるどころか…

【その他関連投稿】
  ■仕事を効率よくやるコツ8箇条 納期の確認、即相談、説明責任など
  ■仕事が早い人になるには? 効率よく仕事をこなす7つのコツ
  ■成功確率は低くて良い 失敗しない人はチャレンジしない人だから
  ■仕事が早い人の特徴とは? 生産性の高い人が人脈でわかる不思議
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  ■ビジネス・仕事・就活・経済についての投稿まとめ

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