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アジア系冷遇のハーバード大学入試が人種差別でない理由 「アファーマティブ・アクション」の考え方


 アメリカの大学入試の話をまとめ。<アフリカ系より400点高得点でも入学できないアジア系アメリカ人>、<アジア系冷遇のハーバード大学入試が人種差別でない理由とは?>、<日本人ならほしい!アジア系でも日本人は逆に優遇されていた?>などをまとめています。

2023/07/02追記:
●米最高裁で入学選考での人種考慮に違憲判決、選考見直しへ 【NEW】


●アフリカ系より400点高得点でも入学できないアジア系アメリカ人

2015/10/18:差別じゃない理由というのは後で紹介することにして、先に差別だよという話から。ハーバード大学がアジア系アメリカ人の入学人数を減らすため、合格ラインを他のグループよりも高く設定するよう働きかけているとして、NPO団体をはじめとした64団体が提訴したそうです。私も人種差別だと感じたんですよね。

 団体によればSAT(大学進学適性試験)の結果を見ると、アジア系アメリカ人は、平均して白人より140点、ヒスパニック系より270点高くないと入学できていないことがわかったといいます。特にひどいのが、アフリカ系アメリカ人との差で、なんと450点も高くないと入学できないといいます。

 この話があったのは、「ハーバード大学が増えすぎたアジア系だけ合格ラインを難しくしているのは人種差別?」海外の反応いろいろ:らばQ(2015年05月18日 12:22)という記事で、海外掲示板のこれに対する反応も紹介。正確には別の記事への反応なのですが、意味はわかりますよね。同じ医者でもレベルが異なるという指摘もありました。

<他者への優遇措置が自分に降りかかると最悪なんだ。友人が医学大学に入学したがっていたが、彼はインド人だったので不利だった。現在アジア人が医学部にあまりに多いので、人数が制限されているらしい>
<まとめると医者はアジア人を選べってことだよな>
<じゃあアジア系は息子や娘に何て言うんだ?「一生懸命勉強すればいい学校に入れる」というのはアジア系には適用されないのか。病院で医者も同じ姿勢で雇っているのかな>


●アジア系冷遇のハーバード大学入試が人種差別でない理由とは?
 
 先のらばQでは、<トップの大学は1つの人種だけを象徴することにならないように、入学には多様性を重視する。この多様性を持っていることがランクや信用にもかかわってくるからだ>というコメントもありました。人種の多様性を理由に、アジア系を入れ過ぎないことを重視する考え方について指摘しています。

 一方、作家の冷泉彰彦さんは、アジア系冷遇のハーバード大の措置を人種差別ではないとしていました。ただ、冷泉さんはアメリカ寄りの見方すぎて注意が必要なときがあるなど、妙なことを言っているときがありますので、私は警戒しながら読むことが多い人なんですよ。

 前述の人種の多様性についても冷泉彰彦さんは重視。"アメリカの入試制度は「多角的な観点から全人格を評価する」という独特のカルチャー、緻密な評価システムによって成り立っており、それが守られたということは評価して良いと思います"などと、肯定的でした。
(ハーバード入試でアジア系は本当に「差別」されているのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代 ニューズウィーク日本版 / 2015年7月9日 18時0分より)


●少数者を優遇する「アファーマティブ・アクション」の考え方

 ここらへんに関連して、「アファーマティブ・アクション」(少数者優遇措置)制度の存在があります。以下のような説明がありました。

<この「アファーマティブ・アクション」の背景にあるのは「人口比」です。全国区の場合なら全国の人口比で、例えば地域密着の雇用主であれば、その地域の人口比に比例するレベルまでは、強制的に少数者を優遇して入れていかなくてはならないのです。
 ハーバードをはじめとするアメリカの名門大学では、アジア系は「全米の人口比を超える比率」になっている一方で、ヒスパニックと黒人はまだまだ「足りない」という傾向があり、優秀な学生は大学同士の争奪戦になっているぐらいです>

 人口比に合わせようとするからアジア人を増やすと優遇になり、一方でヒスパニックや黒人は現状冷遇されているという考え方です。しかし、納得いきませんね。以下にあるように、この考え方はリベラル寄りだそうです。私は問題によって左右どちらと決まっていませんが、どっちかというとリベラルに賛同することが多いです。しかし、今回の問題は納得できません。やはり差別だと思います。

<ちなみに『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙などの一部メディアが、今回の「アジア系の集団提訴」を支持した背景には、民主党カルチャーの象徴である「アファーマティブ・アクション」への反発という、政治的な思惑が見え隠れするということは指摘できるでしょう>


●入試はテストだけで決まらない テストの点数の配分が低いから説

 ちなみにもう一つ別の説明がありました。そして、こちらの方がまだ理解できるものです。よく読めばわかるように、最初の<アフリカ系より400点高得点でも入学できないアジア系アメリカ人>の話は飽くまでSAT(大学進学適性試験)の点数だけの話なんですね。入試全体としては複数の要素で評価されます。

<アメリカの大学入試では、SATが全てではないということがあります。SAT以上に高校での内申点が重視されます。またスポーツ活動では、単に部活に参加しているというだけではなく、「高校の代表チームのレギュラーだったか?」とか「最高学年でも現役で、しかもリーダーシップの地位にあるか?」ということが問われます。またボランティア活動の履歴、音楽や美術などアート活動の履歴も重視されます。
 こうした点から見れば、「アジア系の合格者のSAT平均が他の人種よりも高得点」だというのは、「アジア系にマイナスのハンデが付けられている」というよりも、数多くある評価ポイントの中で「アジア系はSATの高得点という要素に頼った履歴書構成になりがち」という見方もできるわけです>

 こちらの方がまだ理解できる…とは書いたものの、最後の「アジア系はSATの高得点という要素に頼った履歴書構成になりがち」はミスリードでしょう。そもそも人種的多様性の重視や少数者優遇措置をすれば、SAT以外の点数が高くても落ちるときは落ちます。優秀であっても絶対に落ちる人が出てくるのです。

 なぜか?と言うと、アジア系アメリカ人同士で少ない枠を争う競争になるため。現状でも合格者はSAT以外の評価も高いと考えるのが自然であり、全然納得できない説明です。私はマイノリティ差別や女性差別などを徹底して嫌うものの、こうしたマイノリティ優遇措置についても筋が通っていないので、反対です。


●アメリカの司法省が異例のコメント「アジア系冷遇は是正すべき」

2018/09/05:一部のアジア系の学生がハーバードに対して「アジア系が差別されている」として提訴をしている「民事訴訟」に関して、2018年8月30日に、アメリカの司法省が異例のコメントを出したそうです。おそらく当初書いていた問題と関連するものでしょう。

 本来、司法省は民事訴訟に介入することはないのですけど、「関心のステートメント」という文書を発表したといいます。「異例」と言って良いかもしれません。この文書で司法省は、ハーバード大学がアジア系の合格者を「少なく」しているのは「是正すべき」という判断を示しました。なんらかの影響がありそうでした。

 この話を知ったのは、当初の投稿で使った記事と同じ冷泉彰彦さんの記事。白人至上主義の支持者を抱えるトランプ政権がアジア系を擁護したというのは、一見すると奇異に見えるとしています。ただ、私はトランプ大統領に忖度せずに単純に独立した意見だからではないかという考え。日本でも安倍政権らしくないまともな意見が省庁から出てくることがありますからね。


●日本人ならほしい!アジア系でも日本人は逆に優遇されていた?

 ところで、今回の冷泉彰彦さんの記事は、米司法省の「アジア系差別」是正勧告で、日本人はハーバードに入りやすくなるのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代 ニューズウィーク日本版 / 2018年9月4日 17時20分というタイトルでした。

 このタイトルの質問に対する答えは、「ハーバードがアジア系を優遇しようが不利に扱おうが、日本人にとってはあまり関係がない」というものでした。過去においても、日本人には「特に不利にはなっていない」とのこと。もともと日本人が少なすぎるため、ハーバードとしては「もう少し日本人の学生を入れたい」と思っているフシが以前からあるためといいます。日本人にどんどん受けるようにと勧めていました。

 日本人は他のアジア系と異なり差別を受けていなかったとのことだったのですけど、この主張だとむしろ日本人は今まで優遇的な差別をされていた…という感じですね。仮にそれが本当なら私はやはり支持しません。今後さらに多くなるとみられる中国、韓国、台湾、ベトナムなどの学生と平等に、日本人も扱われるべきでしょう。


●米最高裁で入学選考での人種考慮に違憲判決、選考見直しへ

2023/07/02追記:提訴されていたハーバード大の入学選考。米連邦最高裁が、大学の入学選考について人種そのものを理由にした優遇措置を禁じる判決を下したそうです。入学選考での人種考慮、米最高裁が違憲と判断 多様性確保に重大転機:朝日新聞デジタル(2023年6月29日)などの記事が出ています。

<米国の大学の入学選考をめぐり、米連邦最高裁は29日、人種だけを理由に優遇することを憲法違反とする歴史的な判決を言い渡した。従来は多様性確保のため、黒人やヒスパニックを優遇することが多かったが、今後はできなくなる>
<訴訟はハーバード大とノースカロライナ大の選抜をめぐり、アジア系の学生らの団体「公平な入学選考を求める学生たち」(SFFA)が「差別を受けた」として起こしていた。SFFAは「入学者選抜でアジア系が差別され、合格率が低くなっている」と主張。一審、二審ともに「意図的な差別はない」と判断したが、最高裁では、積極的差別是正措置の是非が焦点となっていた。>

 ハーバード大は学長らが声明を出し「裁判所の判断に従う」と表明。ただし、多様性を確保する重要性を訴え、「裁判所の新たな判例と矛盾することなく、私たちの本質的な価値を維持する方法を今後決める」と、選考方法の改革に取り組む意向を示しており、現実には大きく変わらない可能性もありそうでした。

 なお、記事では以下のような右派とリベラルの思想に関する記述も。実際、最高裁にはトンデモ右派(次回補足予定)がいて偏向しているのも事実でしょう。ただ、経済的には右派で、それ以外はリベラルの考えに近い私も、すでに書いているように、こうした人種的優遇措置には反対。今回に限って言えば、妥当な判決だと思います。

<人種を理由に優遇する「積極的差別是正措置」(アファーマティブ・アクション)の一環として入学選考で人種を考慮することについては、保守派を中心に長く批判もあった。29日の判決も、判事9人のうち保守派の6人による多数意見だった。民主党のバイデン大統領は判決後、「最高裁の判断に強く反対する」と表明した>


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