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プレッシャーや追い込まれることで仕事に集中?ゾーンに入る方法


 横山信弘さんという経営コンサルタントの方がいらっしゃいます。


●経営コンサルタント・横山信弘氏

 その横山信弘さんの記事を読んだことがあるのですが、具体的にここがダメ!とは言えないものの、何か苦手な感じがしました。精神論系の仕事理論を主張するタイプだと感じたのかもしれません。

 ところが、以下の記事では、「精神論はいっさい言いません」とおっしゃっていました。
超集中状態「ゾーン」に入る方法(横山信弘) - 個人 - Yahoo!ニュース(横山信弘 | 経営コンサルタント 2014年6月29日 7時21分)

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。「絶対に結果を出せ!」「最後まで諦めるな!」「念ずれば叶う!」といった精神論はいっさい言いません。

●フロー状態の入り方

 こちらはゾーンに入る、あるいはフロー状態になるといった話について書かれたものです。
極端に追い込まれたり、プレッシャーを感じるとき、人間はフロー状態になります。心理学者のチクセントミハイによって名付けられ、これを俗に「ゾーンに入る」と呼びます。(中略)

●きわめて高い集中力を発揮している「研ぎ澄まされている感覚」を味わう

●時間が止まったかのような「時間感覚」の歪みを覚える

●陶酔状態に陥り、恍惚感、多幸感を抱く

●痛みや苦しみ、ストレスから解放され、感情のコントロールができる

●きわめて短い時間の中で適切な判断ができる

それではなぜ、このような心理現象を味わうのでしょうか?

●神経伝達物質「エンドルフィン」が分泌し、ストレスの鎮痛作用が働く

●脳の「回転数」が極限までアップすることで、「心理的時間」が異常に長くなる

●プレッシャーや追い込まれることで仕事に集中?

 ここだけ見ると、超絶精神論くさいのですが、要するに追い込んでプレッシャーを与えろという話みたいです。
「あと1時間で5枚の見積り資料を作成しなければならない」

「あと8分で駅に着かないと、電車に間に合わない」

「午前中に6社に電話をしなければならない」

「あと2日で24件、新規のお客様をまわらないといけない」

●ストレスによるエンドルフィン、ドーパミンの作用

 うーん、本当なんですかね? とりあえず、気になるのはエンドルフィンの記述。

 プレッシャーを与えることでエンドルフィンが出るとしても、それはストレスを軽減する、要するにストレスを誤魔化しているのであって、望ましい状態だとは限らない可能性があります。

 ちなみにエンドルフィンはマラソンや体を傷つける行為でも出ると言われています。これらの場合は今回のケースといっしょにできないのですけど、とりあえず、良くない状態を誤魔化すためのエンドルフィン放出という例です。
エンドルフィン - Wikipedia

エンドルフィン(endorphin)は、脳内で機能する神経伝達物質のひとつである。内在性オピオイドであり、モルヒネ同様の作用を示す。特に、脳内の「報酬系」に多く分布する。内在性鎮痛系にかかわり、また多幸感をもたらすと考えられている。そのため脳内麻薬と呼ばれることもある。(中略)

 作用

ストレス時に視床下部からCRFが分泌されると、下垂体前葉からPOMCから切り出されてACTHとβエンドルフィンが1:1の割合で放出される。

β-エンドルフィンは、μ受容体に作用し、モルヒネ様作用を発揮する。ストレスなどの侵害刺激により産生されて鎮痛、鎮静に働く(中略)βエンドルフィンが中脳腹側被蓋野のμ受容体に作動し、GABAニューロンを抑制することにより、中脳腹側被蓋野から大脳皮質に投射するドーパミン神経系(別名A10神経系)のドーパミン遊離を促進させ、多幸感をもたらす。

●チクセントミハイが挙げたフローの構成要素

 フロー状態の方も見てみました。ところが、Wikipediaに限って言えば、追い込めという話もエンドルフィンの話も見つかりませんでした。

 追い込まれた状況というのは、「フローの構成要素」である「7.状況や活動を自分で制御している感覚」とも相性が悪そうに思えます。
フロー (心理学) - Wikipedia 最終更新 2014年6月6日 (金) 11:05

フロー (英: Flow) とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。ZONE、ピークエクスペリエンスとも呼ばれる。心理学者のミハイ・チクセントミハイによって提唱され、その概念は、あらゆる分野に渡って広く論及されている。

 フローの構成要素

チクセントミハイが見たところによれば、明確に列挙することができるフロー体験の構成要素が存在する。彼は8つ挙げている。

1.明確な目的(予想と法則が認識できる)
2.専念と集中、注意力の限定された分野への高度な集中。(活動に従事する人が、それに深く集中し探求する機会を持つ)
3.自己に対する意識の感覚の低下、活動と意識の融合。
4.時間感覚のゆがみ - 時間への我々の主体的な経験の変更
5.直接的で即座な反応(活動の過程における成功と失敗が明確で、行動が必要に応じて調節される)
6.能力の水準と難易度とのバランス(活動が易しすぎず、難しすぎない)
7.状況や活動を自分で制御している感覚。
8.活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。

フローを経験するためにこれら要素のすべてが必要というわけではない。

●「プレッシャーの元で、脳はより良く働く」は嘘という説

 私がこの話を警戒したのは、以前、脳トレーニングの効果はない? 脳トレに関するネイチャーの論文を書いていたためです。

 こちらも出典がしっかりしておらず信頼性が高いわけじゃないのですが、「プレッシャーの元で、脳はより良く働く」は迷信だとされていました。

 とりあえず、このときでは、普通にストレスは脳の働きを悪くする方に働くとされていました。それだけでなく、長期的にも仕事のパフォーマンスを低下させる可能性にも言及がありました。

 日常的にストレスを感じ続けていると、危機的状況下で出るホルモンが出続けることで脳細胞を殺してしまうことになりかねないという話です。


●プレッシャーで思考能力が鈍るおそれ

 エンドルフィンという話を抜きにして、ストレスと脳に関する話なら結構簡単に見つかります。以下は、ちゃんと研究者のものですので、他よりはやや信頼性が高い記述です。
ストレスと脳|生物学科|東邦大学理学部 神経科学研究室 増尾好則

プレッシャーを感じると思考能力が鈍ったり、思考が停止してしまったりする場合もあります。この状態は、「緊張する」、「あがる」、「頭が真っ白になる」、「凍りつく」、「パニックになる」、最近では「テンパる」などと表現され、誰しも経験することです。これまでの生物学的知識では、ストレスを受けると脳の底部にある進化的に古い視床下部が反応して、下垂体と副腎からのホルモン分泌が促進され、心拍数の増加、血圧の上昇、食欲の低下などが生じると理解されています。これらの変化は、脳に生じる原始的な反応であるといえます。

●人間はストレスに脆弱

 エンドルフィンは出てきませんが、その説明で出てきたドーパミンの方はここでも登場しています。
 最近、ストレスは霊長類で最も発達している大脳皮質前頭前野(前頭前野:図1)にも影響を及ぼし、高度な精神機能を奪ってしまうことが分かってきました。ストレスは、感情や衝動を抑制している前頭前野の支配力を弱めるため、視床下部などの進化的に古い脳領域の支配が強まった状態になり、不安を感じたり、普段は抑え込んでいる衝動(欲望にまかせた暴飲暴食や薬物乱用、お金の浪費など)に負けたりするというのです。(中略)

 この神経の高次中枢は、三角形をした錐体細胞という神経細胞同士が接続した大規模なネットワークを介して働きます。(中略)このネットワーク内の回路は、日々遭遇する不安や心配に対して敏感に反応し、非常に脆弱であることが分かってきました。ストレスがかかると、脳全体に突起を伸ばしている神経からノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質が放出されます(図2)。これらの濃度が前頭前野で高まると、神経細胞間の活動が弱まり、やがて止まってしまいます。ネットワークの活動が弱まると、行動を調節する能力も低下します。視床下部から下垂体に指令が届き、副腎がストレスホルモンであるコルチゾールを血液中に放出して、これが脳に届くと事態はさらに悪化します。こうして、自制心はバランスを崩していくのです。

 以上です。これらだけでは、プレッシャーや追い込まれることで仕事に集中するという説を、完全に否定するには不十分でしょう。腑に落ちなかったので、ちょっと調べてみたという程度です。

 横山信弘さんの説を肯定できる話の方も含めて、もっと良い話があればまた紹介しようと思います。 


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