2011/1/9:
ヒトの祖先がサル…という理解は本当に正しいのか?
ヒトを除く意味での「サル」という言葉は英語にはない?
2018/06/22:
実はチンパンジーに似ていなかった人類の祖先
●ヒトの祖先がサル…という理解は本当に正しいのか?
2011/1/9:
黒板を引っ掻く音が嫌なのはなぜ?で書いたように、「ヒトの祖先がサル」という言い方が、どうも私にはしっくり来ません。
日本では霊長目全体をサルと呼びますが、これにはヒトを含む場合と含まない場合があります。「ヒトの祖先がサル」と言うときは、ヒトを含まない場合で使われているというのはわかりますが、ヒトがその「サル」と分化してから「サル」たちがそのままの姿をしているわけじゃないはずです。
うまく説明できないのですが、「ヒトの祖先がサル」と言うよりも「ヒトの祖先がサルの祖先と同じ」と言う方がより実情に近いのじゃないかとずっと思っていたのです。
人類の進化 Wikipediaによると、ゴリラ、チンパンジー、ヒトを結び付ける最後の祖先はケニヤで見つかったナカリピテクス、あるいはギリシャで見つかったオウラノピテクスの可能性が示唆されているそうです。
また、分子的な証拠は800から400万年前に、ヒトへと続く系統からまずゴリラが分かれ、そのあとチンパンジーが分かれていったことを示しているとあります。
以降は私の推測で「おそらく」になってしまいますが、ヒト・ゴリラ・チンパンジーの共通祖先から、ヒト・ゴリラの共通祖先とチンパンジーの祖先に分かれ、そのヒト・ゴリラの共通祖先がさらに、ヒトの祖先とゴリラの祖先に別れたという感じで、いくつのも種を経てからヒトの祖先になったのだと思います。
ですから、現在いるチンパンジーという種類が、直接ヒトになったわけではないはずです。細かいところですので、「ヒトの祖先がサル」という言い方にいちいち目くじら立てて非難したいわけではないんですけど、ここらへんをマジで勘違いしている人がいるんですよね。
●ヒトを除く意味での「サル」という言葉は英語にはない?
あと、ヨーロッパではダーウィンの「ヒトの祖先がサル」に強く反発したと聞いていますが、英語の場合、ヒトを除く意味での「サル」に該当する言葉はないようです。
英語ではmonkeyのほか、ape、lemur、loris、galago、tarsierが含まれ、その他、gibbon(テナガザル類)、baboon (ヒヒ類)、macaque (ニホンザルを含むマカク属)、colobus、langur、marmoset、tamarin など、数十種の名称が使われるとのこと。細かく分かれているんですね。
そして、英語でこれらを総称するには、「ヒト以外の霊長類」と言う以外に簡潔な表現はないとされていました。他の動物でも似たようなことがあるように、日本人と動物の種類の捉え方が異なるようです。
(以上
サル Wikipediaより)
では、ダーウィンさんで揉めたときは、何て言葉が使われたんでしょう? 英語版の
Wikipediaを見ると、"men from monkeys"(猿から人へ)というので、monkeyが1箇所ありました。新英和中辞典によると、monkeyは通例apeと区別して小型で尾のあるものだそうです。その他、頻繁に「類人猿」の意味で使われているっぽい「apes」が多数見られます。
ただmonkeyの使われている部分がそのものズバリ「猿から人へ」ですので、ダーウィンさんのときはこちらが使われたのかもしれません。
●実はチンパンジーに似ていなかった人類の祖先
2018/06/22:上記を見直したついでに検索してみると、
ヒトの祖先はチンパンジーやゴリラには似ていない -発生パターンの比較から二足歩行の起源に迫る- — 京都大学(2018年02月01日)というページが見つかりました。
まず、従来の有力仮説「ナックル歩行仮説」によると、ヒトの祖先はチンパンジーやゴリラのような歩き方をしていたと考えられていたとのこと。ヒトに近縁な類人猿は、手のひらを地面につける「普通のサル」とは異なり、「ナックル歩行」という指の背を地面につく特徴的な四足運動をするのだそうです。なので、ヒトの祖先もかつてはそうやって歩いていたと思われていたんですね。
しかし、森本直記 理学研究科助教、中務真人 同教授の研究グループが、スイス・チューリッヒ大学と共同で、ヒトの直立二足歩行の起源について、発生パターンを比較すると違う結果になりました。ヒトは「普通の四足」の類人猿から進化したことを裏付けたというのです。
分析によると、チンパンジーとゴリラは意外なことに運動機能の要となる骨格形態の発生パターンが似ていませんでした。これはナックル歩行の共通祖先からゴリラとチンパンジーが誕生したのではなく、普通の四足の共通祖先からゴリラとチンパンジーが誕生したことを意味しているそうです。それぞれ独自にナックル歩行になったと考えられるわけですね。
そして、ナックル歩行の共通祖先というのがいないわけですから、ヒトも同じように普通の四足の共通祖先から二足歩行となったと考えられるということ。普通の四足ですので、むしろチンパンジーより原始的なイメージのお猿さんが祖先だったわけですね。
ナックル歩行とは関係ない話ですけど、この説明は私が最初に書いていた「ヒトの祖先がサル」と言うよりも「ヒトの祖先がサルの祖先と同じ」であり、現在いるチンパンジーという種類が直接ヒトになったわけではないという理解が正しい…ということも示していました。確認できて良かったですわ。
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