Appendix

広告

Entries

WHO・IARCが発表の加工肉の発がん性リスク、喫煙と同じは嘘 ベーコン・ハム・ソーセージなどや赤身肉の危険性


2015/10/27:
●WHO・IARCが加工肉の発がん性リスクについて発表
●加工肉は喫煙やアスベストと同じグループ1…というのは事実
●大学教授も赤身肉とがん発生の関係について反論
●肉が喫煙と同リスクってこと?計算してみると…
●加工肉の発がん性リスク、喫煙やアスベストと同じは嘘
●IARCの研究者「加工肉を食べることで発がんリスクが高まる可能性は低い」
●最初からバランス良く食べていたら加工肉50g・赤身肉100gはあり得ない
2015/11/20:
●加工肉は喫煙だけでなく、太陽光とも同じ評価グループ?
●IARCの発がん性の分類、実はすごく大雑把で4種類のみ
●「ヒトに対する発癌性が認められる」太陽光
●アルコール飲料は全部発がん性アリ
●発がん性が少しあるだけでダメなら「呼吸」もしてはいけない?


●WHO・IARCが加工肉の発がん性リスクについて発表

2015/10/27:世界保健機関(WHO)は2015年10月26日、ベーコンやハム、ソーセージなどの加工肉を1日50グラム食べると、結腸や直腸のがんにかかるリスクを18%高める、などとする研究結果を発表しました。この研究は、WHO傘下の国際がん研究機関(IARC)の作業グループがまとめ、医学専門誌に発表したもの。

 加工肉は、IARCの発がん性の基準で、喫煙やアスベストなどと同じ「グループ1」に分類されています。また、牛や豚、馬などの赤身の肉についても、発がんの可能性があるとする分類に位置づけたとのことです。
(「加工肉1日50グラム、がんリスク18%増」 WHO:朝日新聞デジタル ジュネーブ=松尾一郎 2015年10月27日00時52分より)

 後述するように加工肉だけで1日50グラムというのは確かに食べ過ぎでオススメできるような食べ方ではないと思うものの、このニュースはかなり誤解されて大げさに伝わっているようです。


●加工肉は喫煙やアスベストと同じグループ1…というのは事実

 GIGAZINEのベーコンなどの加工肉に発がんリスクが存在するとWHOが発表、すかさず反論の声も挙がる 2015年10月27日 11時37分00秒がもう少し詳しく紹介しています。
この研究は、WHOの外部組織である国際がん研究機関(IARC)のワーキンググループがまとめ、世界的な医学誌「Lancet(ランセット)」に発表したもの。ワーキンググループは10か国から集まった22名の専門家で構成されています。(中略)

IARCの専門家グループは、加工肉(牛や豚などの肉に対して塩漬けや薫製、発酵などの処理を行ったもの)を1日あたり50グラム食べることで結腸直腸がんの発生リスクが高まるとして、IARCが定める発がん性基準で喫煙やアスベストと同レベルである「グループ1(ヒトに対する発がん性が認められる化学物質、混合物、環境)」に分類。また、牛や豚、羊、牛、ヤギなどの赤身の肉については「グループ2(ヒトに対する発がん性がおそらくある化学物質、混合物、環境)」に分類しています。

●大学教授も赤身肉とがん発生の関係について反論

 食肉業界はこれに反発しているわけですが、利害関係がありますので当然といえば当然です。陰謀論者らによって、「加工肉の発言否定は食肉業界の陰謀だ」といった反発を受けかねません。

(実際、陰謀論が出てきて、ハム業界の陰謀で加工肉の発がん性うやむや 亜硝酸ナトリウムという添加物が悪いという主張で書きました。ネトウヨ的な陰謀論なども書いている方が、ハム業界の陰謀だと主張しています。2019/07/03追記)
食肉と健康における助言を行うMeat Advisory Panelのメンバーで、カーディフ大学の教授でもあるRobert Pickard氏は「我々が理解していることは、赤身の肉を控えることは、がんのリスクを下げる有効な戦略とはなっていないということです。がんを避ける最も有効な方法は、喫煙をやめ、標準的な体重を保って過度のアルコール摂取を避けることです」と、赤身肉とがん発生の関係を否定するコメントを発表しています。

 ただ、上記のGIGAZINEの記述もちょっと誤解を招きそうですね。上記の発言を見る限り、Pickard教授は赤身肉とがん発生の関係を否定しているというよりは、大きな影響ではないといった感じの説明。肉ががん発生を誘発するとしても小さな影響であり、喫煙などもっと重要な影響があるものが多いということだと思われます。

 大抵「~は身体に悪い」と言う人は、こういった「量」の観念が欠落しており、僅かでも可能性があれば、「~は食べるな」と不安を煽ってきます。


●肉が喫煙と同リスクってこと?計算してみると…

 以下は私と同じで素人のものなので信頼性は問題がありますが、喫煙と同リスクとは言えないのではないか?というものです。
スタートアップ「Particle」のCEOであるZach Supalla氏は「30分ほどググった」結論として、IARCの数字の意味に反論しています。

Supalla氏は、IARCが発表した以下の2点について検証を行っています。

・赤身肉を食べることによる影響:1日あたり100グラムの摂取で結腸直腸がんのリスクが17%増大(平均的な1日の摂取量は50~100グラム)
・加工肉を食べることによる影響:1日あたり50グラムの摂取で結腸直腸がんのリスクが18%増大

アメリカの国立がん研究所の統計によると、アメリカで結腸直腸がんに罹患する人の数は、男女10万人あたり42.4人という数字が明らかになっており、これを割合になおすと「0.042%」となります。ここで、実際に赤身の肉100グラムと加工肉50グラムを毎日食べることで発生リスクが予測どおり上がったとすると、先述の発生率は0.042×1.17×1.18=0.058%ということになります。

一方、加工肉と同レベルと認定されている喫煙をこれにあてはめると、全く異なる様子が明らかになるとしています。非喫煙者の肺がん罹患率と、喫煙者の罹患率を比較すると、男性は非喫煙者が0.020%なのに対して喫煙者は1.259%、女性は非喫煙者が0.025%なのに対して喫煙者は1.309%と、加工肉による影響とは比べものにならないほど強い影響があると指摘し、IARCが喫煙と加工肉を同レベルに分類したことに対する反証を行いました。

●加工肉の発がん性リスク、喫煙やアスベストと同じは嘘

 これ、上記の方も誤解しているんですが、そもそもWHOも喫煙と加工肉や赤身肉が同程度のリスクとは主張していません。一般の人の多くが誤解している感じですし、デマのごとく間違った報道をしちゃっているところもありますけど、これは完全に間違いです。

 私はあまり断定的に書かないようにしています。それなのになぜ今回は断言できるか?と言うと、そもそもIARC自身が喫煙と同じリスクであることを否定しているためです。

 以下は最初の朝日新聞記事での掲載内容。IARCのグループ分けって誤解されやすいんですが、発がん性があるかないかだけで、危険度の高さは示していないんですよね。前述したような「量」に関する概念がないのです。
加工肉は、IARCの発がん性の基準で、喫煙やアスベストなどと同じ「グループ1」に分類されたが、IARCは「それらが同程度に危険というわけではない。IARCの分類は、リスクの度合いを評価しているというよりは、がんの原因となるものについての科学的証拠の強さを示している」と説明している。

●IARCの研究者「加工肉を食べることで発がんリスクが高まる可能性は低い」

 また、GIGAZINEでも、IARCの専門研究プログラム(Monographs Programme)を統括するKurt Straif博士が以下のような見解を示していることを伝えていました。

「個人に対していえば、加工肉を食べることで発がんリスクが高まる可能性は低い状態にとどまります。しかし、消費する肉の量によってリスクは増大します。世界中で加工肉を食べる人が多く存在する状況を鑑みると、人類全体レベルでの発がん性への影響は公衆衛生における重要な事項といえます」


●最初からバランス良く食べていたら加工肉50g・赤身肉100gはあり得ない

 ただし、最初に書いたように、加工肉だけで1日50gは多いと思います。一般的に推奨されているタンパク質の摂取は、肉・魚・卵・大豆などをバランス良く食べましょうというものです。肉だけ食べたらいけないのはもちろん、魚だけ食べてもいけないのです。なので、一つの食品の摂取が多いということは、他の食品の摂取量が少ない可能性が高いと言えます。

 上記のうち肉と魚については、それぞれ1日60g程度が目安とされることが多いです。私も肉を50~60g、魚を60~70gに調整して食べています。また、肉や魚にしても、なるべく同じ種類ばかり続けて食べないようにバランスを取っています。

 加工肉が1日50g食べている人の場合、他の肉を一切食べていないという人は稀で、他の肉も食べている可能性が高いです。この場合、要するに肉が多すぎということになってしまいます。また、加工肉のみ1日50g食べているという場合でも、やはり同じような肉ばかり食べているということで、望ましくありません。食べる肉もバリエーションを増やした方が良いです。

 先のところでは、赤身肉を1日100gという数字もありましたが、これは単独でも1日の摂取量の目安をオーバーしてしまっています。当然食べ過ぎです。

 ですので、食べ過ぎたとしても発がん性リスクはそこまで大きなものではないが、そもそもバランスが悪いので肉ばかり食べ過ぎないようにしましょう…という非常に何てことのない当たり前の結論にたどり着きます。

 マスコミもこうやって書けばいいのに誤解を招くような言い方をするから混乱を招きますし、WHOの発表も配慮が足りませんでした。マスコミが理解できず間違った報道をすることくらいわかりそうなものなんですが…。


●加工肉は喫煙だけでなく、太陽光とも同じ評価グループ?

2015/11/20:日本人の平均的な肉の摂取量なら発がん性リスク小 国立がん研究センターも見解発表で使った記事からもう一つ。これで最後です。

 以前も書いたように、IARCの分類は危険性ではなく、発がん性があるか?ありそうか?なさそうか?といったところで分けています。ですので、リスクが高いものと低いものがごちゃ混ぜになっています。

 で、それを理解していないマスコミが「加工肉は喫煙と同じ」とやったわけですから、混乱が起きました。私はこれについて、太陽光も同じグループだよ…と書こうかと思ったんですが、理解の仕方がそれで良いのか自信がなく実際には書きませんでした。ただ、食肉加工会社などによるロビー団体「北米食肉研究所(NAMI)」が、この太陽光について言及していました。
【健百】ハムやソーセージの「発がん性」、日本人は心配なし? | あなたの健康百科 2015年11月04日 17:00 公開

これまでIARCが加工肉と同じ「発がん性がある(グループ1)」と分類しているのは、呼吸、太陽光、ワインが挙げられ、赤身肉と同じ「発がん性がおそらくある(グループ2A)」も、美容師、交代制の仕事があると主張。

●IARCの発がん性の分類、実はすごく大雑把で4種類のみ

 このリストは、IARC発がん性リスク一覧 - Wikipedia(最終更新 2015年10月27日 (火) 05:09)で見ることができます。分類は以下の4種類みたいですね。

グループ1(ヒトに対する発癌性が認められる (Carcinogenic)、化学物質、混合物、環境)
グループ2(ヒトに対する発癌性があると考えられる、化学物質、混合物、環境)
  グループ2A(ヒトに対する発癌性がおそらくある (Probably Carcinogenic)、化学物質、混合物、環境)
  グループ2B(ヒトに対する発癌性が疑われる (Possibly Carcinogenic)、化学物質、混合物、環境)
グループ3(ヒトに対する発癌性が分類できない (Not Classifiable as to its Carcinogenic)、化学物質、混合物、環境)
グループ4(ヒトに対する発癌性がおそらくない (Probably Not Carcinogenic)、化学物質、混合物、環境)

 「ヒトに対する発癌性がおそらくない」はえらく少なく、カプロラクタムなるものしかありませんでした。ただ、このグループは優先順位が低いので、そもそも可能性が低いと見られるものは調べていないためかもしれません。


●「ヒトに対する発癌性が認められる」太陽光

 今回、加工肉が加わったのは、「ヒトに対する発癌性が認められる」のグループ1です。ここの「環境」グループに確かに喫煙があります。それ自体は本当なのですが、人々の理解の仕方が間違っていたという話です。

受動的喫煙環境 (Involuntary smoking)
タバコの喫煙 (Tobacco smoking)

 私が書くかどうか迷ったという太陽光は、同じグループ1の「化学物質」の項目にあります。同じ紫外線関係ですと、日焼けマシンもそうですね。

太陽光曝露 (Solar radiation) 紫外線による
紫外線を発する日焼けマシーン (UV-emitting tanning devices)

 そういや、この前2ちゃんねらーが、プールで子供の日焼けを心配する親を盛んに馬鹿にしていました。ただ、日焼けにリスクがあるのは上記の通り間違いありません。これも加工肉同様に程度問題であり、外出を控える必要はないものの、過度に日焼けをするのは避けた方が良いでしょう。

 なお、これまたお肉と同様、光を浴びることにも利点があります。例えば、「骨の形成」がそうです。メリット・デメリット両方あり、ほどほどの範囲に収めましょうというのは、様々なもので言えること。単純に良いもの・悪いものと決められないんですね。


●アルコール飲料は全部発がん性アリ

 北米食肉研究所が言及していた3つのうち、太陽光は知っていたものでしたが、呼吸とワインは記憶になかったです。で、さっきのWikipediaのページで検索したものの、出てきません。たぶん空気中の物質とか、ワインに含まれている物質が指定されているってことなんでしょうが…。

 面倒くさいなーと思いつつざっと見ると、ワインというのは「ワインが」ではなく、もっと広い「アルコール飲料が」という話かもしれません。

アルコール飲料 (Alcoholic beverages)

 じゃあ、日本酒だろうが焼酎だろうがビールだろうが、発がん性があるってことですね。まあ、普通にあまり飲み過ぎない方が良いものです。やはりほどほどにしておきましょう。


●発がん性が少しあるだけでダメなら「呼吸」もしてはいけない?

 残りの呼吸は結局わかりませんでした。大気中に含まれている可能性があるものですと、有機化合物系全般かな?と思います。自動車の排気ガスや工場由来のものが多いと考えられそうです。

 ただ、これらを「呼吸」って言っちゃうのはさすがに強引ですね。「呼吸」も同じグループ1という根拠については、怪しいかもしれません。

 とりあえず、前述の通り、同じグループ1だから危険度がいっしょというのは完全に間違っていますので、そこだけは必ず覚えておいてください。


【本文中でリンクした投稿】
  ■ハム業界の陰謀で加工肉の発がん性うやむや 亜硝酸ナトリウムという添加物が悪いという主張

【関連投稿】
  ■魚ばかり食べることの健康被害 「肉をやめて魚を食べよう」の危険性
  ■肉と魚と野菜は、一日何グラム食べればいい?たんぱく質の必要量など
  ■ジョブズ役の俳優、役作りでフルータリアンになり膵臓をダメにする
  ■ベジタリアンは不健康で不健全 心臓発作,がん,アレルギー,うつ病などが多い
  ■ベジタリアンの肉食批判「畜産が飢餓を助長」「食糧不足」は嘘?
  ■食べ物を生産するエネルギー効率の比較 実は肉より野菜が悪い
  ■食べ物・飲み物・嗜好品についての投稿まとめ

Appendix

広告

ブログ内 ウェブ全体
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示









Appendix

最新投稿

広告

定番記事

世界一スポーツ選手の平均年収が高いのはサッカーでも野球でもない
チャッカマンは商標・商品名 じゃあ正式名称・一般名称は何?
ジャムおじさんの本名は?若い頃の名前は?バタコさんとの関係は?
ワタミの宅食はブラックじゃなくて超ホワイト?週5月収10万円
朝日あげの播磨屋、右翼疑惑を否定 むしろ右翼に睨まれている?
レーシック難民は嘘くさいしデマ?アメリカの調査では驚きの結果に
赤ピーマンと赤黄色オレンジのパプリカの緑黄色野菜・淡色野菜の分類
アマゾンロッカーってそんなにすごい?日本のコンビニ受け取りは?
就職率100%国際教養大(AIU)の悪い評判 企業は「使いにくい」
ミント・ハッカでゴキブリ対策のはずがシバンムシ大発生 名前の由来はかっこいい「死番虫」
移動スーパーの何がすごいのかわからない 「とくし丸」は全国で約100台
ビジネスの棲み分け・差別化の具体例 異業種対策には棲み分けがおすすめ
主な緑黄色野菜一覧 と 実は緑黄色野菜じゃない淡色野菜の種類
タコイカはタコ?イカ?イカの足の数10本・タコの足8本は本当か?
トンネルのシールドマシンは使い捨て…自らの墓穴を掘っている?
ユリゲラーのポケモンユンゲラー裁判、任天堂が勝てた意外な理由
好待遇・高待遇・厚待遇…正しいのはどれ?間違っているのはどれ?
コメダ珈琲は外資系(韓国系)ファンドが買収したって本当? MBKパートナーズとは?
大塚家具がやばい 転職社員を通報、「匠大塚はすぐ倒産」とネガキャン
不人気予想を覆したアメリカのドラえもん、人気の意外な理由は?

ランダムリンク
厳選200記事からランダムで









アーカイブ

説明

書いた人:千柿キロ(管理人)
サイト説明
ハンドルネームの由来

FC2カウンター

2010年3月から
それ以前が不明の理由