●アメリカ資本でアメリカを舞台にアメリカ人らが作った映画が海外扱いに
2020/12/29:
ハリウッドで物議 スティーヴン・ユァン主演作がGG賞作品賞選考外に|シネマトゥデイ(2020年12月25日)は、スティーヴン・ユァンさんが主演する映画『ミナリ』が、ゴールデン・グローブ賞において作品賞ではなく、外国語映画賞の選考対象になったことで、ハリウッドの映画関係者の間で物議を醸しているというニュースです。
サンダンス映画祭で審査委員賞と観客賞をダブル受賞した話題作で、監督は韓国系アメリカ人リー・アイザック・チョン監督、製作配給会社もアメリカのA24が行ったもの。にも関わらず、作品賞ではなく外国語映画賞の選考に入ってしまいました。映画内の使用言語が韓国語と英語で、ゴールデン・グローブ賞が規定とする作品賞の対象となる英語のセリフが50%以上に達しなかったことで、作品賞の選考対象にはならなかったそうです。
アメリカンドリームを描いていることから、『フェアウェル』のルル・ワン監督は、「今年は、『ミナリ』ほど、アメリカ(らしい)映画を見たことがない」とコメント。シム・リウさんは「念のために言っておきますが、『ミナリ』は、アメリカを舞台にアメリカ人の主演俳優を起用し、アメリカ人のフィルムメイカーが脚本・監督を手掛けたアメリカのプロダクション作品です」とコメントしています。
●アカデミー賞に外国語史上初で韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が受賞
この記事の中であれ?と思ったのは、そのような規定のないアカデミー賞では、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞に選ばれ、歴史的な出来事となったと書かれていたこと。そうでしたっけ? で、検索して
【徹底検証】パラサイトはなぜアカデミー賞作品賞を受賞できたのか? - SCREEN ONLINE(2020-03-22)などを読んでみました。
2011年度の作品賞「アーティスト」はメインが海外資本ではあるものの、セリフがなかったため、「パラサイト半地下の家族」のアカデミー賞の作品賞受賞において、外国語映画が作品賞を受賞するのは史上初となったとのこと。アジア初と報じているサイトもありましたが、アジアに限らず世界初・史上初といった感じですね。
アカデミー賞選考者は白人男性ばかりで批判されていたため、女性や多国籍を意識して急激に増やし多様性を高めたために過去にない作品が選ばれた…というのは、私も記事を読む前の時点で予想はしていました。ただ、それだけでなく、多様化への流れがあったみたいですね。記事では、選考者の多様化という理由以外にも、以下のように書いていました。
<SAGアワード(全米映画俳優組合賞)の最高賞にあたるキャスト賞を受賞したこと。今年のアカデミー賞は演技部門ノミネート20枠のうち、19枠を白人が占めたことで、再び「白すぎるオスカー」との批判が上がっていた。多様性を求める声が、SAGでの「パラサイト」への投票につながった可能性も大きい>
●アメリカでは異例の字幕作品のヒット 別のアジア系映画も大好評
また、このSAGアワードでのポン・ジュノ監督のスピーチが心がこもっていたものだから、タイミングよく後押しになったのでは?ともされていました。さらに、興行的にも普通によく、字幕作品としては異例のヒットであったようです。
<字幕作品は観客に敬遠されるのが常識だったアメリカで、「パラサイト」はアカデミー賞を受賞する前に、すでに3600万ドルもの興行収入を記録していた。大ヒットといえる数字である。これも配給会社NEONの功績だが、作品自体が字幕をあまり読まなくてもわかりやすい作りだったことも、ヒットの要因だろう>
ここ数年、アメリカでもNetflixなどで海外作品を字幕で観る習慣が増えてきたという分析もあるとのこと。2018年の「クレイジー・リッチ!」の予想外のヒットが示したように、アジア系の作品への親近感も関係していそうだとされていました。「クレイジー・リッチ!」というのはあらすじを見ると、中国系アメリカ人のシンガポールでの話みたいです。
<レイチェル・チュウは中国系アメリカ人で、生粋のニューヨーカーであり、全米トップクラスの私立大学、ニューヨーク大学で経済学科の教授として教鞭を執っていた。ある日、レイチェルは恋人のニック・ヤンと一緒にシンガポールへ行くことになった。(中略)
シンガポールに住むアジアのセレブリティたちの生活を目の当たりにし、セレブリティではない上、アジア系であるがまず「アメリカ人」であるレイチェルの価値観は大いに揺さぶられた>(
クレイジー・リッチ! - Wikipediaより)
●日本映画もアカデミー賞を受賞する可能性は?アニメでは異変!
こういう話題だと日本映画もアカデミー賞!といった話があるかな?と検索したのですが、キーワードのせいで「日本アカデミー賞」という違う話ばかり出てきてしまいます。ただ、それでも私が求めていたものに近い記事が出てきました。一応、日本にも可能性がありそうなことを期待させるような話があります。
ただ、<世界がアッと驚いた『パラサイト 半地下の家族』の第92回アカデミー賞4部門制覇(作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞)。アジアが世界にグッと近付いたが、日本にとって馴染み深いのは、何と言ってもアニメーション部門(長編アニメ映画賞)>という書き方なので、やっぱり日本はアニメだろ!という見方ですね。
ただし、これは、
日本アニメのアカデミー賞獲得が困難に? なぜ『天気の子』ではなく『失くした体』がノミネートされたのか | アニメ | BANGER!!!(増田弘道)というタイトルの記事ですので、ネガティブな方向性。その日本が期待できるアニメ部門で異変が起きているという話でした。
<受賞は『トイ・ストーリー4』に落ち着き“お約束”通りの展開となったが、あれっ? と思ったのは、期待度の高かった『天気の子』ではなく、ノーマークの『失くした体』(引用者注:フランスのシーラム(Xilam)制作で無名のジェレミー・クラパン監督)がノミネートされたこと。これが長編第1作目となる無名監督の作品に、日本人ではなくとも、なぜ?と思った人間は多いのではないか>
●アメリカ人の好みと日本人の好みは異なる 日本映画が不利な理由
アカデミー作品賞部門は最近「社会性・社会問題への視点」を重視。その時々の社会意識を反映した問題作がノミネート/受賞というケースが多いそうです。アニメーションは伝統的にキッズ/ファミリーが観る娯楽とされてきたものの、こちらもまた社会的な作品がノミネートされるようになってきている傾向だといいます。
意外なのは、これ、一部のお偉方様・知識人様の好みではないという指摘でした。逆に一般人が社会的で真面目な作品も好むという分析です。これは予想外。日本ではむしろこういった作品は好まれない…だからこそ話題作にならずにノミネートもされないということで、傾向が異なるようですね。これはアニメに限らず、日本映画が苦戦する理由になるかもしれません。
<2000年代から興行収入が飛躍的に増え、数パーセントに満たなかったシェアが2019年には19.2%までとなった。こういう背景を受けて、2018年より長編アニメ映画部門のノミネート作品選考が、それまでの専門委員による分科会方式から、作品賞と同じ一般会員(つまり映画人)からの投票によって決められるようになった。そうなると、実写と同じように社会性のあるテーマを取り上げた作品がよりノミネートされる確率が高くなることは、ある種当然のことである>
●娯楽性・商業性も重要…それなのになぜ日本アニメはダメなのか?
なお、ピクサー/ディズニー・アニメ作品の受賞確率は、何と68.4%と圧倒的なのですが、こちらは娯楽性・商業性がある作品。社会派ではないんですね。それなら、日本アニメはこの路線で行けるか?というとそうではないとのこと。娯楽性・商業性についてはピクサー/ディズニー連合に全く敵わないといいます。
娯楽性・商業性は日本も大得意の分野と評価はされていました。ただ、それらの多くは「アニメ」という日本独自の領域での表現が主流で、海外のアニメーション常識から逸脱しているケースが多いという説明。わかりづらいですが、おそらく日本人に特化した娯楽性・商業性であり、アメリカ人の感覚とは異なってしまうという意味だと思われます。
また、前述の通り、社会性・多様性については日本のアニメが不得手な分野。日本の強みは、芸術・作家性に富んだクリエーターが多いので、これに先の娯楽性・商業性もしくは社会性・多様性を加えればチャンスがあるであろうという話。細田守監督なんかは日本より海外ウケするだろうし、片渕須直監督や湯浅政明監督に期待したいということでした。
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