長男長女・次男次女・末っ子・一人っ子など、兄弟の生まれ順に関しては、一見科学的であるような説明がなされています。ただし、差があったとしてもわずかな差であれば意味がありませんし、差が別の理由で生まれているということもあります。実際には、生まれ順は性格・IQにほぼ無関係と言ってしまって良さそうでした。
2015/10/20:
●大学の調査で判明、長男次男などの生まれ順は性格・IQに無関係
●長男・長女は妹や弟よりIQが高い この結果について研究者は…
●第二子にくらべて第一子は外向的 ただし相関はごくわずか
●テレビのお馴染みの脳科学者・澤口俊之さんの説明だと?
●弟妹がいないとIQが上がる?一人っ子が高IQなのも別の理由
●大学の調査で判明、長男次男などの生まれ順は性格・IQに無関係
2015/10/20:
兄弟姉妹の構成による性格の研究 末っ子・長男長女・次男次女を書いた後に、別の兄弟姉妹に関する記事を見つけました。
向こうでも紹介するときに、与太話レベルと私は書いています。ただ、今回見つけた
生まれた順番が性格やIQに影響するというのはウソ!(2015年8月12日 (水) 22:12 配信 マイナビ 学生の窓口)は、記事の段階でハッキリと否定する内容で、スタンスが異なっていました。
<世間では、「生まれた順番が後になるほどIQが低くなる」とか、「長男長女はしっかり者で末っ子は甘えん坊になる傾向が高い」などとよく言われますが、この度のアメリカのヒューストン大学大学の調査で、生まれた順番のIQや性格に与える影響はほとんどないことが分かりました>
●長男長女は外交的で愛想が良くまじめ ただし、その差は~%
調査チームは37万7000人の高校生を対象に、家庭の経済状況や兄弟の数、年齢と、IQや性格との相関関係を調べました。過去の調査結果同様、今回の研究結果でも、長男長女は外交的で愛想が良く、まじめで物事に動じにくいという傾向が見られています。
じゃあ、やっぱり関係あるじゃない?と思うかもしれませんけど、その差はわずか0.02%上回ったにすぎなかったとのこと。イリノイ大学の心理学者Robertsさんは、0.02%の差は日常生活では問題にならない数字で、他人がその違いに気づくことはないとしていました。そりゃそうですよね。
というか、0.02%どころか10倍の0.2%であっても、意味のある差ではない気がします。統計の考え方がわからないですし、サンプル数は多いのですが、100倍の2%の差であったとしても、誤差範囲だと感じます。0.02%ってひどすぎでしょう。
●長男・長女は妹や弟よりIQが高い この結果について研究者は…
別記事の
「第一子のIQ高い」なんてデマ!37万人調査で根拠ナシと判明 [2015/07/28](Suzie(文/渋谷ふみ)では、同じ研究の中でIQを特にピックアップしていました。
<性格研究ジャーナル」で発表されたその結果は「たしかに長男・長女は妹や弟よりIQが高い」というもの。ただしその差はわずか1ポイント……!>
多くのIQ関係の記事では、IQを上げられるという話が意味ありげに出てきます。ただ、本当は1ポイントどころか数ポイントでも意味がないという指摘すらあるんですよね。この記事でも以下のような書き方です。
<1ポイントの差があったところで、劇的に頭がよいということになるはずがありません。調査に携わったダミアン氏も「この結果は統計的には有意だが、ほとんど差のない無意味なもの」と説明しています>
●第二子にくらべて第一子は外向的 ただし相関はごくわずか
こちらの記事でもさっきと同じ「0.02」が出てきました。ただ、意味しているものは異なります。「相関0.02」という書き方でした。どっちかが誤訳したのかもしれません。
でも、「0.02」が相関関数だった場合、そもそもわずかな相関関係があるとすら言いづらいですので、こっちが誤訳かな? 何かこの研究も大丈夫かと不安になってきました。訳が悪いのでしょうか?
今回の分析では、性格的にも第一子と第二子とでは一貫した差があることが明らかになりました。
わかったのは、第二子にくらべて第一子は外向的で感じがよく、細かなことは気にしない優等生的な傾向があるということ。しかしIQ同様に、この差は相関0.02とごくわずかなものでした。
ロバート教授が「ある薬が1,000人のうち1人(0.001%)を救えるとすれば、そのデータは無視できません。でも性格については、相関0.02という値は気にするようなものではありません」と説明していることからも、生まれた順番が性格に影響を及ぼすことはありえないということがわかります。
●差が見えたのは家庭内での役割だけ見ていたから
最初の記事では、過去の研究で誤解された理由も書かれていました。
過去に行われた調査では家庭内での役割に焦点を当てていたために、生まれた順番による性格の差が出やすい状況であったことも指摘しています。
家庭内では長男長女は常に一番年上の子供として親から扱われ、一番責任のある仕事を任されたりするために、本人もその役割に合った行動を取ることになります。しかし、同じ子供がいったん家庭の外に出れば家庭内とは違う役割が求められることになり、子供は必ずしも家庭内で取っているような行動を取るわけでなないということのようです。
●テレビのお馴染みの脳科学者・澤口俊之さんの説明だと?
検索すると、2012年の古い記事も出てきました。テレビのお馴染みの脳科学者・澤口俊之さんという説明があったので、デタラメくさいと警戒しましたが、同じ結論になっています。
「長男長女は頭いい」「2番目は社会性高い」に根拠あるのか│NEWSポストセブン 2012.03.13 07:00 ※女性セブン2012年3月22日号
40年も前の1973年、アメリカの著名な学術誌『Science』(サイエンス)に、「生まれ順によって知能指数=IQが異なり、第1子のIQがもっとも高く、第2子、第3子の順で下がる」という論文が掲載されました。
これが「生まれ順効果」と呼ばれて、一般にも広まったため、冒頭のようなイメージを持っているかたが現在でも多いのだと思います。ところが、研究を重ねた結果、知能や性格は、遺伝による影響が大きいことがわかり、「生まれ順効果」は、現在ではほぼ否定されています。実際、生まれ順による知能や性格の差は、ほとんどありません。
●弟妹がいないとIQが上がる?一人っ子が高IQなのも別の理由
一方で、"ひとりっ子のIQや学業成績が、きょうだいのいる子供よりも高いというデータが存在します"という話をしていました。これも眉に唾をつけて読んだものの、一見しておかしなことはおっしゃっていませんでした。
違って見えるのは事実なんですが、一人っ子だから高いわけではないという説明。子どもを1人しか産まずにやめたら、途端に頭が良くなるなんてことはありませんので、安心して第二子、第三子を産んでください。
<親から受け継いだ能力の差異、つまり遺伝要因によるものとみなせます。というのも、「IQや学歴が高い親ほど、ひとりっ子を好む傾向がある」という研究結果があるからです>
最後の記事には、「知能や性格は、遺伝による影響が大きい」といった説明がありました。こうした問題においては、こうした理解が一番順当だと思われます。遺伝だけ決まるということでもないんですけど、知能においては特に遺伝の影響が強くあります。
ところが、実は最初の記事だと、「生まれた順番は何の関係もありません。すべてはあなたの努力次第で変えられるのです!」なんてことも書いていました。これもまた無責任で根拠不明ですので、ご注意ください。
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