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部下を叱れないのはダメ上司でなく、叱る方がダメ 研究で判明のより良い方法とは?


 似たような話は何度もやっているのですが、未だに子どもや部下などを「叱る」という話の方が好まれて「美談」とされる傾向があります。なので、しつこくやっておこうと、"上司は部下の叱り方を調べるより思いやりを持て 研究論文が示唆"というタイトルで書いていました。その後、部下を叱れない「ダメ上司」が急増していると主張している人の話を見つけたので、冒頭に追加。全体のタイトルも変更しています。

2022/10/06まとめ:
●両親がケンカばかりしている家庭の子…まずこの時点で問題がある 【NEW】
●褒められなかった子が現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは? 【NEW】
●「勉強頑張りなさい」も「子供のためを思って説教」もダメな理由 【NEW】
●簡単にやる気を引き出せるのに…親も上司も逆にやる気を削ぐだけ 【NEW】


【クイズ】変化に関することわざとして実際にあるものはどれでしょう?

(1)男心と秋の空
(2)女心と春の風
(3)妻の心と川の流れは一夜に変わる

『 犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉 』(犯罪心理学者・出口保行)




●問題を是正するには「叱る」が必要と主張…上司にもそれできる?

2017/03/28:部下を叱れない「ダメ上司」が急増している理由 | ダイヤモンド・オンライン(2017.2.21)という記事があって、ダメそうだなと思って読んでみたら、やっぱり研究の裏付けなしの話。書いているのは、学者や専門家ですらなくコンサルタントでした。安藤広大・識学代表取締役社長のお話です。

 後述するように、研究によって、「叱る」は全く効果がないわけではないものの、あまり良い効果はなく、相対的に見て、「褒める」あるいは「認める」といった別の行為の方が望ましいことがわかっています。このことから、部下を叱れないのはダメ上司でなく、叱る方がダメ上司だと言えるでしょう。

 ただ、研究うんぬん以前に、記事における「部下を叱る必要がある」という理屈が、そもそもたいへん脆弱。作者の主張は、「叱る」とは「目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる」と辞書(デジタル大辞泉)に書いてあるから、やはり、組織を運営していくにあたっては、「よくない」ことを部下がしている時には「叱る」必要はありそうだ、といったもの。全然、根拠がありません。

 そもそも、組織を運営していく中で、「よくない」ことをしているのは、目下のものだけだとは限りません。目下のものだけが悪いことをするというのは、根拠のない前提で、現実ではあり得ないとわかりますよね。上司にあたる人が良くないことをしていることも、全く珍しいことではないのです。

 そして、上司にあたる人が悪いことをしている場合に、あなたは上司に対して「叱る」にあたるような行為を取りませんよね?という話。本当に悪いことを是正する手段が「叱る」しかないなら、上司に対しても「叱る」のでしょうが、普通そんなことはしません。おそらく失礼にならないように気を使って、是正に取り組むはずです。

 先程の辞書では、「目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる」と「目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる」との説明でした。「「目下の者」にしかやらないことと定義されていましたが、目上の人にできないような失礼なことを目下にやるというのは、その上司の傲慢さ出ている行為だと言えるでしょう。


●部下を叱れないのはダメ上司でなく、叱る方がダメ上司

 欧米でも二流企業は日本と同じなんじゃないかと思いますが、グローバル企業では、叱る上司は失格だとする記事を以前読みました。なぜか?と言うと、欧米の場合は叱ることによって部下が簡単に会社を去って、別の会社に行ってしまうため。叱ることで人材流出が起きて困るので、経営者的には叱る上司の評価を下げなくてはいけません。

 この会社を去る部下の動機は意外に合理的です。叱られた部下は、まず「上司に評価されていない」と判断。そして、上司に評価されていないことが将来にも悪い影響を及ぼすと考えるため、評価される別の会社へと転職してしまうとのこと。おそらく上司の評価が給与に影響する場合は、なおさらそうなるでしょう。合理的な考え方です。

 逆に言えば、日本の場合は、転職文化のなさが、「叱る」のような上司の甘えた行動を許しているのかもしれません。「叱る」とはやや異なりますが、体罰が野球と比べてサッカーに少ないのは、所属チームの選択肢が多いからではないかと言われていました。選択肢がないと、ダメな組織は淘汰されず温存されてしまうと考えられます。


●「きみのため」と言って叱る意味不明の行動、全く部下に伝わらず

 また、ある外国人が仕事を辞めるときに、何かにつけてケチをつけていた日本人の同僚に「親身に思っていた」みたいなことを言われて唖然とした…という話も聞いたことがあります。気持ちと行動が正反対ですから、外国人には理解できない話で、不合理だということがわかる逸話でしょう。

 このケースでは「日本文化を理解しない外国人が悪い」と思うかもしれませんが、先の記事の作者は、部下を叱れない「ダメ上司」が急増している理由は、上司が「部下からの“評価(評判)”が下がるのが怖い」からだとしていました。つまり、最近の日本人の部下たちも叱られることに納得していないため、上司に悪い評価をつけやすいということです。外国人だけの話じゃないんですね。

 これもまた「上司の気持ちを理解しない部下の方が悪い」と主張するかもしれませんけど、それがまた上司の甘えだと言えます。就職希望の学生にコミュニケーション能力なるものを求めておきながら、自分たちはコミュニケーションを取るのに完全に失敗しているわけですからね。

 部下にコミュニケーション能力を求めながら自分はコミュニケーションを放棄しているのですから、「お前らはオレがわかるように話をするように努力しろ。でも、オレはわかりやすく言う努力はしないから、お前らはオレの言葉を理解できるように努力しろ」ということ。傲慢以外のなにものでもありません。

 そもそも人にわかりやすく説明できないというのは、ビジネスマンとしても普通に無能ですよ。顧客や上層部を説得する必要があるときに、どうするんですか?という話です。上司という立場を利用して強引に物事を進めるのではなく、論理的に説明しながら納得させていく方が良いビジネスマンになりやすいでしょう。


●上司は部下の叱り方を調べるより思いやりを持て 研究論文が示唆

2015/10/29:ここから最初の投稿時の話。使用した記事は、「褒める」ではなく、「思いやり」という話をしていました。子どもの教育では「褒める」より「認める」の方が良いとは言われていたものの、ビジネス関係では「褒める」の先の話はあまり出てきたことがありませんでした。これはちょっと目新しいです。

 あと、今回の記事部下への「思いやり」は「叱責」に勝る | HBR.ORG翻訳リーダーシップ記事|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー(2015年09月28日 エマ・セッパラ  スタンフォード大学の心理学研究員)では、これでもか!という感じで、論文を並べているものの、全部紹介していたらたいへんなので、適当に選んでいきます。

<ミスをした部下に対する従来の対処法は、何らかの方法で叱責することである。何らかの罰によって教訓を与えることが本人のためになる、というのがその意図だ。叱責によって不満を表明すれば、上司自身のストレスや怒りが和らぐという効果もある。さらに、叱責は他のチームメンバーの気を引き締めることにもなり、今後の失敗を避けることにつながるという意義もあるのだろう>

 ただし、叱ることが良いという意味ではなく、別の方法と比較してみようという話。「思いやりと関心を用いる」という表現がされていましたが、そういう上司もいるんですね。そして、さまざまな研究では実は、この思いやりを持って対応するほうがより好ましい結果となることが示されているといいます。


●思いやりは上司の尊敬を呼び、叱責は忠誠心を損なう

 ニューヨーク大学のジョナサン・ハイトさんらの研究によれば、部下が上司を尊敬しその思いやりに心を動かされていると、それだけ上司への忠誠心が高くな"そうです。では、叱責はどうでしょうか? 「あなたのためを思って怒っているんだよ」というのは、先に書いたようにむしろ美談とされることが多いです。私はそんなものクソ喰らえで、普通に頭に来ますけどね。

 論文では「度を越して」ではあったものの、叱責はやはり得策ではないというものがありました。ペンシルバニア大学ウォートン・スクールのアダム・グラント教授は、"部下に度を越して恥をかかせたり叱責したりすれば、自分への災いとして跳ね返ってくる"としているそうです。

 叱責した後には、「忠誠心の一部が失われている可能性がある」というのは、そりゃそうだろうという当たり前すぎる話だ思うのですが、前述の通り、今の日本ではまだ全然当たり前ではありません。叱ることが良いことだと思っている人が多いわけです。


●共感してくれるリーダーに対しては、信頼感が強まる

 私は先程の子どもに関して「認める」という言葉を使いましたが、「共感」というわりと近いイメージのワードも、記事の中では出てきました。

<ワシントン大学のカート・ダークスらの研究によれば、人々はリーダーの信頼性に対して非常に敏感だが、思いやりを示されるとリーダーへの信頼感を強める。簡単に言えば、共感を示してくれる上司に対して人の脳はよりポジティブに反応するのであり、これはケース・ウェスタン・リザーブ大学のリチャード・ボヤツィスらによる脳神経画像の研究によって実証されている>


●リーダーの怒りは部下のストレスになり、生産性も落ちる

 スタンフォード大学の脳神経外科医ジェームズ・ドーティ博士は、以下のように説明しています。

「恐れや不安に満ち信頼感の欠如した環境では、人々は自分を閉ざしてしまう。神経科学によれば、人間は恐れと不安を抱くと脅威に対する反応が起動し、認知制御が悪影響を受ける。その結果、生産性と創造性が損なわれてしまう」

 リーダーの怒りが部下のストレスになるというのは、これもまた当たり前でしょという話なのですが、何度も言うように世の中では理解されていません。逆に、"安全だと感じている時には脳のストレス反応が弱いことが、脳撮像研究でわかっている"という話もありました。


●怒っている人は馬鹿っぽく見える…というのは本当?日本だと…

 以前書いた中で出た「部下を叱る上司は皆馬鹿である」は、ジョーク的なものであり、研究的な裏付けはありませんでした。ただ、怒りを爆発させる上司というのは、部下から見ると賢くないように見えるみたいですね。

 "研究によれば、リーダーが怒りというネガティブな感情を露わにすると、部下は実際にはその能力を低く見る"そうです。そういや、60歳の老人と6歳児はキレやすさがいっしょなんて話もありました。感情のコントロールができない困った大人のようにも感じられます。

 そして、逆に"人当たりがよく、厳しさではなく温かさを感じさせることはリーダーにとって明白な利点となることが、ハーバード・ビジネススクールのエイミー・カディらによって示されている"そうです。

 ただ、叱られた部下から見るとそう見えるだけで他の人は違うのか、日本人ではまるっきり考え方が異なるのか、やっぱり厳しく叱る上司の方が、日本だと幹部からは評価されているように感じます。残念ながら、なかなか状況は変わっていかないでしょうね。


●いつもひどい上司よりもたまにひどい上司のほうが悪い?

2021/02/22:ここから、「褒めるだけでなくたまに叱るのも大事は根拠なし?割合より一貫性が大事」や「褒めるだけでなくたまに叱る(怒る)のも大事というのは本当か?」というタイトルで書いていた投稿。内容的に近いだろうということで、こちらにまとめました。

2016/5/4:研究・調査を見ていると、そもそも叱る効果はそれほど大きくないようです。そうなると、わざわざ叱る必要はないでしょう。褒める方が良いのです。ただ、最近ちょくちょく見る「褒めるよりさらに認めることが大事」という系統の研究に私は着目しています。このことからすると、あまり良くないタイトルだと思う[FT]ひどい上司は一貫してひどくあれ(2016/3/29 6:30 By Lucy Kellaway 2016年3月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)というものがありました。

 ひどい上司というのはもちろん良いわけがありません。ただ、この記事の内容でわかるのは、一貫してひどい上司は、たまに優しい上司よりはまだマシだということ。要するに怒ったり優しかったり安定しない上司というのが、すべてのタイプの中で最悪だということですね。

 以下は、ミシガン州立大学のある研究論文の内容だそうです。この研究結果でも、叱るより褒める方が良いことわかるものであり、叱り続ける上司が良いということは示していません。「ひどい上司は一貫してひどくあれ」は本当ひどいタイトルでしたね。

<研究者たちは一連の実験を行い、学生を3つのグループに分け、全員に仕事を与えた。1つ目のグループは絶えず褒められた。2つ目のグループは絶えずひどい扱いを受け、3つ目のグループは2つが混ざった対応を受けた。1つ目のグループは全くストレスを感じず、2つ目のグループはややストレスを感じた。そして3つ目――ムチを食らうか、アメをもらうか分からなかったグループ――が圧倒的に大きなストレスを感じ、一番不幸だった>


●褒めるだけでなくたまに叱る(怒る)のも大事というのは本当か?

 記事では、「一貫性が重要だというこの考えは、リーダーシップに関する文献のどこにも見つからない。創造性と破壊を尊ぶ世界では、予測可能性は退屈で魅力がないと考えられている」としていました。ただ、確かに論文にはなっていないのかもしれませんが、データを重視するグーグルが過去にこれを証明しています。できる上司は意外な行動をしない、とグーグル 学歴・IQも無関係で書いていました。

 また、リーダーの資質はただ1つ リーダーにしてはいけない人の条件は3つで書いたように、これまた論文ではないものの、当時も書いたようにあのドラッカーが一貫性の重要性を説いていたんですよ。 …とここまで書いて記事の続きを見たら、フィナンシャル・タイムズもグーグルの件については触れていましたわ。

<私が見つけられた限りでは唯一、予測可能性を明確に大事にしている会社がグーグルだ。グーグルはデータを集めることに喜びを感じ、絶えずリーダー全員を評価しているために、一貫性が最も重要な資質の一つだと知っている。上司に一貫性がないとき、人は最善の成果を出すことができないのだ>


●退屈が実は良い?人はそもそも変化することにストレスを感じる

 記事では、さらにこれを広げて、労働そのものに一貫性が大事なのではないか?としていました。これは科学的な根拠がないものですけど、人間が変化を嫌う生き物であることは経験的に理解できます。記事では、職場で予測可能性が重要なのは、上司との関係だけでなく、ほぼすべての関係において重要だとしていました。

 毎日が変化に富む仕事を持ちたいとよく人は言います。ただ、現実にそのようなことを望んでいる証拠はほとんどないとのこと。むしろ米国での複数の研究は、勤務時間が予想できない労働者は、規則的な予定に沿って働く人よりも大きなストレスを感じ、満足度が低いことを示しているといいます。これは一応科学的根拠でしょうか。

 …最後にクイズの回答。「女心と秋の空」が有名ですが、「男心と秋の空」が先にあって、それを変えたものみたいです。なんで女性バージョンばっかりゆうめいになっちゃっったんでしょうね。ただ、「男心と秋の空」の方は範囲が狭く、愛情の変化だけを普通言うようです。


【クイズ】変化に関することわざとして実際にあるものはどれでしょう?

(1)男心と秋の空
(2)女心と春の風
(3)妻の心と川の流れは一夜に変わる

【答え】(1)男心と秋の空


 他の選択肢は適当に作ったので実在したらすみません。「(2)女心と春の風」は「女心と冬の風は変わりやすい」から、「(3)妻の心と川の流れは一夜に変わる」は「男の心と川の瀬は一夜に変わる」から改変したものでした。なお、フィナンシャル・タイムズでは、人というのは一貫性ある行動を取ることがすごく苦手だともしていました。このように気持ちの変化に関する慣用句が豊富であることも、その現れかもしれません。

●両親がケンカばかりしている家庭の子…まずこの時点で問題がある

2022/10/06まとめ:個別事例をベースにした話は科学的根拠とはならないので注意が必要なのですが、<母親に「頑張りなさい」と言われ続けて育った男性が、現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは>(22/10/6(木) 6:12配信 文春オンライン)で出てきた話は、過去に紹介してきた様々な指摘と一致する内容でしたのであちこちに追記しています。

 これは1万人の犯罪者を心理分析してきた犯罪心理学者・出口保行さんの著書『 犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉 』から抜粋した宣伝記事だったようです。この「1万人の犯罪者を心理分析してきた犯罪心理学者」などといった宣伝文句も ニセ科学的なものでも使われるものなので、一般的には注意が必要ですけどね。

 で、記事で出ていた事例の話。これは、ケンカばかりしていた両親が離婚した「ナオト」の事例です。父は営業成績が上がらず給与が低かったので、母親がしょっちゅうなじっていたそうです。「お父さんみたいになっちゃダメだからね」と繰り返し言われたともいいます。まず、この時点で問題ですね。両親が喧嘩する様子を子供に見せるというのはよくないと言われています。

<(引用者注:両親の離婚)以来、ナオトは落ち込むことが多くなった。もともと勉強も遊びも集中することがあまりない。(中略)「そんなんじゃお父さんみたいになるよ。あんなふうになったらおしまいよ」そう言って母親は「勉強頑張りなさい」と繰り返すのだった>
https://news.yahoo.co.jp/articles/2bd5b3114a744b7e44c64e9b1459de1ab814f813


●褒められなかった子が現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは?

 しかし、小学6年生の担任はいい先生で、「ちょっとずつでいいんだよ」と努力を認めてくれます。努力が結果に結びつくとは限らないというのが現実の残酷さですが、このときは結果も出ました。どうしても2しかとれなかった国語が3になったのです。ところが、母親は、「3で喜んじゃいけない」「小学生のうちに国語ができるようになっておかないと中学で苦しむよ」とこの結果を褒めなかったのです。

<内心はほっとしているのだが、もっと頑張ってほしいという気持ちで厳しくあたるのだった。ナオトは心底がっかりした。頑張っても評価してもらえないんだと思い、それ以来コツコツ努力することをやめてしまった。
 その後、高校はなんとか卒業したものの、何に対しても前向きな気持ちが起きない。先生に言われるままに機械メーカーに就職したが、3か月で離職。家にひきこもってゲームをする毎日だ。
 母親は「だから勉強しろと言ってきたのに」「どうしようもないクズになった」などと叱責ばかりする>

 記事は、<母親に「頑張りなさい」と言われ続けて育った男性が、現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは>というタイトルでした。この手を染めてしまったモノとは「大麻」。ナオトは似たような状況の中学時代のゲーム仲間と再会して、「外国じゃ普通だし、副作用もないし。他はともかく、大麻は大丈夫」とハマってしまったそうです。

 話がそれますが、これは当然大麻にハマるのは良くないこと…という理解のもとで使われています。「そりゃそうだろ」と思うかもしれませんが、たぶん大麻推進派の方はこれを読んでお怒りでしょう。彼らはまさに「外国じゃ普通だし、副作用もないし。他はともかく、大麻は大丈夫」という主張。むしろ大麻を解禁し、本当に危険な薬物に手を出させないようにすることで、日本は良くなるといいます。


●「勉強頑張りなさい」も「子供のためを思って説教」もダメな理由

 大麻の話はいいとして、犯罪心理学者・出口保行さんの解説です。「頑張って」は、一般的に応援の意味で使われる言葉ではあるものの、実際には「応援してもらっている」とは感じないどころか、否定的な言葉としてとらえられたことを指摘。父親に対する悪口とセットであったことも災いしたといいます。

<そもそもなぜ被害感や疎外感が強くなったかといえば、親子間における日ごろのコミュニケーションに問題があるわけです。ナオトの場合、父親のことはさておいても、「あなたのことを大事に思っている」ということが伝われば、また違った受け止め方をしたでしょう>

 非行少年の親でも、別に暴言を吐いたこともないし、いい言葉をたくさん言っていると思っている人はいるとのこと。実際、自分はいい親だと思っている人も多いのでしょう。ただし、大事なのは親の思いではなく、子がどう受け止めているかが大事だとの指摘。「子供のためだから」という親の言い分を認めてはいけないんでしょうね。

<たとえば親が子どもに対して説教をしているとき。話していることは非の打ちどころのない正論かもしれません。丁寧な言葉を使っているかもしれません。しかし、親からすれば「いいことを言った」と思っていても、子どもからすると「何もわかってない」と思うことはよくあるわけです。
 少年鑑別所での面会の様子などを見ていると、それが如実(にょじつ)にわかります。「親はいいことを言っているが、子どもはまったく信用していないな」と思います。
 そういう親は「頑張れって応援してきたのに、うちの子は全然こたえようとしなかった」と言います。子どもは応援だと受け止められなかったのです。同じ言葉でも、受け止め方は同じではありません。180度違うことだってあるのです。そこに気づかなければなりません>


●簡単にやる気を引き出せるのに…親も上司も逆にやる気を削ぐだけ

 上記はビジネスの上司先輩でもあるあるだな~と思いました。すると、その次にさらに「ビジネスと同じ」という話が出てきてびっくり。<意欲=やる気は自分の内側から出てくるもので、他者が植えつけることはできません。ただ、意欲を促すことはできます。心理学ではこれを「動機づけ」といいます>という指摘でした。

<小学校の担任の先生は、ナオトの努力を褒めて勉強への意欲を促進することができていました。ところが、母親は褒めるどころか逆のことをしました。内心はほっとしているのに、「これくらいで満足するな」「もっと頑張れ」とたきつけるのです。これではせっかく芽生えたやる気もそがれてしまうというもの>

 もともとやる気がないわけではなく、行動しても結果が出ないことを何度も経験するうちに、やる気を失い行動しない状態を「学習性無力感」と言うとのこと。心理学者マーティン・セリグマンが1967年に提唱した概念で、これは実験的な裏付けがあるものです。こういう研究の話があるのは良い書籍ですね。以下のような実験の話が載っていました。

<犬を2つのグループに分け、どちらも電気ショックが流れる部屋に入れました。Aグループは、スイッチを押せば電気ショックを止めることができます。Bグループは何をしても止めることができません。
 これを経験したあとに、両グループを低い壁で囲まれた部屋に入れました。この部屋にはやはり電気ショックが流れるのですが、壁を飛び越えればそれを避けることができます。Aグループの犬は壁を飛び越えて電気ショックから逃れることができました。しかし、Bグループの犬は、壁を飛び越えれば逃げられるにもかかわらず、そのまま電気ショックの部屋にい続けました。
 つまり、自分が何をしても電気ショックを止められないと学習した犬は、逃げられる環境になっても行動しなかったわけです。「何をしてもムダだ」とあきらめてしまったのです>

 学習性無力感は自由な環境でこそ起こるといいます。結果が出ないことを繰り返したせいであきらめてしまうのです。学習性無力感に陥らないためには、いわゆるプロセスを褒めること。結果がどうであれ「やってみよう」と思ったこと、そして少しでも行動に移したことを褒めるのです。これはよく言われています。

<本人は頑張っているつもりだけれど、やる気がないように見えることもあります。(中略)そういう子に対して「やる気出せ」「頑張れ」と言っても逆効果です。「うるせぇ!」と、反抗し努力をやめてしまうでしょう。(中略)
「別に何もやる気ない。努力なんかしたってムダだし」と冷めた態度の非行少年に対しても、ちょっとした行動を見つけてプロセスを褒めるうちにバーッと喋(しゃべ)るようになるということがよくあります。
 (中略)少年鑑別所にいる、ひねくれ度MAXのような非行少年でさえ素直に戻るのですから。やる気がなさそうだったり反抗的だったりするからといって、親やまわりの大人がすぐにあきらめるようではいけません>

『 犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉 』(犯罪心理学者・出口保行)




【本文中でリンクした投稿】
  ■部下を叱る上司は皆馬鹿である 最低でも3回褒める・1回怒るのバランスが必要
  ■60歳の老人と6歳児はキレやすさがいっしょ
  ■できる上司は意外な行動をしない、とグーグル 学歴・IQも無関係
  ■リーダーの資質はただ1つ リーダーにしてはいけない人の条件は3つ

【関連投稿】
  ■「褒めて伸ばす」の絶大な威力 青少年犯罪が半減した警察署の試み
  ■部下を叱るのもパワハラ?上司という立場に甘えた日本の管理職ら
  ■ビジネス・仕事・就活・経済についての投稿まとめ

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