2015/10/22:
●平均的なアメリカ人が決められる決断は70個まで…って本当?
●「経営者が本を書くと、その会社は成長しない」という説
●選択肢が多い方が目を引くが、実際に買うのは選択肢の少ないとき
●投資商品でも同じ現象が発生…選択肢が多い方が加入率が低下する
●一見選択肢が多そうだが、選択肢を減らしてカテゴリを増やすのはアリ
●「クリエイティブな人は一見つまらない人に見える」という矛盾
●やらなくて良いことはやらない方が良い…メモを取るのが大切な理由
●スティーブ・ジョブズの服装がいつも同じだった理由 選択肢を減らすという選択
●やることを減らそう!自分がやりたいことは、本当にやりたいものなのか?
●平均的なアメリカ人が決められる決断は70個まで…って本当?
2015/10/22:もともと気になったのは、2ちゃんねる創設者のひろゆきさんの
経営者が本を書くと、その会社は成長しない : ひろゆき@オープンSNSという投稿の、以下の部分でした。
<生活や仕事をしていると様々な選択肢があるわけですが、コロンビア大学の教授が調べたところ、1日に平均的なアメリカ人が選択出来るのは70個ぐらいだそうです。
情報を入手して選択をするってのは、結構エネルギーがいるんですよね>
おもしろいな!と思ったものの、ひろゆきさんの言っていた元ネタを確かめてみると上記のようなことは書かれていません。はっきり言っちゃうと、ウソでした。「決断の数は平均約70」という話はあったものの、「それ以上決断できない」とは書かれていなかったのです。
嘘つき・デマ野郎と非難しようってわけじゃないですけど、ひろゆきさんはちょっと誤解されていると思われます。元ネタの
シーナ・アイエンガー:選択をしやすくするには | TED.com(Posted Jan 2012)であったのは、以下のような話でした。
<皆さんは普段自分が 1日にいくつの選択をしているか知っていますか? 普段自分が1週間にいくつの 選択をするか知っていますか? 最近2千人以上の アメリカ人を対象に 調査を行ったのですが 典型的なアメリカ人が 通常1日に下す決断の数は平均約70でした>
●「経営者が本を書くと、その会社は成長しない」という説
私が最もおもしろいと思ったのは、前述の通り、上記の話。ただ、全体のタイトルは「経営者が本を書くと、その会社は成長しない」というものでした。ひろゆきさんが一番言いたかったのも当然ここで、「経営者が本を書くと、その会社は成長しない」という話をしたかったようです。
<いきなり結論になりますが、「本を書く」ってのは、「どこまで書くのか?」「どういう言葉で伝えるのか?」「誰に向けて書くのか?」とか、決めなきゃいけないことがすげー多かったりするのですよ。(中略)
、「経営者が本を書くと、その会社は成長しない」って結論を誰かが言っていて、それをおいらが思い出したという昨今だったりします。>
ひろゆきさんは経営者かどうかは知りませんが、「あなたも本出しているでしょ?」というツッコミはあったものの、反応は上々。感心している人が多かったです。
ただ、最初のひろゆきさんの勘違いの件を確かめる前から、私は説得力がないと思いました。おそらく1日にできる選択肢には限りがあるため、経営者が本を書くとそちらに決断力を取られてしまい、会社経営が疎かになるという理論なのだ、というのはわかります。
でも、会社の成長度と書籍の出版についての関係を先に調べないと、そもそも「経営者が本を書くと、その会社は成長しない」が正しいかどうかはわかりません。きちんとしたデータが必要でしょう。ホリエモンさんなんかもそうなのですけど、データを出さない主張が信者に絶賛される伝統は現状がありますね。
あと、普通、こうした書籍では、経営者は名前を出しているだけで、実際には本を書いていない場合が多いそうです。ひろゆきさんって堀江貴文さんと仲良かった気がするのですが、堀江貴文さんもそうだと言われていました。この場合はあまり負担になっていないと言えます。これにより、さらに上記の理論との関係性がわかりづらくなりますね。
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堀江貴文(ホリエモン)もゴーストライター使用 虚栄心強い人ほど多い傾向 ■
ビジネス書はゴーストライターが9割 その見分け方・判別方法は?●選択肢が多い方が目を引くが、実際に買うのは選択肢の少ないとき
繰り返しになりますが、私が関心を持ったのは、根拠が怪しいというかそもそも根拠がない「経営者が本を書くと、その会社は成長しない」ではありませんでした。選択肢の話です。先のリンク先のTEDには、以前、
iPhoneが売れる理由?選択肢を与えないというアップルの売り方で出てきたジャムの話の、より詳しいエピソードがありました。これがおもしろいんですよ。
小さな試食ブースを 店の入り口のすぐ近くに設置。そこで6種類または24種類の様々な味のジャムを出しました。ずどちらの設定の方が、多くの人々が立ち止まってジャムを試食するかを見ています。私は選択肢が多いお店の方が好きなのですけど、結果もその通り。24種類ある場合は約60%の人が試食し、6種類の時の40%より 多いとわかりました。選択肢が多い方が人を惹きつけるのです。
ところが、ジャムを購入する傾向が高いかを見ると、数値は反対となりました。24種類の時に試食した人のうち 実際にジャムを購入したのはたったの3%。一方、6種類の時に立ち止まった人々の間では なんと30%が実際に ジャムを購入していたのです。
結局、この2つの数字で計算してみると、6種類見たときの方が24種類見たときより、6倍以上ジャムを購入する傾向が高いという結果になりました。試食する人が多くてもあまりに購入者が少ないために、種類が多い方がダメなのです。結果的には種類が少ないお店の方が良い…ということになってしまいます。
●投資商品でも同じ現象が発生…選択肢が多い方が加入率が低下する
さらに別の逸話もあります。グル・ヒューバーマン エミール・カメニカ ウェイ・ジャングと共に、退職貯蓄に関する決断について行った調査です。以下のような話をしていました。
<約650個の退職貯蓄制度における 百万人近くのアメリカ人を対象としました すべてアメリカ国内です 私たちが調べたのは 401(k)という 退職貯蓄制度にて 利用できる投資信託の数が 人々の将来の為に貯金する傾向に 影響するかです そして実際に 相関関係があることが分かりました
657個のプランがあったのですが 人々が利用できるファンドの数は 2つのものから59個のものまでありました そして明らかになったのは ファンドの選択肢が多ければ多いほど 実際に加入率が低下するということでした
(中略)両極端を見ると 2つのファンドがあるプランでは 理想よりも下回るとはいえ 加入率は大体75%辺りです 60近くの選択があるプランになると 加入率は 約60%まで低下します>
●一見選択肢が多そうだが、選択肢を減らしてカテゴリを増やすのはアリ
他にもまだまだ例があります。製品数を減らした方が、管理は楽です。企業は「売上高の増加とコストの低下」という一石二鳥を達成できるわけです。こんなうまい話があるなんて!と思いますね。
・P&Gがh&sヘアケア製品を 26種類から15種類に減らしたとき 売上高が10%増加しました
・死に筋の猫トイレ製品10種類を Golden Cat社が取り除いたとき 利益が 87%増加しました
なお、一見選択肢が多いように見えても、分類が増えることはプラスだそうです。これはちょっとわかりづらいかもしれませんね。以下のような説明でした。
<600種類の雑誌を 10個のカテゴリに分けて見せるのと 400種類の雑誌を 20個のカテゴリに分けて見せるのでは 400種類の方が 600種類の時より 選択肢が多くて買い物しやすいと 人は思うのです カテゴリのおかげで区別しやすいからです>
●「クリエイティブな人は一見つまらない人に見える」という矛盾
選択肢の話としては、ひろゆきさんはスティーブ・ジョブスさんがずっと同じ服を着てた、オバマ大統領がほぼ同じスーツばっかり着てる、といったことも書いていました。
ひろゆきさんのリンク先とは異なりますが、これは私もブックマークして使おうと思って取っておいた記事があります。やはりTEDの講演のネタ。カールトン大学 ビジネス専攻学生 Chris Sauve(クリス・ソーヴェ)さんによるもの。
こちらによると、「クリエイティブな人は一見つまらない人に見える」という矛盾があるようです。だからと言って、「いかにもクリエイティブに見える見た目の人が偽物」ということでもないんでしょうけど…。
<「仕事で凶暴に独創性を持つために、日常生活では退屈な普通の人であれ」。最初にこの引用を知った時は「矛盾するな」と思いました。(中略)
人生のある部分を整理すると他のことにフォーカスできるようになり、他の部分でより素晴らしいことを成し遂げることができるようになるのです。つまり、私がこの引用を見て最初に感じたように、人生を整理し習慣化することは、私達のクリエイティビティを失うことにはなりません。実は人生を整理し習慣化することがクリエイティビティに繋がるのです>
(
なぜ成功者は毎日同じ服を着るのか? スティーブ・ジョブズら、世界の偉人が実践した「3つの習慣」 - ログミーより)
●やらなくて良いことはやらない方が良い…メモを取るのが大切な理由
一見関係ない話に思えるのですけど、ここではメモに関する話も出てきます。この「メモを取りなさい」というアドバイスには、なぜか強い反発があるようです。
仕事ができない人の10の特徴 メモをとらない・言い訳がうまいでも、反対意見がありました。
ただ、こちらでは、成功者は「物事を書き留める習慣」があるとのこと。これは選択肢を減らすというのとはちょっと違いますけど、似たような感じでやるべきことを減らした方が良いから…といったものです。
<ジョージ・ミラーが数十年前にこれについて研究論文を書いています。その中で彼は短期記憶、つまりワーキングメモリは5から9つの項目に限ると論じています。(中略)
私達には計算能力が備わっていますが、計算をするのに計算機を使ったほうがスマートだと思います。計算が出来ると言えど、計算機より正確ではありませんし、それには劣ります。計算機は計算を間違ったりしませんよね。つまり私達は仕事を分けるのです。計算機ができるところは計算機に任せ、私達は数学に取り組むのです。
同じように、私達はやらなくてはいけないこと、そしてそれをいつまでにすれば良いのか覚え続けておくのがとても苦手です。つまり理論的に言っても、覚えておくことが得意な外的ツールにそれを任せておいたほうが良いのです。
(中略)そのようなツールに私達のスケジュールやToDoリストの記憶を任せておくと、私達はひとつかふたつのプロジェクトにフォーカスすることができます>
●スティーブ・ジョブズの服装がいつも同じだった理由 選択肢を減らすという選択
「スティーブ・ジョブズの服装がいつも同じだった理由」も当然これまでの話と関係してきます。まず、私たちが意思決定をするメンタル・エナジーの容量は限られていると研究でも明らかになっているというのがポイント。ことの大小に限らず、意思決定を下す度にこの容量を減らすというのです。
つまり、何を着るか、何を食べるか、何を買うか、何をテレビで見るかといった細々としたことに、我々はものすごい労力を使ってしまっているということ。大したことはしていないつもりであっても、知らず識らずのうちに、意思決定する力をすり減らしているんですね。
そのため、大きな決定を下さなくてはならないとき、人生の大きな結果に繋がるような決定をしなければならないときに、意思決定するため力が残っていない…ということにもなってしまいます。なので、やらなくてもよいこと、やりたくないことを排除しなくてはいけないとアドバイスされていました。
●やることを減らそう!自分がやりたいことは、本当にやりたいものなのか?
ここまで出てきた「3つの習慣」を整理すると、1つ目が「なんでもメモする」、2つ目が選択肢などを減らして、@必要最低限に留める」ということでした。そして、最後の「3番目が最も重要」とされていたのですが、正直3番目は他と比べるとピンと来ない話でした。
ざっと読んでみると、自分がやりたいことの優先順位が変わっていないか時々チェックする、自分がしていることが自分にとって重要かどうか経時的に再評価し続ける、といった部分がおそらく3つ目の習慣のポイント。おそらくこれもやらなくて良いことを排除する方向性の行動だと思われます。
終わりが何かスッキリしない感じになっちゃいましたが、自分がやらなくてはいけないことを減らすというのが大きなポイント。実際に実行することができるかどうかは別として、この説明自体はそれほど難しくなく、理解できるものだったのではと思います。
【本文中でリンクした投稿】
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