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高等教育の無償化、低所得者層の大学進学率に逆効果?高校授業料無償化の結果は…


2015/11/5:
●学費が無料のスコットランドの大学、低所得者層の子がむしろ入りづらい?
●スコットランドの学費廃止が失敗という話は確認できず
●大学進学と所得・授業料の関係は研究によると…?
●実際にはイングランドの大学も在学時は授業料免除?
2019/04/22:
●高等教育の無償化、低所得者層の大学進学率に逆効果?高校授業料無償化の結果は…


●学費が無料のスコットランドの大学、低所得者層の子がむしろ入りづらい?

2015/11/5:英労働党の新党首に強硬左派:日経ビジネスオンライン(The Economist 2015年9月26日)はタイトルの通り、イギリス労働党の党首に中道ではない強硬左派が立ってしまったという話。アメリカの大統領候補で人気のドナルド・トランプさんが、マジで共和党の代表になっちゃった…みたいなものでしょうね。
(2019/04/22:…と書いていましたが、ご存知の通りトランプさんはマジで大統領候補となった上に大統領にも当選。様々な混乱が起きています。大統領候補選は人気首位が交代することが多く、トランプさんも最後まで行くとは予想できませんでした)

 ただ、私が一番興味あったのは、以下の短い部分であった記載内容でした。

"年配者を優遇する保守党政権の政策によって若者が損害を被っていることは否定しない。だが、大学の学費を廃止することは退行的な政策であり、逆効果だ。その証拠に、イングランドでは高等教育の学費が無料だった頃よりも多くの貧困層が大学に通っている。一方、分離立法府が学費を廃止したスコットランドでは大学は財政の危機に直面しており、貧困層に属す学生もかつてほど集まっていない"


●スコットランドの学費廃止が失敗という話は確認できず

 無料の方が貧困層の学生が入りづらいというのは、奇妙な話です。なぜそうなるのか?と非常に気になりました。予想できないおもしろいその理由の説明があるんじゃないかと期待したのです。

 ところが、検索したところ、スコットランドの大学で学費が廃止されたという話すら、ほとんど出てきません。全然注目されていなくて、英エコノミスト誌の言っていることが正しいかどうか確認できませんでした。

 過去にドイツの大学は授業料無料 日本やアメリカは400万円、米私立大は2400万円以上という話もやっており、興味あるところだったんですけどね…。


●大学進学と所得・授業料の関係は研究によると…?

 ただ、このスコットランドの件を検索していて、ギリスの新しい授業料・奨学金制度に関する考察 ― 低所得者層の機会拡大に向けて ―(田 中 正 弘 弘前大学)というPDFを見つけました。これはこれでなかなかおもしろそうです。また、こちらを読んでみると、エコノミストの主張が怪しいという話が出てきました。

 論文では、矢野眞和・濱中淳子(2006:94)という別の論文の以下のような研究成果を引用しています。

「大学進学需要が停滞し,安定しているのは,実質所得の減少,実質授業料の上昇,および失業率の高止まりによる帰結である。(現在は,)失業不安が進学需要を高めているが,所得と授業料の2つが進学需要を下げるように作用し,相反する力関係のために均衡している」

 上記はちょっとわかりづらいですけど、所得が下がることや授業料が高いことは、普通に進学需要を下げてしまうとされていました。エコノミストの主張と全く逆です。

 このことは上記のあとに続く、"仮に経済的事情が非進学行動を規定する主要な要因の一つであるのならば,失業不安が益々深刻化し,実質所得が下がり続ける今日において,進学需要を上げるには,授業料を減額する必要がある"という説明の方がよりわかりやすいでしょう。


●実際にはイングランドの大学も在学時は授業料免除?

 さらに、このあと、イングランドでもかなり思い切った低所得者対策をしているという話もありました。

 論文では上記の「進学需要を上げるには,授業料を減額する必要がある」について、「財政的な制約がますます厳しくなるという現実を前にして,理想主義的な教育の機会均等論のみを論拠に,公的な教育費支出を増加させることは難しい」(小林雅之,2007:106)という研究結果を引用。そのうえで、授業料低減以外の解決策を示唆する新たな研究が強く求められているとして、以下のようなことを書いていました。ここでイングランドの低所得者対策が出てきます。
 そこで,本研究は2006-07 年度にイングランドに導入された新しい授業料制度である所得連動型返還方式に着目したい。この返還方式とは,現行の授業料のように修学時に支払うのではなく,卒業後年間所得が一定額を超えた時点から,その超過額の一部を税金として回収する制度のことである。この返還方式の採用により,大学修学時に多額の現金を用意しなくてもいいので,低所得者層出身者でも(理論上は)進学を妨げられないはずである。それから,生涯所得が少ない者の残債務は卒業後数十年で消滅することから,低所得者層の学生ほど強く表れる(といわれる)負債への恐怖心も,緩和されると思われる。従って,イギリスの新授業料制度は,我が国に斬新な視点を与えられると推測できる。

 上記は2012年の論文であり、エコノミストの記事はそのあと。なので、この2006-07 年度に導入された新しい授業料制度が廃止されたせいでうまくいってる…というのが、エコノミストの主張かもしれません。ただ、ここらへんは情報が少なくてよくわかりませんでした。


●高等教育の無償化、低所得者層の大学進学率に逆効果?高校授業料無償化の結果は…

2019/04/22:一般的に雑誌・新聞紙の主張は研究論文に劣りますので、研究論文での分析が見たいところ。今回、改めていろいろ検索してみたのですが、やはり良い話は見つかりませんでした。

 ただ、Wikipediaも見てみると、参考になりそうな話が。日本では、民主党政権の2010年度から高校授業料無償化・就学支援金支給制度が実施されています。公立高等学校などの授業料を無償化し、また私立高等学校などに就学支援金を支給して授業料を低減することを目的とした制度です。

 このWikipediaによると、制度の導入後、埼玉県などでは高校進学率が過去最高を記録し 、全国でも経済的理由による私立高校を中退する者が過去最小を記録したといいます。低所得者層について見ているわけではないものの、全体に上がったところを見ると、低所得者層の進学率が上がっている可能性が高そうです。

 考えてみると、全員行くのが当たり前になっている小学校や中学校の義務教育についても無償でなかったら、低所得者層の進学率は普通に下がるでしょう。エコノミストの言う「大学だけでは無償になったら低所得者層の進学率が下がる」という現象は考えづらいと思われます。左派批判の保守派的な主張でしたので、根拠に欠ける感情的なものだったのかもしれません。


【本文中でリンクした投稿】
  ■ドイツの大学は授業料無料 日本やアメリカは400万円、米私立大は2400万円以上

【関連投稿】
  ■奨学金を返済できない底辺大学?奨学金延滞率ランキング
  ■学歴で出世して社長…は日本だけ アメリカは学歴社会じゃない?
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