「南極の氷 実は増えていた」という記事がありました。ただ、検索してみると、以前から増えていることはわかっていたという話もあるなど、よくわかりません。
●減っていると言われていた南極の氷、実は増えていた
とりあえず、今回の報道は「南極の氷は減っていると言われていたのに、実は増えていたんです!」というものでした。というか、IPCCが減っているって言っていたらしいですわ。
NASA「南極の氷 実は増えていた」 NHKニュース 11月5日 9時27分
南極の氷を巡っては世界各国の科学者で作る国連のIPCCが、おととし、温暖化の影響でとけて失われ、海面が上昇していると発表していました。
しかし、NASAが衛星を使って南極を観測して分析したところ、1992年以降、西部では氷が減少していたものの、東部などでは増加していて、南極全体では氷は増えていたということです。
●南極の氷が増えている理由
"増加の要因は、1万年前から降雪が増え続け、それが圧縮されて氷となったとして"いるそうです。
検索していたら、武田邦彦・中部大特任教授が過去に似たようなことを言っていて、支持者がはしゃいでいました。
武田邦彦 - Wikipedia(最終更新 2015年10月4日 (日) 17:01)
・南極の氷は温暖化で増える
南極は、温暖化によって海水の温度が上がれば、より多くの水蒸気が発生し、それは雪となって南極に降り積もる。南極はマイナス数十度なので多少温暖化しても氷は解けず、結局温暖化によって南極の氷は増える[7]。
しかし、NASAによると、"南極の氷の増加のペースは、1992年から2001年にかけては毎年1120億トンだったものの、2003年から2008年にかけては毎年820億トンに落ちている"とのこと。
つまり、単純に温暖化で氷が増えているってこともないようです。
あと、武田邦彦特任教授は、相変わらずいろいろとむちゃくちゃで笑いました。この方は問題外ってことで良いと思います。
・朝日新聞の記事が温暖化騒ぎの発端である (引用者注:武田邦彦特任教授の主張)
気温が上がると極地の氷つまり北極や南極の氷が溶けて海水面が上がるという朝日新聞の記事が、その後の「地球温暖化騒ぎ」の元になった[10]。
(中略)
主張に関する批判
・朝日新聞の記事が温暖化騒ぎの発端である
山本弘は(中略)武田が2034年1月1日付のフィクション記事[注釈 2]を本物の記事であるかのように取り上げていること、当該記事には「北極」との記載は一切なく「極地」との記載があるにもかかわらず「北極」と記載されていると虚偽の主張をし、さらに「極地」の範囲を誤って解釈していることで、「存在しない文章を捏造し、「誤報」に仕立て上げた」と批判している。
●海面上昇の原因
南極の氷がどうなっていようと、海面の上昇が起きていることは間違いありません。この理由については、どう説明されているのでしょう?
記事によれば、"NASAは、海面の上昇は南極の氷がとけたためではなく、別の場所で想定以上に氷がとけていたなど別の要因があったと指摘して"いるという話でした。
●南極の海氷は増加しているともともとわかっていた?
さて、もともと氷は増えていたとわかっていたという話の方を。こちらはSkeptical Scienceにありました。ここによると、そもそも陸氷と海氷を区別すべきとのこと。上記記事でもこの区別はありませんでした。
南極の氷は増加している
ここで肝心なのは、南極の陸氷と海氷の減少は二つに分けて区別する事です。南極の氷に関する報道は多くの場合、陸氷と海氷の区別がされてない。南極の氷の傾向を総合すると:
・南極の陸氷は減少しており、その速度は加速している。
・南極の海氷は南極海の温暖化にもかかわらず、増加している。
今回のニュースが新発見だというのなら、減っていると思った陸氷も実は増えていたって話ですかね?
まあ、それは置いておくとして、以下のような意見があるそうです。たぶん地球温暖化に懐疑的な論者の意見だと思われます。
東南極内部の陸氷は増加してるに対し、全体的に南極の陸氷の減少は加速しています。南極の海氷は、温暖化してる南極海にもかかわらず増加してるのです。
ただ、Skeptical Scienceというのはおそらく疑似科学的な主張を否定するサイトであり、これを以下のように否定しています。
「南極の氷の総量は、30年前モニターし始めた人口衛星の観測によれば、記録的に多いとされてる。単純に南極圏は雨が降るためには寒すぎで、この状態は長い間続きます。肝心なのは、南極あたりの氷は今まで以上に多いということです。(Patrick Michaels)」
●単純に温暖化で氷が減る・増えると言えない
Skeptical Scienceによると、"海氷の増加は南極圏の寒冷化"を示していません。"実際には、南極海の温度は地球の他の海水温よりも温暖化が著しい"そうです。
では、なぜ海氷の増加が見られるのか?と言うと、以下のような説明でした。
様々な要因があります。一つは、南極周りのオゾン層の低下。オゾンホールによって、成層圏が寒冷化してます(Gillet 2003)。それによって、熱帯性低気圧の風が南極大陸の循環を強める(Thompson 2002)。その風が海氷を押し回し、ポリニヤ(開水面)と呼ばれる、水が溜まる区域ができる。ポリニヤが増えれば、海氷生産に繋がります(Turner 2009)。
もう一つ貢献してるのは、海洋循環の変化。南極海の表面付近は冷たい層、その下には比較的暖かい層で構成されてます。暖かい層からの水は表面に上昇し、海氷を融解させます。しかし、気温が暖まると、降水量と降雪量が上昇します。これは表面の水を淡水化し、下の海水よりも密度が低くなる。この二つの層は階層化し、混合しにくくなる。下の温かい水が上に昇る量が減り、熱の運びを低下させる。したがって、海氷の融解が遅くなる(Zhang 2007)。
総合すると、南極の海氷は複雑かつ独特な現象です。単純に南極圏は寒冷化してるという説明は十分ではありません。温暖化はおきています -- 地方によってどんな影響があるかはもう少し複雑です。
正直ちんぷんかんぷんなんですが、とりあえず、「氷を増やす現象と氷を減らす現象が同時に複数起こっており、それらの要因が複雑に組み合わさって、南極の氷の量を決めている」という大雑把な理解で良いでしょうか?
氷の多さを決める要素がいろいろとあるので、温暖化(もしくは寒冷化)で氷が減るとか増えるとかいった単純な説明にはならん感じです。
2017/05/16;なお、地球温暖化に関する懐疑については、私も持っていた時期がありました。ざっくり言うと、人為的なCO2増加と地球全体ではエネルギーのスケールが違いすぎるのに、そんなに影響あるの?という疑問です。
ただ、実際の地球温暖化懐疑論を見ていくと、これはこれでスッキリしないものがあります。なので、今は懐疑派という感じじゃなくなってしまいました。
過去にいくつか紹介した話もあるのですが、読み返してもよくわらかない内容ばかりで、自分でも読むのが苦痛でした。全然読まれていない話ということもあり、削除してしまいました。
で、「消したものがある」という話をどこかに書いておいた方が良いかな?と思って、ここに記載しました。
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