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新種のヒト属「ホモ・ナレディ」発見の発表は大嘘か?証拠に乏しく批判多い研究


2015/11/3:
●新種のヒト属「ホモ・ナレディ」を発見、その意味は「星の人」
●新種のヒト属発見の発表は大嘘か?証拠に乏しく批判多い研究
●変わったところで発見されたホモ・ナレディ…その説明も怪しい
●売名行為のために目立つ発表?ただ反論が出るのは健全な証拠
●今回の発表で真に画期的なのは、情報を共有しようという試み?
2019/07/17:
●想定と違った!ホモ・ナレディの生きた年代が判明して驚き
●ゴリラがたいまつを扱い、石器をつくると考えられるのか?


●新種のヒト属「ホモ・ナレディ」を発見、その意味は「星の人」

2015/11/3:うちでは書いていませんでしたが、ヒト属(ホモ属)の新種とみられる人骨化石が発見されたことが話題になっていました。ホモ・ナレディ(Homo naledi)と呼ばれています。

 ニコニコ動画のニュースでも人気になっていたので、「へー、こういう真面目な話にも興味あるんだ、意外」と一瞬見直したのですが、「ホモなレディ」と連想して、「ホモなのかレズなのかはっきりしろ」みたいな反応ばかり。ニコニコユーザーって、本物の同性愛者が嫌な思いする人がいるかもしれないような意味において「ホモの話が好き」なんですよね。見直して損しました。

 ニコニコ動画の話は良いとして、真面目な話へ。この人骨化石は、南アフリカ・ヨハネスブルク郊外のライジング・スター洞窟で発見されました。南アフリカ・ウィットウォーターズランド大学の古人類学者リー・バーガーさんらが、2015年9月10日付け学術誌「eLife」に発表しています。

 発見された洞窟のライジング・スターというのは、新星という意味。そして、地元の言語であるソト語での星=ナレディを使い、「ホモ・ナレディ」(星の人)と名づけたそうです。
(南アでヒト属化石1500点を発見、新種ホモ・ナレディ  :日本経済新聞 2015/10/4 6:00(文 ジェームズ・シュリーブ、日経ナショナルより) ジオグラフィック社)[ナショナル ジオグラフィック 2015年10月号の記事を再構成]


●新種のヒト属発見の発表は大嘘か?証拠に乏しく批判多い研究

 発見された地域は、20世紀前半に初期人類の骨が多数出土したことで有名。「人類のゆりかご」と呼ばれるようになったところです。研究チームは2013年以降ここで1550点以上の骨を発見。これはアフリカ大陸では過去最大規模で、少なくとも15体分に相当するとされていました。

 ライジング・スター洞窟の骨は、部分的にはホモ・エレクトス以上に現代人に近く、バーガーさんらは、明らかにヒト属に分類できると考えました。ただ、一方でヒト属のどの種とも異なる特徴をもつため、新種だという結論に達しています。

 ただし、批判もあるようです。同じナショナルジオグラフィックでも、新種のヒト属ホモ・ナレディ発見に驚きと疑問の声 ナショナル ジオグラフィック日本版 10月5日(月)7時31分配信 という記事がありました。

 こちらによると、米ミズーリ大学医学部の古人類学者キャロル・ウォードさんは、「これほど大量の化石人骨は見たことがありません。本当に驚きました」とする一方で苦言を呈しています。化石の見た目のみで年代を推定するのは危険であり、年代などの重大な情報が得られていない段階で発表に踏み切った研究チームに失望の色を隠せないと書かれていました。科学的には誠実ではないやり方だったようです。

 米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の古生物学者ウィリアム・ジャンガーズさんは、もっと厳しいです。「年代が分からなければ、これらの化石は人類史を書き換える発見ではなく、単なる骨董品です」と批判していました。米カリフォルニア大学バークレー校のティム・ホワイトさんもAP通信に、「論文の記述から考えると、この化石は原始的なホモ・エレクトス(Homo erectus)のものです。19世紀に発見された種ですよ」と否定する意見を述べています。


●変わったところで発見されたホモ・ナレディ…その説明も怪しい

 実を言うと、ポジティブな感じのように見えた最初の記事でも、上記とは別のところで一部批判が出ていたんですよね。かなり荒い研究であるような印象を受けます。

 こちらで問題となったのは、洞窟の奥の入りにくい場所に、なぜ人類の遺体があったのかというところ。これに対し、発見したバーガーさんらは、非常に突飛な仮説を立てている…と表現されていました。ホモ・ナレディの骨がそこにあったのは、仲間たちが運び込んだからだという説。埋葬のようなものを想定しているみたいですね。

 「彼らは自然界と切り離された自己を認識できる知能をもった動物だったと考えられます」とバーガーさんは言っていたのですが、脳容量の小さいホモ・ナレディが、それほど複雑な行動をとるとは考えにくいとする立場で反論があるということを記事では伝えてました。


●売名行為のために目立つ発表?ただ反論が出るのは健全な証拠

 私はこれはSTAP細胞問題などのように、功名心ゆえに焦った、売名行為のために目立つ発表をしたというものだと、当初捉えました。ただ、以下の記事では、問題だらけであるとしつつも、一部前向きに捉えて評価していました。反論が出るのは健全な証拠でもあり、悪いことではありません。
「新種のヒト発見」は間違い? 原始人類学界で議論沸騰中 : ギズモード・ジャパン 2015.10.28 19:30 Kiona Smith-Strickland-Gizmodo US(miho)

ホモ・ナレディが本当に新発見の種なのかどうかについてはまだ議論の余地があります。文化人類学者のJeffrey Schwarz氏などは、発見された化石はアウストラロピテクスのような既知のヒト属のように見えると言っています。(中略)

でもこうした議論は、Berger氏が通常よりかなり早い段階でその発見をオープンな学術誌に公表し、化石のデジタルスキャンまで公開したから可能になったんです。

学術誌の目的は、各研究者の持つデータや手法を公表することで、他の研究者からの評価やコメントを可能にすることです。研究者たちは、論文を読んでお互いにチェックしあうことになっています。つまり賛否の嵐が起こるのは、研究者コミュニティの中では当然のものなんです。

●今回の発表で真に画期的なのは、情報を共有しようという試み?

 反対意見や疑問が出るのが科学では当然というのは、本当です。さっき名前を出したSTAP細胞問題では、疑惑発覚当初は論文を疑問視する人たちの側がひどく叩かれていたので、科学では仮説を立てる側に証明義務があるし、疑問が出るのは悪いことではないといった擁護を私はしていました。

 ただ、STAP細胞論文がそうであったように、粗雑なものを大々的に発表するというのは問題を感じます。やはりあまり納得できるものではありません。

 とはいえ、STAP細胞のような生命医学の分野とずいぶん違うんだなと驚いたのが、成果の発表までの時間です。生命医学系は特にスピードが早いと驚かれる分野(競争激しくスピード重視なので問題が起きやすい?)でしたが、原始人類学は逆のナンバーワンなのかもしれません。
原始人類学は、他の多くの学術分野よりさらにゆっくりと動きます。『ロード・オブ・ザ・リング』に出てくる巨大な木みたいな動きです。通常、発掘現場で化石などが発見されても、その発見が研究者コミュニティとか世間に発表されるまでに10~15年もかかります。(中略)

問題は、古生物学者が(他の分野の学者同様に)標本やデータについてなかなか共有しようとしないことです。(中略)標本の公開もないし、その模型やデジタルスキャンや関連するデータも共有されません。

10年ほど経って研究者が分析結果に確信を持てれば、写真や測定データとともに論文が公表されます。でも化石の模型を作ったりそれを他の研究者や教育者に提供するには、発表からさらに数年もかかることがあります。

Berger氏はその慣習を破り、化石の発見からわずか2年後にそれを公表し、化石のデジタルスキャンまで公開して誰もがレプリカを3Dプリントできるようにしました。こうした前例はなく、同分野の研究者には歓迎する向きもあります。

 それでも、他に以下のような批判もありましたし、やはり私は今回のケースはやりすぎだと感じます。

「Berger氏はナショナル・ジオグラフィックの撮影スケジュールに合わせるために発掘を急いでいた」
「(Berger氏の論文を掲載した)eLifeの査読が手ぬるいから、間違いだらけの論文でも発表できてしまった」

 ただ、慣習を破って情報を共有しようという試みに関してだけでは、確かに評価できる行為だと感じました。今回の発表で最も画期的だったのは、ヒト属の新種の発見ではなく、情報を早く共有したことかもしれませんね。


●想定と違った!ホモ・ナレディの生きた年代が判明して驚き

2019/07/17:検索してみると、謎の人類ホモ・ナレディ、生きた年代が判明 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト(2017.05.12)という続報が出ていました。これによると、画期的な発見である可能性が出てきた一方で、やはり発表のやり方は良くなかったと言える部分があるかもしれません。その時代は当初の予想と異なっていたと書かれています。

 発見された当初は、らかなり古い時代の人類と考えられていたとのこと。しかし、2017年5月9日付の科学ジャーナル「eLife」に発表された論文によると、実はそれよりもはるかに新しく、初期のホモ・サピエンスと同じ時代に生きていた可能性があるとわかったそうです。具体的には、3万5000~23万6000年前の間と特定しました。

 また、この仮説が本当ならたいへんなことになる可能性もあるとのこと。南アフリカで出土しているこの時代の石器は、現生人類だけの手によるものではないかもしれない可能性…つまり、ホモ・ナレディのつくった石器を人類によるものと誤解しているという可能性ですね。


●ゴリラがたいまつを扱い、石器をつくると考えられるのか?

 あと、重要なのは、最初の空間「ディナレディ」から100メートル以上離れた場所で、「レセディ」(地元のセツワナ語で光という意味)と名付けられた第2の空間が発見されて、これまた大量の骨が出てきたこと。これにより批判された埋葬場説を強化するとも、研究者らは主張しています。

 ただし、埋葬説はこれでもやはり懐疑的な研究者がいて、チーム内ですら反対がある模様。外部では、英ロンドン自然史博物館の人類学者クリス・ストリンガーさんが、「私を含め多くの専門家にとって、ゴリラほどの大きさの脳しか持たない生き物が、このような複雑な行動を見せるとはとても考えられないのです」としていました。

 さらに「その上、洞窟に入るにはたいまつなどの明かりが必要で、それはつまり火を扱うことができたということです」と指摘。知能の問題は、先の「石器をつくっていた」説にも言えることであり、ここらへんはしっかりした証拠を出すことは難しいと思われます。


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